映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『生きる』ラストネタバレあり 死に近い人間の異形さ 

2024-06-15 | ネタバレあり

生きる(1952年製作の映画)
上映日:1952年10月09日
製作国:日本
上映時間:143分
監督 黒澤明
脚本 黒澤明 橋本忍 小国英雄
出演者 志村喬 治日守新一 田中春男 千秋実 小田切みき 左卜全 山田巳之助






『生きる LIVING』を先に見まして
元のこちらも観ねば、と。

主役の渡邊は無為に生ききた、という設定だけど
まったくそんなことないじゃんね。

妻を早くに亡くし、幼い息子を男手1人で育てて、勤め先も無欠勤で働き続けてた。

**

戦後日本の必死に享楽的に生きようとしてた社会の背景もいい。

ヒロインの小田切みきの存在感が素晴らしい。
(顔が飯島直子に激似ですね)

渡邊と親しくしつつも
死期間近だと知ったときに
〝死に近い老いた人間〟を気持ち悪く、おぞましく、哀れな表情で
渡邊を見るのが生々しくて素晴らしい。

優しく励ましたり同情したりするのではなく、
軽く「キモっ……」って思ってそう。。

**

死に近い人間の、ちょっと人じゃなくなったかのような不気味な存在である渡邊。

〝志村が『ゴンドラの唄』を歌うシーンでは、黒澤から「この世のものとは思えないような声で歌ってほしい」と注文され〟たとこと。

**

終盤は渡邊について役所の人間たちが語り合い、
渡邊という人がどういう人間だったのかを形作っていく。

オチがいいですね。
オチは以下に書きますか。



ラストネタバレ


通夜の終盤で「渡邊さんの意思を継ごう!」と役所の人間たちは熱くなったのに
後日、今までと同じように市民を別の課へたらい回しにする。

日守新一が抗おうと立ち上がるも誰も賛同せず、日守新一も諦める。

結局何も変わらない。

いや、渡邊が作った公園に子供たちの元気な声が今日も空に響いている。






映画『市子』ネタバレあり 船の甲板の上で大事な写真見ないで欲しい

2024-04-21 | ネタバレあり

市子(2023年製作の映画)上映日:2023年12月08日製作国:日本上映時間:125分
監督 戸田彬弘
脚本 上村奈帆 戸田彬弘
原作 戸田彬弘 
出演者 杉咲花 若葉竜也 森永悠希 渡辺大知 宇野祥平 中村ゆり
脚本 上村奈帆 戸田彬弘
原作 戸田彬弘 
出演者 杉咲花 若葉竜也 森永悠希 渡辺大知 宇野祥平 中村ゆり


船の甲板の上で大事な写真見ないで欲しい。
風で飛んじゃうかもしれないし
風で飛んだら海に落ちて100パー取り返せないじゃん。

大事な写真甲板の上で見ないで欲しい。

**


無戸籍児の問題については、ドキュメンタリー映画『愛と法』で知ってはいたけど、
やっぱ問題の源泉は性差別、男女の不均衡だなと改めて思った。

〝法務省によると、
無戸籍となる原因の多くが、
前夫との婚姻中又は離婚後300日以内に子どもを出産した場合、
民法第772条の規定により、
戸籍上、前夫の子どもと推定されることを避けたり、
前夫に子どもの存在を知られたくないなどの理由から、
出生届を提出されないことが原因とされています。〟

とのこと。


その離婚後300日問題に関わる改正民法は、この4月施行。


**


複数の証言によって市子という人物の輪郭を描いていく、
という仕組みなので複数の証言者が出てくる。

それを演じる俳優さんたちが
「この数分で私の力全部見せたるねんっ!」と気合いが入った演技を全員が見せてくる。

その中で杉咲花の浮遊感が際立つ。

ラスト、20代の男女2人が乗った自動車の海への転落事故のニュースを宇野祥平が知るシーンも素晴らしかった。
動作としてはほぼ無反応。
「あ、市子がやったんだ…」って思ったかも知れないと思わせるシーン。

それまでがとても説明過多だったのでより際立って良いシーンでした。

 映画『異人たち』ネタバレあり 大絶賛の中、申し訳ないんですが

2024-04-20 | ネタバレあり

異人たち(2023年製作の映画)All of Us Strangers 上映日:2024年04月19日 製作国:イギリス アメリカ 上映時間:105分
監督 アンドリュー・ヘイ
脚本 アンドリュー・ヘイ
原作 山田太一
出演者 アンドリュー・スコットポール・メスカル




「LGBTQ物には食傷気味です…」
みたいな言葉を最近見まして、

は?
LGBTQプラスは
大衆を満足させるために提供されるコンテンツではなくて
単にやっと可視化されて
語られてこなかったことが
やっと語られ始めただけで
今後もこれくらいの量で語られるんだけど!?

じゃあ
「男女物には食傷気味です…」って声が出たらどうぞ男女物を縮小させてくださいな。

と腹が立ちました。


**

で、この映画。

大絶賛の中、、申し訳ないんですが、、、、、、、、、
ちょっと乗れなかった。。。。

まず、2部屋しか住んでない高層マンションで、もう設定わかっちゃうよね??
外に全然人がいないし。。
なので終盤でもとくにびっくりもしなかったし、、
「うん、だから、、死んでるってことだよね」ってなっただけ。。

**

テーマは好きですよ。

両親の演技も素晴らしくて
ほんとに幽霊を連れてくることに成功したのかと思いましたよ。
孤独の被害者のつもりでいた主人公が
実は「孤独にさせる」という加害者でもあった、というひっくり返しも良かったです。

ただ、その素晴らしいテーマを伝えるには
ちょっと演出がくどすぎませんか。
くさすぎませんか。

でもねぇ僕は同監督の『ウィークエンド』もそんなに好きではないので、、
これは好みなのかも。。

結構セリフで喋っちゃうし
映像もくどくて。。

もうちょっとドライさ、クールさというか、登場人物に対する突き放し感が欲しかったかな。

映画『哀れなるものたち』 これを2000円で観れるのは安い。。

2024-03-06 | ネタバレあり

哀れなるものたち(2023年製作の映画)Poor Things
監督 ヨルゴス・ランティモス
脚本 トニー・マクナマラ
原作 アラスター・グレイ
プロデューサー エド・ギニー ヨルゴス・ランティモス アンドリュー・ロウ エマ・ストーン
出演者 エマ・ストーン マーク・ラファロ ウィレム・デフォー



これを2000円で観れるのは安い。。


6000円ですって言われても「…わかりましたよ!」って払いますよ。
それくらいものを観ました。

演技から映像から音楽から美術から、僕が気づかないような何から何まで、目から耳から極上体験でした。

サウンドもほんと良かったんだよな。
美術もホント素晴らしかった。
眼福とはまさにこのこと!

『カリガリ博士』感ありましたね、美術が。

**

ただ、ランティモスファンとしてはちょい物足りない。。

前作同様ランティモス監督の中ではかなりわかりやすい。
何をやってるのか何が言いたいのかが常にわかりやすい。

2023年はマーゴット・ロビーが『バービー』を作り、


エマ・ストーンは『哀れなるものたち』を演じた、
っていうくらいにフェミニズム的にも語れる。

が、
主役の女性ベラが一番強く泣き叫ぶのは「格差社会を知った時」です。
語りたいのはフェミニズムだけではなさそう。

**


ラストネタバレは以下に。


夫がヤギにされてしまったことについては、、
そこまでしなくても……
男だって戦争に行かされたりして辛いんだから……
とちょっと思ってしまった自分の男脳に気づいたことも含めて面白かった。

『夜明けのすべて』 『ラースと、その彼女』感あり

2024-03-06 | ネタバレあり

夜明けのすべて(2024年製作の映画)上映日:2024年02月09日
監督 三宅唱
脚本 和田清人 三宅唱
原作 瀬尾まいこ
出演者 松村北斗 上白石萌音 渋川清彦




珍しい人たちを映画に引っ張り出して

珍しい人たちを映画に引っ張り出して
マジョリティに苦しめらる様子をさんざん描いといて
ラストで死ぬ、

で何故か観客は「感動したー」と感想を書く、

みたいな映画がずっと作られてきたし
日本では数年前まであったけれども、、
いやはやようやくここまで来たもんだ。

原作小説があってのことだけど
監督によって原作がよくても映画でズタボロにしちゃうパターンもあるもんね。

**

原作は未読だけど
おそらく原作がこのトーンなんでしょうね。

このトーンを映画にするのって本当に難しいと思う。
単なるほっこりあたたか雰囲気癒しムービーになりかねないもんね。

映像がとにかくずっと素晴らしい。
フィルムかなぁ。
音楽も素晴らしい。

俳優も全員すごいけど、特筆すべきは松村北斗!

何なのこの人。
なんでこんなことが軽々とできちゃうの。。

これこそ雰囲気だけでやっちゃって大失敗しそうなのに。
(なのにファンだけは「美しい涙だったぁ」とか言いそう)

マジでとてつもないレベルの演技をなさったと思うんですけど。。
何なの天才なの?

**

『ラースと、その彼女』感がありますね。


〝ヘンな人〟を周りが優しく受け止める感じ。
基本的には嫌な人が出てこない感じ。

それで言うと僕の好みなのかこれは、
今作はちょっと周りが善人過ぎな感じがありました。

露骨に嫌な人が出てこなくてもいいけど
もうちょい社会構造的な生きづらさみたいなものも描いても良かったかな、と。



ちょいネタバレは以下に

栗田科学の社員さんたちがみんな温かいんだけど、、 申し訳ないんですが、、
足立智充さんにどうしても狂気を感じてしまいまして。。。
だいたい僕が観てきた足立さんは後半で狂ってくるんで。。
そう言う意味もあって全体的にこの映画は温かく優しいだけすぎたかなぁ、、と。。


↓狂気の足立さん。




ドラマ版シーズン2『きのう何食べた』 劇場版からの起死回生!

2024-01-03 | ネタバレあり
※ 『劇場版 きのう何食べた?』のラストに触れます。

**

2021年の映画『劇場版 きのう何食べた?』のの問題点を解消するために生み出されたのかのようなこの素晴らしいシーズン2!!


50代の人気実力ともにみなぎっている俳優2人が主演をした映画の割にはとてもノーテンキな内容でした。

長期間のパートナーシップや
それぞれの家族との関係や
仕事のキャリア、
お互いの健康や病気について
そして結婚制度から外されている同性愛者パートナーの老後について
などには重きを置かず20代俳優が演じてもなんとかなりそうなくらいでした。

この作品が好きな人に向けて作られた映画でしょうし
この作品が好きな人たちはとても楽しく観れたようなので
この両者にとっては良かったことと思います。

**

が、
この劇場版ではシロさんの母は息子のパートナーであるケンジを拒否するとこから始まって拒否したまま終了します。

さらに上乗せして「それでも2人が幸せならそれで良いよね」的な空気感で終わり。

実際劇場出た時に観客の1人が「あんなにいい彼氏がいれば十分だよね」と言っていた。

性的マイノリティの差別問題が「贅沢な悩み」「権利権利うるせーな」になっちゃうので、ほんとやめてほしい。

**

って劇場版の問題点を挙げていましたが、
なんとも素晴らしいこのドラマ版シーズン2!

シロさんとケンジもいつか別れるかもしれない、というリアルさまで含みつつ、
ゲイの老後、親の世話、キャリアなどにも踏み込んで語られていました。

しかもコメディを交えて軽やかに。

ほら、できるんですよ!
ここまでのことが!
やりゃできるんよ!
ありがとうございます!

日本のエンタメ界をよろしくお願い申し上げます!

**

一点、
食費月2万という縛りが甘くなって
妙に豪華な食事が続いたし
「今日はいいか!」みたいな感じで糖分と脂質を気にせず摂取する回が多かった。
スポンサーの影響かと思いますが。。

映画『そばかす』ネタバレあり 題材への素晴らしいリスペクト!! 

2023-12-31 | ネタバレあり
そばかす(2022年製作の映画) 上映日:2022年12月16日製作国:日本上映時間:104分
監督 玉田真也
脚本 アサダアツシ
主題歌/挿入歌 三浦透子
出演者 三浦透子 前田敦子 伊藤万理華


良かったぁ。セリフがずっと良かった。


どんどん話が展開していってもうラストではと思うシーンが来てもそこからまだまだメリメリと物語が進んでく。

この映画に出会うべき人にきちんと出会ってほしい。

**

【作り手】
映画何作ろう
LGBTQとかいっとくか
(ちょっと調べて)なんか不幸そうだから不幸に描いとこ
【観客】
泣いた感動した役者最高!
【役者】
栄誉ある賞をいただき感謝します
【当事者】は?

っていう映画じゃないっ!
そんな映画ではない!

**

脚本はアサダアツシさん。素晴らしいですね。


まだ描かれていないアセクシャル・アロマンティックを持ってくることにも覚悟が必要だろうし
題材に対するリスペクトがハンパない。
リスペクトがあっても熱意と技能がなければムリ。
全てが揃っている。。
すごいアサダアツシ。。

**

この映画がアセクシャル・アロマンティックの全てを掬いきれているのかはわからない。

それは当事者の声を聞かなきゃいけない案件。
外の人間が査定しきっていいことではなさそう。

だからもっと何度も描かれていくべきですね。

「こういうアセクシャルのひともいるんだね」
「人によって違うよね、そりゃそうか」
「でも共通の悩みはあるかも」
ってなるにはまだまだ描かなければ。

**


ネタバレは以下に。




前田敦子と二人暮らし始めそうになったとき、「あ、そういうオチかぁ」と心配になった。
女性同士の連帯かぁ。
大事なことだけどアセクシャル・アロマンティックと結びつけていいのかな…と。。
しかしさすがのアサダアツシ。
前田敦子は同棲に最初からそれほど乗り気ではなかった。 そして前田敦子の結婚により同棲話は消滅。
ま、唐突感は否めない。。
三浦透子は前田敦子の結婚を祝う。
結婚に興味ないからって結婚したくて結婚する人を白い目でみたりはしない。 (そういう人もいるかもしれないけど、それはアクシャルじゃなくてもいる)
この映画の惜しい点。あのチェロの演奏が。。。音はプロの演奏家の方なんだけど。。
で、児童館の新入りとして入ってきた北村匠海。
クールな男子。

三浦透子を映画に誘う。同じ映画館で別の映画観る。
「終わったら集合しましょう」 映画終わって 「なんで私を誘ったんですか」と三浦透子。
北村匠海はシン・シンデレラのデジタル紙芝居を観ていた。 「自分と同じ人がどこかで生きてるんだって。」的なことを言う北村匠海。
あの時空気に負けて中断したシン・シンデレラ。
でも誰かに届いていた。
作って発表するってことはエネルギーの消耗も多いけど、遠くの誰かと繋がれてお互いエネルギーチャージができる。
手持ちカメラで画面がブレブレ。
イキイキした画面。
三浦透子走る。走る。笑顔。私全然生きていける。
終わり

映画『非常宣言』ネタバレあり 日本とアメリカと自国である韓国の描き方

2023-12-20 | ネタバレあり

非常宣言(2020年製作の映画)비상선언/EMERGENCY DECLARATION
上映日:2023年01月06日
製作国:韓国
監督 ハン・ジェリム
脚本 ハン・ジェリム
出演者 ソン・ガンホ イ・ビョンホン チョン・ドヨン キム・ナムギル イム・シワン キム・ソジン パク・ヘジュン ウ・ミファ ヒョン・ボンシク ムン・スク




面白っ!怖っ!


**

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経験もあるし
隣国(日本とアメリカ(グアム))ならではヒリヒリ感もあり
センシティブなとこを突かれて、
通常のパニック映画よりも観客の反応は強めですね。

**

日本とアメリカと自国である韓国の描き方についてはコメント欄に。


**

申し訳ないけど、この映画は今くらいに観て良かったと思いました。。
新型コロナでヒリヒリしている時に観たらもっともっと辛かったことでしょう。。

今でも後遺症で苦しまれている方も多いと聞きます。
僕も友人の甥が重めの後遺症で苦労なさってると聞いたので、新型コロナも全然終わった話ではないという思いはあります。

**

なのでこの映画は十分な体感を持って恐怖を感じました。。


なんかどの人の行動も責められないというか、、
クソみたいに描かれている男もいるけど果たして…って感じするし。。

**

で、どういうわけだか韓国を代表する実力派スターが集結してんのさ。

イ・ビョンホンとソン・ガンホ!
キム・ナムギル!
女優さんもみなさん存在感あって素晴らしい演技と思って調べてみたら演技賞取ってる方ばかり!
スター大集合なのね。

映像も音響も素晴らしいから、今飛行機がどっち向いてどんな角度でどうなっちゃってるのかがハッキリわかるし、
そのことでサスペンスがちゃんと生まれる。

話も二転三転、四転五転するわりにわかりやすいし、少なくとも迷子にはならない。。

**


た〜だ、、、話の着地がどこなんだろうと、、映画の終盤になるとそればっか気になるわけさ。


それはつまり燃料の残量によるわけよね、本来は。
なのに、燃料の残高を全然見せてくれないのでハラハラ感が削がれる。。

**

ネタバレは以下に!






中盤までは、さすが韓国映画!
パニック映画に社会派と人間ドラマ、さらにはコメディとカーアクションまで入れ込みながらもスピーディーで分かりやすい展開!さすがです!と感動していたけれど、、
終盤、
重めの人間ドラマを大味で描いている割に、
全員が「着陸やめます」と同意し出すとか
効かないと思ったワクチンが実は効きましたとか
通信切られたけど家族経由で連絡取れましたとか
ソウル空港OKからの軍の空港に降りますとか
風向き悪くなったり良くなったりとか
国民投票YESが急に優勢になってくるとか、、
なんかポンポン変わりすぎて、、ちょっと話に乗ってるの大変でした。。
ま、、言うてもエンタメパニック映画ですからね。。
**
まずアメリカがグアムの空港に着陸することを拒否しましたね。

次に日本が成田空港の着陸を拒否。
副機長が「非常宣言」を布告したのに自衛隊の戦闘機が威嚇射撃してきました。
結局成田空港の着陸は断念。
日本の首相は「ワクチンがあるから大丈夫って言ってるけどウィルスは変異してるんだからそのワクチンは効かないんじゃないの?日本としては日本国民を守る義務がありまして…」と主張。

韓国側も「確かに。日本側の言い分もわかる…」とある程度納得してくれた。

韓国国民の中でも、ウィルス感染した飛行機の着陸を反対するデモがソウル空港に集結。
「いつ書いたの?」っていう横断幕やプラカードを持って自国民の着陸を拒絶するデモ隊を描いた。

そうこうしてる間に乗客全員感染。

「家族にうつしたくない」ってことで着陸しないことを決断。(海に墜落するつもりだったのかな…。それはそれでどうなの…)
機内に妻が乗ってる刑事がウィルスを打って感染してワクチン注射!ワクチン効いた!

飛行機に連絡して「ワクチン効いたよ!」っつって乗客とCAたちは「じゃあ着陸しようよ」っつって着陸成功。

刑事はかなり体調悪い様子だけどどうやらほとんど乗客は健康な状態になった模様。
「え、ホントは全員死んだの??」と逆に不安になるくらいに幸せそうなほっこりした屋外パーティーの様子で映画終わり。

ま、全然良いんだけど、ラストあたりで一応日本とアメリカの言い分というか、あれもしょうがなかったよね的な、いきなりのことで対応ムズかったですよね的なカバーがあれば、、批判は少なかったんだろうな、と思ったりはします。


ネットフリックス映画『ノーウェア:漂流』ネタバレあり 年間一万個のコンテナが船から海に落ちてしまっているとのこと

2023-12-20 | ネタバレあり

ノーウェア:漂流(2023年製作の映画)Nowhere
製作国:スペイン
上映時間:109分
監督 アルバート・ピント
脚本 アーネスト・リエラ ミゲル・ルス インディアナ・リスタ シアニー・ウィンスロー テレサ・デ・ロセンド
出演者 アンナ・カスティーリョ タマル・ノバス トニー・カルビーリョマリ アム・トーレス イリーナ・ブラボ ビクトリア・テイへイロ ルーシア・ソリア メアリー・ルイス


年間一万個のコンテナが船から海に落ちてしまっているとのこと。
もしその中に亡命者たちが隠れて乗っていたら??

**

国外脱出(亡命)しようとコンテナに潜り込んで船に乗せられたものの
荒波でコンテナが海に放り出されてしまう。

そもそもコンテナにはたくさんの亡命者が乗っていたけど、ある出来事により主人公1人になってしまっていた。

しかも妊娠中!

海の上にぷかぷか浮いたコンテナに閉じ込められた妊婦の運命は!?

**

ドキュメンタリーアニメ『FLEE フリー』でアフガンから難民がコンテナに潜り込んだあとの惨劇を観ていたので、、
冒頭のコンテナ乗り込みパートが観てて苦しかった。。
もう怖い怖い。。怖かった。。

でも、、
他に観るべき映画がたくさんあった。。


ネタバレは以下に!








いやいや、産まれちゃったよ。。
食べちゃったよ。。
 クジラが赤ちゃん助けたよ。
 女優さんが頑張ってるので言いにくいんだけど、、 何がつまんないって「偶然助けが来る」か「偶然陸地に流れ着く」しか助かる方法ないんよね。
 その偶然ゴールに向かって、 いろんなサスペンスやスリラーを順番にやっていくんだけど 主人公ひとりしかいなくて途中で死ぬわけねーんだからそんなハラハラしないよね。。 
ラストはコンテナが沈んで発泡スチロールで浮かんだ赤ちゃんがどっかながれてったけどクジラが近寄って赤ちゃんが泣いた声で母が赤ちゃんを見つけて、 発泡スチロールで浮いてたらカモメが寄ってきてていうことは陸地が近いじゃんっつってたら 漁船が来て赤ちゃん助けて 紐で繋がってた母を海から引っ張りあげたら 心停止してたのを漁師の女性が人工呼吸して息を吹き返してメーデーメーデーっつって陸地見えてきて良かったね!って終わり。

映画『月』 ネタバレあり 僕を殺そうとする人がいる 

2023-10-27 | ネタバレあり

(2023年製作の映画)上映日:2023年10月13日 製作国:日本
監督 石井裕也
脚本 石井裕也
原作 辺見庸
出演者 宮沢りえ 磯村勇斗 二階堂ふみ オダギリジョー 長井恵里 大塚ヒロタ 笠原秀幸 板谷由夏 モロ師岡 鶴見辰吾 原日出子 高畑淳子



四コマ映画『月』




オススメはできない。
どうぞ観に行って!とは言えない。
しかし満点だっ!

**

ある種の〝嘘臭さ〟

ホラー映画のような手法や
すごく不自然なカメラワークや照明が多用されています。
全体的に芝居も大きかったと思います。

↑これらのある種の〝嘘臭さ〟がとても機能してると思いました。
強烈で圧倒的な事実があるからこそできる技法。

所詮映画は嘘(作り物)だよ〜、というのめり込みすぎてない感も良かった。

しかも、ある女性キャラが〝嘘〟をつくんです。
嘘をついて命を守ろうとします。

嘘っぽさってのはそことも繋がると思いました。

「真実を!」「本当のことを!」ってキリキリキリキリ突き詰めてしまうと、見失うこともあるのでは、と。

かと言って「嘘には良い嘘もあるんだよ〜」なんていう短絡的なメッセージなわけもなく。。

だからこの映画は難しい(好き)。

**

僕を殺そうとする人がいる

僕は、
日本のある政治家の言うところの
〝生産性のないLGBTQ〟のうちのGの当事者です。

この映画で描かれる凶器(狂気)は僕にも向いているものです。
終盤のシーンはほんっっっっっっとに怖かった。

見終わったあと手も体も震えたし、今でもドキドキしている。
(もし全容が映されていたら僕は気絶してたかも。そんくらいのことです。)

自分を殺そうとする人がいて、そいつはそれを正義だと考えていて、そいつの背中を押すような言動をする権力者がいる。

その事実をドーーーーンッと力強く、
勇気と誠実さを持って描かれた映画が作られて公開されたことは、
大きな希望に感じました。

**

が、
衝撃が強いのであまりオススメはできない。。

僕はおっさんで図太くもなってるし
映画をそれなりに観てるので映画との距離感も保てている方だと思います。
それでもショックが大きかった。。

で、
そんなに親切な映画でもないので感じ方も難しいと思う。
わかりやすい落とし所に連れて行ってくれる映画でもない。

平和で安静な気持ちにはさせてくれないことでしょう。
ご覚悟っ!

**

誠実って何かね

石井裕也監督に対する信頼感ってのもあったけれども、やはり画面に映っているものから「誠実さ」をなぜ感じていました。

上記の通りのホラー映画っぽい映像技法などが、
この題材をエンタメとして消費しようとしてるんじゃないかと心配にもなったけど、
きっと大丈夫なんだろうと思えたのは、やはり映像から伝わる「誠実さ」があったから。

誠実さって何なのだと自問してみてもわからないのですよ。
ただそう感じるだけ。

でも、全100ページのパンフを読んでみると、事実としてこの映画が誠実さを持って作られたことがよくわかりました。

可能な限り障害者施設へ取材をしたり
俳優が施設に入って障害者の方と温かい関係性を築いたり
音の聴こえない俳優をキャスティングしたり
障害者の方も俳優として出演したり。

しかもこれらが「こんだけやったからいいでしょ」という免罪符のための準備ではないことが映画を見たらよくわかる。

免罪符なんか機能しそうにないくらいにやり尽くした映画になっているという点からも、映画というものへ誠実さも感じました。



相当な心配

観る側にも相当な覚悟が必要な映画ですし、観た後もそれはそれは疲れるわけですが
パンフを読んだり、話を聞いたところによると
本当にこの映画の製作は大っっっっっ変だったみたいです。
想像以上でした。

まずは製作が始めるまでにいろいろ反対されたとのことですし
これだけのキャストが集まっていても途中で止まったらしいですし
「この映画が上映された後は今までと同じようには生きていけないかも」的な言葉も聞きましたし、

それくらいにこの題材ってのはアンタッチャブルなものなのかと。。

***

優生思想を持った犯人を描く映画ですからもしかしたら共感しちゃう観客が出てくるかもしれない。

という心配もあるわけですが、

でもどう考えても「優生思想を持った犯罪者を描いた映画」よりも
優生思想を持ってる政治家が存在していることの方がヤバイでしょうよ。

また、この映画が誰かの都合のいいように切り取られたり
メッセージが湾曲されて便利に使われるかもしれないという心配もあったでしょう。

どちらにしても映画が悪いのではなく、現実社会が悪いのに、その現実社会に怯えて映画が自粛させらてしまうのだとしたら、
もう、目も当てられない事態でした。。

***

が、
この映画『月』はちゃんと誠実さと勇気を持って作られたし、上映されたわけです。

口まで水に浸かってギリ鼻呼吸で生きているような世界ですが、まだ未来を照らす明るい光が、細〜い細〜い三日月くらいに細い光かもしれないけど、まだ光はあるんだなぁと思わせてくれる映画です。

ですし、こういう映画を見たならばちゃんと自分の生活、社会に何かしら落とし込んでいきたいなと自戒しました。




小説『湖の女たち』

偶然数日前に、小説『湖の女たち』を読んでいました。
全然知らなかったんですがこちらも似たような題材が含まれている内容でした。
しかも『湖の女たち』もなかなかに難しい展開でした。。
けして安心したラストに行ってくれない。

読者を「気持ちいい正しい安全な場所」に置いてくれない。

松本まりかと福士蒼汰で映画化もされるわけですが、どちらかというと心配ですね。。。
大森立嗣監督なので大丈夫かとは思いますけど、、小説自体がだいぶ素っ頓狂なので、、一体どうなることやら。。

むしろオミットするなら松本まりかと福士蒼汰の役だと思っていたので。。
まさかそのまま映画化するのかしらん。。




ラストネタバレ






終盤、宮沢りえと磯村勇斗が大量のセリフの応酬をします。
言葉で全部言い合う。

磯村勇斗にぶつけているはずが、途中から向かい合っているのが自分自身になっている。
そして自分自身がめちゃくちゃ言い返してくる。
自分の欺瞞が偽善を自分が暴こうとしてくる。
でもけして負けてはいけない。

↑映画的に上手な(上品な)シーンではないと思うけど、この無骨さや力強さは好きだし、
この映画の根幹だと思います。

***

ラスト、殺人事件が起きる。それをテレビで知る。
所詮、この主人公夫婦にとっては他人事なのだという残酷さ。
逃げようと思えば逃げることもできてしまう残酷さ。
でもこの夫婦は向かおうとする。
原動力は「愛」だ、と。
しかも「がんばろう」っていうとてもとても恥ずかしい言葉。

もはやそれしか残っていないんだもん、しょうがないじゃん。
前作『茜色に焼かれる』でも「ま、がんばりましょ」だった。
情けなかろうが、ダサかろうがしょうがないじゃん、、、それしか残ってないじゃん、、もう。。。


映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』原作も女性!監督も脚本家もプロデューサーも女性! 

2023-09-05 | ネタバレあり


SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)She Said上映日:2023年01月13日製作国:アメリカ
監督 マリア・シュラーダー
脚本 レベッカ・レンキェヴィチ
原作 ジョディ・カンター ミーガン・トゥーイー
出演者 キャリー・マリガン ゾーイ・カザン パトリシア・クラークソン



たまたま『ウーマン・トーキング 私たちの選択』を観た後だったのでとてもシンクロしていました。
ていうかどっちも現代の話なんだけど…。
むしろ1992年から始まる『シー・セッド』の方が古い。。
どうしても『ウーマン・トーキング』が1800年代くらいにしか見えなくて。。

**

MeToo自体はアメリカの市民活動家タラナ・バークさんの活動をきっかけに2007年から地道に「MeToo」が提唱されてきた、とのこと。
世界的ムーブメント#MeTooが起こったのは2017年。
ニューヨーク・タイムズの記者ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイーが映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ告発記事を発表したことがきっかけ。

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映画界がきっかけだったし世界的なニュースでもあったので、もちろん情報はたくさん入ってきてました。
ただ、特に日本では#MeTooを潰そうとする言説も目立っていたし
冷笑系も多かった。

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ワインスタインの事件の流れが時系列で描かれていたので、とてもわかりやすかった。
ラストでは、問題意識を再認識しつつも
ある種のカタルシスも感じられるので
社会派エンタメ作としても楽しめました。

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記者が2人とも女性だったのが「彼女たちが話し始めた」という結果に早く結びつけた大きな要因の一つだと思う。
そもそも男はこの問題に取り組めたかどうか疑問だし
同じ女性だからこそ取材する側もされる側も信頼できる部分もあったのでは。
てことは、ニューヨークタイムズで記者としてバリバリ働く女性がいたってことがとても大事なことなんですね。
『ウーマントーキング』での女性には学校に通わせないってのはかなり極端に思えるけど
実際そういう国もまだあるだろうし
受験で女子生徒の点数を低くしていたのは日本だし、
女性の社会進出を邪魔する動きや思想はいまだにある。
だからこそ、女性が働く現場にたくさんいるってことが、女性の声が無視されない社会の形成には大事なんだと思いました。

**

特に
この映画は原作も女性(記者の2人)、
監督も脚本家もプロデューサーも女性。

『ウーマン・トーキング』も原作、監督、脚本家、プロデューサーが女性。

映画『ウーマン・トーキング 私たちの選択』 ネタバレあり 宗教に限らず「考えるな」「疑問を持つな」は一般社会の中でも隷従のための便利な言葉として使われているでしょう

2023-09-05 | ネタバレあり

ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)Women Talking
監督 サラ・ポーリー
脚本 サラ・ポーリー
原作 ミリアム・トウズ
出演者 ルーニー・マーラ クレア・フォイ ジェシー・バックリー ベン・ウィショー フランシス・マクドーマンド


戯曲的という批判(?)もあるけど、
こういう閉ざされたシチュエーションなんだし、
彼女たちが「話す」ことが一番のモーション(動作)なわけだし、
話すってことは、「考える」「考えを持つ」ってことで、
それは厳格なキリスト教徒である彼女らにとっては禁忌に近いことだったわけで。
***
「2005年から2009年にボリビアで起きた実際の事件を元に描かれている」っていう説明を何度読んでも、どうしても映像を見ると少なくとも1800年代くらいに見えちゃう。。
映像というよりは、
女性たちが学校に通わせてもらえないとか、
地球儀も見せてもらえないとか、
文字の読み書きができないとか、
性の話ができないとか、
男に隷従しているなどの描写が到底2000年代の話に思えない。。
キリスト教の一派「メノナイト」のボリビアのコミューンでの事件なので相当特殊ではあるけど、
上記の女性差別に関しては、一般社会でもまるっきりありえない昔の差別の話って感じもしないのも事実ですよね。
この映画の製作者であるフランシス・マクドーマンドもそのように考えたことでしょう。
(メノナイトでも都市部で一般的なレベルでの質素な暮らしをしている人も多いとのこと)
***

「なんでそんなこと言うの?
まるで私に選択肢があったかのように!」

「全能の神だというなら何で子供と女性を助けないの?
自分の子供や他の子供達を守るために邪悪な者を殺すことが罪だというなら私はこの命をかけてでも神に抗議する。」

**
6/2(金)公開『ウーマン・トーキング 私たちの選択』特別インタビュー映像【ルーニー・マーラ、クレア・フォイ、ジェシー・バックリー】第95回アカデミー賞®脚色賞受賞!!赦すか、闘うか、それとも去るか―― 2010年、自給自足で生活するキリスト教一派の村でwww.youtube.com



以下、衝撃が過ぎるので読まな方がいい場合もあるかと思います


















2010年。自給自足で生活するあるキリスト教一派の村で、
少女に家畜用の睡眠薬で眠っているところをレイプすることが日常になっていた。妊娠することもあった。
知識のない少女たちは自分が何をされたのかもわからないし、
男たちには「嘘」もしくは「悪魔の仕業」だとされた。
しかも薄々勘づいていた大人の女性たちは自分たちも被害を受けつつ全体のために黙ってきたことから、少女たちを黙らせてきた。

しかしある時、
眠らされていたある少女が目覚めてレイプ犯を見て、今までの犯行(レイプ犯は何人もいる)を隠せなくなり、
男たちは村から一時的に追放される。

男たちと闘うか
女たちが去るか
赦すか。
彼女たちはそれをひたすら話し合う。
でも十分な時間はない。

「女性は考えることを許される。
女の子は学校で読み書きを習う。
学校には世界地図を掲示して自分がいるところがわかるようにする」

「自分を疑うよう仕向けられた。それが一番辛かった」

「全能の神だというなら何で子供と女性を助けないの?」

「私は地獄に堕ちてもいい。男が私の4歳の娘の体で欲望を果たそうとするならその前にその男を殺す。」


**

ネタバレは以下に。





ジェシー・バックリーの終盤のセリフ
「私たちには3つの権利がある。
子供の安全を守ること。
私たちが揺らぐことのない信仰を持つこと。
そして、自ら考えること。」
外界を知らず文字の読み書きもできない彼女らが、
人生をかけて守ってきた信仰を捨てることでしか
自分たちの自由や安全が守られないわけではない、ということに気づいていくんですね。
信仰があっても自分で考えていい、と。
「考えるな」「疑問を持つな」ってのは宗教の中ではよく出てくることですけど、
宗教に限らず「考えるな」「疑問を持つな」は一般社会の中でも隷従のための便利な言葉として使われているでしょう。
自分で考えていいし、信念を貫いていい、と。
それが信仰や社会の仕組みを壊すことにはならない、と。


ドキュメンタリー映画『キエフ裁判』 現在のウクライナとロシアを考えると〝正義〟という本当に恐ろしい言葉として聞こえる

2023-08-30 | ネタバレあり

キエフ裁判(2022年製作の映画)The Kiev Trial
上映日:2023年08月12日
製作国:ウクライナ オランダ
上映時間:106分ジ
ャンル:ドキュメンタリー
監督セルゲイ・ロズニツァ
脚本セルゲイ・ロズニツァ







ナチスだけを断罪していれぼ映画として成立する時代はとっくに終わっていました。


とくにソ連、ウクライナの話ですからね、この映画は。。

もう〝正義〟という言葉が怖すぎる。。
(同時期上映の同監督の『破壊の自然史』と併せてドキュメンタリー二選として『戦争と正義』というイベントタイトルがついています)

**

キエフ会議とは


第二次大戦が1945年の9月に終戦し
翌1945年1月に
現在のウクライナ、
当時のウクライナ・ソビエト社会主義共和国の首都である
ウクライナ発音でのキーウ、
ロシア語の発音でのキエフにて行われた
ナチ・ドイツの戦犯を裁く軍法会議のこと。

ナチ関係者の15名を裁判にかけ、
被告人の論告と目撃者・被害者の証言を経て
12名の絞首刑が執行されるまでを
アーカイブ映像を編集して
効果音もつけて
ジリジリジリジリジリジリ見せていく。。

**

アーカイブ映像ってことは記録映像ってことでしょう。
「あとでドキュメンタリー映画作ろっ」と思って撮ってない
ニュース映像くらいの気持ちで撮られているはず。

なので映像はものすごい淡々としている。
悪いけど前半は眠かった。。。

ただ、被告人(ナチ関係者)と通訳者を丁寧に行き来する当時のカメラマンのカメラの動きはその心情が伝わってくるのが面白かった。

ナチ関係者はドイツ語なのでロシア語話者であろうソ連のカメラマンには、いつが話の終わりなのかがわからない。
たまに「あ、まだ証言終わってなかった?」って感じでカメラがサッと戻ったりするのが、
77年前のカメラマンの「あ、やべ」みたいな気持ちがカメラワークから伝わってきて、人間味があって面白い。

**

ナチ関係者の証言がまるで他人事のようだったのも印象的。


アドルフ・アイヒマンの裁判の様子も観たことありますけど、
高校の職員会議みたいな顔して座ってたんですよね。

「命令されたからやりました」「私は下っ端です」っていう。
やらなかったら自分が殺されていたし
自分がやらなくても誰かがやったし
自分よりもっと上手く(早く多く)やっていたかもしれないという謎の言い訳さえ出てくる。

「ホントにこの人たちが何万人も何千にも殺したの?」と信じられないくらい凡庸な男たち。

映画観てて眠くなるんですよ。。
話の内容は凄惨なんだけどあまりにも本人たちに実感がないから。。

**

後半、
目撃者や被害者(逃げることに成功した人)の証言になると突然眠気が吹っ飛ぶ。


『サウルの息子』とか『サラの鍵』とか『戦場のピアニスト』とか『ヒトラーと戦った22日間』とか『シンドラーのリスト』とかたくさん観てきてますが、
それでも本物の被害者や目撃者の証言の衝撃が強すぎる。。

大きな穴の淵に立たされて銃で撃たれる前に穴に飛び降りして
死体の山に着地して死んだふりをして
生きたまま土を盛られて埋められて
息が苦しくなって
息が苦しくて死ぬより撃たれて死んだ方がマシと思って
土から這い出たらもう夜になっていたから
うまくやれば逃げられるかもってことで
ナチに見つからないように土から這い出たけど
照明が当てられて動いてる体は銃撃を受けていて
その銃撃を避けてなんとか逃げた女性の証言とか本当に凄惨。。。

彼女がどれほどの勇気や使命感で証言したか。
思い出したくも語りたくもないはず。
もしかしたら「しゃべりやがって!」と恨みを買うかもしれないし。

その覚悟と話の内容がもう衝撃すぎて。

**

ナチのジェノサイドはユダヤ人だけではない。


混血や精神病者、今作では語られなかったが同性愛者も。

銃殺して穴に放り込む。
まだ動いている場合にはそこに手榴弾を投げ入れる。

その時ナチたちは酒に酔っていたらしい。
そういう時に酒を飲んでいたってのは他の映画でも描かれていた。

逆に酔っ払ってなきゃできないこと。
変な話たけど、ジェノサイドを執行するドイツ軍人の精神的負担も課題だったらしい。

**

そして「裁判最終日」というテロップ。

あ、この映画終わるんだ。
ずっと彼・彼女らの証言を聞きながら俺は死んでいくのかと思ったら、そうか映画なんだから終映の時間が来るわけだ。

当時のウクライナはソ連の一部。
ソ連が正義顔でナチ・ドイツを断罪する。
15名中12名を絞首刑に。

執行当日。
20万人と言われる群衆が見物に集まっている。



ラストネタバレ(?)は以下に。






人が死ぬ映像って初めて観たかも。
戦争のドキュメンタリー映画とか記録映像とかで 銃で撃たれたとか爆撃を受けたとか断崖から飛び降りたとかは観たことあるけど、 銃で撃たれたからって即死してるかどうかはわからないし、 爆撃では光や煙で内部は見えないし 飛び降りた先まで映像で見せられることもなかった。
今作では絞首刑の記録映像を見せられた。
作劇では観たことあるけど、、 これは事実。
さっきまでのらりくらりと言い訳や仲間への押し付けを喋っていた男たちが、自分の首を縄にかけて足を外され、寸前まで生きていたのに死んだ。

**

死刑が執行された瞬間歓声があがる。
そして、20万人の観客が吊られたナチ関係者たちを間近で見ようと集まってくる。
誰か死んでんじゃないかって思うくらいのぎゅうぎゅう詰めの群衆。
ナチに対する恨みもあるでしょう。
キエフの町は建物がいくつも破壊されたままになっているし。
仲間や友達や親戚や家族や恋人が殺された人もたくさんいるでしょう。
「当然死刑だ!」と心から願った人もいるだろうし その人の話を詳しく聞いたら きっと僕も近い気持ちになるのでしょう。
でも、この群衆は不気味に見えました。
戦争を経験して嫌でもたくさんの死体を見てきたからちょっとおかしくなっていたりもしたのでしょう。
それも含めて、やはり不気味でした。

**

「戦争と正義」
ナチだけを断罪しておけば成立する時代は終わっている。
戦争自体を改めて強く否定したい。
そして正義もまた危険。
正義側としてナチ・ドイツを断罪したソ連。
現在のウクライナとロシアを考えると〝正義〟という本当に恐ろしい言葉として聞こえる。


映画『バービー』バービー人形誕生の前にあった西ドイツのビルド・リリ ラストネタバレあり

2023-08-15 | ネタバレあり
バービー(2023年製作の映画) Barbie  上映日:2023年08月11日
 監督 グレタ・ガーウィグ
 脚本 ノア・バームバック グレタ・ガーウィグ 
出演者 マーゴット・ロビー ライアン・ゴズリング



まず僕はマーゴット・ロビーの喋ってない時の演技が本当に好きなんです。本当に表情が素晴らしい。毎回泣きそうになっちゃう。

***


あと僕はとんでもない映画を観るという覚悟で臨んでいたので、実際予想を超えるとんでもない映画だったことは予想していました。

なので『バービー』楽しそう!っつって観に行った方においては、心中お察ししますっていうか、お疲れ様ですっていうか。

でも
『バービー 〜女性差別の過去、現在そして未来、さらに男性差別について〜』っていう日本語タイトルだったら炎上するもんね。。。


◼️「女性が主人公ならラストは結婚させるか、しなせろ」


ピンクの服着て映画館に行ったくらいにグレタ・ガーウィグ&マーゴット・ロビーで『バービー』撮るってニュースを聞いたときから期待しかなかった。


どんなパワフルな映画が観れるんだろう!と?同監督の『ストーリー・オブ・マイ・ライフ わたしの若草物語』ではラストの編集長のセリフ「女性が主人公ならラストは結婚させるか、しなせろ」からの鬼展開が楽しかったし。


グレタ・ガーウィグ&マーゴット・ロビーとバービーってのが正反対だと思っていたのでどんなエクストリームな展開と結末にするのか、きっと僕には考えつかないレベルのことをしてくるのだろうと。
6時間かと思ったら114分。
そりゃ濃密ですよ。
濃厚&鬼展開。
なのにケンの歌の長いこと長いこと(←いいですよねぇわざとうんざりする程長いんだもん…)。。


物凄くわかりやすい。
終盤なんか説明台詞オンリーですからね。そこがマイナスなくらい。でもここまでわかりやすく噛み砕いて話さなきゃいけないって判断したんでしょうね。


成功かと。現時点で10億ドルのヒット。
そして拒否反応もわんさか!それは〝伝わった〟からこそ。


正直今までの映画たちだってこれくらいのこと言ってきたんですよ。でも『バービー』の直球さ&濃度は異常事態!


痛快!痛&快!今の所〝痛〟が勝ってるけど。




◼️バービーだったマーゴット・ロビー



古い話ですけど、「アリーmyラブ」という海外ドラマがありまして、、、
その中にジョージアという女性キャラがおりました。
彼女はブロンドで高身長で超絶美女で「バービー」とあだ名をつけられていました。
それは誇らしい感じではなく、悪口的なニュアンスで。


ハリウッド映画には”ブロンド役"という役柄があって、それは主役の男性に添えられるセクシー美女のこと。


高身長の美形女優はほぼそのセクシーなブロンド役を登竜門にするしかなく、
その後なんとかして演技に転向しないとキャリアがうまくいかない。


マーゴット・ロビーもブレイク作『 ウルフ・オブ・ウォールストリート』ではブロンド役だった。
しかし女優としてのキャリアを積みながらも、さっさと映画プロデューサーとして自分が主役の(アカデミー賞取る気満々の)『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』を製作。
そして演技が絶賛。


そんで演技賞の常連になりつつも、
自分が出ない『プロミシング・ヤング・ウーマン』の製作製作に入ったり、
ハーレイ・クイン役が当たって単独映画の話が来ても
「スピンオフ映画はハーレイ・クインの単独主演作ではなく、クイン以外の女性キャラクターも複数登場させて欲しい」
っつって実はBIRDS PF PREYというチームの映画で女性キャラの活躍の場も増やした。


『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』もめっちゃ面白かったし。


マーゴット・ロビー大好き。
ノーベル賞あげてほしい。


でそのマーゴットが『バービー』でバービーやるっていう。ブロンド美女役をやるっていう。そりゃ一筋縄でいく映画になるわけないのさ。




◼️「ポリコレ映画め!」と言われているが


まず出だしでギョッとしませんでしたか?
幼女たちが赤ちゃん人形を破壊していくシーンありましたよ。ショックを受ける人多そう(赤ちゃんとは遠い存在の僕でさえちょっと引いた)なシーン。
ポリコレめっちゃ気にしてる映画とは思いませんでした。


ケンやマテル社を中心とした「男性の描き方」もかなり一面的で「そりゃ反感買うわ」っていうシーンが多いし長いしホントに長かった。。
ポリコレめっちゃ気にしてる映画とは思いませんでした。


アジア系、イスラム系の女優をそんなに見かけなかった。ポリコレめっちゃ気にしてる映画とは思いませんでした。


冒頭の赤ちゃん人形破壊のシーンについては「この映画はブラックコメディですよ。
こういう感じで行きますよ。ていうか所詮人形ですよ」というメッセージだと思いました。


男性の描き方については「今まで散々女性を一面的に描いてきて時代が変わって女性を多面的に描き始めたらポリコレだ!ポリコレだ!って騒いで、男性が一面的に描かれると怒り出すってナニソレ?」ってことかと。


アジア系、イスラム系女優少なかったことについては、確かに男性キャストより少なめだったと思う。
同時に「はいはいアジア人も入れときましたよ…」的な表面的なポリコレ配慮にもウンザリしているし、つまりはポリコレめっちゃ気にしてる映画とは思いませんでした。




◼️バービーを描くことは人間を描くこと


「バービーを描くことは人間を描くことになるだろう」とグレダ監督は制作前から思っていたとのこと。


バービーというものを必要とし愛し嫌悪もしてきた人間を描いたのですね。


この映画の冒頭で「女児には赤ちゃん人形しか与えられなかった」と言っていたように、女性と生まれたからには一本道に「お母さん」に向かうものだと刷り込まれていた。


のが、17歳のバービー人形の登場で「自由で楽しい女性としての人生があるんだ」ときっと女児たちはテンションぶち上げだったことでしょう。


とはいえバービー人形誕生の前に「ウーマンリブ」が起きたのだろうと思ったらバービー誕生は1958年でウーマンリブは1960年代後半からってことなのでウーマンリブよりも10年くらい前にバービーは誕生してたんですね。




◼️1955年 西ドイツ ビルド・リリ


さらにそれより早く、1955年の西ドイツのグライナー & ハウサー社がファッションドールとしてのビルド・リリを発売。


ビルドというタブロイド誌で連載されていた漫画『リリ』の主役リリを人形化した商品。
ファッショナブルで見た目はバービー人形と見分けがつかないし、すでに特許を3つ取ったくらいに高性能。


価格は2万円くらいかと(平均月給が200~400マルクの時代に12マルク)。
最初はジョークとして男性向けに販売されていたのが、次第に子供達にも人気になったと。


その頃、
自分の娘バーバラが自分よりも年上の女性になりきって紙人形で遊んでいる姿を見たりして
「それまでは10代や大人になるという基本的な考え方を理解できる女の子向けの人形が欠けていた
」としてバービーの生みの親ルース・ハンドラーはビルド・リリを買ってきた。
ビルド・リリはルースが作ろうとしていた人形と同じコンセプトだった、と。
で夫との会社"Mattel"で製造販売&大ヒット。




◼️今までの映画でも同じメッセージは繰り返し語られてきた


男性社会の歪さとか女性活躍促進会議に女性がいないとか女性にはあらゆるものが押し付けられているとかマチズモうざいとか「あなたであればそれでいい」とか。


ラストでいちいち男女が恋に落ちなくてもいい(落ちてもいい)とか女性差別の裏には男性差別もあるとか


上映時間144分の中でいろんな〜〜〜〜〜〜(ドリカムの「めまい」)〜〜〜〜〜〜メッセージを言ってて、受け取るのも大変だし、
新しいメッセージがあったのかもしれないけど特に新しいのはなかったようにも思うし。。


ただ、
これだけの量と密度と勢いでこれらのメッセージをぶつけてきた映画は初めてなんだと思います。
爆誕です。


「届いた」からこその10億ドルの大ヒットだし、
「届いた」からこその反感の嵐もものすごいことになってる。


◼️わかりやすい。終盤はほとんど説明セリフ


画面が楽しい映画ですけど、説明セリフが多い。
終盤の大事なメッセージとかは全部セリフ。
ある老女との会話のず〜っと説明セリフ。


↑こんなワケないのよ。グレダ&マーゴットの映画で。もっとサラッと映画的な表現で伝えることができるはずなんよ。


でもそうじゃなくて、つらつらつらつらつらべらべらべらべら喋るわけ、特に終盤。


なんでか。そうしないと伝わんないと思ったんでしょうよ。
アメリカ・フェレーラさんがほぼカメラ目線みたいな感じであれだけ捲し立てないとダメだって思ったんでしょうね。


で、やっと伝わった。伝わった証拠としての反感の嵐。


「映画を観たい」と僕は思いましたけど、
そういう映画を観たいならそういう映画を見ればいいだけのことです。
そんなことよりももっと大事な大事な映画です『バービー』は。


この映画を観てあらゆる年代の女性たちがどう感じたのか、パワーをもらったのかを僕が語る資格はありません。


きっと励まされた気持ちになるのではと想像はしますし、僕はとてもうらやましかったです。


僕たちについてもド全力で励ましてくれる傑作&大ヒット映画があったらいいなと。

ラストネタバレは以下に


バービーは人間になりましたね。
まさか人間になるとは。。
『トイストーリー4』では野良おもちゃになってましたが
まさかの人間化。。
グレダ監督は「バービーを描くことは人間を人間を描くことになるだろう」と言ってましたね。
バービーは人形を卒業して人間の女性になりました。
バービーは人形なんだよ、と。
人形はおもちゃなんだよ。
卒業するものなんだよ、と。
冒頭で女児たちが赤ちゃん人形を破壊するシーンを思い出します。
あれは赤ちゃんではなく人形。
人形だし、所詮おもちゃの話だよ、と。
その後婦人科で行くのはまぁブラックジョークでしょうね。。



映画『CLOSE/クロース』ネタバレあり 実際にたくさんいる若者たちへの視線 

2023-08-07 | ネタバレあり
CLOSE/クロース(2022年製作の映画) Close 上映日:2023年07月14日製作国:ベルギーオランダフランス上映時間:104分
監督 ルーカス・ドン
脚本 ルーカス・ドン アンジェロ・タイセンス
 出演者 エデン・ダンブリン グスタフ・ドゥ・ワエル



男らしさへの期待」

是枝監督の『怪物』的なものかと思って、好評は聞いていたものの、二の足を踏んでおりました。
LGBTQ+イシューというよりは
〝男性性〟の方がテーマのようですね。

以下のインタビューで監督は「男らしさへの期待」という言葉を使っておられます。
「男は男らしく!」って言われた時に、
女子同士でなら許される同性同士の距離感が男子だと許されなくなってくる。
(そこにはもちろん同性愛嫌悪という下地があるからこそなのでセクマイイシューでもある)
そうじゃないと輪から外されてしまう。

この映画だと本当に〝輪〟を形成してました。
校庭で喋ってるだけでもいちいち〝輪〟。
ボール遊びでも〝輪〟。

必死にその〝輪〟の円周にいようとするレオの姿が辛いんだけど、
確かにああいう場面は学生生活の中ではマジでたくさんありましたね。。。
一方、レミはその謎の〝輪〟に入るか入らないかについては気にしていないようでした。

ただレオからの拒絶が悲しかったのでしょう。
レミもなぜレオが自分と距離を置こうとしているのかはわかっていたと思うんです。
レミは「期待される男性性」に応えようとする男の子ではなかったようですが、世の中には「期待される男性性」ってものがありそれに応えられないとハブられるっていうのは、レミも気づいてはいたと思います。

「それを理由に僕を拒絶するの…??今までのは何だったの??」という悲しさだったのかなと。

***


映画は現実社会の鏡でして。

女性やセクシュアルマイノリティの権利の平等化が進む中で
ヘテロ男性が「自分を省みる」という作業を現実社会で行われていると思います。

脚本家の坂元 裕二が『怪物』で、
ルーカス・ドンが『CLOSE/クロース』で、過去の自分を省みる作品を作っている。

ちょっと毛色は違うけど『パリタクシー』もそうだと思っていて、
女の〝長い〟話をおじさんが聞き続けるという構造で最初から最後まで貫いた映画はとても珍しいし、
その女性の話っていうのも「有害な男性性に苦しめられた半生」な訳で、それをおじさんがずっと聞き続けるってのはやはりそこには「男の反省」があるだろうし、そもそもこのタクシー運転手(ダニー・ブーン)は有害な男性性はあまり感じられない人物像になっていた。

で、話ちょっとそれますけど、

2020年のドキュメンタリー映画『トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』では、ゲイ男性も批判の対象になっています。
ゲイっつっても所詮は男。
ヘテロ男性が社会の変化の中で反省すべきターンに来ているなら、ゲイ男性も同じ。

ネットフリックスの『シングル・アゲイン』では、ゲイの中年男性とシニア女性が友人になって
お互い似たような境遇であると笑い合うけど
シニア女性はゲイ中年男性に「でもあなたは男よ」と釘を刺す。


***

ラストネタバレは以下に。。






おそらく自殺ですよね。。
ご両親辛いですね。。
レミをいじっていたクラスメイトたちが
「まるで被害者かのように」グループセラピーを受けていました。
いじめてた張本人たちが
「レミはいつも笑顔だった。レミはいいやつだった」と2行ずつくらい順番に話していくのを睨むレオ。
レオはおそらく「自分のせいだ」と自分を責めたり
「いや、クラスメイトのいじめのせいだ」と他人を責めたり
もしかしたら言語化できていなくても何となく社会(世間、空気)に責任を押し付けようとしたり
グルグルグルグル頭の中で考えていたはず。
それなのにクラスメイトはのうのうと
まるで自分が心に傷を負ったかのようにペラペラとなんか喋ってる。
せめては自分だけは自分のせいだって思わなきゃって思ったのでしょうか。
レミの母に「僕が追い詰めた」と告白。
「でも仕方なかったんだ!」と言い訳しないレオ。
レオだけのせいではないことは観客は重々承知。
レミの母「降りて」。
息子の親友の成長を息子同様に見届けることを少しの楽しみにしようとしていたかもしれない。
そんな中、「え、コイツのせいなの?」とレミの母はパニックになり森にレオを放置してしまう。
レミの母「やべえ」と思って、すぐにレオを捜索。
昼間で良かったですよね。夕方以降だったらもうレオ遭難してましたよ。
無事にレオ発見。
レオは木の棒を持ってます。
自傷行為なのかレミの母を攻撃するつもりなのか。
僕は自傷行為かなと思いました、最初は。
自分を殴ったりするのかな、と。
でもちょっとレミ母に向けるような感じもあったような。
つまりもどっちもですよね。
レミが死んでからずっと孤独で1人で戦っていて
やっとレミ母に告白(カミングアウト)することで苦しいし賭けだけど世界が開けるかもと思ったのに
「降りて」って言われて、まるで世界から降りろって言われたかのような衝撃。
もちろんレミ母の気持ちもわかりますよ。
「全方位僕の敵かよ」とレオは木の棒を持っていたんでしょうね。
で、レミ母はレオを抱きしめる。
後日(だいぶ経ってから)レミの両親は引っ越ししていた。
産院を訪ねたらもしかしたら引っ越し先を知れるかもしれないけど、レオはそうはしなさそう。
レオの家業である花栽培が佳境。
花畑の中をかけっこする相手はレミではなく兄。
振り返るレオ。
追いかけてくるレミはいない。
けど、いるよね。
いるんよ。
こういう死に方をした若者がたくさん。
レオはその子たちを見たんよ。
たっっっっっくさん実際にいるんよ、こういう死に方をした若者が。
いじられて、いじめられて、明るい未来なんてないって思わされた若者が、ひっそり隠れて大人しく真っ当な幸せなんて求めたらいけないと思わされてる若者がたくさんいるんよ。