山本一力 【 だいこん 】
飯の炊き方と商才で一膳飯屋“だいこん”をとりしきる、女将つばき。
つばきとその生い立ちを中心に、江戸に生きる人々の生活を描く。
ほんっとうに面白いです。
江戸商売物を書かせたら当代随一の山本一力。
ここ数作はドラマとしての面白さが少し欠けていたが、
今作は素晴らしい。文句無くおもしろい。
エピソードはかなり盛りだくさんで、
それぞれが何故か胸を突く。グッとくる。
仕事、家族、長子の悲哀、老い方、お金の使い方、
この小説が教えてくれることはとても多いが、
どれも素晴らしいストーリー仕立てである。
まっとうに仕事して、家族仲良く暮らしていくことが、なんと美しいことか。
貧乏ながらも身の丈にあった生活をし、敬うことを忘れず生きることが、なんと尊いことか。
物語に出てくる職人達は仕事に対するプライドが半端じゃない。
火の見やぐらの潮吉はまだまだ遠い火事が大火事になると見極めて、
責任を気にする上司に「咎めはおれがかぶります」と言って半鐘を打つ。
野分の中、つばきの父親は家族が心配するのを振り切って普請場を見に行く。
ゆずれないものは何か、その線の引き方が爽やかで、
自分はこの仕事で食わせてもらってるという感謝の気持ちを忘れない。
だいこんと言えば、昨日、伯父さんに頂いてきた大根が死ぬほどうまい。
今日帰ったら、妻に“これ食べてみ”と大根スティックを出されたんだけど、
まるでフルーツのような甘さとシャキシャキ感。
いつもありがとうございます。
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