ナチス占領下のポーランドには6つの強制収容所がありました。
有名なのはアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所ですが、今回の映画の舞台はソビボル強制収容所。
「強制収容所」という言葉だと強制的に収容されていただけのような間違った印象を伝えてしまうのですが、
実際はナチスがユダヤ人など(ロマ、捕虜、障害者、同性愛者)を絶滅させるために大量殺戮をする場所であったため、その実情が伝わる「絶滅収容所」と呼ばれることが多くなっています。
この映画は、約20万人から30万人が殺害されたと言われるソビボル絶滅収容所で、1943年10月に600人の囚人たちが反乱を起こして脱出した実話を、生存者たちの証言などを基に描いています。
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この脱走を指揮したのは、軍隊経験のあったアレクサンドル・ペチェルスキー。
彼がこの映画の主役。
写真が残っていて、耳がちょっと大きめで鼻がスッと長いイケメン。
彼を演じたロシアの俳優コンスタンチン・ハベンスキーがビックリするほどそっくり。
ロシアでは国民的な俳優で、今作では監督も務めています。
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この映画、映像が美しく撮ってあります。
まぁハッキリ言って死体の山とか映るわけなんですが、、それがちょっと美術品のように撮影しているんです。
物語の運びもうまい。
絶滅収容所の中の説明をしつつ、登場人物も結構多いんですが、端的にそれぞれのキャラクターや背景などを紹介していきます。
看守たちからひどい屈辱を受け続ける場面がありまして、それが「さすがちょっと長いな…」と思うんですが、
そのあと脱走計画の実行があるのでそのための踏み切り板なんですね。
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看守を一人ずつ呼んでナイフで殺害して行く、という計画なんですが、
この計画を実行する人のほとんどが人を殺したことなどない普通の市民なわけです。
計画しているときは「わかった、なるほど、1人ずつ殺してくんだな、ふむふむ」と納得してるんだけど、
いざ殺すとなると「え、俺マジで人殺すの。。」というリアルな戸惑いが出て来る。
普通の市民がこんな最悪な状況に巻き込まれてしまっていたんだな、と思い知る場面。
さてさて、脱走計画はどうなるのでしょう。
ということです。
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この映画の冒頭。
音楽もなく、ただ人間の荒い息遣いが聞こえていました。
ラスト、この息遣いの意味がわかります。