映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

ゲイ映画『ダンス・オブ・41』ネタバレあり 「42」は誰か。

2021-05-31 | ネタバレあり
ダンス・オブ・41(2020年製作の映画)El baile de los 41/Dance of the 41製作国:メキシコ ブラジル
監督 ダビ・パブロス
脚本 モニカ・レビージャ
出演者 アルフォンソ・ヘレラ エミリアーノ・スリータ マベル・カデナ フェルナンド・ベセリル ロドリーゴ・ビラーゴ

面白いけど、辛い。。。


身を引き千切られるような苦しみを体感させてくれる。。
ラストの舞踏会のシーン、辛すぎる。。

メキシコ映画おそろしい。
どういうクオリティだよ。。
**

前半はデジタルカメラの浅い感じして、
なんかテレビドラマみたいな雰囲気でもったいなかった。
美術もカメラワークも力入ってるのになぁ、と。
前半はちょっとちぐはぐな印象がありましたが、
後半から、
妻が夫の真実を知ったあたりから
突然映画を構成する全ての要素が合致しましたよ。
舞踏会での事件とその後の辛く苦しい展開を映像でばっちりどっぷり描いてくれてました。

だから、、もう、、、辛い。。。


20世紀初頭のメキシコの上流階級の生活ぶりが豪華。



大統領の娘と結婚した議員の話。
ドレスやら調度品やら絵画やら彫刻やらがどれも素晴らしい。

**


この議員は実はゲイ。


初夜のシーン、残酷ですね。。
夫は妻じゃ全然勃たないので、挿入前に自分で扱いてなんとか勃たせようとする。
そのときめっちゃ目を瞑ってんすよ。
ショックでしょうね。。そんなことされたら。
で、よっしゃ勃ったってことで萎えないうちにサッと挿入。
ムードもへったくれももちろん愛なんてない。
このときの妻が切ない。。
セリフ一切ないけど表情の手の仕草が素晴らしい。
まっっったく心の交流なんてできてない相手との初夜。

この妻は大統領と先住民の女性の間に生まれた子供。

朝方まで帰ってこない夫(もちろん遊びまくってる)に腹を立ててわざと警察に通報したりと、
なかなか気合が入ってて面白い。

**



夫と妻を演じた2人の俳優さんの演技が素っっ晴らしい!



前半はどちらかというと妻目線。
妻の葛藤が悲しい。
先住民と大統領の間に生まれた子としての苦悩。
そして夫がゲイ、と言う、、誰にも1秒も気持ちわかってもらえない状況で苦しむ。
夫は、まず死ぬほどカッコいいんですけど、ほんとに演技うまい。
表情はもちろんのこと体全体から発せられる何かで感情を伝えてる。
なんでこんなことできんの。。。

**


この事件の結果、メキシコでは41 と 42 という数字は同性愛を指す言葉になった、


とのこと。


ネタバレは以下に。









どうやら実際にはこの夫は舞踏会には出席していなかったらしい。
でも彼にはゲイ疑惑(←嫌な言葉)があったから
「ほんとはあの舞踏会に行ってたんじゃないの?」
「大統領の義理の息子だから逮捕されなかったんじゃないの?」
と噂された、
らしいです。
**
逮捕され屈辱も受け刑も受けて尊厳を汚された41人と、
それを逃れて表面上は〝フツウ〟に生きている42人目。
「42」は我々じゃないか、ってことですね。
42人目なのはこの夫はだけではなく、
先人たちの戦いの結果や時代の流れによって
表面上は〝フツウ〟に生きている我々も「42」だろ、と。

***

この映画は事実(史実)とは違うであろう、ということは抑えつつ。
イグナシオ(夫)は、なかなかひどい人物になっていますね。
1900年初頭という時代性もありますが、
妻に対してずっと酷すぎるし、
仲間たちが逮捕されて
自分だけが救われて(映画の中の話ですけどね)
仲間たちはかなり酷い目に遭っているという情報は流石に入ってくるでしょう
そんな中でも
淡々と自分だけフツウの生活に戻って暮らしている。
(ひとすじの涙を流すだけで済ましてんじゃねえよ、と)
政治家という社会的な立場もあるし
妻の立場もあるし
という言い訳はいくらでもできるけど
あまりにも41人たちと差がありすぎる。
差別に遭って苦しんでいる仲間たちがいることを知っていても
自分は波風立てずに暮らしさえいれば、安心安全に生きられる。
この生き方が「クソ」とまでは言わないけど
映画の主人公としてはなかなか珍しい。
「自分が差別に遭っていないから、差別差別と騒いでいるうるさい奴らとは距離を置く」人物ってのは
少なくとも痛快娯楽映画の主人公ではない。
でも大丈夫!
この映画は痛快娯楽映画ではないから!
なぜイグナシオはあんなにも愛したエヴァを助るための行動を起こせなかったのか。
彼が冷たい人間だから?
時代のせい?
大統領の義理の息子だから?
答えはわかりませんよ。
痛快娯楽映画じゃないもん。

映画『カランコエの花』/期間限定公開(2021年5月23日(日)24:00まで

2021-05-22 | 映画イラスト



映画『カランコエの花』/期間限定公開(2021年5月23日(日)24:00まで)https://vimeo.com/553255054/29a05697d5

上記リンクにて、2021年5月23日(日)24:00まで、無料配信されております。39分のミドルサイズの映画ですが、素晴らしいメッセージ、覚悟、演技ですので、ぜひオススメですよ。

カランコエの花(2016年製作の映画)
上映日:2018年07月14日製作国:日本上映時間:39分 監督 中川駿 脚本 中川駿 出演者 今田美桜 永瀬千裕 笠松将 須藤誠 有佐 堀春菜 手島実優 石本径代 山上綾 加古山憲正




映画『カランコエの花』

勝手に嫌〜な感じのサスペンス映画かと思ってましたが、本当に温かい映画でした!

39分という短編。
この話の続きを描いたり、キャラそれぞれの背景をもっと描いたりしていけば、90分くらいのは作れたと思います。

が、それをせず39分にしてこの見ごたえ十分にしてるのはほんとすごい。

観終わってから登場人物それぞれのセリフや行動を思い出して、
彼らがどんな気持ちだったのか、今どんな気持ちでいるかを考える余地があるのが意義深い。

観客が物語を家に持ち帰ることができる。なんと素晴らしいのでしょうか。

****

四コマ映画→https://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2175

****

学生たちのなんとも自然な演技。。
即興っていうか、隠しカメラで撮ってるみたいに自然。

帰り道のモノマネのシーンなんかホントに楽しそうでほのぼのします。

黒板の落書きを見つけるシーンだけ、いきなり演劇的でしたが。。
あそこまで全員が起立しないでしょうね、実際は。
少なくとも座ってる人も多いだろうし、関係ない会話をしてる男子たちもいっぱいいるでしょう。

ま、あそこがこの映画の佳境なので印象的な演出にしたのだろうと思います。

学校でLGBT授業をする時に「クラスに1人いてもおかしくない割合です」と先生が言うこともあるでしょう。
でももしLGBTの子がそのクラスにいて、それを〝隠したがっているとしたら〟、かなり緊迫しますよね。。
「やっべ、LGBT探しが始まる!」って。

それが実践されるのがこの映画です。

***

保健の先生の薄っぺらいLGBT授業も面白かったな〜。。
あれでは何もいい方向へ行かないわな。。

あと、黒板に「LGBT」と言うアルファベット四文字を書かれるのもなかなかショッキングですね。

頭文字取って4つ並べてアルファベット読みされて、こう言う人たちがいますって。
逆に同じ人間じゃない感が強まる。。

***
この映画の凄さはやっぱ39分という時間ですね。

ラストは温かな着地をしますが、
解決していない問題がいくつか残る。

観客誰もが観終わった後、そのことについて考える。

一つの答えを出すことも出来ただろうけど
それをしないことによって、見る人が答えを出せるし、
時代の流れに負けない作品になったと思う。

で、それがけして無責任なことではないのは
作品を見ればわかる。
どれほどの覚悟でこの映画を撮ったか。演技したか。ですよ。

四コマ映画→https://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2175










『茜色に焼かれる』ネタバレあり シスターフッド映画 尾野真千子主演

2021-05-21 | 映画イラスト
茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
上映日:2021年05月21日製作国:日本上映時間:144分
監督 石井裕也 脚本 石井裕也
主題歌/挿入歌 GOING UNDER GROUND
出演者 尾野真千子 和田庵 片山友希 オダギリジョー 永瀬正敏 大塚ヒロタ 芹澤興人 前田亜季 笠原秀幸 鶴見辰吾

夫は元官僚の85歳の男の車に跳ねられ死亡。
加害者の男は謝罪もせず逮捕もされなかった。
妻はコロナ禍で経営していたカフェも失う。
大事なものを次々に奪われた狂気とその先の希望を #尾野真千子 が〝怪演〟!


****




同監督の前作『生きちゃった』


同監督の前作『生きちゃった』も、次々と大事なものを奪われていっても「しょうがないよ」っつってヘラヘラ笑ってる〝日本人〟が主役の映画でした。
『生きちゃった』は大好きな傑作ですけど、ブラックコメディ感が微妙で笑っていいんだか笑っちゃいけないんだかわかんなかったんだと思うんです。
僕が見た時は割と劇場の他の観客と笑いながら泣きながらまた笑って、みたいな感じで見ましたけど、
日本映画であんまブラックコメディがないですし、『生きちゃった』の絶妙な風刺がうまく広く伝わらなかったのかな、と無念に思っておりました。ファンとしては。

****

今作『茜色に焼かれる』はかなりストレート。重量級のストレートパンチ。ほぼ砲撃ですね。ミサイル弾。

弾としてはストレートなんですけど、その一つ一つに付随してくる問題をどれも無視しないので、要素は多い。だから144分。

職場(ホームセンター)、息子の学校、主人公が勤めるピンサロ、ピンサロの同僚の女性、店長、亡くなった夫のバンド仲間、主人公が養育費を払っているある女性、施設に入っている夫の父…………

などなど自分と息子の生活だけでも大変だけど、生きるってことはやっぱ他人が関わってきちゃうものだし関わらないと生きられないし、関わることで苦しみもあるけど救われもするし、
ってことで、「2020年の夏」の短い話なんだけど、登場人物全員濃いし、それぞれのエピソードが濃い。

濃厚ミサイル弾。

****





シスターフッド映画


シスターフッド映画と言ってもいいんじゃないでしょうか。

主人公とその同僚や、前田亜季演じるある女性とか。

特に前田亜季のシスターフッド感は、お互い遠い立場だけど、だからこそ、「がんばろうよ」というエールを送りたいっていうのが感動。

彼女たちが結びつき支え合う姿は美しいんだけど、男である僕が「感動」だの「美しい」だの思ってられない。。

この映画に出てくる男の多くはクソ。。

結構なクソなんだけど、これらは実生活では結構普通に行われていることだし、、それぞれのクソ出来事に対して一つ一つ怒っている女性がいたとしたら「そんなにイチイチ怒らなくても(笑)」とか「うまく受け流すのも女の度量だよ」とか言われていそうで、、とにかく申し訳ない気持ちに。。

こんなにもわかりやすいジェンダーについての映画、しかもめっっっちゃくちゃ怒ってくれる映画は日本では観たことないです(あったらごめんなさい…)。
海外の映画では多いですけどね。5年くらい前からですかね。やっと日本からもこんなにストレートに「誰が何に」怒っているのかが明快な映画が出てきましたね。

****


良かったですよ、この役を尾野 真千子がやってくれて



俳優さんは全員素晴らしいのですが、そりゃあ尾野 真千子ですよ。

この人って不思議なんですよね。演技が上手いっていうイメージは正直あんまなくて、、技能や技術(絶対あるんですけど)を駆使してる感とかもないし、、隙がないわけでもないし、、割とどんな役でも「素の尾野真千子」が垣間見える瞬間も多くて(そこが面白いし)、

巧みな演技派!というイメージはないんだけど、毎回絶対に面白いし、好感度もあるし、スケールの大きさがもはや邦画のサイズじゃない。

今作でもちょっとしたゴジラ感ありますよ。「ゴ・ジ・ラ・覚・醒」みたいなシーンあるもん。怖いけど笑っちゃう。。

良かったですよ、この役を尾野 真千子がやってくれて。

****

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ネタバレは以下に。


父(オダギリジョー)は新興宗教にハマって家の金を全部使っちゃってた。
良子(尾野 真千子)/ 純粋な人だった。頑張って探せばいい神様もいるんだと思う。基本的には最悪なのばっかりがこびりついてるんだけど。ま、頑張りましょって話。母さん、お芝居しようと思って。お芝居だけが真実でしょ。タイトルは「神様」。
純平/父ちゃんも母ちゃんも難しいな。。
***
ラブホにて。熊木と良子。
良子/ずっと隠しててごめん。私風俗で働いてた。辞めたけど。検査もした。病気はない。恥ずかしいことと思ってないの。熊木くんが嫌な思いするのが嫌で。。
熊木/知らない男とやって感じるの?
良子/決まってるじゃん。吐きそうだよ。殺されるような気がする。
熊木/恥ずかしいことじゃないって。。
良子/そう思い込まないと。。私熊木くんが好き。
熊木/そんなにそんなに真剣になんなくていいよ。風俗?いいじゃん。上手いんでしょ?俺、もっと軽い気持ちでやりたいんだけど、40近くになってないでしょ。なになになになに。俺結婚してるし。子供いるし。えーなになになに。なになになに〜。

***

居酒屋。泣いてる良子。そこに偶然?ケイ。
ケイ/純平くんが大人だったら良かったなぁ。ああいう正義感の強い人がいい。良子さん大丈夫?精神とかお金とかギリギリでしょ。旦那さんがよそで作ったこに養育費って。子供そだれるの大変なのわかってるから養育費払ってるんですか?意地?なんですか?子供ってなんですか?
良子/旦那の愛人の子なの。女の子だって。大変高校生。嫌だけど逃げられない。
ケイ/あまりにも理不尽って怒らないの?
良子/好きになっちゃったから。あの人は平気な顔で空から見てて。カラダ売っても他の人好きになっても。
ケイ/子供おろしに病院に行きました。私、子宮癌でした。転移の検査は出てないんですけど、早期発見じゃないみたいです。嘘ーって感じです。父親はヒモみたいな男。ひたすら殴られました。嘘ーって感じです。でもいい人なんですけど。私、純平くんを傷つけたかもしれない。
良子/なんでケイちゃんがそんなにいくつもいくつも。そんなことある?
ケイ/わたし悔しい。
良子/潰れたけど私カフェやってたの。お金貯めてまた開こうと思うんだ。誰にも指図されずに好きなようにやるの。ケイちゃん良かったら一緒にやらない?
ケイ/嬉しい。でも死んじゃったらごめんなさい。
***
公営団地。
不良たち(←マジで1ミリも擁護できないクソ不良たち)/純平くん、友達になろ〜よ。仲直りしにきたんだよ〜。
純平、顔を出す。
不良たち/うそー!お前、売春婦と一緒にいんのか?売春やってるやつが税金でやってる家に住んでいいの?
不良たち、純平の赤い自転車を壊す。
純平、ビニール傘で戦う。
不良/キモッ!
不良たち、ベランダに置いてる純平の父の本に火を付ける。本燃えていく。「知」の焼失。

***
渋谷。自転車を止めてタバコを吸う男。
不意に思いたちその自転車をパクる良子。渋谷を走る。家に帰る。
***
消防車。順平は火を消そうと努力したが。良子、唖然。
純平/僕たちは団地から出ていくことになった。他の住人に迷惑を書けないというルールに反したことが理由らしい。いつも僕たちはルールというルールに裏切られる。
***
赤いワンピースを着た良子。カバンに包丁を入れる。
良子/ちょっと出かけてくる
お寺。純平も心配で着いてきてる。
神お寺のトイレでべったりと赤い口紅を塗る良子。赤は良子の勝負の色。
純平、こっそり公衆電話をかける(助けを呼ぶ)。
良子/お母さんだとか何だってのは一旦忘れさせて。
熊木がお寺にやってきた。手を振ってる。
熊木/もう連絡くれないかと思ってたよ〜
良子/私、舐められたと思ってる。それについてどう思ってるっ!オイッ!
熊木/そういうのちょっと気持ち悪いよ。。
良子/オオオオオイッッッッッ!!!!
包丁を持って追いかける。熊木にげる。純平が包丁を奪い取って草むらに隠す。
純平、熊木に飛び蹴り。熊木倒れる。
熊木/誰だよ
良子、熊木にビンタ&蹴り
そこに純平に呼び出されたケイと店長(永瀬正敏)が登場。
店長、熊木を殴り、引きずっていく。
お寺のお坊さんたち/どうかしました?
店長/俺ヤクザ。こいつもヤクザだから。大丈夫。
ケイ/オイッ!お前良子さんに何かした?傷つけた?
ケイ、熊木に膝蹴り連発。
店長/おー!やれやれ!
熊木、ぼこぼこ。
***
ケイと良子と純平の食卓。テイクアウトの牛丼。
店長から電話/知り合いのヤクザがオレオレ詐欺の受け子探しててさ、こいつ脅して引き渡していい?
良子/後のことはお任せします。
店長/ヤクザの力使って解決したから。こっちのことは気にしなくていい。いい弁護士もいるから。成原さんと知り合いなんだって?
良子/私の旦那を殺した男の弁護士さんです
店長/らしいね。今度は味方だから。大丈夫。またこんなバカいたら連絡して。いくらか金になるから。じゃ。
純平/あのーケイさん、今日はありがとうございました。俺の力不足で迷惑かけちゃって。
ケイ/ほんといい男。良子さん、今度デートしていいですか
良子/。。。。。
***

純平/それからすぐケイさんが死んだ。
***
ホームセンターに。
ホームセンターの店長とバイト(音大生)がイチャイチャしてる。
良子/いらない花をください。廃棄するもの。
店長/な、ないです
良子、店頭に並んでる花から廃棄されそうな花を選んで持って帰る。

***
葬儀。純平と良子と店長(永瀬正敏)。
ケイの父/娘と仲良くしていただきありがとうございました。こうして友人ができて幸せだったんじゃないかな。
この男はケイが8歳の時からケイをレイプしてきた男。
良子、花を棺桶に入れる。
***
夕焼け。茜色。
店長/ケイちゃん、ビルから転落して死んだって。強い薬飲んでたし事故じゃないかって。
純平/事故です。僕とデートするって言いましたから。
***
良子と店長。
ケイから良子に何十万か入った封筒。店長が渡す。
店長/良子さんと純平くんのために使ってって。その日死んだ。だから多分あいつ、自分で死んだ。生きる理由がなくなったんだろう。
***
良子が盗んだチャリを元のところに戻す。
***
赤い自転車を良子が運転して、後ろに純平が座ってる。
純平/母ちゃん、俺負けそうだ
良子/私も。でもなんでだろ。ずっと夜にならない。まだ空が真っ赤っか。
純平/母ちゃんが頑張るなら俺頑張る。母ちゃん、大好きだ!
良子/純平、もっかい言って。
純平/い、いやだ
良子/だよね
ハグ、涙。また自転車こぎだす。
***
赤い自転車、施設に返す。
***

タイトル「神様」
良子の芝居。良子はヒョウの姿。
本当はむずばれるべきではなかった。お前ガゼルとはな。シャー!私は女豹。メスの豹だ。シャー!
純平/母ちゃん、なんだこれ
お前は新興宗教にはまり、女癖も悪く、よそに子供まで作ってしまった。でも私はお前に恋をした。
(交通事故の音)
それでもお前との子供が私にはいる。なにが悪い。愛しちゃったんだよ。ていうか、神様!それ以上に私に生きる意味を問うのか!それでも私が生きる意義を試すのか!
(カメラを回している店長。「俺、カメラの才能あるかも!」みたいに気持ちが乗ってる)
あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
走る。走る。走る。泣き叫びながら。
***
純平/なんにせよ、この人こそが俺の自慢の母ちゃんだ。

タイトル「茜色に焼かれる」
エンドロール
GOING UNDER GROUNDの「ハートビート」がかかる
(ちょっとここ調べます)
石井監督の名前が出て曲がフェイドアウトして、終わり




映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』と書籍『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』の比較 ネタバレあり!

2021-05-20 | ネタバレあり


永遠の門 ゴッホの見た未来(2018年製作の映画)
At Eternity's Gate上映日:2019年11月08日製作国:アメリカフランス上映時間:110分
監督ジュリアン・シュナーベル 出演者ウィレム・デフォー オスカー・アイザック マッツ・ミケルセン ルパート・フレンド


目次

  1. この記事は豪快なネタバレあります
  2. 『潜水服は蝶の夢を見る』のジュリアン・シュナーベル監督
  3. 「ファン・ゴッホ」全体で苗字
  4. この映画は『ゴッホ:人生』(2011)を元にしている
  5. 耳切断事件と死とBL感の真相
  6. 『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』
  7. ガブリエル(ギャビー/ラシェル)という女性
  8. ゴーギャンの気持ち
  9. 彼の死
  10. この映画では

この記事は豪快なネタバレあります


『潜水服は蝶の夢を見る』のジュリアン・シュナーベル監督

まずはこの映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』は、ゴッホの視点で世界を見ることができた感があって良かったです。

精神の病に苦しむゴッホの社会とうまく付き合えない様子が
〝潜水服に閉じ込められている〟ように見えて
監督誰だろ?と調べたら
『潜水服は蝶の夢を見る』のジュリアン・シュナーベル監督でびっくり。


****

「ファン・ゴッホ」全体で苗字


ゴッホの生涯はいまだに解き明かされていない謎が多くて、

ファン・ゴッホという呼び方も日本ではまだ定着していないですね。
「ファン・ゴッホ」全体で苗字だから、ファン・ゴッホと呼ぶようになっています。

名前はフィンセント。フランス語発音だとヴァンサン。
ファン・ゴッホもフランスだとヴァンゴーグになるそう。

でもユーミンみたいなもんで、ゴッホという愛称というか商標登録というか、一般市民が彼を呼ぶときはゴッホでいいんじゃないねえかと思います。

てことで、ゴッホと呼びます。

****

この映画は『ゴッホ:人生』(2011)を元にしている

ゴッホほど人気の画家もそういなくて
全世界から彼の人生について興味が止まらない状態なので
重箱の隅を突くような「謎」がいつまでも残っているのだと思いますが、

「1800年代末の売れない画家の人生」だと考えると、相当明らかにされている方だと思います。

****

彼の人生のいろんな場面でいろんな説がありまして、

いろんな説がある中でも
この映画は、2011年に発行されたスティーブン・ナイフェとグレゴリー・ホワイト・スミスの『ゴッホ:人生』での新情報を元にしているとのこと。

2018年公開の映画ですから、2011年の〝新情報〟を元にするのは自然な話。

しかし、おそらくこの映画の制作中の2017年に、
さらなる新情報でアップデートした書籍『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』が出てしまった、という可哀想な状況。

でも大丈夫!!
この映画自体がそれほどゴッホの人生について精密に描くことを重点に置いてはいないから。

事実を正確に!というよりは、ゴッホの視点で見た世界、混沌とした世界を体感するような映画なので、
情報が間違っている(かもしれない)ことはこの映画のマイナスには(あんまり)ならない。

そもそも享年37歳のゴッホを63歳のウィレム・デフォーが演じている時点で、表面的なリアルよりは内面的なゴッホを描くことに注力した映画であることは推察できます。


**

耳切断事件と死とBL感の真相


しかし、僕は気になっちゃった。。。

耳切断事件と死。

「あれ?ゴッホって耳たぶをちょっと切っただけだったんじゃなかったっけ?」と。

この映画では、耳の6分の5くらいのサイズを切り落としたのはことになっている。

しかも、ゴッホからのゴーギャンに対するBLチックな感情もまっっったく匂わされていない。

さらには彼の死。
自殺と聞いていたけど???


あれ?
僕が知ってるゴッホ情報と違う。。

ていうか、僕はゴッホについてちゃんと調べたことあったっけ?

ゴッホ展に行ったことはあるけど、あとはテレビとかによってふと流れてきたゴッホ情報をなんとなく受け取ってなんとなくわかった気でいただけでは?


**

『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』



ゴッホの耳 ‐ 天才画家 最大の謎 ‐ 2017/9/21 バーナデット・マーフィー 著


てことで
『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』読みました。
本読むの苦手なので何日もかかりましたが。


バーナデット・マーフィーさんというかなり特異な人が異常な執拗さでゴッホとその周りの人物とその街を調べ上げたことによって
新たにわかったことがいくつかあった、とのこと。


まず驚いたのは、ゴッホや周辺の人たちの人生あまりにもねじ曲げられてきたこと。
あらゆる場面でそれぞれあらゆる説がまかり通っていて
よりセンセーショナルな方へ盛り上がってきたこと。

僕みたいに大して調べもしない人間は吐き出されて流れ着いてきた情報を
「へぇへぇへぇへぇ」と受け取ってなんとなく記憶してきちゃった。

『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』の真実性については、今後また精査されていくとは思いますが、

まずは、ゴッホ周辺の事実ってのはこんなにも揺れ動いているものだったのかということに驚きました。

**

ガブリエル(ギャビー/ラシェル)という女性


『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』によると


ガブリエル(ギャビー/ラシェル)という女性は早朝は広場の店で掃除の仕事をし、夜は娼館でも掃除の仕事をしていた。

ゴッホとガブリエルは挨拶程度の交流があり、ゴッホはガブリエルのことが好きだった模様。

ガブリエルは犬に噛まれ大きな傷を負っていた。
ゴッホは切り落とした耳をガブリエルに手渡した。

切り落とした耳のサイズは上から5分の4くらいのサイズ。
耳たぶは割と残ってるって感じだが、耳としてはほとんど切り落とされてる感じ。(『永遠の門 ゴッホの見た未来』で切り落とされたサイズよりは小さい)

耳の上には動脈があってピューピュー血が出て床やら家具やらが血まみれになり掃除に金がかかったそう。

また、現代の医師によるとカミソリで耳を切ることは「ナイフでバターを切るくらい簡単」とのこと。ゾゾゾ。。。


その耳を
「僕の記念に」とか
「これを大切に取っておいてくれ」とか
「いずれ役に立つから」などと言ってガブリエルに渡した。
ガブリエルは恐怖のあまり気絶。

前年、切り裂きジャック事件が起こっており、切り裂きジャックも耳を切断してたし、この情報はフランスにも広く周知されていた。
そんな中、そもそもちょっとヤバい感じだった男から切り落とした耳渡されたら気絶しても不思議ではない。


**

ゴーギャンの気持ち


ゴッホはゴーギャンを焦がれていたけど、あくまでも友人として&画家としてであり、さらには「画家たちが集う家を作りたい!」という目的があってのこと。

ゴーギャンとしては、そもそもゴッホのことをそんなに知らないんだけど
ゴッホの弟テオに借りがあったし
画商とのつながりのためにゴッホとの同居を(かなりしぶりながらも)同意。

そんなに知らない人(ゴッホ)が精神を病んでいきかなり迷惑だしかなり困ったはずだけど、ゴーギャンは割とギリギリまでゴッホと一緒にいた。

耳切断事件で「これはさすがに…」ってな感じでゴーギャンはパリに去る。
が、精神の病で苦しんでいるゴッホをひとり置いてパリに戻ったゴーギャンには罪悪感もあったし批判もされたが、ゴーギャンは十分に親身になってゴッホの面倒をみてきたのではないか。


彼の死

ゴッホの死は自殺。左胸の下あたりを自ら銃で撃ち、2日後に死亡。


というのが
書籍『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』の説。


**




この映画では


「ゴーギャンに戻ってほしくて」(ガブリエルを介して)ゴーギャンに耳を渡したことになってる。

つまり耳切断事件のときにはすでにゴーギャンは家を出て行っていたことになる。

実際は耳切断事件のときまでゴーギャンとゴッホは一緒に住んでいた。
ゴーギャンは警察の取り調べを受けている。
ゴーギャンが去ったのは耳切断事件のあとである。

また、
ゴッホは10代の若者2人に銃で撃たれた傷が原因で死んだことになっている。ゴッホは若者に撃たれたことを誰にも言わずに死んだ、と。

これらはかなり大きな違い。


**


ゴッホによるゴーギャンへのBL的な感情


ちなみに映画にもゴッホによるゴーギャンへのBL的な感情は描かれていないし

書籍でも考察によってゴッホの同性愛性質は肯定されていない。
もちろんそれは本人にしかわからないものだけどという大前提の上で、割と女性好きだったという言動によりやんわりと否定されている。

さらに、わざわざ書く必要のないことだけれども、
大大大前提としてBL的な気持ちがあったり同性愛的な性質を持っていたとしてもなんら問題ではない。


問題は僕はどこで間違いを信じてしまっていたのか、ということ。

僕はゴッホはゲイorバイだと思っていまして、、
いったいいつどこでそのような情報を受け取ってしまったのだろうか。。。


**

ゴッホを支えたテオの物語でもある


僕つねづね、
絵が全然売れない兄(ゴッホ)を
画商として金銭的にも精神的にも支え続けた弟テオの物語が知りたい
と思ってました。

この映画にもテオは割と出てきますが
書籍の方にたっっっぷりとテオの物語が描かれておりまして
とても満足いたしました。

この映画、もしくは書籍をお読みください。



まとめ

自分はこんなにもゴッホのこと知らなかったのかと驚きましたし、、

それなのに大体知ってるような気分でいたことに反省しました。。

こんなにも曖昧な情報や間違った情報をな〜んとなく信じていたことに、気づきもしなかった、ことがちょっと自分でも恐ろしい。。

今後気をつけて生きていきたいと思いました。。


ごめんね、ゴッホ。




ヨーロッパ企画 映画『ドロステのはてで僕ら』の メイキング&オーディオコメンタリ ネタバレなし

2021-05-15 | 映画イラスト
ドロステのはてで僕ら(2020)
上映日:2020年06月05日製作国:日本上映時間:70分
監督
山口淳太
脚本
上田誠
出演者
土佐和成 朝倉あき 藤谷理子 角田貴志 石田剛太 諏訪雅 中川晴樹 酒井善史 永野宗典 本多力


ネタバレ厳禁!時間コメディ映画
ドロステのはてで僕ら


全っっ然ネタバレしない四コマ映画円盤ver.→
http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2723





2分後の未来が映る未来テレビに翻弄される人々。
未来、知りたいですか?


ドロステのはてで僕ら(2020)
上映日:2020年06月05日製作国:日本上映時間:70分
監督
山口淳太
脚本
上田誠
出演者
土佐和成 朝倉あき 藤谷理子 角田貴志 石田剛太 諏訪雅 中川晴樹 酒井善史 永野宗典 本多力

『サイダーのように言葉が湧き上がる』(2021)の至極の爽快感について シティポップ✖️アニメ 新作映画

2021-05-13 | 映画イラスト
Words Bubble Up Like Soda 上映日:2021年07月22日製作国:日本上映時間:87分 監督
イシグロキョウヘイ 脚本 佐藤大 主題歌/挿入歌 never young beach
出演者 市川染五郎 杉咲花 潘めぐみ 花江夏樹 梅原裕一郎 中島愛 諸星すみれ 神谷浩史 坂本真綾 山寺宏一




今作『サイダーのように言葉が湧き上がる』の四コマ映画描かせていただきました!
チラシに掲載されております!

劇場にありましたら見てみてください!


僕はこの四コマを、2020年の3月にはすでに提出してましたからね。。
まさかそっから公開まで1年4ヶ月かかるなんて。。





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昨年夏の公開予定がコロナで一年延期となり、、
さらに今年6月公開予定だったのが
さらに再延期され、7月22日に公開予定!
というハラハラドキドキの1年でした。。

****


「シティポップ」


爽やかで可愛い佳作、というのがピッタリかと。

話の根幹は、「コンプレックスを持ったティーンエイジャー(つまり全員)の初々しい恋物語」なのですが、
それを包む要素が面白い。

一つは「シティポップ」。
劇伴はもちろんのこと、劇中歌は大貫妙子で、主題歌はシティポップを現代解釈したnever young beach。
オシャレとはこのこと、気持ちいいとはこのこと、みたいな音楽で全編包まれています。

***


「シティポップのイラスト」


二つ目は「シティポップのイラスト」。
監督も言っている通り、イラストのスタイルは鈴木英人。
山下達郎のアルバム『FOR YOU』のジャケットイラストの感じで全編描かれています。
個人的に、シティポップのイラストがずっと動いてくれてる!という爽快感は、未だかつて味わったことのない気持ちよさでした。

***



「俳句」


三つ目は「俳句」。突如の「俳句」。
俳句もブームではありますけど、ブームだから取り入れたという浅ましさではない。

「俳句とラップの親和性」と言いますか
「俳句もラップも源流は同じ」と言いますか。

俳句はとても音楽的な文学だし
ラップはとても文学的な音楽。

自分の気持ちをうまく表せない主人公が俳句でなら自分の気持ちをうまく表現できるぞってことで
俳句を作りまくるんですけど
彼が魂込めて俳句を発するうちにそれが「ラップ」になっていく、というのがとても面白かったです。

***

絵の爽快感、音楽の爽快感、思春期ならではのモヤモヤ感が言葉によって昇華される爽快感。

暑い夏に冷房効いた映画館で観たいのさ。





『ある船頭の話』

2021-05-09 | 映画感想
ある船頭の話(2019年製作の映画)
上映日:2019年09月13日製作国:日本上映時間:137分


これはなかなかのレベルの映画かも!

冒頭。映像が素晴らしいし
時代を感じる美術も素晴らしい
「映像で語るぜ!覚悟しろよ!」というメッセージを感じて
これはなかなかのレベルの映画かも!

ほんとにいつかあった時代の景色、人間たちのドラマを観れるんだなあ

と期待が爆上がり。


しかし登場してきた柄本明と細野晴臣の歯が白い✨
びっしりと揃っていてキラキラと白い。。

明治後期の老人の歯があんなにびっしりと白いのは。。

歯を抜けとは言いませんけど
せめてもっと歯を汚して欲しかった。

**


そして結構喋るのね。。

わざわざ陽炎チックな感じで画面をユラユラさせて炎天下感を出してるのに
わざわざセリフで「暑い暑い」と言う。。

な〜んだ。。
期待爆下げ。

村上虹郎が画面で起こってることをぜ〜んぶ口にする。

しかも2時間17分あるし。。


**


ずっとめっちゃ喋るじゃん。

鬼滅ほどじゃないけどプペルくらいにめっちゃ喋る。


ここまで説明されちゃうと、
クリストファー・ドイルの映像さえもあざとく説明過多に感じちゃう。


「魂の抜けた肉体はただの抜け殻だ」
ってセリフの後ろで映るのはセミの抜け殻。。

なんかもう恥ずかしくなっちゃう。。


**


「トイチさんも知ってるだろ?」
って前置きしつつトイチがすでに知ってる情報を延々と喋る。。

なんでトイチがすでに知ってることをトイチに長々と喋んのさ。


**


オダギリジョーはほんとにこれを作りたかったの?




映画『Mank/マンク』 フェイクニュースを作る人、信じる人

2021-05-09 | 映画感想
Mank/マンク(2020年製作の映画)
Mank上映日:2020年11月20日製作国:アメリカ上映時間:132分


目次

  1. フェイクニュースの映像を作るように依頼された男。
  2. 映像という強いメディアを操ることのできる映画人たち。


フェイクニュースの映像を作るように依頼された男。

罪悪感を抱きつつも
「監督を任せてくれるっていうから…」と
大資本に利用されてしまう。

「投票権のある大人がこれを見ても信じないよな?」と救われようとするが。

現代でもフェイクニュースを盲信して利用される投票権のある大人がいっぱいおりますね。


**


マンク「こんなことはやめてくれ。人は映画館の暗闇で見たものは真実だと思っちまうんだ。俺たちにはそれだけ責任が重い。」


この映画はそういう映画。
とても政治的。

現代の政治に対するメッセージが強烈に込められてる。


**

マンクはこのフェイクニュースに対抗するために
自分もウソを流布しようとする。

しかしそれを頼まれた女優のマリオンは断る。
「わたし嘘つきたくないの」とマンクに言い放つ。

諦めるマンク。


フェイクニュースに対抗するために
フェイクニュースを流布しちゃいけないわな。

**



映像という強いメディアを操ることのできる映画人たち。

「暗闇で見たものを真実だと思っちゃう」ような観客を扇動することなど簡単にできてしまうし、

そうしてきた歴史もある。
今まさに現在進行形で行われていることでもある。


映画人による映画人たちへの戒めの映画。

そして、
「っていうこの映画も〝映画〟だからね。これさえも盲信しないでよ」と
観客に注意喚起をしている映画。



『オクトパスの神秘: 海の賢者は語る』ネタバレあり 本年度アカデミー賞受賞作

2021-05-09 | ネタバレあり
本年度アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞をはじめ、世界のドキュメンタリー映画賞を受賞したり候補になったりしている異色作。

オクトパスの神秘: 海の賢者は語る(2020年製作の映画)
My Octopus Teacher製作国:南アフリカ上映時間:85分


すごすぎて。。


タコ食べにくいよね、今後。。

**

精神を病んじゃった男性の話なので
かなり特異な状況が繰り広げられます。
タコもすごいんだけど
この主人公もすごい(変…)。
 
主人公、クレイグのヤバさがあってこそ
この「タコとヒトのラブストーリー」を成立させたし
観る人を説得させるだけの映像の量もちゃんとある。

だってあんな海に普通毎日入らんよね。
波すごいし、
サメいるし、オットセイも海で出会ったらめっちゃ怖いでしょうよ。



「タコの寿命は1年」


「タコの寿命は1年」と冒頭で言うので
この物語の終焉が暗示されている。
※マダコの寿命は1〜2年のようですが
〝彼女〟の誕生日を誰も知らないので
その日がいつ来るのか予測できなくて
撮影日数が重ねられて
彼女とクレイグ関係が深まるにつれ
別れも迫っている、という
胸が引きちぎられそうな状況が続きます。

**


タコの雌雄の見分け方。


雄は他のタコと縄張り争いで戦う機会が多いので
足についてる吸盤が大きくて乱雑に並んでいるそう。
また、雄の足は8本あるうち一本は「交接腕」と呼ばれる、まぁチンコ的なものであり、先端には吸盤がついていない。

ちなみにメスの方が味が繊細で美味しいとのこと(やめろ)。


**

クレイグがタコと出会ってちゃんと雌雄を見分けつけてから〝彼女〟って呼び始めたのか
勝手に女設定にして「ほんとにメスだった!」って後でびっくりしたのかはわからない。

交接腕がないからメスだ、っていう説明があると安心できたのに。
いきなり〝彼女〟って言い始めるから
「やっぱクレイグやべえな」と心配になりましたよ。。



人間といると天敵が近寄ってこない


〝彼女〟からするとおそらく
人間といると天敵が近寄ってこない、
っていう計算もあったかと思います。
実際、クレイグを利用してロブスター漁をしたりするし(すげーな!)。
でも確かにそれ以上の、
恋愛は言い過ぎだとしても
ちゃんと心のようなものを感じる交流は映像に残されています。

そして〝彼女〟のラスト。。。

とにかくひとつひとつ驚きながら見た方がいいと思うので
この辺にしますわ。
第1回サメ戦の恐怖!
そして第2回サメ戦でのまさかの伏線回収っっっっ!!!

もうすごいのよ、まじで。

そして〝彼女〟のラスト。。。

〝彼女〟だったわけよね。
〝彼女〟の命の燃やし方よ。

どうしよう、、タコぶつとか食えないじゃん。。。

**




ラストネタバレは以下に









第一回サメ戦で脚を一本失って彼女は、体がめっちゃ弱るものの100日かけて足を蘇生。
衰弱していく彼女を見るのが耐えられなくなって
今までその一線だけは越えなかったんだけど
クレイグは赤貝的なやつを剥いて彼女はたべさせようとする。
しかし彼女は食べなかった。
**
第2回サメ戦。
昆布(ケルプ)に巻きついて身を隠してみるも、視力ではなく嗅覚で獲物を追跡するサメには関係なく、彼女は追い詰められる。
墨を何度も吐いて撹乱させようも、それも視力を頼っていないサメには無効なのが切ない。
陸上に逃げてみたりするも
そんなに長時間陸上にいられず
海に戻るとしつこいサメがまだいる。
そしてついにアレ。
100個以上ある吸盤で貝殻を体に吸着させ、丸い鎧の塊となる彼女。
これはクレイグとの彼女の出会いのときの姿。
脅威の伏線回収タコ!
しかしサメはその状態の彼女に食らいつきグルグルに回し始める。
悪いけど、貝を体に巻きつけたくらいでサメの歯を防げるとは思えず、、、
今まで何度も危機を乗り越えてきたけど
彼女の最後はサメには食われるのか、、と思っていたら!
彼女はサメの背中に吸着。
一番安全な場所。
サメはなすすべなく。
で、タイミングを見計らってサメの体から離れ岩陰に隠れる彼女。
サメは背中取られた時点で飽きらめついてたらしくもう彼女を追わない。
**
魚と遊ぶ彼女。
魚と遊ぶのに飽きると彼女はクレイグの胸に飛び込み、クレイグに撫でられる。
クレイグ「彼女に触れたのはこれが最後だ」
**
ある日、彼女の巣穴に雄のタコが。
イチャイチャしてる。交配。
後日出産。
卵を守るため彼女はずっと巣穴に隠れたままなにも食べない。
体は白くなっていき、目にも生気がなくなる。
ひたすらに卵に酸素を送り続け、
卵が孵化するのを見届けると、彼女は命を閉じる。
何十万もの孵化した幼生が夜の海を漂う。
巣穴にしがみつくこともできなくなった彼女は海流に押されて衰弱している。
小さな魚やヒトデが彼女の体をつっつく。
クレイグ「彼女を抱きしめたかった」
翌日、もはやほとんど生命体には見えない体になってしまった彼女はサメの餌食に。
サメは余裕な感じで彼女を口に入れたまま消えていく。
サメの口からはみ出た彼女の足が切ない。
あんなにも勇猛果敢で雄弁だった彼女の足。
もはやビニール袋のよう。
**
タコの出産は一生に一回とのこと。
それを完遂し、卵の孵化にも成功した彼女。
産後の死はタコにとっては変えられない運命。
魚と遊び、クレイグの胸に飛び込み、
最後に出産と孵化をやり遂げた彼女の命の燃やし方よ。
ショッキングな最後だけど、彼女は完全に命を燃やし切った。
**
クレイグは彼女の死をかなしむものの
「ちょっとホッとした。これでもう毎日彼女を追わなくて済む…。大変だった…」
↑このセリフがいいですね。
リアリティ。
これを言っちゃうクレイグの面白さ。
このセリフがあることで客観性もあって良い。
クレイグは、彼の息子(イケメン)と一緒に海に潜るようになる。
クレイグ「私は海から多くを学んだ。それを彼に教えたい。彼はすでに何よりも大切な〝優しさ〟を持っている」
ある日、子供のタコを捕まえる。
クレイグの指をまるで遊んでいるかのように行き来する幼いタコ。
「彼女の子供がどうかはわからない。でも時期もサイズと合う。彼女に再会できたようで嬉しかった」
生前の彼女の映像。
観察する目。
8本の足を器用に動かして泳ぐ彼女。
クレイグの唇に触れる彼女。
おわり
**
徹頭徹尾クレイグの語りのみだし
息子さえも喋らないし
ひたすらにクレイグの体験と感想で綴られます。
だからこそ神秘的な体験が映像として説得力があるんだけど、
クレイグを映すカメラやドローンのカメラは存在する。
少なくとも海にもうひとりカメラマンが入っている。
その人物についてまったく言及がないのが、ちょっと不自然だったかな。
どう言う撮影スタイルかを明かしてくれた方がスッキリはするかな。
でもこの不思議な神秘性が消えちゃうのかな。
とくにサメ戦とかはおそらく映像を組み合わせてる?
『野生の王国』的な。
あんなにもばっちりサメVSタコを臨場感たっぷりに映像で語れないよね。
ドキュメンタリーがね、どこまで真実かってのはね。難しいよね。

ヨーロッパ企画『サマータイムマシン・ブルース』

2021-05-09 | 映画感想
サマータイムマシン・ブルース(2005年製作の映画)
上映日:2005年09月03日製作国:日本上映時間:107分

「ドロステのはてで僕ら」以来、ヨーロッパ企画のファンで。
YouTubeも観たりして。
『全っっっっっ然知らない街を歩いてみたものの』も観たし。
『Every Day』の永野さんも素晴らしかったし。
**

瑛太は「田中」姓に変更しようかな、みたいな感じで映画終わりますけど、
まぁ普通に考えて苗字を変更することはないでしょうし、
未来を知った上で、好きな子と結婚できるように苗字を変えるって、そんなにステキな話でもないし、、
上野樹里と瑛太の子供が本多さん??ってのもちょっとね、、
結局、瑛太は苗字変えないだろうし、
上野樹里は日村勇紀と結婚するよね。