映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『ミナリ』 アカデミー賞取る気マンマン 

2021-03-29 | 映画感想

アカデミー賞取る気マンマンの作風。

『ムーンライト』っぽくて
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』っぽくて
『スリービルボード』っぽくて。

そりゃ良かったし、そういや感動もしたし、

デヴィッドは可愛かったし
俳優の皆さんの演技は素晴らしいし
韓国映画界に嫉妬しつつも
アジア人が世界のスクリーンで活躍してくれるのはありがたいし嬉しいし。

****


映画の表層で起こっていることだけを見ているとまぁ普通に感動できる。

移民の話としても感動するし、

開拓移民としてこの家族は苦労するけど
市民レベルでは比較的温かく迎え入れられていて

日本は海外からの移民に対してこんなにも温かくできているのだろうかと思ったりもするし

おばあちゃん、ありがとう、とも、そりゃ思いますわ。


****


80年代の韓国系移民のとてもニッチな物語なのに
普遍的なメッセージが伝わってくる、感じもしました。


****


この映画おそらく徹頭徹尾キリスト教の話ですよね。

十字架背負っている不思議な感じの男とか
彼に「石をぶつけないまでも」揶揄をする人も出てきたり、

楽園っぽいとこ(ミナリの生息地)にヘビが出てきたり、

悪魔祓いとかし始めたし。
(しかも成功する?)

これは、、なかなかのもんですよ。。。


****


そう思うとポスターも「目覚めよ」ってコピーが書いてあっても違和感ない感じ。


****



アメリカはキリスト教国家ですし韓国もキリスト教徒多いですもんね。

きっと満足のいく映画なのだろうなと推測いたします。


***


はい、以上です。



映画『ザ・バッド・ガイズ』マ・ドンソク主演 韓国で大ヒット!巨悪を討つ囚人チーム!

2021-03-26 | 映画イラスト
ザ・バッド・ガイズ(2019年製作の映画)
나쁜 녀석들: THE MOVIE/THE BAD GUYS:REIGN OF CHAOS
上映日:2021年04月09日製作国:韓国上映時間:115分

王道マ・ドンソク。

ハリウッドデビュー前にマ・ドンソクの王道キャラをババーンと叩きつけておこうという映画ですよ。





2014年の韓国のテレビドラマ『バッドガイズ-悪い奴ら-』の劇場版。

服役中の凶悪犯たちを集めて巨悪を討つ!という楽しいプロットはそのまま、
さらにマ・ドンソクとキム・サンジュンも続投!

***



****




映画冒頭でテレビドラマ版の話が復習されるんですけど
今回の映画とはあんま関係ないので、
必死に覚えようとしなくて大丈夫です。

ドラマを観てないので
いきなり映画冒頭でものすごい量のキャラクター紹介が始まって
「覚えられない!」とパニクりましたが
大丈夫、覚えなくていい。

なんとなく「あぁドラマではこういう人たちが活躍していたわけね」と思っていれば良いかと。

****



韓国マフィアの抗争事件を解決すべく
警察の偉いさん(メガネ)が
凶悪犯4人を集めた、と。
この凶悪犯には元警察官が2人いる、と。
韓国マフィアの抗争事件の黒幕は誰なのか、
そもそもなんで事件解決のために凶悪犯を使うのか、
が話のポイントですね。

***


「玉ねぎ抜きでお願いします!」



前半でキャラ紹介したり物語の設定を固めましたら
あとはもう韓国映画お得意のコメディアクションお涙サスペンスですよ。
加速加速!
マ・ドンソクギャグが面白いし
「玉ねぎ抜きでお願いします!」と日本語で言ってくれるのも嬉しい。
キム・サンジュンがおそらくドラマの役に縛られててあんまり自由に動けてなかったんですが
その分、新キャラの美男美女2人が面白ですし
黒幕側のキャラがたっぷりいるので見所はたくさん。

****

ただ、、、難しいですよね。。
すごい人いっぱい出てくるし、チーム名もいっぱい出てくるし
どこがどう対立してるのかとか、、結構難しい。。
これを韓国の観客はサラリと理解できるんですか。。

***

でもま、
僕は全然前情報を入れずに観たから大変でしたけど、
ちゃんと予告編見て、
「あ、この4人がチームなんだな」とか
「この4人が巨悪と戦わされるんだな」とか
「黒幕がいそうだな」とか
「前半は一応ドラマの話してんだな」とか
をなんとなく頭に入れておけば、難しいことなく映画に入り込んで楽しい時間を過ごせるかと。


****





『すばらしき世界』と原作小説の比較 ラストネタバレ

2021-03-18 | ネタバレあり
すばらしき世界(2021年製作の映画)
上映日:2021年02月11日製作国:日本 監督/西川美和 脚本/西川美和 原作/佐木隆三 出演者/役所広司 仲野太賀(太賀) 六角精児 北村有起哉 白竜 キムラ緑子 長澤まさみ 安田成美 梶芽衣子 橋爪功

田村明義と『行路病死人』






原作は佐木隆三の『身分帳』。実在の人物である田村明義と佐木隆三がかなり親密であたたかい関係を築きながら、彼の人生を取材し小説としてまとめたもの。

田村氏はこの小説が出版されるのを楽しみにしていたし、筆の進みの遅い佐木隆三に対して編集者を介してせかしたりもするほど。

ドラマ化の話が出てきた時には(結局頓挫したが)、「自分の役は高倉健にやってもらいたい」と言ったという。本人のキャラクターや佐木隆三との関係がわかるエピソードだと思いました。

田村氏は『身分帳』刊行後に死亡。

その死について詳細に書かれたのが『行路病死人』。『身分帳』の文庫版に収録されている短編です。

『行路病死人』を読みまして、映画『すばらしき世界』のラストと合わせて、感想を書きたいと思いますが、それはネタバレなので、下の方に書きます。



圧倒的な役所広司力(やくしょこうじりょく)!



役所広司と言えば、どうせまた佐藤浩市と一緒に日本アカデミー賞の壇上に立つんだろうな的な、ちょっと食傷気味な印象がありましたけど、

すみませんでした。。本当に。。ソン・ガンホかそれ以上の存在感、怪演じゃないですか。。。

役所広司はこの映画で出ずっぱり。ずっと出てるし、描かれるエピソードも多い。感情のヒダも多いし、それを激しく表現してくる。

なのに、結局ずっと「得体の知れない怪物感」が滲み出てました。。
チャーミングさもあるまっすぐな男かと思わせつつも、「やっぱりこの人、やばいんだ…」と思わせる雰囲気。

脚本がそうなっているから、というのもありますけど、それ以上にこの人物の奥深さ。社会のフィルターを介してではこの人物の全容は探れないということを演技、というか存在で知らしめている。

それは人物描写だけではなく、この社会のフィルターの浅さ、薄さ、危うさまでも伝えられていることになるので、、もう、もう、、もう、別次元の何かですよ。。

いやあ、もうほんと役所広司凄すぎて。。。



役所広司に引き上げられた俳優陣



西川監督曰く「役所さんと共演できるということで、全ての俳優が今まで見たことないレベルの演技を見せてくれた」とのこと。

この映画の中で一番弱いのは役所広司演じる山川一。他の人物は役所広司より上に立たなきゃいけない。

怪物、役所広司を前にして「自分の方が優位である」という空気を出さなきゃいけない。。相当な気合がなきゃ達成できないこと。


***

飛ぶ鳥落としの仲野太賀、不気味な悪役である長澤まさみ。 六角精児、北村有起哉、キムラ緑子、梶芽衣子、橋爪功。 安田成美までこんなに素晴らしい俳優だったんだと思い知らされる演技。

旭川刑務所の刑務官や自動車教習所の教官、介護施設の職員など、全員がものすごい。

そしてこの濃厚さを結局は役所広司の得体の知れなさが包み込むので、全体としてはうるさくない。妙な温かさがあるのが不思議。。

***

『すばらしき世界』四コマ映画→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2688

***



ラストネタバレは以下に




役所広司演じる山川一は高血圧が原因で1人、自室で死亡します。


この死がどういうことなのか分からなくて、明確な答えがないまま提示する西川監督作なのはわかっているんですが、何か答えが欲しくて、その事実が書かれている『行路病死人』を読みました。


何が知りたかったかというとあれが「自殺」なのかどうか。


自殺とまでは言わなくてもある程度自分で望んだ死だったのかどうか。


高血圧の薬は持っていたはずなんです。
福岡に行った時は持ってなかったけど、東京に戻って介護施設で働き始めたくらいなんだから病院から薬もらってるはず。


「あ、やばい、発作だ」と思った段階で薬を飲む、という流れはできていたはず。


しかし映画では、障害を持った介護職員からもらった花を握りしめたまま死亡。


確かその日、山川は彼を見捨てた。今までならなりふり構わず彼を助けたはずだけど、社会に溶け込むために「卑怯な人間」に成り下がった。


そうすることで自分は職を失わずに済む。そのために「卑怯な人間」になった。


そうなった途端、元妻から電話。今度娘と3人で会いましょう、と。こんな幸せなことはない。幸せだな〜という表情の山川。


しかしこのシーンは背景がボケている。ボケて夜景がキラキラしている。キラキラしてて幸せそうに見えるけど、それはボケているから。よく見ようとしてないからキラキラして見えるだけ。今まで気にかけていた瑣末なことを無視して、目をぼかしていれば少なくとも自分だけは幸せになれる。


ここからは僕の予想。


今日は最高の日。仕事もあり、支えてくれる仲間もいて、元妻ともあたたかい関係が築けそう。幸せの絶頂。


そこに発作。苦しい。苦しいのは誰。俺だけか。彼は?彼を苦しめたのは誰だ。


血圧を下げる薬はある。
カバンか引き出しに入っている。
俺は生きていて良いのか、そもそも俺は生きたいのか。


今日はすばらしい日だった。そして最悪な日だった。


決断する必要はない。ただ彼からもらった花を握りしめているだけでいい。


死亡。


卑怯者にならないと生きていけないようなこんな世界ではない、『すばらしき世界』へ。


****


本編でも予告編でも言ってるんですね「お前らみたいな卑怯者になるくらいなら死んで結構たい」。




『すばらしき世界』というタイトルが出るのもラスト。
山川が死んだ後、上にパンして、空をバックに『すばらしき世界』。


死んだ後、空バックに『すばらしき世界』ですよ。




****


ちなみに事実の顛末を書いた『行路病死人』では自殺的なニュアンスは一切ないです。


ただ、あくまでも僕が読んだ感じ、ですが、なんとなく彼を死を知った周囲の人々は「これで彼ももう苦しまずに済むのでは」的な空気を発しているように感じました。


あくまでも僕の感じたところによると、ですけどね。


そんなこと誰も明確には言っていませんし、誰も全然思ってないのかも知れませんが。





『シェイプ・オブ・ウォーター』今こそ日本にグサグサ刺さる映画!ラストネタバレあり

2021-03-16 | 映画感想
シェイプ・オブ・ウォーター(2017年製作の映画)
The Shape of Water 上映日:2018年03月01日製作国:アメリカ上映時間:124分

公開当時(2018)よりも2021年の現在の方が
この映画のメッセージは深く広く届くのでは。








「これは声を出せないプリンセスの物語」だと本国の予告編の冒頭で言ってるんすね。
****

声をあげられない女性。
声をあげると「わきまえてない」と抑えられ、
キツい言い方をすると「もっと優しい言い方に変えた方が効果的だと思うよ(笑)」と助言され、
丁寧に話すと「女の話は長い」と笑われる。

****

今、このタイミングでの公開だったらどれほど日本中にこの映画のメッセージが届いたことでしょう。

当時はトランプ政権下での移民の迫害についてのことが注目されていましたけど
実は日本にも直接にグサグサと刺してくる映画だったんですね。。
****

風格がハンパない。
鋭利な社会派という側面が評価されたんだろうけど、演技から美術から音楽から脚本家から全てに風格があってたしかにオスカー作品賞とるに値する顔をしている。
この風格ってやつはどっから湧いてで来るのか。
ギレルモの怒りからか。
おれも怒ってるよ、ギレルモ!

傷ついたもの(人魚)は傷を治せる。
迫害する者(マイケル・シャノンが代わりに演じてくれた差別する人間)は傷つけたり殺すことしかできない。
冷戦下のアメリカを舞台にしたファンタジーだけど、もちろん現代の半径3メートルの話。







ラストネタバレは以下に。



イライザはおそらく人魚だった、ということですね。
または半魚人によって人魚に変えられた?


で、2人は海に飛び込みまして「幸せに暮らしましたとさ」というエンディング。


大事なポイントはこの2人の関係は許されたり認められたりする過程を経ていません。


2人の愛が周囲に受け入れられたことで「あ〜よかったね」というラストではないのです。




そもそも2人の愛は、
周囲に許されたり認められたり受け入れられる必要はなく
ただただ2人が愛し合ってそれで良けりゃそれで良いのです。


愛は、誰かの許しが必要なものではない。


これが良いですね。良いメッセージ。




「周囲の理解を得て、2人は幸せになりました」というラストは、古い。


なんで周囲の理解の速度に「愛」が阻まれなければならないのか。


さすがデル・トロ!まだまだこの映画は強力なメッセージを発し続けますよ。



『あのこは貴族』ネタバレあり 傑作映画 橋の上で手を振るシーンの意味は?

2021-03-13 | 映画感想
あのこは貴族(2021年製作の映画)
上映日:2021年02月26日製作国:日本上映時間:124分
監督 岨手由貴子
 脚本 岨手由貴子 原作 山内マリコ 出演者 門脇麦 水原希子 高良健吾 石橋静河 山下リオ 佐戸井けん太 篠原ゆき子(篠原友希子 )石橋けい 山中崇 高橋ひとみ







俳優たちの能動的な映画作り


四コマを描くに当たってインタビュー記事や映像を見まくるのですが、
いかにこの映画が作り始める前から志が高い作品だったのかがわかります。
しかも、俳優たちの能動的な映画作りによってさらに映画が豊かになっていった点。
脚本通りに撮ればいいっしょ、じゃなくて
オリジナルの人間としての俳優一人一人の個性と意思によって更なる高みに辿り着いた作品。
もうほんとただただすごい。。。
****
上品で自信ありげな予告編だなあとは思っていたんですが
方々から絶賛の声を聞くようになりまして。
実際観てみたら、確かに傑作!!!

『第三夫人と髪飾り』を観ているようでした。。
今作の方がずっと爽やかで明るい映画ですが。
ファンタジーでもなく、時代劇でもなく、現代日本を映してこんなにも絵的にも物語的にもテーマ的にも面白い映画を作ってもらえたなんて、本当に嬉しい。
日本からこんな映画が生まれるなんて。。。


以下、思いつくまま。




門脇麦をこんなに可愛いと思ったのは初めて!かわいい。。。。。。


「王子様現れた♡」って時の顔よ。
普段は背筋ピーンだけど
自宅の台所ではだら〜っと座ってジャム?を指でひたすら舐めとってる姿よ。
可愛かった。。
***
ほんと124分あっという間だった。。
***


スタートからもう面白い。


やってることとしてはそこまで面白いことでもなかったはずだし
あれは椿山荘ですよね、和室にテーブルと椅子での会食、
しばらくずっと会話だけなんだけど、もうバトル。。。
THE長女の石橋けい、
自由で破天荒な篠原ゆき子、
そして、年長者の顔色を伺いながら生きてきた歳の離れた三女の門脇麦。
鉄壁のような母、銀粉蝶。
スリリングこの上なし。
会食からの、いきなりの見合い写真。なんとも言えない門脇麦の表情。。。
そして、タイトル!『あのこは貴族』。
はい、名作だと決定した瞬間です!

***


服がどれも素敵だった。


パッと現れた瞬間にファッとその場が素敵になる服たち。
正月は家でも着物着るんですね。

***


「奥さんになってくれる?」とか頭ポンポンとかも


ちゃんとわかってやっていたんですね。。さすが。。
こんなの昔なら伏線にもなっていなかったはずだけど、ちゃんと伏線として機能させてる。
奥って何??
頭ポンポンって……、子どもにするものでは???
ってことですよね。。

***
貴族パートが面白過ぎて、ここだけで十分じゃないかと。

別に対立する庶民世界を出して来なくても、貴族パートだけ描いていても十分地獄っぽくて最高じゃないかと思ってました。

ごめんなさい。。。わたしが愚かで浅はかでした。。


まず庶民パートも面白い。
水原希子はもちろんのこと、山下リオもいいねえ。

***


あれは富山ってことですよね。


原作者の出身も富山だし、ホタルイカだし、雪国だし。
家の感じもなかなかでしたね。。

「田舎の人ってほんとみんなあったかいのよ〜」とか
「家族が一番よ」とか
「団欒って幸せよね」とか
「何もないのが一番なのよ」みたいなのを一蹴するような団欒描写。。。
寸前に1人消えるし。。。

同窓会のナンパ男、最低でしたね。めちゃくちゃ高圧的。
怖いでしょうね。。あんな男。。
あんなことされたら断るのも怖いし、逃げるのも怖いし、
かと言って受けるわけにもいかないし。。
断ったら「お高く止まってんじゃねえよ、クソブス!」とか言ってきそうなクソ男だし
そんな言葉、いくらクソ男に言われた言葉だとしても
ダメージは受けちゃうし
なんでそんなダメージ受けなきゃいけないんだって感じだし
ダメージ受けないために、うま〜〜〜くお断りしなきゃいけない。。
なんでただただ同窓会に出席しただけなのに、言い寄ってくるクソ男を「うま〜〜〜くお断りする」なんていうことが必須になってしまうのか。
あんなにも恐怖を与えてくるんだから
「うるせークソがっ!」ってヒールでチンコ蹴ってもいいはずなんだけど、そんなことしたら悪者にされちゃう。
男なら結婚式でお尻出しても「お笑い」になるのに。

***


そして、けして対立構造ではなかったですね。。



失礼しました。。
石橋静河に怒られてしまいました。。
「女ってすぐ対立させられちゃうじゃないですか。女だからってすぐ仲悪いとか、足の引っ張り合いをさせられちゃう」的なセリフ。
普段から心に留めているつもりだったのですが、、、申し訳ありませんでした!

なので、
石橋静河がここで映画のテーマを長々とセリフで話すことに賛否はあると思うんですけど、
少なくとも僕にはものすごく機能しました。。
「わかってるよ!」って言う人にとってはくどいシーンかも知れませんね。
でもどちらにせよ石橋静河は素敵。

***
つまんない映画だったら、
貴族の女性が庶民の女性にきったない居酒屋に連れてこられて
「こんな店初めてでしょ」
「わたし…、こういう雰囲気…、きらいじゃないです…」
みたいなシーンありそうだけど、ない!
この映画の冒頭にも汚い居酒屋あったけど、キッパリと門脇麦はタクシーで逃げ帰りましたしね。。

門脇麦が水原希子の部屋に来て
「ここ落ち着きます」って言うんだけど、
それは「庶民の暮らしって気を抜いてもいいから楽ですよね」ってことじゃなくて
「ここにあるものは全部美紀さんのものだから」。

確かに。一人暮らしの特権かも。

貴族クラスではないにしても、家の中には自分以外の物が多いし、必要なものや好きなものだけじゃなくて、誰かに見せるためものや、誰かを招き入れる時のためのものだったり。

自分のじゃない物があまりにも多いし、おそらく一つ一つが重い。

中高生とのときに憧れた「一人暮らし」。全部自分で決められる幸せ。

確かに一人暮らしの人の家って落ち着くんですよね〜。

****



橋の上のシーン。最高。泣きました。



門脇麦がタクシーではなく歩いて橋を渡っている。
すると反対側にちょっとヤンキーっぽい若い女の子2人が自転車にふたり乗りしてる。

酔ってるのか、ナチュラルハイなのかわかんないけど
門脇麦に気づいて
「誰かこっち見てるぅ」と手を振る。

門脇麦も今までだったら絶対やってないんだけど、手を振り返す。
(でも手の振り方が皇族の作法。。。)
で、それを見た女の子たちが2人で大きく腕を振る。

「がんばってるよな!わたしたち」なのか「やってやろうぜ!わたしたち」なのかわからないけど、エールの交換。

セリフらしきセリフはないし、
ナレーションもないんだけど、
十分伝わる。
今まで描かれてきたことが最高だから。


このシーンを成功させるのはほんとに最高難易度だと思うんですけどね。。。すごいわ。。。。



****



「華子に夢なんてあるの?」っていう高良健吾のセリフ。




予告編でもこのシーンあって
「俺は男だから夢とかあるけど、奥さんである君が夢とかあるの?」って言う意味かなと思ってました。
このセリフは自分自身に言ってたんですね。
「俺たち貴族に個人の夢なんてないのに、華子は夢があるの?夢を持ちたいっていう発想があるの?」という素の驚きのように聞こえました。

**
この映画、悪人が出て来ないのも良かったですね。
(クソナンパ男はクソですけど)

銀粉蝶や高橋ひとみがキレッキレだからなんか悪役に見えるけど
彼女らも貴族社会の仕組みにやられているだけ。
仕組みの中で「うま〜く」やることでしか生きていけないと思い込まされている人。
銀粉蝶に関してはラストでさらに展開がありますね。


****



****




ラストネタバレは以下に。



地方の名産品のブランディングする会社を立ち上げた里英は、美紀を誘う。

「やる。誘ってくれるのを待っていた気がするから」と美紀。

***

華子「初めて会った日、話した映画見た?」
幸一郎「え…」
華子「そうだと思った…」
初デート(お見合い)の時映画の話して幸一郎は「家帰ったら見返そ」って言ったけど、見てなかったし多分忘れてた。
そして、次のシーンで幸一郎の母にビンタされる華子。
離婚。
華子の父と母も同席して頭を下げている。
華子が離婚を決意してからこのシーンまで半年も経っていないはず。

華子が自分の両親に離婚の相談をしたとき、絶対めちゃ反対されたはずだけど、、結局はそこまで強くは反対せずに華子の意思を汲んで離婚することを許してくれたんよね。

映画冒頭では鉄壁のような母だったけど、ちゃんと娘の幸せを考えてくれる人でした。
貴族社会の仕組みに敷かれることよりも個人の幸せを尊重してくれる人でした。

華子も映画を観てなかったことだけで離婚を決めたわけではなくて
「華子に夢なんてあるの?」発言で
「夢のない人と生きるのどうなんだろ」って思ったかもしれないし
出馬することを妻であるわたしに相談しなかったのに
家庭菜園でトマト育てようとしたらなんとなく夫に「許可」を取らなきゃいけない感じどうなのって思ったかも知んないし、
積もり積もってのことでしょうね。。

***

華子は、バイオリニストの逸子のマネージャーに。

ある地方の子供音楽会にいつこのカルテットが出演。
それに華子ももちろん同行。

そこに幸一郎。出馬。周りには黒服の大人たち。

華子「わたし今逸子のマネージャーみたいなのやってるの」
幸一郎「華子がマネージャー!」
華子「どうしてここに」
幸一郎「ここ俺の選挙区だから」
華子「そうだ」
幸一郎「もし良かったら後で少し話そ」
華子「うん」

嬉しそうな華子。

演奏会開始。

客席の反対側に華子と幸一郎。見つめ合う。幸一郎、笑顔。華子、笑顔。

終わり

これを機によりを戻して再婚!したかったらしても全然いいんですけど、映画としてはここで終わって正解ですね。

幸一郎に会えて素直に嬉しかった気持ちもあっただろうけど
今の自分を幸一郎に見てもらえたのが嬉しかったんだろうな。


「ねえ、わたし、夢あるよ。あなたもあるんじゃない?」







映画『花束みたいな恋をした』 『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 』とのヒロインの共通点!

2021-03-01 | 映画イラスト
花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
上映日:2021年01月29日製作国:日本上映時間:124分
監督/土井裕泰 脚本/坂元裕二 出演者 菅田将暉/有村架純/清原果耶/細田佳央太/韓英恵/中崎敏/小久保寿人/瀧内公美/森優作/古川琴音

観てしまった

今となっては『花束みたいな恋をした』は傑作映画として周知されて、大ヒット中なのですが、映画館で予告編が流れていた時点では「またこれ系?しかも今更なんでこの2人が…」と思ってませんでした?

僕も100パー面白くない映画、と予測していたけれども、公開近くなってきてからどうやら傑作らしいという噂がSNSに。

そこでやっと脚本の坂元裕二が『それでも、生きてゆく』『カルテット』『Mother』『最高の離婚』の人だと知り、どれも激ハマりした大好きドラマなので、ってことなら傑作ってのもウソじゃないのかも、

あと菅田将暉の役がイラストレーターを目指す若者役という情報も入ってきたので、

結構公開してすぐに観に行きました。











無理です

星1億5つです。採点、星、1億5個です。

この映画について冷静に落ち着いて何かを語る、ということができない状態なのです。。。

この映画について何か言葉にしたりイラスト描いてみたりなんかしてみても、、「違う違うこんなんじゃない。こんなんじゃ足りない。いや多すぎる。いや薄すぎる。濃すぎる。」と逡巡した結果、さらに自分を追い詰めることになってしまいそうで、

むしろこの映画を観なかったことにして楽に生きていきたいと望んだ日もあった。

もちろんそんなことはできないので、、、ずっと体の中に『花束みたいな恋をした』が残っている状態で、どうしたもんかと思いながら生きていました。。

諦めてんじゃねえよ

一点、力強く言い切れるポイントがありますので、それのみ、力強く書きますわ。

一応プロのイラストレーターとして業界の末端で生きている者としては、
麦のイラストがあまりにもうますぎて、、オシャレ過ぎて、売れ売れすぎて、あんなにも素晴らしいイラスト描けるくせに、あの程度のっっっっっ!!!!!壁(あんなもんが壁か?壁か????壁だったか!!!?は!??ただクソ編集者が1人現れただけでは!!!!!???)にぶつかったくらいで、諦めてんじゃねえよ!偉そうに!!!はぁ!!!
と思いました。

あのイラストは人気実力共にみなぎっているあるプロイラストレーターさんの作品です。
すんばらしいイラストです。
シンプルで力が抜けていて繊細でオシャレで可愛過ぎなくて素敵で見る人を疲れさせない素晴らしいイラストです。

LINEで「1点3000円??だったら、いらすとや使うわ(笑)」って言われて、ガーンって来て、イラストレーターの夢諦めちゃうんだけど。

(もちろんこのシーンのエグさはわかりますよ。映画見ててうわあああって思ったもん。)

でもさぁ、あのイラストに対して「じゃ、いらすとや使うわ」って言ってくるヤツなんていないのさ。いないよ。

I N A I Y O。

あんなにも素晴らしいイラストを描くイラストレーターさんはこんな低レベルな戦いしないの。

低レベルぶってんじゃありませんよ。
底辺でもがいてる感出してんじゃありませんよ。
それやる資格、君にないから。

イラストレーター諦める資格、君にないのさ。舐めんなよ。
全然リアリティーないのよ。

星1億個減点してやるわ!

つまり星5つです!!!五つ星です!!!☆☆☆☆☆!!!おめでとう!

****



虚しい。。



****







そしたらヒロインの小明(シャオメイ)ちゃんと絹ちゃんが意外と似たキャラであることがわかりましたよ。

絹ちゃんは「わたしはやりたくないことはしたくない!」と言います。

社会のネジの一つになることが大人として生きることだ、と考えるようになった麦くんからすると絹ちゃんの姿勢は「いつまで学生気分でいるんだろ」と感じられるものでした。

クーリンチェでは、徒党を組んで群がってるクセにギスギスしてる男子たちを横目に、スイスイと軽やかに生きている小翠というキャラがいるんですが、

彼女は男子に言い寄られた(実はセックスしたいだけ)時、

「私を軽蔑していたわよね。私を変えようとしてる?私は毎日自由に生きてる。私は変わらなければならないの?」

と言います。

男は「君は社会構造を知らないんだよ。僕が教えてあげよう」みたいな顔でで女を見下す。

小明も「私を変えようとしてるのね。結局は他の人と同じ。あなたは違うと思ってた。この社会と同じ。変わらないのよ。何様なの?」と言います。

「何様なの?」という言葉が端的ですね。

絹と麦も同い年。
小明も小四も同い年。
同等の人間。
なのに男は「なんでこんなにふわふわと無責任な生き方をしているんだろう」と女を見下して「助言」してくる。


『花束みたいな恋をした』の中でクーリンチェの話が出るのは一瞬です。

絹の「そろそろクーリンチェ終わっちゃうよ」的なセリフ。

その頃麦は就職して忙しくてクーリンチェのことなんて忘れてたし、上映時間4時間弱の映画を観る気力体力も失っていた。

もしもこの2人がクーリンチェを観て、麦が小明と絹とを重ねることができていたら、、、、絹の生き方を受け入れるきっかけになったかも知れない。。。







『牯嶺街少年殺人事件』ラストネタバレあり 『花束みたいな恋をした』

2021-03-01 | 映画イラスト
牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版(1991年製作の映画)Gu ling jie shao nian sha ren shi jian/A Brighter Summer Day上映日:2017年03月11日製作国:台湾上映時間:236分


四コマ映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』
瑞々しくもアンバランスな狂気を孕んだ青春。





目次
  1. 花恋とクーリンチェ
  2. デジタルリマスター版、最高!スコセッシグッジョブ!
  3. 時代背景
  4. 感想
  5. ネタバレは以下に


花恋とクーリンチェ


何年も前に一回挑戦したんですけど、その時はリマスター版じゃなくて、登場人物の顔もよく見えないし、そもそも名前も本名とあだ名(小四/張震)が普通に出てくるし、個人名なのか地名なのかグループ名なのかもわかんないし、そうでなくても前半は淡々としてどこに話が向かってるのかもわかんないし。

ってことで挫折しました。
いつかはちゃんと観なきゃと思っていたところに『花束みたいな恋をした』で有村架純による「クーリンチェそろそろ終わっちゃうよ」的なセリフが。

2016年に2人は新居に引っ越し、2017年1月に麦が就職。
で、2人は東京に住んでるし、たぶん↓2017年8月の下高井戸シネマでの上映のことかと。




下高井戸シネマは僕は当時自転車で行けるくらいの距離で確かに「クーリンチェやるんだぁ」と意識していた記憶が。

ただ4時間弱と言う上映時間と一回の挫折もあり、結局行かなかった。。

で、あまりにも『花束みたいな恋をした』が心に刺さり過ぎて何か行動を起こして消化して疲労していかないとずっと『花恋』を引きずる2021年になってしまう!と思い、
『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 <デジタルリマスター版>』観たよ!



デジタルリマスター版、最高!スコセッシグッジョブ!


マーティン・スコセッシが設立した映画保存団体「フィルム・ファンデーション」によってリマスターされたから今作、最高!
映像がくっきり!こんなに顔見やすかったっけ!そして小明ってこんなに可愛かったっけ!前より可愛くなってない!?

映像がハッキリすると色彩や構図の美しさが伝わってくるし、人物の表情も見えてくるから、物語がわかりやすい(前よりね。基本難しいんですけど…)。

てことでスコセッシグッジョブ!『羅生門』のデジタルリマスター版も良かった!



時代背景



1949年頃、中国から数百万人が国民党政府とともに台湾へと渡り、誰もが安定を願った。しかし子供たちはその成長過程で大人の不安を感じ取り少年らは徒党を組んだ。
脆さを隠し、自分を誇示するかのように。

上記の文字が映画冒頭で表示されます。不安定な社会情勢と腐敗した大人たちの影響を受けて、不安定な青春を余儀なくされた子供たちの話、なわけですね。社会の影響を末端で受けるのは子供だと。

Wikipediaによると

1945年の日本敗戦後も台湾独立運動は起こらず、中華民国への「祖国復帰」を多くの台湾人が大きな抵抗もなく受け入れたが、実際に中華民国による統治が始まると、台湾人の多くは腐敗した国民政府に失望し、台湾人と「中国人」の違いを次第に自覚するようになった。戦後の台湾独立運動は、このような出発点に立ち、中華民国体制を克服し、大陸の中華人民共和国による支配をも拒絶する運動、即ち「中国人」ではなく「台湾人」として生きるための運動として展開されている。

とのこと。
今作でも、外省人(中国から渡ってきた人)と本省人(台湾人)との軋轢というか、摩擦が描かれていますね。

小四の親も小明の親もハニーも外省人。

監督のエドワード・ヤン自身も外省人で、1949年に家族とともに台北に伊集して、小四と同様に建国中学校夜間部に入学しているとのこと。

この実際に起きた、中学生男子による殺人事件「牯嶺街少年殺人事件」は1961年なので、ヤン監督がだいぶ大人になって時に起きており、衝撃を受けてこの映画を製作した、とのこと。




感想


実際に起きた事件に至るまでの流れ(社会的背景と、個々人の状況と感情)が綿密にじっっくりと描かれます。

実話部分も多いかと思いますが、監督脚本のエドワード・ヤンの解釈も少なくない量入ってると思われます。

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淡々と進んでいくんですが、普通の町中を戦車がガーッと通っていくシーンが挿入されたり、画面の中心で会話している人物たちの外や奥でいつも何かが起きてる。
閉じた世界ではなく、常に自分たち以外の世界が動いているというのが音と映像で描かれ、重ねられていく。

そして、その自分たち以外の世界が実は強烈に自分たちに影響を与えている。わかりやすく自覚できることもあれば、自覚なしに自分の心や他者の関係にジワジワ影響を与えている。

で、中盤で突如、大殺戮が繰り広げられまして、、そのしばらく続く大殺戮シーンもこれまた素晴らしいんですが、、

「あぁこれが少年たちによる殺人事件かぁ」などと気を緩めて、後半に突入すると…。。。

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社会の影響を最終的にもっとも受けるのは社会的弱者。今作で描かれるのは子供。

子供ってのはマイノリティではないけど声をあげても聞いてもらえない存在。だからこそ、負けないように食われないように徒党を組んで不要な対立構造を生んでしまったんですね。

本当なら、負けも食われもしない社会でなければいけなんだけど。

大人たちが勝ち負けのある社会で食ったり食われたりしてるから、子供たちもそれを真似る。

社会から子供へと一方的に影響を与える。子供の中でもまた、少年(男)から少女(女)へと一方的に影響を与える。

もし逆行して、少女(女)から少年(男)へと影響を与えてしまったら………。

というのがこの映画の肝かと。
この事件の真相というか、仕組みというか、個々人の感情を、監督がこのように解釈したのでしょう。




ネタバレは以下に


父は公務員を辞めてちょっと様子おかしくなったけど会社に就職できるかも。

小四「人は変われるんだと励まされた気分だ

小翠「私を軽蔑していたわよね。私を変えようとしてる?私は毎日自由に生きてる。私は変わらなければならないの?

母の腕時計を盗んだ?ことが末の妹によってバラされて小四の兄が父にめっちゃ殴られる。めっちゃ殴る。母や姉たちがそれを止めるも、父は兄を殴るのをやめられない。

その様子を聞いている小四。
ほんとは兄は小四をかばっている。

小明が引っ越し
小四、刀を手にして小馬(小明と付き合ってる?)が来るのを待つ。
そこに小明が現れる。
小明「小馬を待ってるのね。だめよ
小四「今はおれは君のハニーだ
小明「私を変えようとしてるのね。結局は他の人と同じ。あなたは違うと思ってた。この社会と同じ。変わらないのよ?何様なの
小四、小明を刺す。
小四「恥知らず!君はだめなヤツだ。
小明。倒れる。
小明!君は死なない。立つんだ。君にはできる。立つんだ。力を入れるんだ。どうして立たない。

警察。
小四、逮捕。
小四。手紙。
姉さん。僕が帰れない時は本当のことを話してください。(腕時計のこと)

小明の母、自殺。
小馬「彼(小四)が唯一の友達だった」

♪慈悲なる救世主キリストよ〜

1961年夏
小四は死刑を求刑される。
国民党政府が台湾に渡ってからはじめての未成年者による殺人事件のため異論も多く
再審で懲役15年が下された。
小四は30歳の誕生日前に釈放された。
事件発生から2ヶ月後。

小猫王が録音したテープをプレスリーに送る。
プレスリーから返事が来る。

「自分が知らない島国で人気があると知って喜んでプレゼントをくれた。
見せられず残念だ。
もらった指輪をはめてる。
いつお前に見せられるか。」

しかしテープは捨てられてた。
プレスリーから返事なんか来てない?

ラジオが直って人名が羅列される。
激動の台湾を力強く生き抜く若者たちの名前が羅列される。

「以上が文学部合格者です。」

おわり

映画の冒頭でもラジオで合格者が発表されていた。
円環構造。
社会の影響は一方的に弱者へ向う。広い湖の水紋のように一方的に。大人から子供へ。子供の中でも男性から女性へ。