FCC日記

子どもたちのクライミングスクールの活動記録と教育、スポーツ、そしてクライミングに関して想うこと。

ピグマリオン効果とゴーレム効果

2012-11-28 13:43:21 | 教育論
日々生徒たちと向き合っていると、なかなか自分の思い通りにならない子どもたちにイライラすることも
大人の価値観では判断しきれない発育途上の子どもたち。
なかなか手ごわい相手です(笑)

ただ、子どもたちと格闘し、たまにはお尻をひっぱたいたり、大声で怒鳴ったりしながらもひとつだけ肝に銘じていることがあります。
それは、「子どもたちは必ず伸びる」と信じること。
人間は、信頼に応えようとする生き物である、と信じるからです。


アメリカの教育心理学者であるロバート・ローゼンタール博士による面白い研究成果があるそうです。
同じくらいの学力レベルの生徒たちを2つのグループに分け、特定の教師による同一カリキュラムのもと、一方のグループは「この生徒たちは必ず伸びる」と信じて授業を行い、もう一方のグループには「この生徒たちは絶対に伸びない」と信じて授業を行った場合、前者は成績が伸び、後者は伸びが認められなかった、というものです。
このように指導側が期待を込めて指導することによって良い結果が得られることを「ピグマリオン効果」、その逆の場合を「ゴーレム効果」と言います。

以前、定時制高校に勤めたことがありますが、その時の経験は貴重でした。

厳しい家庭環境の中で大人たちに見捨てられた生徒が多かった定時制高校。
授業のない空き時間には、授業を抜け出しては校庭の片隅の暗がりでタバコを吸いながらたむろする、生徒たちの見回りが欠かせない教員の役回りでした。
授業内容にも全くついて行けず、まさに「ゴーレム効果」の化身のようだった彼ら。

自分の授業も学年始めの夏休み前までは阿鼻叫喚。。。(笑)
1階の教室では、授業が始まってからぞろぞろと窓から「登校」してきたり、授業中もうろうろしたり出て行ったり。
校庭ではオートバイがブンブン唸り、廊下をスケートボードで滑走する。。。

でも出来る限りのケアをしながら、「やればできる」「お前のことを信じている」というメッセージを送り続けると、彼らは必ず応えてくれるんです
その学年の最後には、授業が始まる前には全員がテキストを机上に準備して着席し、授業中も盛んに質問が飛ぶように大変身
このように和気あいあいとしながらも内容に集中して授業が進むようになると、しめたものです。
「勉強が楽しい」と言ってくれる子が多くなり、生徒たちの成績も向上するようになります
これはまさに「ピグマリオン効果」だったのだ、と今にして思います。

信じるか、信じないか。
大人の側のほんのちょっとした心の差が、大きな差を生みます。
しんどかったけれど、大切な教員時代の経験の一つですから、これを大事に今後の指導に活かして行きたいですね

<アウトドアレッスン日誌>中級

2012-11-27 13:09:32 | クライミングレッスン報告
11月11日(日)
メンバー:たけくん(小3)、ユキちゃん(小4)、タクミ(中1)、コーヘイ(中1)

ずーっと雨にたたられて中止が続いた中級アウトドア
今回もちょっとあやしいのだが。。。予報では日中、夜からとのことで、日中はどうにか天気がもちそうだったので行ってみることに。

集合場所の武蔵五日市に向かう電車で図らずも全員集合となった。
顔を合わすなりコーヘイが、「先生。。。ロープをジムに忘れました。。。 今日はヌンチャクかけたり、働きます。」
あらら。残念だねー多分、外岩を一番楽しみにしていたのは彼だったのでは?
中級のアウトドアレッスンは、自分たちだけで岩場に行っても活動できるように基本的な安全性と技術を身につけるのが狙いのレッスン。
なので、当クラブでは自分のロープを持ってこない、というのは一人前のクライマーとして扱われないのだ。
(ヌンチャクだけはまだ貸し出しているけれど。)

「じゃぁ、みんなと取引すれば?ヌンチャクを掛けたりする代わりにロープを借してもらう、とか。」と言うと、
他の子も「良いよ~
で、あっさり取引き成立 良かったね

岩場は思いのほか混んでいた。
休憩場所に荷物を置き、一休み。子どもたちはボルダー課題のある大きな岩の上が大好き。
ここに来ると子どもたちだけそこに群がって、猿山のサルのようになっている。

落ち着いたらクライミング道具とちょっとしたおやつ、飲み物を持って「下の岩場」へ。
天王岩デビューのたけくんもいるので、午前中はこちらで足慣らしをすることに。
1本目、「ちいせみ」5.8。
「ヌンチャク掛けする人~」と声をかけるとタクミが真っ先に「はいっ
彼はいつも良いモチベーションを持っている
ビレイヤーはコーヘイ。
マスタースタイルで問題なく登った。


次にユキちゃん。
少し前までなら「リードはコワイ~、フォローが良いから誰かロープ掛けて~」と叫んでいたはずだが、今日はいきなりリードで行くと言う。
成長してるね

コーヘイがたけくんのロープを掛けて、たけくんはフォローで。
中級では基本的にトップロープは張らないことにしている。
外岩でのリード技術が未熟な人や怖くて嫌な人は、自分のロープを差しだしてロープを掛けてもらいフォローで練習する。
トップロープと違って終了点にロープを残すことになるので、練習のチャンスは1回きりだ。
トップアウト出来ても出来なくても、自分のトライが終わったらロープを引き抜く。
他の人がトライ出来なくなるためである。

バランシーなルートなのでたけくんは困るかな~?と思ったが、思い切って動けてあっさり完登した


2本目は「春雷」5.9。
やはりタクミがヌンチャク掛け。やはりビレイヤーはコーヘイだ。この2人のコンビも大分サマになって来た。

その次にユキちゃんがリード。こちらも難なく完登



並行してタクミに「ノーリー」10b/cをやってごらん、とアドバイス。
半年前、このルートをフォローでトライしたタクミはものすご~く苦労して、1時間位の格闘の末どうにかトップアウトしたのだった。
その記憶が残っているため、本人もやりたい半面不安そう。
「今の君なら大丈夫」と言うと、「はいっ」といつものモチベーションたっぷりの表情に戻った。
こちらはコーヘイがヌンチャク掛け。



コーヘイが「ノーリー」のヌンチャク掛けに出払ってしまったため、たけくんの「春雷」トライのためのロープを掛けに行く人がいなくなってしまった。
時間はすでにお昼近くなっているので待っているヒマはない。
で、ユキちゃんに「たけくんのロープ、掛けに行ってくれる?」と聞いてみた。
まだ「他の人のために働く」という概念がないと思っていたので、同じルートを人のために2回も登ることになるロープ掛けは「え~っやだ~」と言うかな?と思いきや、意外にも「良いよ~」とのこと。
成長してるね

ユキちゃんに掛けてもらったロープでたけくんはとても良く頑張り、こちらも見事1回でクリアした
そしてタクミも、コーヘイに掛けてもらったヌンチャクで見事レッドポイントした

  ↑レストポイントのタクミ。小さいけど見えるかな~?

ユキちゃんがフォローで「ノーリー」を1回トライし、下の岩場でのクライミング終了。

お気に入りの岩の上でお昼ごはんを食べ、恒例のおやつ交換会をし、午後は上の岩場。

先ずは「クラックジョイ」5.9にトライしようとすると、お二人ほど先客あり。
このころから雲が厚くなり、ポツッ、ポツッと雨粒が・・・
これは急がねば、とコーヘイに「涅槃の風」10bを登ってもらい、「クラックジョイ」の順番待ちの間、こちらにトライ。

コーヘイは登ったことのあるルートばかりで可哀想なので、ユキちゃんにロープを借りて好きなルートにトライして良いよ、と言うと「始祖鳥」11a/bにマスタースタイルでのオンサイトトライをする、と言う。
コーヘイが登り始めたころから雨は本降りに。。。
雨の中頑張って登り続け、見事オンサイト

「涅槃の風」は雨の中タクミがヌンチャクを回収し、午後2時に撤収した。

またしても天気にやられたが、中学生2人のクライミング技術の向上と、ユキちゃんの成長、そしてたけくんの頑張りを見ることが出来て良かったよ

<レッスン日誌>レベルアップレッスン@pump2

2012-11-26 19:28:39 | クライミングレッスン報告
11月9日(金)
メンバー:ユキちゃん(小4)、しいちゃん(小6)、コーヘイ(中1)、ユイちゃん(高1)

キッズコンペを経てのレッスン。
今日のレッスンのメンバーは全員がキッズコンペを体験している。
ユキちゃんとしいちゃんはリードで出場しているし、コーヘイとユイちゃんは裏方の手伝い。
しっかりとした取り組みをしたコンペの出場経験の後、子どもたちはグーンと強くなることがある。
それはあくまでコンペに向けて努力を重ね、辛くても自分と向き合った場合に限るのであるが。。。

今回、ユキちゃんとしいちゃんはコンペでの目標や普段の練習で頑張ることを各自で決め、レッスン時には私に叱られながらもそれらに正面から向き合い、取り組んできた。
コンペの結果自体はそれぞれ悔しい思いもあったと思うが、小学生の間のコンペ参加は結果よりも教育的な意味合いが最優先されるべき。なので、その経験が後日の成長に活かされるか否かがコンペ参加の成否となるのだと私は考えている。

今日のレッスンで、しいちゃんはタワーの11a白□を、ユキちゃんは同じくタワーの11cピンク■をレッドポイントした
二人とも以前の初トライでは「コワイ~」「遠い~」と泣きが入っていたルートである。
ユキちゃんにとってはレッドポイントグレードの更新となった
また一方のしいちゃんは、この春にはタワーの10aもひどく苦労していたのだから、その進歩ぶりには目を見張る

大会参加に向けて苦手なことを克服すべく努力を重ね、嫌いなことにも前向きに取り組むように練習してきた結果、メンタルが強化されたことによって得たご褒美だね

ユイちゃんは今月下旬に行われる関東クライミング競技会を念頭に置いて頑張り始めている
少し前までは何となくいろいろなことに意識が分散され、クライミングに身が入っていない感があったが、
先日の「高校新人大会」で悔しい思いをし、翌日のキッズコンペにも触発されて良い意味で「必死さ」が出て来たようだ。自主練習の日程をしっかり確保し、傍目から見ていても前向きに取り組んでいる様子が伺えるようになった
持久力とパワーアップのためにツナミの11d黄色?に取り組み出しているが、大分良い感じでトップアウトできるようになってきた
今日は1テン。もう少しでレッドポイント出来そうだね

コーヘイはタワーの13a、赤■にトライ中。
中学生になって筋力が上がり、保持力もついてきたコーヘイ。
今はパワーアップの時期としているので、短くてボルダーチックなこの課題に取り組んでいる。
トレーニングよりもこのほうが本人が楽しんでパワーアップができそうだからである。
ちょ~っとぐーたらな性格なので、もう少し精神的に成長してメンタルが安定し、トレーニングの重要性とブレない練習のモチベーションを獲得するまで、レッドポイントを中心に強化したほうが良いかな~?
今日は1トライ目で1テンまでこぎつけたが、2回目はボロボロだった





<コンペに行こう>キッズコンペ 神奈川カップ 3

2012-11-23 21:27:49 | コンペティション参加報告
最後にちょっと裏話。
クライミングが上達したり高校生になったりして、キッズコンペの対象から外れてしまったFCCの生徒達。
私はセッターとしてこの大会に協力させてもらっているのだが、昨年から彼らにルートセットの試登要因やセッター補助、フラッシングのデモンストレーターなどの手伝いに来てもらっている。

今年も前日からコーヘイとユイちゃんが手伝いに来てくれた

前日での作業は夜遅くまでのルートセット作業に伴うナイトクライミングやルートに対しての意見を述べてみるなど(意見が採用されることもある)、多分彼らにとってはちょっとワクワクする楽しい思いもあったと思う
大会当日も、ユイちゃんはデモンストレーションやビレイを、コーヘイには決勝ルートのセット(弱小コンペなので、ホールドの付け替えはせずにテープで囲う作業だが)作業を手伝ったりと、危険のない範囲でセッター作業も経験してもらった。

大会はいろいろな人たちの努力と協力で支えられていることを身体で理解することは必要だと思うのだ。
そういう理解の積み重ねが今度は彼らが選手として大会に出る立場になった場合に、心のありかたとして活きて来るのではないか。柔らかな、そして謙虚な心の状態は、選手としての彼らのパフォーマンスにも決して悪い影響は与えまい。

さらには少しずつ経験を積み、壁の中でのロープワークや大会運営にも慣れて、近い将来彼らが運営の中心になって行ってくれると嬉しい
FCCメンバーの他にも、今回はY氏の教え子や神奈川の強化選手の高校生、大学生達も大勢手伝いに来てくれた
みんな、お疲れ様でしたそしてありがとう

  ↑夜の作業の様子

<コンペに行こう>キッズコンペ 神奈川カップ 2

2012-11-21 12:21:14 | コンペティション参加報告
さて、大会当日。
朝からとても良く晴れて、8時am頃には参加者が続々と到着。
…が、資金のない当大会は、神奈川岳連主催の他の催しと場を譲り合って行わねばならず、クライミング会場はまだ出発前のハイキングイベントの開会式が行われている…という状況で受付の準備も出来ない

9時を過ぎてやっと受付開始。
スタートから少し押せ押せムードとなった。

今回の参加者はトップロープ17人、リード12人の計29人。
毎年参加者のレベルが上がり、リードのほうは11dのオンサイト、トップロープのほうでも11cを登る子が参加するようになってきた。
勢い、予選のルートから設定グレードが跳ね上がる
第1回と2回の時は、予選ルートのグレードは1本目が5.9~10aくらい、2本目が10cくらいだったのに比して、今回は1本目10d、2本目が11a。
リードの決勝に至っては11d。これも以前は11bくらいで設定していたものだった。

さて、競技開始。
予選はフラッシングで2本。

リードで出場する子はみんなレベルが高く、2本とも完登する子がほとんどだ
本当はリードのこの時には壁の角度を少し前傾させてグレードを上げたかったのだが、角度調整の機器が故障していたことがルートセット作業中に発覚し、それもかなわなかった。。。

さすがにトップロープでの出場者は苦戦が続出
そうだよね。。。「一度でもクライミングを経験したことのある子は出られますよ~」などとうたっておきながら、いきなり10dだもの。。。びっくりしちゃうよな~
それでもみんな健気に全力投球し、登れずに悔し涙を流したりしていた



毎回、終了点に「パフパフ」と鳴るラッパを設置し、完登者はそれを鳴らしてもらっている。
今年は鳴らせる子が激減することを考慮して、少し高度を下げたところに設置してみたのだがみんなそれどころではない様子だったね。。。

トップロープはこの予選2本で競技は終了。
リードはさらに決勝がある。

このコンペでは、なるべく多くの子に決勝を経験してもらうことにしている。
アイソレーションやオブザベーション、そしてコールゾーンでの待機といったコンペならではの手順に触れてもらい、その緊張感を体験してもらうのが狙いであるためだ。
今回、参加者12人中予選完登者は10人。
本来ならば完登者のみ予選通過となるところなのだが、12人と参加者が少ないことも幸いして、全員が決勝を体験することとなった

決勝ではみんな力を出し尽くす良いクライミングを見せてくれた。
手伝いに来てくれた大学生などは、感激でウルウルしてしまったほどだ
子どもの集中力ってスゴイな~


競技が終了し、表彰式の準備が出来るまで恒例のリベンジタイム
7~8人の元気な子どもたちが我先にと並ぶ。
でも、3~4人までで時間切れとなってしまった 残念

表彰式は6位、6人までの子どもたちが表彰された。


今回、参加者レベルが上がったことで、本当の初心者の子どもたちには厳しいコンペとなってしまった。
思ったよりも高度が稼げず、悔しい思いをした子も多かった様子
でも、悔しい想いは人を成長させる。
コンペを経て、子どもたちの取り組みの姿勢や登りに変化が出て来ているのだ
厳しい環境は、処方の仕方で良薬となりえるんだね

<6位までのリザルト>
●リード      優勝、滝川 2位、土肥 3位、田中(涼)・田尻・神吉(直)・美谷島
●トップロープ   優勝、阿部 2位、菊池 3位、林 4位、大城 5位、間中 6位、高田