映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『THE FIRST SLAM DUNK』 あのATフィールドをいとも簡単にっ!

2023-02-28 | 映画感想
THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画) 
上映日:2022年12月03日
製作国:日本上映
時間:124分 ジャンル
監督  井上雄彦 
脚本  井上雄彦 
原作  井上雄彦 
出演者 仲村宗悟 笠間淳 神尾晋一郎 木村昴 三宅健太


1990年連載開始ってことは僕は12歳だからジャンプで読んでました。
ジャンプは中学3年間しか読んでなかったし、スラムダンクについては初期設定くらいしか記憶にないレベルでこの映画を観ました。

**

冒頭の一対一のバスケ対決(1on1?)からしてもう素晴らしかった。

あのシーンだけでも、こりゃアメリカのアカデミー賞長編アニメ映画賞の候補に上がるべき作品だ!と思える傑作!と確信。

**

やっぱ絵のうまさ。。

漫画家の中でもトップレベルに絵の上手い井上雄彦さすがですね。
アニメになっても絵が死なない。
死なせなかった。

だから全員のキャラクターが観客に伝わって、一つの試合だけど多くのキャラの人生が見えてきた。

絵の力ですよ。
アニメーション技術の革新と、
アニメーターさんの血と汗と涙の結晶ですよ。ありがとうございます!!

**

アバンタイトルがモノクロの線画なんですよね。
あれ素晴らしい。
漫画ですよ、と。

それが動く。
正面向かって歩いてくるってどれほどアニメーション難しいことでしょうか。
しかもちょっと扇形に進んでるから少しずつ斜めに向いていく。

歩き方だけでこのアニメがとんでもないハイレベルのものだってことがわかる。
「このレベルのもの観せてやるからな!」という意気込み。

そしてカラーになり映画スタート!
カッコイイ。。。。

**

特に試合時での人間の体の重みが出てるのがすごかったですね。。

アニメってそんなことできちゃうの??と思った。

山王のディフェンスに息苦しくなったもん。
あの腕とか足とか全部に重みがあって、ほんとに邪魔に見えた。
なんてウザいの山王!と。
つまりホントに素晴らしいアニメーション。

アニー賞獲ってよ。お願いですから!

**

ベンチのメガネ君とか名もなき彼ら(名前あったらごめんなさい)にさえも心を寄せて泣けてきてしまう。

メガネ君の物語だってあったはずだし、語られない彼らの一人一人の話もあるよね。

語られないけど脇役たちの人生が見えてくる、素晴らしい映画じゃんかよ。


ネタバレ無しで書けない!
ネタバレは以下に!




ホントに試合結果を知らないので、ラスト、ゴールに入るのかどうかハラハラした。 入らないパターンもあるよなぁと。 
でも入りましたね。
 桜木は背中大丈夫だったのでしょうか。。

 **

 宮城君の母親が良かったですね。 ひたすらに暗い。。。 
そりゃそうですよね、夫も長男も亡くしちゃって。。 次男はヤンキーだし。。 

凡百の映画なら肝っ玉母さんみたいな、ほんとは悲しいのにそれを一切見せずに元気溌溂キャラだったりもするけど、否っ! 
彼女はずっと暗い。。。。。 

それが宮城君の陰になるわけよね。 うまいなぁ。 

** 

山王さえも好きになってしまった。 
まぁ普通に考えて湘北が勝つんだろうなとは思って見ていたんですけど 「なんで山王が負けなきゃいけないの!?」とさえ思ってしまった。 
山王の方がむしろ努力してきただろうに。。 

主役側じゃないからって負けさせられちゃうのが辛かった。。 
でも神頼みしちゃったんだもんね。。 
「必要な経験をください」(でしたっけ?)って。
 負けを知ることで強くなるよね!

 ** 

もえみちゃんみたいなキャラをほぼオミットしたのは良かったですね。

 もえみちゃんみたいってのは、赤木晴子さん。 
ヒロイン。
 ま、原作漫画の記憶がないのでアレですけど、まぁたぶん現代の映画で描くにはちょっと問題になりそうな、少年・青年漫画にありがちなヒロインキャラクターなんでしょうよ。
 それを一瞬しか描かなかったのは正解。

 **

 試合をしつつ、一人一人にスポット当てて回想シーンを挟んでいくってのが、、 仕方ないんだけど三井あたりでちょっとテンポが悪くなったかな。。

 しかも流川はほとんど描かれてなかったですよね。
 流川はみんな知ってるだろ?ってことなんですかね。

 **

そもそも「漫画を知らない人でも100パー楽しんでもらえる」ような作りをしてない映画だと思います。 ある程度は知ってる観客向け。
 バスケのルール説明とかないし。
 全ての映画がその映画だけで完結していなきゃいけないとも思わないので、 映画観る前にちょっとくらい漫画読んどくとか 観終わったあとに漫画読んで補完する、ことを想定していている映画があっても全然いいと思います。
 事実この映画は傑作になってるだから。

 ** 

ただ、そうであるならば 「あのATフィールドをいとも簡単にっ!」みたいな台詞を極っっっっっっ力使わないで欲しかった。
 「あの三井を!」とか 「あの流川が!」とか言われるたびに
 「知らねーーー。。。」って思っちゃった。
 「あの」に頼りすぎないで欲しい。
 「あの」って言わなくてもきっと顔の表情だけで「ウッソだろ…」とか「まさかアイツが…」などの「あの感」を伝えられた映画だと思います。

 **

 なんにしても誇らしい誇らしい誇らしい。
 日本アニメが、日本映画がまだまだ世界を驚かすことができますね!

「東京国際ろう映画祭―視覚の知性2023」

2023-02-22 | 映画感想

恵比寿映像祭2023「テクノロジー? Technology?」は、
東京都写真美術館や恵比寿ガーデンプレイス センター広場などで令和5年2月3日(金)~2月19日(日)に開催された映像とアートの国際フェスティヴァル 。

この中のプログラムの一つに「東京国際ろう映画祭―視覚の知性2023」がありまして、東京国際ろう映画祭で上映したことのある

牧原依里・雫境(DAKEI)《LISTEN リッスン》
深川勝三《たき火》
牧原依里《田中家》
八幡亜樹《TOTA》

の4作品を上映。
どれも観たかったんですが、以前からとても気になっていた八幡亜樹監督の《TOTA》を拝見!


八幡亜樹監督の《TOTA》

インド人の盲目の蝋燭職人と、日本人の聾の舞踏家を追ったロードムービー。二人がインドで出会い、共通の言葉も、また共有できる視覚・聴覚情報もない状況から、互いの存在を認識していく姿をとらえる。そこに生まれた二人だけの言語と空間から、コミュニケーションの根源を問う。


まずこの映像祭を観て回った時の感想として、「映画と映像って別物なんだな…」と実感しました。

見方がわからない。。わからないというか、能動性がとても必要であることに気づくまでに時間がかかった。時間がかかったっていうか終わってから気づいた。。

聾と盲でしかも外国だから共通の音声言語も持っていない主役2人がコミュニケーションに成功してるというのに、
僕はそれを見てても二人が何の話をしてるのかほとんど掴めなかった。。

「泊まる場所ない…」くらいはわかったけど他は実はほぼわかんなかったし、、正直「字幕つけてくんないとわかんな〜い」って思ってた。。

自分がいかに偉そうに映画を観てきたかを思い知らされた。。

環境音や音声言語、文字言語を浴びるのが当たり前になってて今作のようにそれがほぼない場合に全然取りに行けない。。観客としての甘えが酷い。。

監督のQ&Aを聞いて、能動的に自分もあの2人の輪の中にいる気で観ればもっと楽しかったと反省しました。
 もっかい観たい。

****

映像と映画の違いという点でいうと、

八幡監督は映像や芸術のフィールドで活躍されている方なので、最後のQ&Aの時に映画として質問される時にすごく戸惑われているのが印象的でした。

映画だと、あらかじめ大体こういう作品にしようとか、こういう作品にするためにこういう撮り方をしよう、これを伝えるためにこういう編集にしようという、意図をかなり入れ込まないと作品として成立させるのは、かなり難しい。

でもきっと映像ってのものは(僕もよく知りもしないのにこんなこと書くのもどうかと思いますが、、)、、監督自身もどうなるかわからないものを撮り進めていくし、正解なり確信があるわけでもない中で、監督自身も観客の一人として、「私はこの映像を見てどう感じるんだろう」と思いつつ、その並列として、観客はどう感じるか、聾者は…、視覚障害者は…、と。

映画も全部設計図通りに作るものではないしそうじゃないところから面白いものが出てくるだろうし観客のリアクションを完全に想定しているわけではないだろうけど、
映像の場合、もっとそれが未定のまま作品は作られて上映されるのかなと思いました。

「こういう風に見てね」「ここで泣いてね」「ここでカタルシス感じてね」というのがないから、普段作り手のそれに甘えてきた僕は正直ほとんどキャッチできなかった。。情けない。。

《TOTA》の登場人物の一人として、3人目になって一緒にコミュニケーションを取る苦労を体験すればよかったのに。

いやあもうほんとに面白い体験ができました!

映画『ブラインド・マッサージ』 これはすごいものが始まる、、と思いました。

2023-02-22 | 映画感想

ブラインド・マッサージ(2014年製作の映画)推拿/Blind Massage/Tui na上映日:2017年01月14日製作国:中国
監督 ロウ・イエ
出演者 ホアン・シュアン チン・ハオ グオ・シャオトン メイ・ティン ホアン・ルー チャン・レイ


『スプリング・フィーバー』より先にこちらを観ました。

もうびっくりしちゃって。
最初のシーンからずっとびっくり。。

これはすごいものが始まる、、と思いました。

南京の大きなマッサージ院が舞台で、院長が視覚障害者でマッサージ師の多くも若い盲者たち。
熱気ムンムンの青春群像劇で、性愛の描写の生々しいことったらない。
しかもドキドキするポイントとして、視覚障害者である彼らには視覚的には見えていないものを観客たちはずっと観ている。

****

ここまで書いて、ずっと「盲者」って書いてきたんですが、盲者って表現はいいんだっけと不安になり、検索。



「現在は「視覚障害者」が一般的となっています。」とのことなので、視覚障害者という言葉を使うことにします。

※日本視覚障害者団体連合さんに責任を押し付けるわけではないし、僕も責任を負えるほど自信を持って言葉を使えてはいません。。

****

さて、物語はなかなか過激にスピーディーに進んでいきます。
視覚障害者という大きな特徴がいつまでも尾を引くし、どんな場面でも視覚障害者ならではのものが入っている。
単に視覚障害を面白い設定に使ったり、物語の障壁に持ってきたわけじゃないことが
特に物語自体の展開のエネルギーを見るとわかる。
視覚障害に頼っていないし、途中でめんどくさくなって捨てたりもしない。

***

彼らの迷いや自分勝手さなどの生命力をとにかく強く感じる映画になっている。
けど(ダニエル)、ちょっと苦しすぎるかな。。苦しい展開すぎて辛い。。

ロウ・イエ先生の作家性でもあるもんね。。。
ロウ・イエ先生に「希望のあるラストを…」ってお願いできないもんね。。

ま、希望がないとも全然言い切れないんだけど。。

映画『リング・ワンダリング』🐺 🖋 台湾版DVD🛸にもイラスト 掲載

2023-02-22 | 映画感想

🖋 🐺 映画『リング・ワンダリング』🐺 🖋 紹介マンガやロケ地マップなど描かせていただいておりましたが 
台湾版DVD🛸にも イラスト 掲載されております! 

 タイトルは 神隱少年狼 です。 請買盤! 


年輕漫畫家在創作已絕種日本狼時,一直畫不出心中理想狼樣貌











映画『スプリング・フィーバー』(2009)  『ブエノスアイレス』より断然こっちの方が好きだが。

2023-02-22 | 映画感想
スプリング・フィーバー(2009年製作の映画) SPRING FEVER  製作国:中国フランス
監督 ロウ・イエ 
脚本 メイ・フォン 
出演者 チン・ハオ チェン・スーチェン タン・チュオ


『ブエノスアイレス』より断然こっちの方が好きだが。

**

予想していた話の盛り上がりがスタートから26分目に来た。
まさかそっからの話なわけね。

話がよく転がっていくもんだ。

**

とにかく登場人物全員何やっとるんだ、という。

ロウ・イエはとにかく若者には自由にやり切って自由に間違えろと言いたいのかな。

**

探偵ルオを演じたチェン・スーチェンのインタビュー

「僕は演技のために2ヶ月くらいの間に南京でたくさんの同性愛者に会いました。
そうすることで、もっとこの世界というのは多様化するべきだし、実際世界はすでに多様化しているんだと思いました。
それは新しい発見でしたし、そうした人たちに会うことで、世界が広がった気がしました。」
(http://www.webdice.jp/dice/detail/2626/ より引用)

↑この意識すごい!2009年の中国ですでに!

日本では
2016年のゲイドラマに出演した俳優がオファーを受けた時に「オカマの役かぁ」と思ったことを数年後にテレビのインタビューでわざわざ自分から話したり、

2021年のゲイ映画で、主役のゲイ男性役を演じていた俳優が撮影終了時に「男に戻ります」と発言したりしてたね。

映画『ペイン・アンド・グローリー』好きな作品。何度も観たい。

2023-02-22 | 映画感想
ペイン・アンド・グローリー(2019年製作の映画) Dolor y gloria/Pain & Glory  上映日:2020年06月19日製作国:スペイン
監督 ペドロ・アルモドバル 
脚本 ペドロ・アルモドバル 
出演者 アントニオ・バンデラス アシエル・エチェアンディア


好きな作品。
アントニオ・バンデラスの魅力が大きいですね。

この主人公わりとウジウジとうっとおしいキャラだと思うんだけど、
人間味のある可愛らしい人物像になっているのは、
アントニオ・バンデラスの演技と存在感のおかげかと。

**

あとは画面の色彩と構図。

場面が変わるたびに楽しい刺激がある。

**

人物がみんな自由。
物語に便利に使われない。

人間に対する愛情が嬉しい一本。

とてもとても良い映画。

映画『ベルファスト』 上手すぎて。。。

2023-02-22 | 映画感想
ベルファスト(2021年製作の映画) Belfast  上映日:2022年03月25日製作国:イギリス
監督 ケネス・ブラナー 
脚本 ケネス・ブラナー 
出演者 カトリーナ・バルフ ジュディ・デンチ ジェイミー・ドーナン キアラン・ハインズ

最近観たリチャード・リンクレイター監督の『アポロ10号 1/2: 宇宙時代のアドベンチャー』っぽいなと思いました。

戦争とか差別とかガンガン起きてるんだけど、割と日常生活送れちゃってた、という。

現在のウクライナ情勢がそれにあたるかもしれない。

**

悪いけど賞獲りたい気持ち強すぎてシラケちゃった。。

題材が題材だけに(北アイルランド問題)シラケちゃう自分が不謹慎な気持ちにもさせられちゃうからなおのこと微妙な気持ちになっちゃう。。

現代とも通じる哀しき事件(社会構造に基づく)を
当時の懐かしのヒット曲を織り交ぜながら
子供時代を思い出す形でノスタルジーたっぷりに
シリアスとコメディをリズム良く
映像も素晴らしく
単なるモノクロでもなく
もちろん全員名優で名演技で
男女の描き方も当時の仕組みも踏まえつつ現代的なニュアンスでバランス取っていて、、

あれ?いい点ばっかってことは名作じゃん。。

でも、ちょっと上手すぎてひいた。。

映画『マイ・ブロークン・マリコ』テーマも新しいだけに期待が高かった

2023-02-22 | 映画感想
マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画) 上映日:2022年09月30日製作国:日本
監督 タナダユキ 
脚本 向井康介 タナダユキ 
原作 平庫ワカ 
出演者 永野芽郁 奈緒(本田なお)



57分目くらいからやっと面白い。
(75分の映画だが…)

セリフで全部喋る。
しかも独り言が多い。

漫画がそうだからだけど、映画でそのままやられても。。

**

マンションの二階から遺影を持った女性がジャンプする
というマンガ的表現に映画的な説得力を持たせなきゃいけないのに
ただただ漫画を映画として再生しただけなのでリアリティがなく冒頭から乗れなかった。

**

遺影が映ってそこに水滴が落ちて、遺影を持っている人が泣いてることを表現する描写とか。。

吸いかけのタバコを床に落とした時の音が
〝バタッ〟はおかしいよね。。
ほぼ音しないくらいの音なはず。

靴一個しか持ってないの?
カビ臭いってことはカビが生えてるってことだからトイレの消臭剤ぶっかけても意味ないよね。

右を見ているのに右から人が来てビックリするシーンとか、、、
右見てたんなら人が来るの見えてたよね、、
しかもあんなに草生えてるとこなら音でわかるよね。。


マンガでなら面白かったりスルーできたりする描写をそのまま映画でやられちゃうときつい。。

**

漫画は素晴らしいし
テーマも新しいだけに期待が高かった。

映画『エゴイスト』 ネタバレあり 日本をこのレベルまで高めてくれてありがとう! 

2023-02-20 | 映画感想
エゴイスト(2023年製作の映画)上映日:2023年02月10日 
監督 松永大司
脚本 松永大司 狗飼恭子 
原作 高山真 
出演者 鈴木亮平 宮沢氷魚 阿川佐和子 中村優子ドリアン・ロロブリジーダ


日本のゲイ映画には何度も期待を裏切られてきた

ので
「どうせアンタもダメなんでしょ」の気持ちで見始めました。
ていうか観る気もなくて配信かなぁくらいに思ってたレベルだったんですが
原作者の故・高山真さんの知り合いだったサムソン高橋さん文章が素晴らしいと噂だったので
それを読むために映画を観ました。

**


↑映画見終わって読んだら
もうホントこの文章が全てなのでこれ読んでください以上。

**

あと鈴木亮平のインタビューもホント素晴らしくて。。
日本をよろしくお願いします!


**

しかし僕も駄文を何かつらつら書いてしまいます。お恥ずかしい。。
「感動した〜○○クンの演技最高〜」とか「キュンキュンした〜」とか「ほっこりした〜」とか
それが悪いわけではないけど、当事者以外が消費して終了みたいな作品が多すぎたし、
なんとなく「LGBTQ取り上げてやってんだから感謝しろ」的な空気も感じるし
翻っては「LGBTQってめんどくさい」とか言い始めそうだし

(実際僕も数年前までは「こんなスターがLGBTQ役を!ありがとうございます!」と思っちゃってたけど…)

なんだかなぁ…と思っていて実は日本のゲイ映画で好きなものってほとんどないんです。

**

だが、ここに来てドーン!『エゴイスト』!ドーン!

飲み込み辛さ、受け取り辛さが素晴らしい。
ものすごい微細でアンバランスで正誤の判断がつかないような何なのかわからない何かを提示されて、はい「エゴイスト EGOIST」でしたおわり!

あぁ、すいませんでした。。
こんなにも何かわからないものをドーン!と自信満々に提示して来られる映画だと思ってなくて。。

前述した通り、何人か死んで感動!演じ甲斐のある役でした映画なのではという穿った姿勢で見初めてしまったのです。。

**

ネタバレせずに書くのは難しいので以下に!!

でも結局サムソン高橋さんが書いたことをだらだらと冗長になぞっただけなんです。。






セックスシーン多い?

この映画のセックスシーンは2段階あると思ってまして
1段階目は主役2人のセックス。
大人のラブストーリーならあれくらいあっても違和感はないでしょうよ。
とは言えなかなかリアルな体位でしたね。。
大スクリーンでゲイセックスを、鈴木亮平のふくらはぎが宮沢氷魚の肩に乗る体位を観るってのはなかなかハラハラしました。
いかにゲイのリアルなセックスシーンをスクリーンで見慣れていないか。
今まで逃げられてきたか、ですね。

2段階目のセックスは〝ウリ〟のセックス。
1段階目よりもねっとりと多様な性技。
客の人数が多いことを描かなきゃいけないんだから、セックスの数も増えるのは当然。

なのでこの映画、セックスシーンが多いけど
1段階目はそもそも多くないよね、
2段階目は多いことに意味がある描写だよね、
全体として多いのは事実だけど必要というか効果的な演出だよね。
と思います。

あと、結局2時間頑張ってゲイな物語を描いても
「LGBTQ超えた映画」とか「普遍的な愛」とか言われちゃうのにもうんざりなので
前半で「いえゲイ映画です!」とハンコを押すためにも有効な選択だったと思います。

**

エゴイスト

まず僕は「エゴイスト」ってタイトル付けちゃうこと自体にナルシシズムを感じて苦手でした。
その意味でもこの映画あまり観る気が起きなかった。
でこの映画のほんとにすごいとこは、僕は間違ってなかったんですね、主人公のナルシシズムもこの映画のテーマの一つでした。

鈴木亮平は
1人で部屋にいるだけで誰もいないのにまるでカメラがずっと自分を映しているかのようないわゆる〝オネエ〟っぽい動きを最初から最後まで続けます。

(終盤、阿川佐和子と打ち解けてからはさらに加速!)

そして毎月10万渡す、高級寿司持たせる、高い服あげる、一個千円の果物持ってく。
他にも自分の優位性を誇示するように毎日ジワジワと高いものを押し付けてきたことでしょう。
挙げ句の果てにお母さんにまで10万?渡す。

いつ氷魚が「いい加減にして!バカにしてるって気づかないの!」ってキレてくるかと思ったらキレなかった。。
阿川佐和子とさすがに「どれほど惨めだかわからない!?」ってブチギレるかと思ったら最後までブチギレなかった。。

そして終盤、鈴木亮平が氷魚の部屋を片付けるシーン。
はいはいわかりましたなるほど氷魚の引き出しに今まで受け取ってきた10万円の未開封の封筒の束があるわけね!氷魚は受け取ってなかったんだ違った!全然受け取ってた。。

あの2人はホントにただただまっすぐに受け取っていたんだ。。
申し訳ない気持ちもあったでしょう、氷魚はホントにいつか返すつもりだったのでしょう。
でも僕が予想していたような捻れた感情はなかったらしい。。

**

ただ
「アンタのその行為、どうなの??」という視点はゲイ友たち(ドリアンさんの声量素晴らしい)にはありましたね。

でもそんなに強くは発せられない。
「それってエゴじゃない?」とか
「そうやってんのが気分いいんでしょ」みたいに名言はされない。

僕としては映画が終わるまでに「この行為はエゴである!」と断罪されて鈴木亮平が涙ながらに反省する…よね…え、だってそうしないと…くらいに思ってました。

しかし、ならない。。ならないまま終了。
そんなつまらない価値観を押し付けてくる映画ではなかった。

ラストシーンは
阿川佐和子「まだ帰らないで」
鈴木亮平「わかりました」
タイトル「エゴイスト」

なわけだからむしろ最後にわがままを言ったのは阿川佐和子の方。

エゴイストとか愛とかわがままとか押し付けとか自己満足とか、
それらの表面やら中身やら裏面やら上辺やら内側にあるものを、そのまま、切り分けも整理もせず名前も付けずに、そのままバンと目の前な置かれた感じ。

まさかそんなことしてくる映画なんて思ってなかったからびっくりした。。
みくびってました。。

フランス映画ならある程度覚悟するけど
日本の、しかもゲイ映画で、、僕が間違っていました。。

世界に出してもなんら恥ずかしくない、
何年も語り継がれるエポックメイキングとなる映画ですよ!


ドキュメンタリー映画『チョコレートな人々』 男はどこに………

2023-02-17 | 映画感想
チョコレートな人々(2022年製作の映画) 上映日:2023年01月02日
監督 鈴木祐司 
ナレーション 宮本信子


僕、大学が福祉系に強いとこだったので、
一応、福祉作業所や授産施設については知ってはいましたし

障害のある方の労働報酬の「びっくりするほどの安さ」についても知っていました。

知っていましたが、まぁしょうがないよね…………
問題ではあるけど、まぁ難しいよね…………と思っているだけでした。。

それをなんとか解決、改善するぞ!と奮闘する人々のドキュメンタリー映画でした。


**

これ、アメリカのアカデミー賞の国際長編ドキュンタリー賞の候補とかに入ればいいのに。
それくらいの魂の一発だと思いますよ。

**

そして、〝父親〟の不在について言いたい。

これは撮影者の意図ではないはずだけど
とにかく〝父親〟が映らない!

主役の夏目さん以外に〝父親〟って出てきた?

障害を持った人がたくさん登場して
会社の中でその方々をサポートする人や
家庭でサポートする方々がたくさん登場するんだけど
ほっっっっぼ女性。。。。。。

とくに家庭内では〝お母さん〟。

お父さんはどこへ????????
男はどこへ???

ある意味、女性映画ですよ。
意図したことではないと思いますけど。

男女の役割ってこんなにも分離してるんですね。

**

さて、気を取り直して。

何度も涙を流しました。
何度も笑った(とくに匹田さんパート)。


思い出したくない過去から逃げずに
蓋をせずに
蓋をしてしまったならそれをある時に開いて
問題解決するために〝もがく〟。

そこに感動しました。

**

ラストは観客である我々にも問いかけられる。

「いつまで部外者なんですか?」と。

いつまで
チョコレート美味しそう!
絶対買いた〜い!
なのか、と。

この映画は一度も

「チョコレートを買うことで支援をしてください」

って言ってない。

チョコレートを金出して買うことは
その価値のあるチョコレートにその対価を払って買うという
単なるフェアトレードでしかない。

それは優しさでも、良いことでも、SDGsでもない。
ただチョコを買っただけ。

**

で、どうする?

と。


あぁ、どうしよう。

**

「太るといけないので一個だけ食べます美味しいのでもう一個食べます」
の匹田さんに癒された。

映画『ビックリマン 第一次聖魔大戦』(1988年) ネタバレあり わかんないのかよ

2023-02-15 | ネタバレあり
ビックリマン 第一次聖魔大戦(1988年製作の映画)  製作国: 日本 
監督 角銅博之 
脚本 富田祐弘  
出演者 鈴木富子


頭使いたくなさすぎてもはや『ビックリマン』の映画第1作目見ます。

僕が自分の意思で初めて映画館で見た映画が『劇場版ビックリマン第一弾「第一次聖魔大戦」』。
9歳の時。親に連れてってもらった。

(一番最初に映画館で観た映画は『グーニーズ』。『グレムリン』と併映でした)

**

さすがに何のことだかさっぱりわからないのでメモしながら見ます。

**

シャーマンカーンが光の子であるスーパーゼウスの赤ちゃんを育てることに。

始祖ジュラは影の子、ブラックゼウスを育てることに。

↑ これは聖神ナディア様が指示したこと。

でも始祖ジュラは
「え?なんで俺は光じゃなくて影なの??」と怒って
始祖ジュラはブラックゼウスと共にスーパーゼウスを誘拐。

シャーマンカーンに追われて焦った始祖ジュラはブラックゼウスの赤ちゃんを自分の体に吸収してしまう。

ブラックゼウスの赤ちゃんを吸収して力を得た始祖ジュラは「豊かな暮らしをしたいやつはおれについてこい!」と悪魔たちを連れて消える。

これが悪魔と天使とお守りに分断が生まれた瞬間。

**

その後、成長したスーパーゼウスが始祖ジュラと戦う。

他の天使と悪魔はただ巻き込まれるだけ。
これが第一次聖魔大戦。

**

……なんだけど、実はこれは過去の話。

現在でヤマト王子が八魔オロチと戦ってる途中に過去にタイムスリップして、
第一次聖魔大戦の様子を見ていたのだった。

で、ヤマト王子は、

なんか書いてて虚しくなってきた、、、

現在進行中の八魔オロチとの戦いを再開する。

そもそもヤマト王子をタイムスリップさせたのはシャーマンカーン。
スーパーゼウスの勇姿をヤマト王子に見せるのが目的。

第一次聖魔大戦での勇気あるスーパーゼウスの戦いから勇気を学んだヤマト王子は八魔オロチを倒すことに成功。


**

つーかそもそも八魔オロチとの戦いの時に
シャーマンカーンがヤマト王子に
「勇気を持って戦うのじゃ!」ってけしかけたら
ヤマト王子が「わかりました!」っつって無謀な戦い方をして危機的状況に陥って止むに止まれずタイムスリップさせた感があるのに、

なんかシャーマンカーンの手柄みたいな空気出してのが謎。


**


てかそもそも悪魔と天使とお守りは分断してしまったのは、
聖神ナディアが始祖ジュラにブラックゼウスの赤ちゃんを育てさせたことが原因。

聖神ナディア様がどうしてそんなことをしたのかヤマト王子はシャーマンカーンに聞くが
シャーマンカーンは「わからん」と答える。

「次界に行けばわかるかもしれん」byシャーマンカーン

てことでヤマト王子と十字架天使と天子男ジャックは次界を目指す旅に出る!

おわり

なにこれ

映画『LAMB/ラム』  ネタバレあり 好き

2023-02-15 | 映画感想
LAMB/ラム(2021年製作の映画) Lamb  上映日:2022年09月23日製作国:アイスランドスウェーデンポーランド
監督  ヴァルディミール・ヨハンソン 
脚本  ショーンヴァルディ ミール・ヨハンソン 
出演者  ノオミ・ラパス ヒナミル・スナイル・グヴズナソン


好き。


最初っからコメディ感があるのがいいですね。


羊が全員カメラの方見てるのとか絶対羊たちとしては何の感情もない
(なんか人間がこっち見てるなぁくらいな)
のに勝手に音楽とかズームアウトとかであたかも羊たちが何かを予感してるかのように見せてるのが可笑しいし


それを見て確かに僕も羊たちが全員何かを感じているかのように勝手に感じちゃってるのが面白い。


もしかしたらこれがこの映画の肝なのかも。


**


↑全然肝じゃなかった。


**


アイスランドの景色、空気、白夜。


人間がいることが不自然に感じる大自然の中で、
ポップ歌手のMVを観て踊ったり
酒飲みながらテレビでスポーツ観戦して盛り上がったり。
自然と溶け合わない人間たち。


しかし、性の営みにおいては自然と同じ。


とても真っ当な性描写と
#METOO 後らしい男性の暴力的な性衝動とが強く対比されていて、ここにもテーマが潜んでそう。


**


映像は綺麗で迫力があるし
ホラー映画にありがちな鬱陶しさがなく
話はサクサク進んでいく。
すぐ成長するし。。


どういうことだどうなっていくんだていうかアダちゃん可愛いお父さんイケメンと思ってたら突如。。。


という展開。




**




相当勇気必要ですよ、あれ。


小説とかならまだわかるけど
ビジュアルと存在感で説得しなきゃいけないわけでしょ。


相当な自信家ですね、監督は。
そして大成功!




ネタバレは以下に。







羊人間出てきましたね。 羊男。
 山の上の方でひっそり暮らしてる一族なのでしょうか。 

羊と人間のハイブリッドとして産まれた一族なのか、 そもそも最初は羊人間でそれが羊と人間に分派したのか。。
 人間の祖先か。

 賛否両論はわかります。
 これ、映像自体は映画館で観たかったけど、「??????」ってなりながら映画館出るのヤだもんなぁ。。 

1人で考えたり調べたりするならまだしも 誰かと見にいってたとしたらどういうことなのかを討論しなきゃいけないんでしょ。。 
そんな不毛な時間ヤだよ。。 

映画としてはかなり好き。

映画『ライフ・アズ・ファニータ』白人にアフリカから奴隷船で連れて来られた黒人の末裔である〝アメリカの黒人〟の女性と白人に追い立てられて迫害された〝アメリカの先住民〟の男性の恋模様

2023-02-07 | 映画感想
ライフ・アズ・ファニータ(2019年製作の映画)Juanita 製作国:アメリカ上映時間:90分
監督 クラーク・ジョンソン
出演者 アルフレ・ウッダード アダム・ビーチ


評価低いのもわかる。。
けど、面白い映画ではあると思う。

アルフレ・ウッダードの名演技のおかげで観れたんだと思う。
名演技っていうか存在感?信頼感?


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主役のアルフレ・ウッダードがカメラ目線で観客に向かって語りかけてくるシーンが多い。

役としては、病院で清掃の仕事をしながら3人の子供を育てたシングルマザー。スポットライトを浴びたり、話の中心になることのない人物像。

普段は誰にも話を聞いてもらえない彼女にスポットライトが当たった映画なわけだ。

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よくあるミドルエイジクライシスの女性の物語かと思いきや、
都市部の黒人差別(警察による黒人青年の殺人事件などのBLM問題)もあるし、
先住民が湾岸戦争に駆り出されて今でもPTSD患ってるとか  
戦場で白人兵士たちから差別を受けていたことなどもできて
色んな問題が語られるし、

途中にはレズビアンもメンターとして出てくるし、
先住民の儀式のシーンも長いし、、
なかなかの暴れっぷりの映画。

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ものすごく重い話のはずなんだけど、、雰囲気はライト。
ちょっと、、、バカっぽいくらいにライト。。。

もうこれは意思を持ったライトさでしょうけど、、まぁ違和感強い。。
まぁいいんじゃないですか、、珍しいし。。

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白人にアフリカから奴隷船で連れて来られた黒人の末裔である〝アメリカの黒人〟の女性と
白人に追い立てられて迫害された〝アメリカの先住民〟の男性の恋模様。

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舞台はモンタナ州。『リバー・ランズ・スルーイット』のとこ。

モンタナ州はアメリカで最も保守的と言われているとのことで、
全人口のうち黒人の比率が0.67%と、モンタナ州には黒人がほとんどいない。

モンタナ州のインディアンの比率は6.7%。アメリカの中では多い方。

出会う確率のかなり低い2人が出会った!みたいな設定なんでしょうね。

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アルフレのウッダード演じる母親は息子2人を警察に逮捕されている。

「警察は若い黒人を捕まえる。ボスじゃなくて少年を捕まえる。ギャングと友達ってだけで捕まえる。
前科者にさせてまとも就職をさせない。そうするとギャングになるしか道がなくなる。
この話を言っても誰も信じない。白人しかいない街で暮らしてる人たちは。」

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モンタナ州のペーパームーンという小さな町のフランス料理屋を経営する先住民の男性は、湾岸戦争との時に戦争に駆り出されている。

いまだにPTSDを抱えていて、砂漠の嵐作戦 の日にはパニックになる。

「俺だって遺体ならたくさん見た。
アンタらそいつらに言ったのか?安全だって。
地雷はないから大丈夫だ。行けって言ったことがあるか?
3メートル先でヤツらの体はバラバラになった。エディは俺より先に行った。」

「俺たちは面白がって同じ隊にされた。
ブラックフッド族のモンタナのインディアンとニューヨークの黒人青年(エディ)を。」


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とても良い映画になりそうな要素はあったんだけど、どう考えても良い映画にする気のない作りなんですよ。。

なので、、もう、しょうがないよね。。