真夜中の映画&写真帖 

渡部幻(ライター、編集者)
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ギイ・ブルダンの冴えまくる構図感覚。「フレーム」内「フレーム」に凍結された世界

2010-06-19 | ファッション写真




「構図」は作者にとって「世界」そのものである。揺れた構図、柔らかな構図、曖昧な構図、動きのある構図、構図からはみ出ている構図などさまざまだが、ギイ・ブルダンのは鋭い構図だ。人と色の配置に隙がなく、才気走って、剃刀のように冷めた官能的がある。





ブルダンが、「構図」のなかに「もう一つの構図」を侵入させ、シャッターを切った瞬間、
「世界」は「世界のパロディ」となり、「エロス」は「エロスのパロディ」となるのである。
写真とは元々は動いているはずの人物や風景を止めること、窒息させる営みである。ブルダンの写真は、まるで冷凍保存され、着色された人工物である。SF映画のなかで時間が止まった瞬間のように、活き活きとしてユーモラスに凝固している。ブルダンのいじわるなエロスの眼差しが捉えた「孤独な女たち」には奇妙な活力に溢れ、不気味で、ひょうきんなのだが、何故だか、ほんのちょっと寂しさを感じさせるのだ。
(渡部幻)










 



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1 コメント

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Unknown (T-T.N)
2010-06-27 01:33:52
初めまして。
ギイ・ブルダンを検索してゐたら、貴ブログにたどり着きました。
ブルダン作品への、パロディ装置としてのフレーム内フレームといふご指摘、おつしやる通りだと思ひます。
写真(もしくはフレーム)を写真の中にこれほどまでに大胆に活用した写真家は他に例を見ないと思ひます。
かういふブルダン作品の多層性に私は惹かれてきました。
よい文章を読ませていただき有難うございます。
(「ハート・ロッカー」の批評も素晴しいものでした)
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