
夜の大捜査線(1967年製作の映画)IN THE HEAT OF THE NIGHT
上映日:1967年10月25日
製作国:アメリカ上映時間:109分ジャンル:ドラマ3.7
監督 ノーマン・ジュイソン
脚本 スターリング・シリファント
出演者 ロッド・スタイガー シドニー・ポワチエ
知的で都会派の黒人刑事と田舎者の白人署長の対立と友情
面白かったぁ。
知的で都会派の黒人刑事と
田舎者の白人署長の対立と友情。
田舎者の白人署長の対立と友情。
『ブラック アンド ブルー』(2019)でも描かれていたものですね。
黒人の警察官は
白人警察官からは下に見られるし、
黒人の市民からも「白人の犬」と罵られる。
白人警察官からは下に見られるし、
黒人の市民からも「白人の犬」と罵られる。

***
この映画ではシドニー・ポワチエ演じる都会の黒人刑事の方があっっきらかに能力が高いのが痛快。
それに対してロッド・スタイガー演じる署長もバカではないので、彼の能力に頼るのベストだと判断できるし、
彼と共に行動する中で親愛の情が生まれているのがわかる。
彼と共に行動する中で親愛の情が生まれているのがわかる。
ただ、古く愚かな部下たちの手前、
そんなに彼を認めるわけにもいかず、
自分の中に埋め込まれてしまっている人種差別心もそんなに簡単に消えるわけでもなく
結構映画のラスト近くまで彼に心を開かない。
そんなに彼を認めるわけにもいかず、
自分の中に埋め込まれてしまっている人種差別心もそんなに簡単に消えるわけでもなく
結構映画のラスト近くまで彼に心を開かない。

一回、署長の自宅で2人で酒を飲みながらゆっくりとお互いのことを打ち明けるシーンがあって
ピロートークか?と思うような甘い雰囲気も漂うんだけど、
ピロートークか?と思うような甘い雰囲気も漂うんだけど、
署長「ここへは誰も尋ねてこない。誰も」
バージル(黒人刑事)「……」
署長「結婚は?」
バージル「してない」
署長「する気は?」
バージル「あった」
署長「寂しくないか?」
バージル「あんたほどではない」
署長「図に乗るなよ!黒いの!哀れみはいらん」
バージル(黒人刑事)「……」
署長「結婚は?」
バージル「してない」
署長「する気は?」
バージル「あった」
署長「寂しくないか?」
バージル「あんたほどではない」
署長「図に乗るなよ!黒いの!哀れみはいらん」
と署長はブチギレてしまう。
せっかく結ばれようとしていた2人の心は離れてしまう。。
バージルの「あんたほどではない」もどうかとは思うけど、、
署長も「確かにな」くらい言い返してあげれば良かったのに。。
バージルの「あんたほどではない」もどうかとは思うけど、、
署長も「確かにな」くらい言い返してあげれば良かったのに。。
署長としては相当に黒人刑事に心を開いて寄り添った「努力」をしたんよね。
でも都会で生きてるバージルにとっては言うほど特別なことでもないわけよ。
「白人の署長が俺と仲良く喋ってくれてる!」とは特に思っていない。
でも都会で生きてるバージルにとっては言うほど特別なことでもないわけよ。
「白人の署長が俺と仲良く喋ってくれてる!」とは特に思っていない。
だからこそ親しみの気持ちも込めて「あんたほどではない」と軽口をきいたのに
署長は「黒人に憐れまれた!」とブチギレてしまった。
署長に埋め込まれた差別心の根深いこと根深いこと。
署長は「黒人に憐れまれた!」とブチギレてしまった。
署長に埋め込まれた差別心の根深いこと根深いこと。
***
稀代のスター シドニー・ポワチエ

それまで黒人の俳優には、台詞や役名はもちろん、国籍さえも与えられぬような曖昧なキャラクターばかりで労働者の端役や悪役しかなかった。
しかし、1950年代から1960年代にかけての公民権運動を受けて待遇が改善されて黒人俳優たちも活躍し始めた。
しかし、1950年代から1960年代にかけての公民権運動を受けて待遇が改善されて黒人俳優たちも活躍し始めた。
『スパルタカス』などのウディ・ストロードは肉体派のアクション俳優のような立ち位置で黒人俳優の多くはこのエリアで活躍をしていたけど
スーツをビシッと着て落ち着いた口調で知的なシドニー・ポワチエはこの時代の人気俳優のひとり。
スーツをビシッと着て落ち着いた口調で知的なシドニー・ポワチエはこの時代の人気俳優のひとり。
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良き黒人像
丁寧に話し、穏やかで知的でスーツの似合う都会的な雰囲気。
シドニー・ポワチエは白人に好まれる黒人だと揶揄もされていた、と。
シドニー・ポワチエは白人に好まれる黒人だと揶揄もされていた、と。
彼が戦略として「黒人はアクションだけじゃないぞ」というメッセージも込めて、自分の知的イメージをまとわせたところはあると思うし、
それはむしろ黒人のイメージを広げるという意味でも意義深かったと思う。
それはむしろ黒人のイメージを広げるという意味でも意義深かったと思う。
悪いのは、「そうそう!こういう黒人だったら認めてやるよ!」と思った人がいるならそう考えたソイツが悪いわな。
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でも、僕が子供の頃に観ていた映画でも黒人の俳優は
コメディアンかアクションか、
奴隷制の時代の非常に苦しい状況に置かれた人々を演じることが多かったと思う。
コメディアンかアクションか、
奴隷制の時代の非常に苦しい状況に置かれた人々を演じることが多かったと思う。
またはマジカル・ニグロと呼ばれる白人の主人公を助けるだけに使われて消えていく存在。
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我々世代の黒人スターのトップと言えばデンゼル・ワシントン。
彼はさまざまな役を演じていて
白人女優とのロマンティックな映画もあったけど、
調べてみて驚いたこととしては
白人男性をターゲットにした映画で黒人俳優が白人女性とキスすると攻撃対象になってしまうからできなかった
というもの。
90年代の話。
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現在では
黒人俳優がメインの(アクションでも歴史物でもない)ドラマ映画もとても多いし、
黒人女優単独主演映画も普通にあるし、その中で大ヒット物もある。
黒人俳優がメインの(アクションでも歴史物でもない)ドラマ映画もとても多いし、
黒人女優単独主演映画も普通にあるし、その中で大ヒット物もある。
常にエンタメの方が時代の先を進んで道を作っている。
時代が気づいた時にはスルスルとその道を進めるようになっている。
だからこそ、
『夜の大捜査線』のような意義深いしとても普通に面白い映画はいつまでも語り継いでいきたいなぁと思います。
そして
そういったエンタメが作られる前には
例えば公民権運動などの社会運動が必ずあるんよね。
そういったエンタメが作られる前には
例えば公民権運動などの社会運動が必ずあるんよね。
