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そのとき僕は。

2005年07月06日 | 

貫井 徳郎【殺人症候群】

警察が表立って動けない事件を捜査する外部機関が、
犯罪被害者の復讐を代行する職業殺人者の影を追う。
愛する者を奪われた人々、反省しない加害者達。
正義とは何か。

加害者が未成年であったり精神病であったが為に、
身内を殺されたり、ひどい犯罪にあいながらも、
社会的な制裁を加える事が出来ない。
裁判や報道により自分の生活は完全に破綻してしまう。
加害者の情報は守られるのに、被害者の情報は守られない。
と、こんな事件は往々にしてあり、
そういったニュースを見るたびに、
もし自分が同じ立場に立ったらと考えてしまう。
子供が事件に巻き込まれず、健康に育ってくれる事が一番の願いだが、
こんなに理不尽で突発的な犯罪が起こる今の世の中は不安でしょうがない。
加害者がその後も反省する事無く生き続けてるとしたら…。
被害者の家族の惨状があまりに恐ろしく描かれる。

職業殺人者を追う非公式な組織と、
交通事故に不審な点を見出し、調査を続ける二人の刑事。
二つのストーリーが並行して進み、
どこで交わるのかなーと思ってたら、あっと驚く結末が。
まだまだこれからも議論されていくであろう大きなテーマと、秀逸な展開。
終盤、ある人物が家族を懐古するシーンでは、
子を持つ親として涙が出た。

読んでから知ったのだが、この作品は3部作の内の3作目だそうだ。
単体でも何の問題も無く楽しめるが、
組織の結末を知ってしまったので、前2作を読む事は無いだろう。