マイク・ニコルズの「クローサー」は“ニコルズ的”な作品だった。彼は、「卒業」「愛の狩人」「ウルフ」などで性の混乱をシニカルなブラックユーモアで描いてきたが、『イルカの日』『ワーキング・ガール』『ブルースが聞こえる』など大衆的な作品もあり、『バージニア・ウルフなんか怖くない』『キャッチ22』などアクの強い作品をつくることもある。こちらが本領なのだろうし、『クローサー』もまたこちらに属する作品である。好みは分かれるだろうが、僕は気に入ってる。理由はナタリー・ポートマンにある。ジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、クライブ・オーウェンら実力派揃いの共演者のなかで、ニコルズは彼女から演技力以上の魅力を引き出した。個人的にこれまでポートマンになにか感じたことがなかったのだが、この作品の役柄は新境地であり、例外であった。どこか固い印象の強い彼女が、ここでは、美少女の憂いと陽性さの共存を実感を込めて体現し、非現実的かつ幻想的で清潔感のあるエロティシズムを披露している。
上はストリッパー役を演じる彼女の幻のヌード・シーン。
下は劇中でクライブ・オーウェンを挑発する謎めいたシーンから。