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映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

面白いだけに… 映画『夕陽のギャングたち』

2025-04-26 | 映画感想

夕陽のギャングたち(1971年製作の映画)GIU LA TESTA
製作国:イタリア
上映時間:156分
監督 セルジオ・レオーネ
脚本 セルジオ・レオーネ ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ セルジオ・ドナティ
出演者 ロッド・スタイガー ジェームズ・コバーン



「俺に革命とはなんぞやの講釈は垂れるなよ!
革命がどうやって始まるか知ってる!!
本を読んでるヤツが読めないやつを唆す!
貧乏人は感激して世直しの時が来たと浮かれ立つ!
本を読んでる奴らが読めない奴らのところに行っておだてあげ、
貧乏人は世の中が変わると浮かれ立つ!
その結果、本を読んでる奴らはピカピカに磨き上げられたテーブルを囲んでご馳走を囲んで優雅におしゃべり!
貧乏にはどうだ!
みんな死ぬ!
それが革命よ!
今度のことだってどうせ同じことが繰り返されるんだ!
だからいいか?革命の話はするな!」

**



キャラも面白いし
話もわかりやすい。
映像の力もすげーし
ふざけ感?抜け感もいい。

↑上記のセリフにあるような被支配階級の叫びみたいなものも感じるし。

**

ただ、女性が2人しか出てこない。
男だけの映画があってもいい。
女だけの映画が同じ数あるならね。
しかも2人出てくるその女性がキスされるかレ⚫︎プされるか。。

男の勲章か性欲の対象としてだけの存在。

**

ラストの大虐殺シーンとかなかなか凄いし、、
暴走した権力を批判してると思うんだけど、、
女性を踏み躙った男映画なんよね。。



韓国の近現代史 映画『ソウルの春』

2025-04-26 | 映画感想

ソウルの春(2023年製作の映画)서울의 봄/12.12:THE DAY
上映日:2024年08月23日
製作国:韓国
上映時間:142分
監督 キム・ソン
脚本 ホン・ウォンチャン イ・ヨンジュン キム・ソンス
出演者 ファン・ジョンミン チョン・ウソン


これも年末あたりに観たはずだけど
書くの放置してたら内容忘れてさらに放置案件。。
とりあえず書かないとこうなるよね。。

そして、あまり覚えていない。。

***

ちょうど昨年末、韓国で大統領が非常戒厳令を出してしまって
大変なことになったわけです。

が、それほど大変なことにならなかったのは
韓国市民、政治家、警察、軍が韓国の歴史を知っていて反省していて

「これはダメだよね」

っていうのを多くの人が持っていたから止めることができた。

***

韓国はこういう近代の歴史映画が多く作られているし
その内容も全然ぬるくないし
日和ってないし
しかもヒットもさせてきた。

いいなぁ!!

オススメ! 映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

2025-04-26 | 映画感想

ぼくが生きてる、ふたつの世界(2024年製作の映画)
上映日:2024年09月20日
製作国:日本
上映時間:105分
監督 呉美保
脚本 港岳彦
原作 五十嵐大
出演者 吉沢亮 忍足亜希子



だいぶ前に見てめちゃくちゃ良かったから
原作読んだり色々調べたりしてから書こうと思ってたら
そのまま忘れてました。
でも、ほんといい映画!おすすめ!

***

実話ならでは、本人ならではの残酷さがスパイスになってますね。

創作だったら、
祖父が元ヤクザとか、祖母が宗教にハマるとか、
本人が怪しい編集部に入るとか、
「やりすぎ!」ってなるもんね。

実話の強さ!

***

忍足亜希子演じる母が可哀想じゃないのがとても良かったです。
辛そうに泣いたり苦しんだり寂しそうな顔を息子にぶつけたりしない。

なかなか新しい「母さん」像だと思いました。
抑えた演技をしているからこそ
観る人それぞれの「母親」を重ねやすいんですよね。

あんまりにも寂しそうな顔ばっかりされていると
罪悪感から反発心も湧いてきちゃうんだけど
完全に1人の(母という役割〝も〟ある)女性としてそこにいるだけだから
「うおおおお!ですよねっ!」とやられてしまう。

だからこそ息子も自立できるんよね。

巨匠の30分 映画『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』

2025-04-26 | 映画感想

ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ(2023年製作の映画) Extraña Forma de Vida/Strange Way of Life
上映日:2024年07月12日
製作国:スペイン フランス
上映時間:31分
監督 ペドロ・アルモドバル
脚本 ペドロ・アルモドバル
出演者 イーサン・ホーク  ペドロ・パスカル


『ペイン・アンド・グローリー』のペドロ・アルモドバル脚本・監督。
31分の短編。

西部劇らしく馬がいて馬に乗り保安官がいて牧場主いて荒野がある。

ただ主人公の男2人がヒリヒリと愛し合っている、というのが今までの西部劇と違うとこ。

そこにミステリーとサスペンスも加わって、さあどうなると思っていたら…。

**

良いシーンも多いし、
まぁ意義もわかるんだけど。

巨匠に30分撮らせたらそりゃこれくらい良い映画になるよね。。

30分で終わるから見やすいし
30分では描けてないことも多いからそれが奥行のように感じられるし。

〝巨匠の30分〟っていうシリーズがあっても良いとは思うけどさ。

って感じ。

隣のカップルがキスしてた 映画『ウィキッド ふたりの魔女』

2025-04-26 | 映画感想

ウィキッド ふたりの魔女(2024年製作の映画) Wicked
上映日:2025年03月07日
製作国:アメリカ
上映時間:160分
監督 ジョン・M・チュウ
脚本 ウィニー・ホルツマン
原作 グレゴリー・マグワイア
出演者 シンシア・エリヴォ アリアナ・グランデ


僕が映画館で観る映画ってあんまり隣に人座ってこないんですよ。
空いてるから(やめろ)。

隣にがっつり男女カップルが座っている状態で鑑賞。
ちなみに最後列。

びっくりしたのはこのカップルが途中でキスし始めたんですよ。
男の方が(おそらく頬に)チュッみたいな。
で女の方がやだーやめて♪みたいな。

あぁ大ヒット映画を観にきてるなぁと実感しました。

で、この男の方がそんなに興味がなかったっぽいんだけど
3回くらい身を乗り出してスクリーンに見入ったりして
「うんうん、わかるよ!佳境だよね!」と心の中で思っていました。

で、ラストで「つづく」という文字が出ると
「え……つづく……?」と男は衝撃を受けていました。

隣の女に「え、つづく?おわんないの?」と聞いていました。

確かに宣伝では前後編の2部作ってあんま言ってないもんね。

「俺は最初に〝PART1〟って字が出た時から怪しいと思ってた!」と謎のスタンスを取り出した男。

大ヒット映画を観ました!

***

めっちゃくちゃ良かったです!面白かった!興奮した!泣いた!
「Defying Gravity」ってこんな歌詞だったのか!
私を引き摺り下ろそうとする重力に逆らって高く飛ぶわ!と。

***

ガリンダ(のちのグリンダ)はものすごく嫌な人ですよね。。

これをチャーミングに演じられたアリアナ・グランデが高次元の演技をしていたのでその素晴らしさに驚愕したわけですが。

自分より哀れな者には手を差し伸べるけど
ソイツが自分よりも恵まれた状況に行くのは許せないし
手を差し伸べることで自分の身が危ぶまれるなら当然手を差し伸べるのはやめる。。

超イヤな奴だけど、これってよくいるリベラルだよね。。
僕がこれじゃないとは全然言えない。。
完全なる現代社会じゃん。。

名作!
後編も楽しみ!



映画『夜の大捜査線』(1967)都会黒人刑事と田舎の白人署長の対立と友情

2025-04-26 | 映画感想

夜の大捜査線(1967年製作の映画)IN THE HEAT OF THE NIGHT
上映日:1967年10月25日
製作国:アメリカ上映時間:109分ジャンル:ドラマ3.7
監督  ノーマン・ジュイソン
脚本 スターリング・シリファント
出演者 ロッド・スタイガー シドニー・ポワチエ



知的で都会派の黒人刑事と田舎者の白人署長の対立と友情

面白かったぁ。
知的で都会派の黒人刑事と
田舎者の白人署長の対立と友情。
『ブラック アンド ブルー』(2019)でも描かれていたものですね。

黒人の警察官は
白人警察官からは下に見られるし、
黒人の市民からも「白人の犬」と罵られる。



***

この映画ではシドニー・ポワチエ演じる都会の黒人刑事の方があっっきらかに能力が高いのが痛快。

それに対してロッド・スタイガー演じる署長もバカではないので、彼の能力に頼るのベストだと判断できるし、
彼と共に行動する中で親愛の情が生まれているのがわかる。

ただ、古く愚かな部下たちの手前、
そんなに彼を認めるわけにもいかず、
自分の中に埋め込まれてしまっている人種差別心もそんなに簡単に消えるわけでもなく
結構映画のラスト近くまで彼に心を開かない。




一回、署長の自宅で2人で酒を飲みながらゆっくりとお互いのことを打ち明けるシーンがあって
ピロートークか?と思うような甘い雰囲気も漂うんだけど、

署長「ここへは誰も尋ねてこない。誰も」
バージル(黒人刑事)「……」
署長「結婚は?」
バージル「してない」
署長「する気は?」
バージル「あった」
署長「寂しくないか?」
バージル「あんたほどではない」
署長「図に乗るなよ!黒いの!哀れみはいらん」

と署長はブチギレてしまう。
せっかく結ばれようとしていた2人の心は離れてしまう。。
バージルの「あんたほどではない」もどうかとは思うけど、、
署長も「確かにな」くらい言い返してあげれば良かったのに。。
署長としては相当に黒人刑事に心を開いて寄り添った「努力」をしたんよね。
でも都会で生きてるバージルにとっては言うほど特別なことでもないわけよ。
「白人の署長が俺と仲良く喋ってくれてる!」とは特に思っていない。
だからこそ親しみの気持ちも込めて「あんたほどではない」と軽口をきいたのに
署長は「黒人に憐れまれた!」とブチギレてしまった。
署長に埋め込まれた差別心の根深いこと根深いこと。



***

稀代のスター シドニー・ポワチエ



それまで黒人の俳優には、台詞や役名はもちろん、国籍さえも与えられぬような曖昧なキャラクターばかりで労働者の端役や悪役しかなかった。
しかし、1950年代から1960年代にかけての公民権運動を受けて待遇が改善されて黒人俳優たちも活躍し始めた。

『スパルタカス』などのウディ・ストロードは肉体派のアクション俳優のような立ち位置で黒人俳優の多くはこのエリアで活躍をしていたけど
スーツをビシッと着て落ち着いた口調で知的なシドニー・ポワチエはこの時代の人気俳優のひとり。

***

良き黒人像

丁寧に話し、穏やかで知的でスーツの似合う都会的な雰囲気。
シドニー・ポワチエは白人に好まれる黒人だと揶揄もされていた、と。

彼が戦略として「黒人はアクションだけじゃないぞ」というメッセージも込めて、自分の知的イメージをまとわせたところはあると思うし、
それはむしろ黒人のイメージを広げるという意味でも意義深かったと思う。

悪いのは、「そうそう!こういう黒人だったら認めてやるよ!」と思った人がいるならそう考えたソイツが悪いわな。

***

でも、僕が子供の頃に観ていた映画でも黒人の俳優は
コメディアンかアクションか、
奴隷制の時代の非常に苦しい状況に置かれた人々を演じることが多かったと思う。

またはマジカル・ニグロと呼ばれる白人の主人公を助けるだけに使われて消えていく存在。

**

我々世代の黒人スターのトップと言えばデンゼル・ワシントン。

彼はさまざまな役を演じていて
白人女優とのロマンティックな映画もあったけど、
調べてみて驚いたこととしては
白人男性をターゲットにした映画で黒人俳優が白人女性とキスすると攻撃対象になってしまうからできなかった
というもの。

90年代の話。

***

現在では
黒人俳優がメインの(アクションでも歴史物でもない)ドラマ映画もとても多いし、
黒人女優単独主演映画も普通にあるし、その中で大ヒット物もある。

常にエンタメの方が時代の先を進んで道を作っている。

時代が気づいた時にはスルスルとその道を進めるようになっている。

だからこそ、
『夜の大捜査線』のような意義深いしとても普通に面白い映画はいつまでも語り継いでいきたいなぁと思います。

そして
そういったエンタメが作られる前には
例えば公民権運動などの社会運動が必ずあるんよね。



ホロコースト、ヌード、ゲイ…色々初めてのアメリカ映画 映画『質屋』(1964)傑作! ラストネタバレあり

2025-04-15 | ネタバレあり

質屋 The Pawnbroker (1964)
製作国:アメリカ
上映時間:116分
監督  シドニー・ルメット
脚本  デヴィッド・フリードキン
出演者  ロッド・スタイガー ジェラルディン・フィッツジェラルド

目次

  1. 残念ながら〝今〟の映画
  2. 3つの初めて
  3. 原作小説『質屋』
  4. ●ホロコーストを生存者の視点から描いたアメリカ合衆国で完全に制作された最初の作品
  5. ●ヘイズコード下で初めてヌードシーンが承認されたアメリカ映画
  6. ●ゲイのキャラクターが登場した初めてのアメリカ映画(演じたのはブロック・ピーターズ)
  7. 金しか信用できない難しい主人公像
  8. ラストネタバレ含むメモは以下に!

残念ながら〝今〟の映画

数十何前にあったこんな酷い虐殺(ジェノサイド)があったんだねえ二度としてはいけないねえではなく、今まさに人間がやってしまっていて止めることもできてない虐殺のトラウマを描いた映画。
虐殺はホロコースト以降も世界では起こってしまったけど、
まさに今!全世界がライブで見知っている虐殺が現在も続いている。
この映画は過去の映画ではなく、今の映画だし、
そのトラウマを抱えた人の苦悩を描いている点では〝未来〟の映画とも言える。
この主人公ソルのような人がたくさん生まれてしまっている。
この映画がまた作られてしまうし、ちゃんと作られなきゃいけない。歴史から消してはいけない。


3つの初めて

●ホロコーストを生存者の視点から描いたアメリカ合衆国で完全に制作された最初の作品
●ゲイのキャラクターが登場した初めてのアメリカ映画(演じたのはブロック・ピーターズ)
●ヘイズコード下で初めてヌードシーンが承認されたアメリカ映画
とのこと。

原作小説『質屋』

『質屋』(1961年)は、ユダヤ系アメリカ人の作家エドワード・ルイス・ウォラントが36歳の時に書いた同名小説。動脈瘤のため翌年死亡。
1960年の『人間の季節』は全米ユダヤ人図書賞を受賞している。

***

●ホロコーストを生存者の視点から描いたアメリカ合衆国で完全に制作された最初の作品

フランスのドキュメンタリー映画『夜と霧』(1956)などはあったが、ホロコーストのサバイバーでアメリカに移住したユダヤ人が当時を回顧するアメリカ映画は初とのこと。
この映画の冒頭では、
親戚が「ヨーロッパ旅行に行きましょうよ!」と誘うが
主人公のソルはヨーロッパに足を踏み入れることさえできない程のトラウマを抱えていることがわかる。
ホロコーストの情景はフラッシュバック形式で描かれている。
ソルの営む質屋に指輪を預けにきた女性の手の仕草を見て、絶滅収容所の前でユダヤ人たちが両手を頭の上に上げさせられて、ナチスの兵士たちに指輪が奪われるシーンがフラッシュバックする。
このようにフラッシュバックを重ねることで、セリフではなく主人公ソルにどんな過去があったのかがわかってくる。

***

●ヘイズコード下で初めてヌードシーンが承認されたアメリカ映画

ヘイズ・コード(アメリカ合衆国の映画界で導入されていた自主規制条項)が敷かれていた1930年から1968年までの期間で、
初めてヌードシーンが承認された映画。
ヘイズコードが敷かれる前はバンバンヌードシーンはあったんだけど、保守派の動きによってヘイズコードが敷かれ〝自主規制〟が行われた。
そもそも、2020年のドキュメンタリー映画『ヌードの映画史~黎明期から現代へ~』を見て、

この映画(『質屋』)に出てくるヌードシーン(黒人女優の胸)が性的搾取ではなく明らかに映画の文脈として必要だと決定できた理由が、
「主人公がホロコーストの生き残りであり、ナチス兵士らに強姦された妻を思い出してしまうので、女性の裸を見ることができない」という状況を描いているため、だとしている。
主人公ソルは性産業自体も憎んでいて、自分の生活費が性産業から生まれた金だと知って大きなショックを受けるシーンもあった。

****

●ゲイのキャラクターが登場した初めてのアメリカ映画(演じたのはブロック・ピーターズ)

〝バラエティ誌はブロック・ピーターズをアメリカ映画で同性愛者のキャラクターを演じた最初の俳優だとみなした。〟

Wikipwdiaには上記のように書かれていたけど、1964年以前にゲイキャラクターは出てなかった?ほんと?
しかもこの映画では特に自分で「俺はゲイだ」とも言ってないし、彼の持ち物の男性上半身ヌード雑誌が映るくらいしか彼がゲイであるという描写は見られない。

***

金しか信用できない難しい主人公像

映画のあらすじは以下の通り。

"ソル・ナザーマンは45歳の大柄な男で、
戦前はの教授を務めていた。
彼はトラウマに対処するため、意図的に感情を封じ込めてきた。
その結果、周囲の人々、特に店に来る絶望的な人々を「クズ」と見なすようになった。
戦時中の経験、妻が売春を強いられ、息子が強制収容所へ送られる途中の貨車の排泄物に溺死したことによる心身のトラウマから、ナザーマンは悪夢と頭痛に悩まされている。"

その結果、ソルは
「黒人も白人も黄色人種も皆クズだ
神など信じない 
芸術も科学も新聞も政治も哲学もだ
信じられるのはカネだ
カネで買えるものは快適さ、贅沢、痛みからの解放。人生だ
カネが全てだ」
という状況になってしまった。
この映画の複雑で面白い点は、主人公はけして良きユダヤ人ではないんですよね。
金に執着していて人をクズだと思っていて実際周りの人に対して結構酷いことをする。。
これが主人公ってなかなか難しいんだけど、、
妻と息子の酷い最期がフラッシュバックによって描かれることによって、観客は主人公に寄り添うようになる。
これは主演のロッド・スタイガーの演技力が大変貢献している。
ベルリン映画祭で男優賞を受賞。映画自体もアメリカ国立フィルム登録簿に登録されている。
名作だと思いますので、ぜひ。



ラストネタバレ含むメモは以下に!




主人公ソル
「黒人も白人も黄色人種も皆クズだ
神など信じない 
芸術も科学も新聞も政治も哲学もだ
信じられるのはカネだ
カネで買えるものは快適さ、贅沢、痛みからの解放
人生だ
カネが全てだ」

*****

知的な黒人男性。彼も大学教授だった?今は仕事を追われて?知的な会話をする相手はソルしかいなくて彼と会話するために質屋に来ているよう。ソルは彼にも冷たい。

*****

亡き親友の妻
「父が亡くなった どうすれば?」
「埋葬するしかないだろ」
「血が通ってないの?」
「店をやらなきゃ埋葬代も出せない」
「父が死んだのよ」
「それを望んでいただろ」
と電話を切る

*****

質屋の店員のヘズスの恋人の黒人女性
「私上手なの。本当よ。すごい経験をさせてあげる。
あと20ドルちょうだい。いい思いをさせてあげる」
女性、ヌードになる。
ソルはナチスの性の捌け口にされた妻のことを思い出して、彼女に服を着せて20ドルを渡す。

*****

ロドリゲス(貧民街のボス。ソルの質屋のスポンサー。質屋を資金洗浄に使ってる。ゲイ)
「あんなたの金がどこから出てるか知ってるか
テッシーに渡している生活費やロングアイランドの立派な家のローンもだ
全部知ってる
あんたの金の出所は俺だ
売春宿の収入は多い
ボウリング用、駐車場、貸家からもだ
知らなかったとは言わせない」
「知らなかった(ほんとに知らなかった?)」
「こんなにも愚かだったとは。あんたの金は売春宿から来てる。知らないわけがないだろ。目を瞑っているだけだ。それじゃクズ同然だ。価値のない人間だ。あんたは俺の隠れ蓑だ。2度と電話を切るな」

*****

ソル
「ここ数日なぜか突然怖くなったんだ
昔の記憶が突然よみがえって、もう忘れたと思っていた葬り去った思い出が突然雪崩れ込んできたんだ
聞くまいとしていた言葉が聞こえてきた
今はその言葉が頭にあふれてる
今日は記念日だ
私は死ななかった
愛するものがすべて、すべて奪われた
でも私は死ななかった
何もできなかった何ひとつ
何ひとつできることはなかった」

***

地下鉄に乗っても、絶滅収容所に連れて行かれる列車の中での出来事がフラッシュバックする。
息子を背負っていたソル。
ソルは眠ってしまい、息子のデイヴィッドを落としてしまう。
鮨詰めの車内の床は排泄物で埋まっていた。息子は排泄物の中で窒息して死んでしまった。

***

子供用の靴を質に入れにきた男。「10ドルはする」
50ドルを払うソル。
以降、客に大金を渡すようになるソル。
ヘズス「師匠、最近おかしいですよ」
ソル「お前はクズだ」

***

蝶の標本を預けにきた黒人男性。
その蝶を見て、妻子ともに幸せだった頃の風景を思い出してしまうソル。そこにナチスが3人を連行しにきた。
質屋に強盗が来た。
クズと言われて腹を立てた?ヘズスが悪友たちに質屋を強盗するように焚き付けていた。
「死にたいのか?カネより命が大事だろ 金庫の前からどけ」
銃声。
ソルを守ったヘズスが撃たれてしまう。
ソルはずっと目を瞑っている。
強盗団たちは逃げた。
ヘズスはなんとか表に出て警察に発見される。
野次馬。
目を開けるソル。
ヘズスがいない。

ソルがヘズスに駆け寄る。
ヘズス「俺は撃つなと言ったんです あなたを傷つけるなと あなたを傷つけちゃいけないんだ!」
ヘズス死亡。
関わってきた人の顔を次々と思い出しながら伝票差しで手のひらを串刺しにする。
そして、表に出て、嗚咽しながら画面奥の方へ去っていく。
(これゲリラ撮影かな?モブのリアクションが自然。)

終わり

いやいや、するよ。 映画『悪は存在しない』ラストネタバレあり

2025-04-11 | ネタバレあり

悪は存在しない
Evil Does Not Exist
上映日:2024年04月26日
製作国:日本
監督 濱口竜介
脚本 濱口竜介
出演者 大美賀均  西川玲  小坂竜士   渋谷采郁   菊池葉月


目次

  1. 四コマ映画『悪は存在しない』
  2. 上と下
  3. 観光地で生きるとは
  4. 現地民と開拓者
  5. 上映から半年経ってやっと観ました。
  6. 妻(娘の母)の不在のバランス
  7. ラストネタバレは以下に!


四コマ映画『悪は存在しない』





上と下

この地球では、男女や貧富の格差で出来てしまった上下関係から起きる問題がずっとあり、
その中での犯罪や犯罪に近いものが次々と暴かれていき、その構造的問題にメスが入ろうとしているのが今の日本。

男女格差や貧富格差を社会問題だと思っていない人にとっては、「弱者が騒いでいる」「弱者の方が強者より強い」という思いがあるのでしょう。
「男であるだけで偉い俺・強者になれた偉い俺」から見ると、弱者が惨めな思いをするのは自然なことであり、弱いお前が悪いという考えなのでしょう。

この映画での上下は川の上流と下流という地理的なものでしたが、
社会構造での上下の隠喩だと捉えると「まさに今!」的。

しかもメンターおじいちゃんが「上には義務がある」ときっぱり言ってくれているわけだけど、、、
残念ながら「貴重な意見として持ち帰ります」と暖簾に腕押しな対応は、
去年あたりからよく見る政治家の会見(の方が酷いが…)のようで、この点でも「まさに今!」的。


観光地で生きるとは

僕は多感な10代をある観光地で暮らしました。
とにかく観光客ってのはウザいのです。
この映画にも
「都会から来る人はここにストレスを投げ捨てに来るんです」というセリフがある。
「せっかく来たんだから」と社会常識から外れたことを、しかも集団でできてしまう。
1年365日そんな非常識集団を横目に日常生活を送っている。


現地民と開拓者

この映画の主役は自分を「開拓三世」と言っていた。
開拓民は何世まで続けば現地民になれるのか、永遠になれないのか。

しかし開拓者にはそれなりの責任があるという社会通念はあると思う。それを果たしているかどうかは別として。
ただ、観光客にその土地を踏み荒らした責任を感じている人がどれほどいるのか。
その観光客を呼び込んで儲けようとしているのが、この映画での開拓者側の芸能事務所。


上映から半年経ってやっと観ました。

この映画の内容について全然知らずに観ました。
これだけの話題作ならイヤでも情報が入ってくるものだけど、全然入ってこなかった。
それが不思議だったけど観たらわかった。
なるほど、これは難しい。。。
どういう話かを表現するのが虚しくなるよね。。

思うがままに感想を書くしかない。。

**

必っっっっっっっっ死にバランスを取って生きてるんですよね。
主役の巧も〝自然側〟にも立てるけど自分も開拓民(開拓三世)として自然を壊していることを自覚している。
木を粉々にして薪にして燃やすことも
歩道を車で走ることも暴力的なものにも見えてくる。

コンサルも芸能事務所の社長もとてもクズに見えやすい。
「果たして彼らはクズだろうか」という問いに瞬時に「クズだろ!」と言いたいけれども、クズだろうか。

もしくは彼らがクズだったして、それが何なのか。

芸能事務所の社員の高橋と黛は、巧に吸い寄せられて〝自然側〟に立った風になってけるけど、そんなにすぐに立ち位置変えるヤツって信用できるかね。


妻(娘の母)の不在のバランス

巧の妻、花の母はいない。理由は語られないがどうやら長期的にいない。もしかしたらモルディブに旅行に行ってるのかも知れないくらいに理由はわからないけど、とにかくいない。

巧は妻(娘の母)の不在のバランスも必死にとろうとしてる感がある。
クズ芸能事務所の杜撰なグランピング計画も、自分だって開拓民であるという事実と明らかに水質が悪くなるなどの理由から、必死にバランスをとろうとしているように見えた。 


ラストネタバレは以下に!






終盤、巧は娘の花が失踪したときも黛の手の怪我の治療を優先させた。
「こんっっっっっの大事な時に怪我なんかしてんじゃねえよ!それでも大人かっ!」と怒鳴ったりせず、自宅まで車で連れて帰り丁寧に処置をする。
そこからやっと花を捜索。
子供と氷の張った池の組み合わせって映画ではやっちゃいけないよ。。。
「その展開だけはやめてください」と思っていた展開。。
とはいえどうやら池に落ちたわけではないが、どうやら花はどこかで心肺停止状態っぽくなっていた。
発見当初、花と鹿が向かい合っていた。
自然と人間との適切な緊張感を保った状態での温かな空気感が両者にはあった。
そこに高橋が「花ちゃんっっっっ」みたいな感じで駆け寄ろうとした瞬間、
巧は高橋を羽交締めにして背後から首を絞めて気絶させる。
(この行動について、主演の大美賀均さんは「花と鹿の間に起こること、花にとってきっと大切になるだろう時間を邪魔しないでほしいと考えていたのではと、今にしてみれば思います」と語っています)
しかしその緊張感(距離感)を花が破った(鹿に近づいた)途端、鹿は消え、花はすでに倒れて顔を青白く息はしていない様子。
巧は花を抱えて画面奥の方へ消える。
息を吹き返した高橋が起き上がり歩くもすぐにまた倒れる。

終わり

言葉にしようとすれば出来るし、
意味をつけようと思えばつけられる。
でも、それしちゃう?
意味をつけちゃったらこの美しい映画、この美しいラストが壊されてしまうよね。。
でも、自分が感じたことくらいは書こ。
美しい(?)バランスで保たれている人間と自然。
しかしバランスを壊すのは簡単。
なんかの補助金が出る出ないのことで簡単に壊される。

娘(人間)と鹿(自然)の美しい関係を見た。
それを壊そうとする人間(高橋)が現れた。
邪魔者を消してしまおう。

その利己的な暴力は〝人間的〟とも言えるけど、
同時にとても〝野生的〟とも言える。

どちらにせよ、社会的な存在である人間としてのバランスは壊れてしまった。
とはいえ、自然界からしたらどうでもいい事件。


映画『教皇選挙』ラストネタバレあり 本当の戦争をご存知で?

2025-04-06 | 映画イラスト

教皇選挙  Conclave
上映日:2025年03月20日
製作国:アメリカ イギリス
上映時間:120分
監督 エドワード・ベルガー
脚本 ピーター・ストローハン
出演者 レイフ・ファインズ スタンリー・トゥッチ




監督は2022年の方の『西部戦線異状なし』のエドワード・ベルガー。

『西部戦線異状なし』(2022)大好きなんですけど、思い返してみると映像の美しさ、楽しさもかなり好評に寄与していたと思います。
ネズミの大移動とか戦車を下から見るとか。

あと美術でオスカー獲ってて、メイクでも候補に上がってた。
それくらいに〝見た目〟にも力を注ぎきる監督。

***

てことで『教皇選挙』の美術と衣装素晴らしい。


枢機卿たちの衣装カッコよかったですねぇ。
そしてなぜかたまに雨が降ってて
「いちいち中庭歩かなくても内廊下で移動できるんじゃね?」っていうシーンでもみんな外歩いて傘さしている。
傘のシーン素晴らしかった。
ほぼ全員顔が見えなくなるんですよね。
何となく虫っぽく見えた。カラフルな虫の集団。




亡くなった教皇の部屋のドアさえ良かった。
呪いを封じ込めるみたいな赤い紐とか赤い封蝋とか。
ほんとにあんなことするかどうか謎だけど、かっこいいことに間違いはない。

あとドアの写真を改めて見てみて気づいたけど、手前の廊下の壁のパースが現実より強いですね。
実際に手前が広くて奥が狭い廊下にしてあるんですかね。それにより赤いドアにより視線が集まる。



***


話は地味っ!

教皇が亡くなって次誰がなる〜?って話だけなんだもん。
正直カトリック教会の教皇が誰になろうとどうせそんなに関係ないんだもん。

しかし、それをネチネチとサスペンスに仕立ててくれる!
おじいちゃんたちの攻防が面白くなってくる。

そして、ラスト!!!

ネタバレは下の方に。

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ずっとキレてるシスター・アグネス


この映画に映ってるのはほとんど男。
壮年の男性たち。
つまりフジテレビの会見と同じ。ホモソーシャル。
おじいちゃんがずっとずらっと並んでいる。
そんな中で異彩を放つのがイザベラ・ロッセリーニ演じるずっとキレてるシスター・アグネス!

出演シーン合計時間は短いのに第97回アカデミー助演女優賞候補に!
そりゃそう。怖いし面白いもん。
ノリノリでコピー機操るシーンとか面白かった。


ネタバレ避けて書くのがめんどくさい!



ラストネタバレは以下に!







次の教皇の候補に上がってる枢機卿たちの中には「リベラル派」、「穏健保守派」、「保守派にして伝統主義者」がいるけれども、
いうても全員壮年男性。おじいちゃん集団。ホモソ。
リベラルか!?保守か!?じゃねえ。どっちも大して変わんねぇ。

八手先まで読める前教皇は、
メキシコのベニテス枢機卿の〝出生時に割り当てられた性別〟が女性であることを知っていた。
それに対して「女性器を切除すればOKだよ」と言っていた、と。

※あ、ちなみにこの映画全部フィクションですよ。

現状からすると前教皇のこの考え方は確かに進歩的ではあると思う。
しかし、〝法的な性別変更のために生殖能力の喪失や性器の外観変更が求められること〟は特にヨーロッパでは強烈な人権侵害だとされている。

ベニテス枢機卿もスイスへ手術に行ったけど、
「え、やっぱ体を切除しろっておかしくない?」と思ってノー手術で帰ってきた。
体はそのままにメキシコで枢機卿として活動していた。
(何の問題もなくやれてたわけよね)

教皇選挙の終盤。
ベニテス枢機卿の「本当の戦争をご存知で?」の演説に心打たれた枢機卿集団たちはコロっと心変わりして、ベニテス枢機卿に投票。ベニテス枢機卿が次の教皇に!

ベニテス枢機卿がどれほど教皇になりたがっていたかは謎ですね。
終盤まではローレンス推しだったわけだし。
ただ、自分が教皇になることで大きな役目を担えると思ったのでしょう。

で、あとシスター・アグネスがどこまで知っていたかですね。
魔力を使って知っていた可能性さえある。

で、教皇が決まった後に、
確かトランブレが「ベニテスって性別適合手術受けたとか受けないとか…」とローレンスに言うと「マジか!」ってことで
人払いをしてからローレンスはベニテスに問う。

はい、手術するつもりでスイス行きましたよ。
でも手術しませんでしたよ。と。

嘘だと言って…。もう戻れないローレンス。
だってすでにメキシコで枢機卿やってたんだもん、〝出生時に割り当てられた性別〟が女性だった人が!

ここで「取り消しー!」ってやったら世界から大批判を浴びてしまう。
外からは新教皇を迎える市民たちの大声援!

ここで中庭に亀が。
ローレンスの足元に亀がやってくる。
その亀を池に戻してあげるローレンス。

建物の中に入って窓の外をみると、炊飯担当のシスターたちが「休憩いこー!」的な雰囲気で楽しそうに会話をしている。
それは枢機卿おじいちゃん集団の前では決して見せない自然な若い女性の姿。

その様子を見て微笑むローレンス。