真夜中の映画&写真帖 

渡部幻(ライター、編集者)
『アメリカ映画100』シリーズ(芸術新聞社)発売中!

異能派アベル・フェラーラのワイルドサイド・フィルムが魅せる凄み

2010-11-29 | 映画作家


最近ヴェルナー・ヘルツォーク監督、ニコラス・ケイジ主演でリメイクされた『バッド・ルーテナント』のオリジナル版は、ニューヨーク派のアウトロー監督アベル・フェラーラの大傑作。主演はハーベイ・カイテル。
マーティン・スコセッシの『タクシードライバー』やジェームズ・トバックの『マッド・フィンガース』フェラーラ自身による『ドリラー・キラー』(こちらもフランスで『真夜中のピアニスト』としてリメイク)の系譜に連なるニューヨーク映画の怪作中の怪作だが、殺伐としながら色気のある映像作りはフェラーラの真骨頂。日本での公開時、閑静な東横線祐天寺駅に、この成人指定映画のポスターがずらりと飾られて、小さな革命を起こした。

癒されることのない魂を抱え込んだ男の苦悩を救済するのは、「死」の恵みだけだ。
極点に達したハーベイ・カイテルの芝居と、フェラーラが格好よく歌うざらついた主題歌が、都市生活の裏面に潜む絶対的な孤独を焙りだす。その厳しき認識の向こう側に、脈々と流れる情の深さに、流れされることの涙が滲む。もっともっと観られるべきカルト。

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永遠の向こう側。マリリン・モンローの寂しげな手のひら

2010-11-28 | 写真


ショウウィンドウの向こう側のモンロー。
彼女も、こちら側にいる僕らも、触れることができるのはガラスまでだ。
柔らかに開かれた手の感触はいつまでも「ショウ」のなかの妄想であり、そこに写るのは在りし日の孤独な少女の永遠の霊魂である。

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微妙なより目と薄唇の信頼のならなさと、見えそうで見えない内面の色っぽさ

2010-11-28 | ファッション写真








「Gold Teeth Will Roll」 photographed by Viktor Vauthier
微妙なより目と薄い唇の色気を引き立たせる、プールあがりの濡れた金髪と、微妙な腕と指づかいの芝居と、ピンクの肌色と、黒いソファの不思議な吸引力。

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縞模様と煙草の連続写真

2010-11-28 | 写真


Riley Keoughの写真。80年代初頭風の雰囲気で何となくだが悪くない。女の子があんまりきれいでないのがリアル。タバコの持ち方も日常感漂う。
2010年のDazed & Confused April に掲載だからきっと新しいのだろう。

渡部幻

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追悼アーサー・ペン・・・幻の実験的作品『ミッキー・ワン』

2010-11-09 | 映画作家




アーサー・ペン監督が先日亡くなった。ペンといえば『俺たちに明日はない』(67)に尽きるし、この作品で見せた天才を発揮することは二度となかったが、この『ミッキー・ワン』(64)は再発見されてもいい60年代ならではの野心的な作品である。本来は『ツー』『スリー』と作りたかったらしいが、興行的に無視されて『ワン』だけになった。『明日はない』に先駆けるウォーレン・ビーティ主演作。
それ以外では『逃亡地帯』(65)。リリアン・ヘルマン脚本の衝撃的な映画で、マーロン・ブランドとロバート・レッドフォードが共演している珍しい暴力劇だ。
過小評価されてるような気がしてならない作品には『ミズーリ・ブレイク』がある。これはマーロン・ブランドとジャック・ニコルソンが対決する暴力西部劇でカタルシスの欠片もないが、ブランド扮する殺し屋の愛嬌と残酷さに若きニコルソンはまるで歯が立たない。そこのところが十分に面白く撮影も美しかった映画である。
『フォーフレンズ』といノスタルジックな青春映画もあり、とても良い作品であったような気がしているのだが、よく憶えてはいない。見直してみたい作品だ。





渡部幻

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伝説的フォトグラファー。ボブ・リチャードソンの映画的な「物語の終わり」

2010-11-09 | ファッション写真






テリー・リチャードソンの父親で天才フォトグラファーのボブ・リチャードソン。その「映画的なファッション写真」にはいつも「やがて訪れるだろう物語の終わり」がにじんでいる。が、一転、その感傷を突き放すクールネスにハードボイルドな精神が感じられるのである。










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写真家Jean-Loup SieffとモデルDonna Mitchell・・・1967年の『Vogue』より・・・

2010-11-09 | ファッション写真





60年代のファッションフォトグラファーJean-Loup Sieffの『VOGUE』時代の写真。
モデルの顔と表情と細い身体の線には、ワイドなアングルとざらついた色彩が似合う。
この時代の写真からは、そこはかとない退廃的な性の香りから逆説的に時代の純情も滲みだして、どうしてだか惹かれ続けてしまうのだ。





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