映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『そばかす』ネタバレあり 題材への素晴らしいリスペクト!! 

2023-12-31 | ネタバレあり
そばかす(2022年製作の映画) 上映日:2022年12月16日製作国:日本上映時間:104分
監督 玉田真也
脚本 アサダアツシ
主題歌/挿入歌 三浦透子
出演者 三浦透子 前田敦子 伊藤万理華


良かったぁ。セリフがずっと良かった。


どんどん話が展開していってもうラストではと思うシーンが来てもそこからまだまだメリメリと物語が進んでく。

この映画に出会うべき人にきちんと出会ってほしい。

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【作り手】
映画何作ろう
LGBTQとかいっとくか
(ちょっと調べて)なんか不幸そうだから不幸に描いとこ
【観客】
泣いた感動した役者最高!
【役者】
栄誉ある賞をいただき感謝します
【当事者】は?

っていう映画じゃないっ!
そんな映画ではない!

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脚本はアサダアツシさん。素晴らしいですね。


まだ描かれていないアセクシャル・アロマンティックを持ってくることにも覚悟が必要だろうし
題材に対するリスペクトがハンパない。
リスペクトがあっても熱意と技能がなければムリ。
全てが揃っている。。
すごいアサダアツシ。。

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この映画がアセクシャル・アロマンティックの全てを掬いきれているのかはわからない。

それは当事者の声を聞かなきゃいけない案件。
外の人間が査定しきっていいことではなさそう。

だからもっと何度も描かれていくべきですね。

「こういうアセクシャルのひともいるんだね」
「人によって違うよね、そりゃそうか」
「でも共通の悩みはあるかも」
ってなるにはまだまだ描かなければ。

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ネタバレは以下に。




前田敦子と二人暮らし始めそうになったとき、「あ、そういうオチかぁ」と心配になった。
女性同士の連帯かぁ。
大事なことだけどアセクシャル・アロマンティックと結びつけていいのかな…と。。
しかしさすがのアサダアツシ。
前田敦子は同棲に最初からそれほど乗り気ではなかった。 そして前田敦子の結婚により同棲話は消滅。
ま、唐突感は否めない。。
三浦透子は前田敦子の結婚を祝う。
結婚に興味ないからって結婚したくて結婚する人を白い目でみたりはしない。 (そういう人もいるかもしれないけど、それはアクシャルじゃなくてもいる)
この映画の惜しい点。あのチェロの演奏が。。。音はプロの演奏家の方なんだけど。。
で、児童館の新入りとして入ってきた北村匠海。
クールな男子。

三浦透子を映画に誘う。同じ映画館で別の映画観る。
「終わったら集合しましょう」 映画終わって 「なんで私を誘ったんですか」と三浦透子。
北村匠海はシン・シンデレラのデジタル紙芝居を観ていた。 「自分と同じ人がどこかで生きてるんだって。」的なことを言う北村匠海。
あの時空気に負けて中断したシン・シンデレラ。
でも誰かに届いていた。
作って発表するってことはエネルギーの消耗も多いけど、遠くの誰かと繋がれてお互いエネルギーチャージができる。
手持ちカメラで画面がブレブレ。
イキイキした画面。
三浦透子走る。走る。笑顔。私全然生きていける。
終わり

2023年映画ベスト10

2023-12-31 | 映画感想
1 位 逃げきれた夢

2 位 月



3 位 そばかす


4 位 小さき麦の花


5 位 帰れない山



6 位 青いカフタンの仕立て屋

7 位 パリタクシー


8 位 EOイーオー



9 位 キエフ裁判


10 位 桜色の風が咲く
https://note.com/fukuihiroshi/n/n5412e03ef134



映画『非常宣言』ネタバレあり 日本とアメリカと自国である韓国の描き方

2023-12-20 | ネタバレあり

非常宣言(2020年製作の映画)비상선언/EMERGENCY DECLARATION
上映日:2023年01月06日
製作国:韓国
監督 ハン・ジェリム
脚本 ハン・ジェリム
出演者 ソン・ガンホ イ・ビョンホン チョン・ドヨン キム・ナムギル イム・シワン キム・ソジン パク・ヘジュン ウ・ミファ ヒョン・ボンシク ムン・スク




面白っ!怖っ!


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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経験もあるし
隣国(日本とアメリカ(グアム))ならではヒリヒリ感もあり
センシティブなとこを突かれて、
通常のパニック映画よりも観客の反応は強めですね。

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日本とアメリカと自国である韓国の描き方についてはコメント欄に。


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申し訳ないけど、この映画は今くらいに観て良かったと思いました。。
新型コロナでヒリヒリしている時に観たらもっともっと辛かったことでしょう。。

今でも後遺症で苦しまれている方も多いと聞きます。
僕も友人の甥が重めの後遺症で苦労なさってると聞いたので、新型コロナも全然終わった話ではないという思いはあります。

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なのでこの映画は十分な体感を持って恐怖を感じました。。


なんかどの人の行動も責められないというか、、
クソみたいに描かれている男もいるけど果たして…って感じするし。。

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で、どういうわけだか韓国を代表する実力派スターが集結してんのさ。

イ・ビョンホンとソン・ガンホ!
キム・ナムギル!
女優さんもみなさん存在感あって素晴らしい演技と思って調べてみたら演技賞取ってる方ばかり!
スター大集合なのね。

映像も音響も素晴らしいから、今飛行機がどっち向いてどんな角度でどうなっちゃってるのかがハッキリわかるし、
そのことでサスペンスがちゃんと生まれる。

話も二転三転、四転五転するわりにわかりやすいし、少なくとも迷子にはならない。。

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た〜だ、、、話の着地がどこなんだろうと、、映画の終盤になるとそればっか気になるわけさ。


それはつまり燃料の残量によるわけよね、本来は。
なのに、燃料の残高を全然見せてくれないのでハラハラ感が削がれる。。

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ネタバレは以下に!






中盤までは、さすが韓国映画!
パニック映画に社会派と人間ドラマ、さらにはコメディとカーアクションまで入れ込みながらもスピーディーで分かりやすい展開!さすがです!と感動していたけれど、、
終盤、
重めの人間ドラマを大味で描いている割に、
全員が「着陸やめます」と同意し出すとか
効かないと思ったワクチンが実は効きましたとか
通信切られたけど家族経由で連絡取れましたとか
ソウル空港OKからの軍の空港に降りますとか
風向き悪くなったり良くなったりとか
国民投票YESが急に優勢になってくるとか、、
なんかポンポン変わりすぎて、、ちょっと話に乗ってるの大変でした。。
ま、、言うてもエンタメパニック映画ですからね。。
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まずアメリカがグアムの空港に着陸することを拒否しましたね。

次に日本が成田空港の着陸を拒否。
副機長が「非常宣言」を布告したのに自衛隊の戦闘機が威嚇射撃してきました。
結局成田空港の着陸は断念。
日本の首相は「ワクチンがあるから大丈夫って言ってるけどウィルスは変異してるんだからそのワクチンは効かないんじゃないの?日本としては日本国民を守る義務がありまして…」と主張。

韓国側も「確かに。日本側の言い分もわかる…」とある程度納得してくれた。

韓国国民の中でも、ウィルス感染した飛行機の着陸を反対するデモがソウル空港に集結。
「いつ書いたの?」っていう横断幕やプラカードを持って自国民の着陸を拒絶するデモ隊を描いた。

そうこうしてる間に乗客全員感染。

「家族にうつしたくない」ってことで着陸しないことを決断。(海に墜落するつもりだったのかな…。それはそれでどうなの…)
機内に妻が乗ってる刑事がウィルスを打って感染してワクチン注射!ワクチン効いた!

飛行機に連絡して「ワクチン効いたよ!」っつって乗客とCAたちは「じゃあ着陸しようよ」っつって着陸成功。

刑事はかなり体調悪い様子だけどどうやらほとんど乗客は健康な状態になった模様。
「え、ホントは全員死んだの??」と逆に不安になるくらいに幸せそうなほっこりした屋外パーティーの様子で映画終わり。

ま、全然良いんだけど、ラストあたりで一応日本とアメリカの言い分というか、あれもしょうがなかったよね的な、いきなりのことで対応ムズかったですよね的なカバーがあれば、、批判は少なかったんだろうな、と思ったりはします。


ネットフリックス映画『ノーウェア:漂流』ネタバレあり 年間一万個のコンテナが船から海に落ちてしまっているとのこと

2023-12-20 | ネタバレあり

ノーウェア:漂流(2023年製作の映画)Nowhere
製作国:スペイン
上映時間:109分
監督 アルバート・ピント
脚本 アーネスト・リエラ ミゲル・ルス インディアナ・リスタ シアニー・ウィンスロー テレサ・デ・ロセンド
出演者 アンナ・カスティーリョ タマル・ノバス トニー・カルビーリョマリ アム・トーレス イリーナ・ブラボ ビクトリア・テイへイロ ルーシア・ソリア メアリー・ルイス


年間一万個のコンテナが船から海に落ちてしまっているとのこと。
もしその中に亡命者たちが隠れて乗っていたら??

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国外脱出(亡命)しようとコンテナに潜り込んで船に乗せられたものの
荒波でコンテナが海に放り出されてしまう。

そもそもコンテナにはたくさんの亡命者が乗っていたけど、ある出来事により主人公1人になってしまっていた。

しかも妊娠中!

海の上にぷかぷか浮いたコンテナに閉じ込められた妊婦の運命は!?

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ドキュメンタリーアニメ『FLEE フリー』でアフガンから難民がコンテナに潜り込んだあとの惨劇を観ていたので、、
冒頭のコンテナ乗り込みパートが観てて苦しかった。。
もう怖い怖い。。怖かった。。

でも、、
他に観るべき映画がたくさんあった。。


ネタバレは以下に!








いやいや、産まれちゃったよ。。
食べちゃったよ。。
 クジラが赤ちゃん助けたよ。
 女優さんが頑張ってるので言いにくいんだけど、、 何がつまんないって「偶然助けが来る」か「偶然陸地に流れ着く」しか助かる方法ないんよね。
 その偶然ゴールに向かって、 いろんなサスペンスやスリラーを順番にやっていくんだけど 主人公ひとりしかいなくて途中で死ぬわけねーんだからそんなハラハラしないよね。。 
ラストはコンテナが沈んで発泡スチロールで浮かんだ赤ちゃんがどっかながれてったけどクジラが近寄って赤ちゃんが泣いた声で母が赤ちゃんを見つけて、 発泡スチロールで浮いてたらカモメが寄ってきてていうことは陸地が近いじゃんっつってたら 漁船が来て赤ちゃん助けて 紐で繋がってた母を海から引っ張りあげたら 心停止してたのを漁師の女性が人工呼吸して息を吹き返してメーデーメーデーっつって陸地見えてきて良かったね!って終わり。

カザフスタン映画『父は憶えている』カザフスタン人と日本人は顔が似ている

2023-12-14 | 映画感想

父は憶えている(2022年製作の映画)This Is What I Remember/Esimde
上映日:2023年12月01日
製作国:キルギス 日本 オランダ フランス
上映時間:105分
監督アクタン・アリム・クバト
出演者 アクタン・アリム・クバト ミルラン・アブディカリコフ タアライカン・アバゾバ


23年ぶりに帰ってきた父は記憶がないし話もできない。

鏡なんですね。
そんな父に見られている私たち。

カザフスタンの生活文化や近代化。
そこで23年生きてきた息子、その妻と娘。
父の元妻とその再婚相手の男とその母。
カザフスタンの雄大な山と空と大地、
そしてゴミゴミゴミゴミ!!
そして、雑な洗車場!!
からの元妻の姑の戦闘能力の高さ。
(姑はドーベルマンを操る。)
***
画面で行われていることがずっと面白い。
カザフスタンの文化と風景の中での、濃厚で入り乱れる人間関係が面白い。
さらには性差別ですね。
後半から主役は元妻になります。

***

「男が1日に3回タラクと言わなきゃ離婚できない。」
「女性からクルを言っていい時代だ。」

**

そもそもカザフスタンはロシアだった。
91年のソ連崩壊で独立国家に。
なんとなくモンゴルあたりくらいに思ってたけど、
キルギスとかウズベキスタンの上にあって、めちゃイスラム教なんですね。
カザフスタン人と日本人って顔が似ていると言われています。
地理的にめっちゃ離れている割に確かに似てると思います。
それで全員めっちゃイスラム文化の暮らしなので正直驚きがあります。
***
男が1日に3回タラクと言わなきゃ離婚できない、ってのは、
離婚を意味する「タラク」を夫が3回言いさえすれば離婚が成立するという慣習から来たセリフ。
それに対して「女性からクルを言っていい時代だ。」ってのは、
クルは「相互離婚」を意味する言葉で、女性から離婚を開始するときに使うようです。
妻からも離婚手続きを始める権利は法的にはあるようですが、
とはいえ夫が一方的に「タラクと3回言えば」離婚成立するのに比べて、妻の方のハードルは高くて、とても不均衡。
また、「女性からクルを言っていい時代だ。」というセリフに示されている通り、女性からクルを言ってはいけない時代が長かったし、「言っていい時代だ」って言わなきゃいけない時って大体まだまだダメな時ですよ。。
この映画でも妻が夫に「クルと言うわよ!」と詰め寄ると、妻は夫にとんでもない酷い目に遭わされてしまいます。。

***
この妻はそもそもは父の妻でした。
なにこの日本語!
えっと、
父(夫)は23年前にロシアに出稼ぎに行ったっきり消息不明になりました。
23年後の今、記憶も発話言語もなくした状態で帰ってきました。
その間に、母(妻)は村の有力者の男を再婚しました。
(させられた感じが強いです)
その有力者の夫は酷いやつだし、イスラム文化の女性差別的側面もあり、母(元妻)は幸せそうではありません。
で、そこには同居している姑がいます。
この姑が最強。
ドーベルマンを操る老女なのです。
で彼女は息子(元妻の夫)こう言います。
「嫁はちゃんと躾なさいと言ったでしょ!」と。
自分だって男から虐げられて生活してきたはずなのに(だから?)、ウチにやってきた嫁にも同じ目に遭わせようとする、積極的に。
↑これは日本でも往々にして行われていることのようですね。
***
父の息子の家族は、妻と幼い娘。
この息子も優しい雰囲気だし新しい価値観を持っているようにも感じるけど、特には男性性ガーッと出して妻を抑え込むようなシーンもあり、やはりまだまだと言った雰囲気。

主演を兼任している監督は上記のようなことを批判的に描いています。
「カザフスタンってこんなだっけ??」
「こんな感じでいいんだっけ?」と
23年前からタイムスリップしてきた老人が無言で
急速に近代化した現代人に問うているのでしょうね。