映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『くじらびと』傑作ドキュメンタリー 圧巻の映像の力 取材の力 人間の力 地球の力

2021-09-11 | 映画感想
くじらびと(2021年製作の映画)
上映日:2021年09月03日製作国:日本上映時間:113分
ジャンル:ドキュメンタリー
監督 石川梵
エグゼクティブプロデューサー 広井王子

観て数日経ったけど、何にも書けない。

わりと長々と感想書いたけど消したよ。

他の映画見たりして気持ちを落ち着けようとしたけどまだ足りない。

でも、以下のことは最低限書かなきゃ。

観に行って!
近くでやってるならすぐ行って!
近くに来たならすぐ行って!
映画館で観て!
とりあえず僕が書けるのはこれだけです。







映画『スクールガールズ』 オリンピックによって大きく変化する外の世界と閉じ込められた私たち 

2021-09-11 | 映画感想
スクールガールズ(2020年製作の映画)
Las niñas/Schoolgirl 上映日:2021年09月17日製作国:スペイン上映時間:105分
監督 ピラール・パロメロ
脚本 ピラール・パロメロ
出演者 アンドレア・ファンドス ナタリア・デ・モリーナ



監督曰く
「1992年当時の教育を受けた女性たちこそが、〝勉強をし、独立して、なりたいものになれる〟とはっきり感じることができた初めての世代だったのではないか」と。

ピラール・パロメロ監督は1980年生まれの女性監督で自身も4歳から修道院で学んでいた、とのこと。

今作は初の長編映画で、いきなり国内外の映画賞を多数受賞。
いやぁ、ホントに女性監督が羽ばたき出してますね。

新しい視点、切り口、描き方の映画が増えるのは嬉しい。

****

バルセロナオリンピックで沸いた1992年のスペイン。

世界から大きな注目を浴びて、スペインの都市部は大きく変化していくけれど
地方の修道院(学校)はめちゃくちゃ保守的で
普通に「男性と女性の出会いは結婚によって完全になる」とか教えている状態。


**


そこの女生徒たちは、修道院に通ってはいるけど寄宿舎ではないので外の世界に触れることが多い。

90年代ですからね〜。
若者文化はビッキビキです。

それらに触れ、先輩たちからも刺激的なことを教わり、
閉じられていた扉を一つずつ開けていきます。

***

実際に映画の中でも「扉を開ける」という動作が印象的に使われます。

視野を広げる、世界を拓く、真実を知る、ということのメタファーでしょうね。

****

主演のアンドレア・ファンドスがなんといっても可愛いし品があって、演技も素晴らしかったです。

わりと古風な美少女顔なので、品行方正な優等生にも見えるし、そう生きていくことを期待され自分でもそう思い込んでいた人物に見える。
でも周りからの影響を受けながら「あれ?」と思う。

〝いいコにしてる〟ことと自分の可能性を諦めることは別なのでは、と。

***

追いつけがましかったり露悪的じゃないのも良かったです。
これ系の映画でありがちなヤリすぎ感がない。


映画『いる』&映画『みない』 「ある夜、家に帰ったら鍵が空いていた」 礒部泰宏監督

2021-09-11 | 映画感想
いる(2020年製作の映画)
上映日:2021年09月07日製作国:日本上映時間:41分
監督 礒部泰宏
脚本 礒部泰宏
出演者 礒部泰宏 牧田裕次 安藤真理 佐藤一輝 原陽子



田辺・弁慶映画祭セレクション2021(at テアトル新宿)の映画『いる』。

監督がコメントで「見てもらわないと始まらない。見てほしいです。」とおっしゃってまして、
確かにこの映画は特に見ないとどうしようもない。
あらすじやネタバレを読んでもこの良さは伝わらないと思いますね。

***

同セレクションの『愛のくだらない』もそうでしたが、
自分がいかにクソか、クソだったかを周りの目を通して気づいていく話かと。
主人公は本当に嫌なやつ。

嫌なやつっていうかダメなやつ。

おそらく自分の人生がうまくいっていないことを周りのせいにして
負のエネルギーを撒き散らしながら生きている。

自分の人生で何も起こせていないから
せめて負パワーで負の事象を引き起こして、何かがあったかのような気になっていたい。
(何にもないんだけど。嫌なことしか起きてないんだけど。何もないよりいい。)

犯罪者一歩手前の状態ですね。。。。

でも、わからなくはない。。

こうなっちゃうのもわかんなくないっていうか、何回もやっちゃっていたと思う。。。

****

映画の作りとしてはホラーの手法を取っていますね。

一向に電気(照明)付けないし。
ホラー映画の人物ってホント電気つけないですよね。
これがどうも苦手で。。

怖いなら電気つけてくれよと思うんですが、ホラーですからね。
表現主義でもあるのかもしれないですね。

ほんとはあの部屋は明るいのかもしれない。
でも主人公の心情として暗いのかも。


****


「ある夜、家に帰ったら鍵が空いていた」

めっちゃ怖いですよ。
あのアパートもなんかもう怖いし。

よく起こりそうなことだけど、鍵閉め忘れたのかも知れないし、
誰かが侵入したのか、今も部屋の中にいるのか。
俺を恨んでいる奴は誰だろう。

思い当たる奴がいっぱいいすぎて絞れない。。
↑これはちょっとコメディっぽいですよね。

という話。
今まで自分がやってきたクソ行動のブーメランとして、日々恐々として生きなければいけなくなってしまった。

そのジワジワとした恐怖が面白かったです。

****

荒唐無稽な話でもないですよね。

自分がクソだったら自分の人生もクソになっていってそのクソ人生に恐れ慄き怯えながら生きることになりますよね。。

****

併映された撮り下ろし新作『みない』も面白かったです。

映像も格段にレベルアップして、妻役の加藤紗希の演技も本当に素晴らしくて。



映画『レディ・マエストロ』 女性指揮者のアンドレア・ブリコの半生 

2021-09-11 | 映画感想
レディ・マエストロ(2018年製作の映画)
The Conductor 上映日:2019年09月20日製作国:オランダ上映時間:139分
監督 マリア・ベーテルス
脚本 マリア・ベーテルス
出演者 クリスタン・デ・ブラーン ベンジャミン・ウェインライト


女性指揮者のアンドレア・ブリコの半生。

女性指揮者の先駆者であり、女性のみのオーケストラを作った人。
その人生が素晴らしいし、映画の題材として面白い。
ちょっとメロドラマの部分を強調して見やすくはなってるんでしょうけど、
もうちょい社会派の面を強めても良かったし、
そもそも指揮者とは?とか
指揮者と演奏者の関係とは?とか
を深く描いて欲しかったな。

とくに音楽面、演奏面はちょっと肩透かし感ありました。

**

1902年生まれのアントニア・ブリコはいわゆる女性らしいスタイルで指揮をしている。

1914年の第一次世界大戦とココ・シャネルによって女性のパンツスタイルは解放されているはずだけど、
オーケストラの指揮をやるには「男にならなきゃいけない」という考えではなかったっぽい。

ご本人の写真を見てもわりと〝女性らしい〟。





女性が男性化しなくても平等になれるのは素晴らしいこと。


**

映画について。

139分あって長いんですが、少女時代からの半生を描いているので、物事はサクサク進む。
そんなに重厚でも端正な作りでもないんだけど、話自体が面白くて飽きることはなかったです。
恋のお相手フランクはどうでもいいとして
ナイトクラブのベース弾きのロビンがいいですね。

ロビンが実在の人物なのかどうかを調べられなかったんですが、
いくつかのシーンでとても重要なキャラなので実在なのでしょう。
ただ、複数の人物を1人にまとめてる可能性はあるかな。
ロビンの存在によって広がりのある映画になりましたね。

**

100年前のお話です。

さて、100年後の現在どうなってるでしょう。



ラストネタバレは以下に。


映画のエピローグに以下の文章が記されます。
〝2008年にグラモフォン誌が発表した世界トップ20の交響楽団の中に女性の首席指揮者を擁する楽団が1つもなかった。
また2017年にグラモフォン誌が発表した世界トップ50の指揮者の中にも女性が1人もいなかった〟
Wikiより転載。
女性指揮自体は増えているし活躍もしているけど、正当な評価を受けていなかったり、力が発揮できない状況があるのでは?
と言っているわけですね。
**
ロビンを演じたスコット・ターナー・スコフィールドはトランスジェンダーの俳優さん。
ロビンは外見は男性に見えていたしそう振舞っていたけど、体は女性でしたね。
コルセットをして胸を抑えていたっぽい。
〝女装〟している姿がバレた時
アントニアに「なぜ」と聞かれたロビンは
「自由に生きたかった」と答える。
女性の姿では演奏家としてのびのび生きられなかったのでしょう。
セクシュアリティについては言及されてなかったかと思います。
ロビンにとって女性の姿のまま指揮者として道を開いていくアントニアはどれほど輝いてみえたのでしょう。
だからロビンは彼女に名前を伏せて資金援助していたのですね。


映画『喜劇 愛妻物語』 登場人物が物語に負けてない映画 

2021-09-11 | 映画感想
喜劇 愛妻物語(2020年製作の映画)
上映日:2020年09月11日製作国:日本上映時間:117分
監督 足立紳
脚本 足立紳
原作 足立紳
出演者 濱田岳 水川あさみ



ある意味『ラ・ラ・ランド』ですね。

夢見る狂人、濱田岳。
それを支えて夢を見たい水川あさみ。

**

水川あさみが可愛い。

ひたすら口悪く罵倒し続けててヤバい人だし、
たぶんリアルにいたら相当嫌いかもしれないけど、
映画なのでね、
水川あさみの苦悩や優しさもいい所でチラチラ見せてくるので
愛すべき人物像になってる。

**

濱田岳(の役)がだいぶクソ。

でも人間なんてこんなもんだろうし、
僕もこんなもんだし。。。
濱田岳がやってくれてるからギリ許容できる人物になってて羨ましい。

**

ほとんど実話で脚本や編集にも奥様が関わっているとのこと。
喜劇ですからラストは「結局この2人良い夫婦じゃん」ってまとめるしかない。

でも実話でそれやられちゃうと
「色々あるけど私たち夫婦幸せです」ってなって
「ハイハイのろけ映画見せられました…」ってなっちゃうわけだから
水川あさみの上限超えてる罵倒や
濱田岳の我慢できないクソ感はこの映画の必須条件。

けして羨ましくない夫婦像でなければ成立しない。

**

ハマらない人も多いようですが
僕は好きな映画です。

人物が生き生きしていて自由。
物語に負けないキャラクター。

映画『ラ・ヨローナ~泣く女~』 新作『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』もこの監督 

2021-09-11 | 映画感想
ラ・ヨローナ~泣く女~(2019年製作の映画)
The Curse of La Llorona
監督 マイケル・チャベス
脚本 マイキー・ドートリー トビアス・イアコニス
出演者 リンダ・カーデリーニ

ウォーレン夫妻が活躍する『死霊館』(2013)、『死霊館 エンフィールド事件』(2016)は面白かったのになぁ。

ラファエル神父のキャラは面白いのでもう一回なんかで出てきそう。

**

こうすれば霊は入ってこれない
こうすれば霊は近寄れない
こうすれば霊は消える
って勝手にルール作って
勝手なタイミングで発表して
しかも勝手にそれらを破って
勝手に大変な目に遭って
さらに勝手な新たなルールで解決されてもねぇ。。

**

ペレス神父がちょっと出てくるだけで『死霊館シリーズ』ってことになってるけど、
実のところ関係ない話。

**

新作『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』はウォーレン夫妻が活躍するタイプのやつなので期待していたけど、
この映画の監督が撮ってるんですね。。

映画『海底47m 古代マヤの死の迷宮』 ネタバレあり アレクサ、鮫を倒して!  

2021-09-11 | ネタバレあり
海底47m 古代マヤの死の迷宮(2019年製作の映画)
47 Meters Down: Uncaged 上映日:2020年07月23日製作国:イギリス上映時間:90分
監督 ヨハネス・ロバーツ



前作は500万ドルの製作費で4400万ドルのヒット!
今作は製作費を1200万ドルに上げたものの興行収入は3700万ドル。

だろうね、という内容でした。
何やってんのかよくわかんなかったし。

**

しょうがないんだけど、
アレクサっていう人物がいて
「アレクサ、話を聞いて!」
「アレクサ、サメがくるわ!」
「アレクサ、落ち着いて!」
とか言うたびにスマートスピーカーに話しかけてるようで面白かった。
あ、日本語吹き替えで観ました。

**

全員体力オバケ過ぎていつまでたっても全然疲れない。



ラストネタバレは以下に。




めっちゃ人死んだけど
姉妹は無事に洞窟を抜けて海に出ることに成功。
船がいたので助けを呼ぶがそれは
「ガラス底ボートに乗ってホオジロ鮫を見学するツアー」の船だった。
その船の周りに餌を撒いて鮫が誘き寄せられていた。
姉が鮫が食われるも、妹が水中銃で鮫を撃って救出。
妹がハシゴで船にあがろうとしたら鮫に食われて水中へ。
ポケットにあった父からもらった鮫の歯で鮫を殴ると鮫は撃退(なぜ)。
姉妹ふたりとも助かって良かったね。
おわり
マヤ文明まっったく関係ねーじゃんっ!



『オールド/OLD』 ネタバレあり ジャック・ニコルソンとマーロン・ブランド共演の映画は? 

2021-09-06 | ネタバレあり
オールド(2021年製作の映画)Old 上映日:2021年08月27日製作国:アメリカ上映時間:108分
監督 M・ナイト・シャマラン
脚本 M・ナイト・シャマラン
出演者 ガエル・ガルシア・ベルナル ヴィッキー・クリープス アレックス・ウルフ トーマシン・マッケンジー エリザ・スカンレン アビー・リー・カーショウ

目次
  1. 実を言うとM・ナイト・シャマランは『シックス・センス』しか観てません。。
  2. 面白かったですね!
  3. 酷評も多いようで、どこが引っかかるのだろうと「OLD 酷評」でググりました。
  4. ネタバレは以下に。



実を言うとM・ナイト・シャマランは『シックス・センス』しか観てません。。

この『OLD』、なんかまわりで好評でしたし家人に誘われて観に行きました。
どんなもんなんだろシャマランって、くらいの期待値。

**


面白かったですね!

「猛スピードで老いていく」という一点のみでこんなに面白くて怖くて泣けるのか、と。
泣けるんですよ。
年老いていく苦しみだけじゃなくて、幸せもあるわけで。
その幸せも描いていて、そこが泣けた。
演技も素晴らしかった。
老いて言葉も思うように言葉も出てこないんだけど、歌を聞いてウンウンと笑顔でうなづくだけなんだけど、幸せこの上ない。
老いることを単純に恐怖として描いているわけではないのさ。
そこがいいですね。

猛スピードで老いていくってことは
それだけ人生を描いているってことなんよね。


**

酷評も多いようで、どこが引っかかるのだろうと「OLD 酷評」でググりました。

なるほど。
納得です。
同意。
たしかに。
でも僕はそれらはスルーしました。
十分面白かった。


**


だって、シーンそれぞれ画面それぞれ素晴らしかったじゃないですか。
ずっとスリリングでしたよ。
ハラハラしましたよ。
怖かったし。
さらには何度か笑いましたよ。
しかもコメディとして撮ってるわけではないけど、笑えるという。
ホラーコメディではない。
ただただ本人たちは真剣なんだけど、あまりにもなので笑っちゃう。

**

一番小さかったカーラの活躍。

急速に成長して心の変化もあるけど、元の自分も引きずってるので、幼いカーラの向こう見ずな勢い、思い切りが素晴らしいシーンでしたね。
痛快でした。

**

カーラの母、クリスタル。
演じたのはアビー・リー。
面白いと思ったら『ネオンデーモン』の人なんですね。
人間離れした悲しさがありますね。
素晴らしい。
しかも面白い。
最高じゃんよ。

**

日本でリメイクしてほしー。

父…妻夫木聡
母…土屋太鳳
医者…堤真一
医者の妻…ベッキー
で。

**


ネタバレは以下に。




ジャック・ニコルソンとマーロン・ブランドの共演した映画は『ミズーリ•ブレイク』。
西部開拓時代の末期、馬泥棒殺人事件を発端とした報復合戦!ラブもあるよ♡


映画 『トムボーイ』 大傑作『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督作

2021-09-04 | 映画イラスト
トムボーイ(2011年製作の映画)TOMBOY
監督 セリーヌ・シアマ
脚本 セリーヌ・シアマ
出演者 ゾエ・エラン マロン・レヴァナ ジャンヌ・ディソン マチュー・ドゥミ

目次
  1. 大傑作『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督の2011年の作品。
  2. 『トムボーイ』四コマ映画
  3. 「わざわざ(本当のこと)言う必要ないじゃないですかぁ」への流れ
  4. まずは主演のゾエ・エランの存在が何とも輝かしくて素晴らしい。
  5. 「女の子が男の子になりすます」という物語


大傑作『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督の2011年の作品。

切実さとユーモアのバランスも良く、
映像も綺麗だしキャラクターの描き方も良い。
特にラストがいいですね。
ちょっと『燃ゆる女の肖像』を彷彿とさせるようなラスト。
2人の位置関係はほとんど同じでしょう。
上と斜め下。

***






「わざわざ(本当のこと)言う必要ないじゃないですかぁ」への流れ

わざわざ嘘を付いたり隠しながら生活することに慣れると
逆に、本当のことを言ったり明らかにすることが〝わざわざ〟になっちゃう。
〝わざわざ本当のことを言う〟
〝わざわざ明らかにする〟になって、
結果的にそれは〝わざわざしなくてもいい〟ことになってしまう。

二重生活が心地良い人は全然自由にそれを続けていいと思うけど、
自分の人生をコントロールできない若い子たちにも、
嘘を付いたり隠したりすることを強いる現状は変わって欲しいなと思います。
嘘ついたり隠したりしながら生活するのはやっぱうっすらストレスですからね。
全然ストレスなく楽しいならいいんですけど。
もしくはストレスあってもいいなら良いんですけど。
若い世代にまで〝わざわざ〟引き継がせなくていいと思います。

**

今作は、10歳のコにそれをさせてしまったお話。

**

まずは主演のゾエ・エランの存在が何とも輝かしくて素晴らしい。


ポスターのビジュアル最高でしょうよ。
映画本編見なくても観たのと同じくらいの情報量持ってる。
カリスマ性もありつつ繊細で、しかもちゃんと演技もできるという。
この作品にはぴったりだし、ゾエ・エランがいなかったらこの映画は撮らない方が良かったってなくらいのハマり役。



「女の子が男の子になりすます」という物語

監督曰く、
この映画は「女の子が男の子になりすます」という物語。
「予備知識のなかった観客にはロールが男の子なのか女の子なのか、お風呂の場面までわかりません」と。
確かに言われてみれば、僕は事前情報で男子のフリした女子の話だと知っていたけど、
それがなければ風呂場の場面でびっっっっっっくりしたのかもしれない。
(いや、多分なんとなく疑いは持っただろうな。ほんとは女の子なんじゃないかと思った気もする。)

***

監督曰く
「刑事が他人の勘違いをうまく利用して、マフィアになりすますような物語を書きたかったのです」と。
「物語には軽妙な味わいが必須だと思っています」と。
この映画がねっとりとした説教映画になっていないのは、監督のこの考えから来ているのですね。
全体的にはアート系の雰囲気だけど、エンタメっぽさがあってライトで見やすい。
粘土のシーンのユーモアとか
その後のプールのシーンの観客だけが知っているサスペンス性とか。
「激しく動かないで!」とドキドキする。

監督が物語に入り込みすぎないで距離を保って描いているので、観客が感じる余地が多くあって心地いい。

『燃ゆる女の肖像』が突然降って沸いたものではなく、2011年の時点で予言されていたことがこの映画を観るとわかります。

***




『えんとつ町のプペル』ネタバレあり 旧態依然の固定概念で覆われた窮屈な映画

2021-09-02 | ネタバレあり

観客(一般人)に考える余地を与えない


窮屈な映画。
自由なように見せかけて実はものすごい固定概念で覆われた映画。

観客が自由に考える余地もない。
喋る喋る。
めっちゃ押し付けてくる。
終盤、ある人物がおんなじことを言葉変えてずっっっと喋ってくる。
聞き馴染みのいい言葉とリズムで喋り続けるからなんか怖くなってくる。。

観客は脳を使う余地がない。
ただただ受けるだけ。
たぶん観客(一般市民)に自由に考えさせるのが怖いんでしょうね。




それを人はセミナーと呼びます〜♪


「俺の話をただ聞いてろ」っていう映画になっちゃってる。
それを人はセミナーと呼びます〜♪

西野亮廣のセミナーを聞くつもりでこの映画を見に行った人もたくさんいると思いますよ。
それはウィンウィンの関係なんだと思います。
ただ、映画を観るつもりだった人はちょっと引くでしょう。
「え?なんか押し付けられた?」と思うことでしょう。




僕はアンチではないと思ってます


ゴッドタンでの西野亮廣さんは好きですし
毎週キングコングも見たりしてます。
なので僕はアンチではないと思ってます。

頭から否定するつもりで映画観るほど
僕は映画というものを信じていないわけではないです。




予測と覚悟


ただ、観る前から
おそらくこの映画は
映画というものが生まれてからのこの120年間で死ぬほど繰り返し語られてきたメッセージを
「世界の秘密を教えてあげよう」みたいなノリで押し付けてくる映画なんだろうなぁ
とは覚悟してました。

**

さらに
そのメッセージってのはきっと主題歌の歌詞のままなんだろうな、と。


しかも
サビの終わりの大事なメロディで結構な文字数使って
「えんとつ町のものがったっり〜」と歌う。
歌うのに数秒かかる。
えんとつ町の物語の話の主題歌でえんとつ町のものがったっり〜と数秒使って歌うような、
そういう映画なんだろうなと予測していました。



ネタバレは以下に



■導入の「こういうの喜ぶんだろ感」

ハロウィンのダンスとか、ピタゴラスイッチ的でユニバーサルジャパンのアトラクション的なアクションに「こういうの喜ぶんだろ感」が満載だった。。

のちにルビッチがプペルを煙突の上まで連れていってえんとつ町を俯瞰するシーンがあって、そこでプペルは「きれい〜」的なリアクションをするし、ルビッチも同感って感じなんだけど、

まず、もうすでに観客は何度となくえんとつ町の美しさを押し付けられてきているので、しつこい。どうせならプペルと一緒に感動したかったよ。

で、えんとつ町が美しいかったらダメな話なんじゃないの?もっとどす黒く灰まみれで油がドロドロしてるようでカビ臭い町のはずでは?

なんで綺麗にしちゃったの?観客が喜ぶと思ったから?それ、話と関係ないよね。。


■友達より血縁

まさかそのままプペルが父親だったっていうラストになるのか!!と心配していたら
まさかそのままプペルは父親だった展開っっっ!!!

何にもないゴミの塊で差別も受けてるプペルと少年が友達になるから感動があったのに。。

臭いからってめっちゃくちゃ洗うのもゴミ人間であるプペルのアイデンティティを消して
同化させようとしてるようでちょっとひっかかったし
ポンチョみたいなのを着させられるのも辛かった。。

結局ゴミ人間プペルは異端のままで世間から隠されて同化されようした存在。

それでもそんなゴミ人間と少年に友情が生まれたことに感動があったのに、、
結局、血縁かよ!!!

しかも正体はあんな立派なお父さん。。。。

まさに理想のお父さんの権化。

異端者であるプペルは消されたじゃんっっ!!

理想の父となんの問題のない息子の話でした。。
とほほ。。
なんか話が小さくなって終わってしまいましたね。。。


偏ったジェンダー表現…

「男は泣くんじゃない」って何回言った???

「夫のわがままを受け入れる妻の度量の広さ」みたいな表現もあったよね。

女性キャラ、3人くらいしかいなかったね。。
ほっっとんど男だけだったよね。。

まさか意図的にやったの?
もしくは考えナシでやっちゃったの?
どっちにしてもヤバくない??
これ、世界で公開すんの??



■典型的なキャラクターの集合

荒っぽいし夢みがちだけど誰よりも家族を愛している大きな背中のお父さん。
病弱だけど優しくて心根は誰よりもつよいお母さん。

旧世界の典型キャラ。。

いじめっ子も煙突掃除の男たちも典型。
異端審問会もKKKのようで人格が見えなくてもったいない。。
異端審問会は異端審問会で世界を平穏にしたいという信念があったわけでしょ。
あんなにも記号的な悪役にしたらほんとに話がうすっぺらくなる。

キャラクターが物語を成立させるためにしか動いてくれないから、
観ていて息苦しい。。

言いたいことを言うためだけに存在するキャラクターたち。
哀れな存在ですよ。。

ゴミ人間プペルなんてついには物語に消費されて消えてしまったからね。。
あの可愛いプペルが。。。

製作者がやりたいことの前ではまったく独自の動きができない不自由なキャラたち。

これはまさにえんとつ町で行われていたこと。
それをこの映画はやっちゃってる。



■諦めずに上を見ろ!の周辺に敷かれた旧世界

でも前述の通りこの映画全てのキャラクターは旧態依然とした典型なキャラ。
上を見ろ上を見ろと繰り返す映画だけど、
足元はガッチガチに凝り固まった旧世界。。。。。

異端に優しい世界ではないよ。

「この異端はいいけど、その異端はダメ〜」って
平気で言ってきそうな世界。

これは現実世界と同じ。
現実のクソ世界とこの映画の世界は同じ。

この映画は
異端だったルビッチが命かけて飛び出したことで異端ではなくなった、
という話。
 

■努力しないお前が悪い映画

ルビッチの努力の話。個人の努力の話。
異端扱いを受けて隠れて生きてる人がいたらソイツ自身が弱くて悪いことになってしまう。
誰もが
「勇気を出して星を探そうよ!」ってなれないでしょ。
結局は命をかけて頑張ったことで自分の地位を確立した父子の話。
しかもその足元には旧世界。。
 
そのつもりはなかったはずですが、
なんかすごく息苦しい映画になってしまいました。

映画『フリー・ガイ』ネタバレあり ディズニー帝国が一般市民に「あなたたちは自由だ」と説く 

2021-09-01 | ネタバレあり
フリー・ガイ(2021年製作の映画)Free Guy
監督 ショーン・レヴィ
脚本 出演者
出演 ライアン・レイノルズ ジョディ・カマー ジョー・キーリー チャニング・テイタム タイカ・ワイティティ 野村祐人

目次
  1. 野村祐人懐かしっ!
  2. 「ゲームばっかりやってちゃいけませんっ!」
  3. ネタバレは以下に。

野村祐人懐かしっ!

つーか奈良橋陽子の息子だったのね。

**


「ゲームばっかりやってちゃいけませんっ!」

こういうゲーム世界と現実世界を平行して描く場合、
ラストは「ゲームもいいけど現実もね❤️」っていうメッセージを込めて終わりたいのが〝大人〟。
ゲーム三昧の映画を二時間やっておきながら
「ゲームばっかりやってちゃいけませんっ!」と言わずにおれないのが〝大人〟。

『レディ・プレイヤー1』のラストがまさにそうで
ラストで「ゲームもいいけど現実も最高っ!リア充最高!」って言い放っちゃったものだから
それまで主人公と一緒にゲーム世界で戦っていた観客は突然裏切られ突然突き放されて呆然。。
なかなかの残酷描写、っていうかある意味ゴア描写でした。

**

今作ではおそらく『レディ・プレイヤー1』のラストを意識したものだったかと。




ネタバレは以下に。




主役男女はキス直前で切られましたね。
まぁあの勢いで顔を近づけてるんだからあの直後キスするだろうし、
キスで終わったと思ってる人も多いでしょう。
でもキスはしてない。
からのゲーム世界。
ガイと親友(バディ)が再会してハグする。
ここで映画終了。
まさか今のディズニーが「男女がキスしてハッピーエンド」の映画なんか作れませんからね。
友情ハグで終わりました。
**
ディズニーですから脚本が上手いのは期待通りでした。
期待していてもそれ以上やってくるのがディズニーとピクサー。
恐ろしい。
ブラックライブズマターや銃社会批判や性的搾取批判、
あからさまでないセクシュアルマイノリティ(バディ)や多様な人種の登用など、
これでもかとメッセージを入れてきてます。
(バディがデュードの雄っぱいを揉みしだくシーンは問題かと。セクハラだよね。バカっぽい筋肉男なら無許可で触っていいわけではないでしょ。) 
バディはラストで銃を捨てます。
銃のない社会へ。
**
その中でもメインテーマは、
モブなんていない!
自由は与えられるものじゃなく誰もが生まれ持って自由がある!
的なことかと。
**
社会の粒みたいな、ゲームのモブみたいな扱いを受けているほとんどの市民に
「あなたたちはモブじゃないよ、全員素晴らしいんだよ」と。
社会の歯車として迷惑にならないように頭使わず意思もなくただただおんなじ毎日を繰り返してりゃいい…
んじゃないよ!
あなたは独立したひとりの人間!
自由に生きれるんだよ!
世界一位のコンテンツ会社のディズニーが言ってくるのが、
なんか怖かったです。。。
今作でも、権利を買ったマーベルやスターウォーズのアイテムが出てくる場面がありまして、
キャプテン・アメリカの盾や1秒のクリエヴァが出てきた時は「わぁ♪」と楽しい気持ちになりましたけど
ライトセーバーが出てきたときにはちょっと引きました。。。
あ、これ全部ディズニーが持ってるんだ、、と。
全部持ってるディズニーが作ったものを金払って電車乗って座らされて真っ暗な部屋で最初から最後まで観させられてるんだ、、
と思ったらなんか怖くて。。。
ディズニーが「善なるもの」であることが大前提の社会構造なわけで、、、
それが揺らいできたりズレてきたら一体どうなるんだろうか、と。。。
エンドロール最後まで観た方はお分かりかと思いますが、一番最後の曲めっちゃくちゃ不穏な曲調なんですよ。
あんなに楽しかったのに。
エンドロールだって三曲くらい使っていたのに、ラストの曲だけ不穏。。



映画『愛のくだらない』ネタバレあり 誰かを軽んじてしまった過去 心にグサリと…

2021-09-01 | ネタバレあり
愛のくだらない(2020年製作の映画)上映日:2021年08月27日製作国:日本上映時間:95分
監督 野本梢
脚本 野本梢
出演者藤原麻希 岡安章介 村上由規乃 橋本紗也加 長尾卓磨 手島実優

目次
  1. 新人監督作を対象とした田辺・弁慶映画祭の第14回グランプリ受賞作。
  2. 刺さってしまった。。
  3. 主人公の女性は割と周りの人を軽んじてしまう人。
  4. その贖罪の映画ですね。。
  5. ラストネタバレは以下に。


新人監督作を対象とした田辺・弁慶映画祭の第14回グランプリ受賞作。

第13回のグランプリは『おろかもの』でこちらも素晴らしかったよ!


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新人監督なんだけど、
初期衝動作っちゃいました的な
雰囲気重視のよくわからない映画などではなく、
ほんとにきっちりと考えられていて、
描きたいテーマを映像で語ることが実現できている。
しかも原石らしい魅力も随所にあるので、ほんとに観ていて楽しいし、
観終わったあともメッセージを持ち帰ることができる力作でもある。

刺さってしまった。。

誰かを軽んじたり、踏みつけたり、うっすら下に見たりしてきた罪はそうそう許されるものではないけど、
そういう罪を負っても生きていくしかないんだから
ちゃんと反省して丸裸になってぶつかっていくことで
何かをちょっっとずつ良くしていくしかないんですよね…。
死んで詫びるわけにもいかず、
不幸になって詫びても世の中は良くならないだろうし、
せめて世の中が良くなるような小さな一助にでもなれるように
生きてくしないんよね。。
なんか最近過去の数々のやっちまったことがパッと思い出しては、
「うおっ!ホントすみませんでしたっ!」と1人でダメージを受けることが多いもんで、、、
この映画は刺さってしまった。。




主人公の女性は割と周りの人を軽んじてしまう人。

彼氏も下に見てる感じするし結構大きな嘘をついている。
ゆるふわ女性後輩社員はどうせ女使ってんだろと軽蔑してる。
清掃員の人をぞんざいに扱ってる。
専業主婦の友達のこともうっすら軽んじている。
バリバリ働いている自分の方が上だと思ってる。

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↑こう箇条書きにすると嫌な奴なんだけど、、、
不思議と主人公を切り捨てられない。
人間として未熟なのに〝大人〟としてまっとうに生きていかなきゃいけない大変さは僕も重々わかってるから。。
何回も失敗してきてるから。。
家族にも友人にも恋人にも後輩にも同僚にも上司にもクライアントにもあらゆる社会問題にもあらゆるマイノリティにも、
全部正しい知識で正解の対応なんて出来てないもん。。

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その贖罪の映画ですね。。

監督も主人公には自分のことを投影した、的なことをおっしゃってましたよ。
どの部分がご自分の体験(後悔?)と重なっているのかは分かりませんが。


ラストネタバレは以下に。



この映画の面白いとこは、
ラスト近くで主人公は反省をするんだけど、だからと言って何かを解決するような行動もさせてもらえてないとこ。
彼氏との関係は修復できなかったし、
仕事のことも栞の親切で何とかなっただけで麻希が解決したわけでもないし、
友人夫婦の家庭の不和についても旦那に「せめて玄関の電球変えてあげて」と言っただけで、突然泊まらせてもらったりと迷惑かけっぱなしのわりに全然活躍できなかった。
だからラストはショボい。
大団円なんか来ない。そんな人には。
ただ波打ち際で一瞬微笑むだけ。
しかも彼氏の空耳きっかけで。
自分を呼ぶ彼氏の声が聞こえて振り返ったけど誰もいない。
そんなハッピーにはしてもらえない。
ただちょっと微笑ませてもらっただけ。
私ずっっと酷かった。
私なりに一生懸命だったとは言え、ずっっと他人を軽んじて来てしまった。
反省したいし学びたいし変わりたい。
ほんとのハッピーエンドは私にはまだまだまだまだ先。