映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『桜桃の味』ラストネタバレあり オフショットの意味は?

2024-06-30 | 映画感想
桜桃の味(1997年製作の映画) TA'M E GULIASS  
上映日:1998年01月31日
製作国:イラン
上映時間:98分
監督  アッバス・キアロスタミ 
脚本  アッバス・キアロスタミ
 出演者 ホマユン・エルシャディ  アブドルホセイン・バゲリ  アフシン・バクタリ


ラストにびっっっくりしすぎてどうしていいやらわからず、書くのを忘れてました。。


まず、毎度毎度思うんですがイランの俳優さんってホント自然な演技をしますよね。


ナチュラルな演技とはまた違うんですが、ドキュメンタリーかと思わせるような自然な感じがある。
(↑説明下手っ!)


撮影オフのときの表情とはまた全然違うので、やっぱ演技はしてるんですよ(当たり前)。
演技の中での自然さ。


**


ほぼ車の中での会話劇。


話す相手が変わっていく。
話す内容は「⚫︎殺の幇助」。


⚫殺したい主人公の男の背景は全く説明されない。
⚫殺したい人、というアイコン的存在。


で、その幇助を頼まれる人たちは一様に「んなことできるかいっ!」というスタンス。
さて、どうなるでしょう、と。


**


緊張感もあるし単純に「どういうラストにするの?」という強い興味で観続けました。


終盤、ある事情を抱えた老人の登場により展開していくんですが、
そうすると主人公が「あ、やべホントに話が動き出しちゃった…」的な感じで動揺し始めるのが人間的でかわいらしい。


しかし尺的に映画はそろそろ終わる。
果たして…。


ラストネタバレは以下に。








1997年の映画なのでこのラストは衝撃だったことでしょうね。
 「さてどうなる??」ってとこで、、いきなり撮影風景っぽいオフショット的な映像にら切り替わってそのまま終わり。

 これは映画だよ、と。

 逆にいうとラストまで描いてしまうとそれこそ映画の中だけの話になってしまう。

 そのまま死んでしまうのか、やはり生きることを選んだのかどちらかを描くしかなくて、 「そっちのラストを描いたのね」ということだけになってしまう。

 撮影風景を映して「これは作り物です」と明確にして終わることで 逆に「あなたはどう思う?どうしたい?」とボールを渡されたような気になりました。

 正直どっちのラストがいいかわかんない。
 監督もそうだからこういうラストになったのかな。





ドキュメンタリー映画『“死刑囚”に会い続ける男』なぜ人は人を殺すのか・殺せるのか

2024-06-30 | 映画感想

“死刑囚”に会い続ける男(2021年製作の映画)
製作国:日本
上映時間:79分
ジャンル:ドキュメンタリー
あらすじ
「今朝は死刑を執行される夢を見て、目が覚めました」。最高裁で死刑判決が出た翌日、奥本章寛死刑囚は、面会室で記者にこう打ち明けた。奥本死刑囚は2010年、宮崎市の自宅で生後5か月の長男、妻、義母を殺害。自らの家族を殺めるという「償えない罪」の重さの前に打ちひしがれていた。被告の時代、刑の確定前後、死刑囚となった後の足かけ8年に渡り、向き合ってきた記者が見たものは…。「私は意思疎通のとれない人間を安楽死させるべきだと考えております」。神奈川県相模原市の障害者施設で19人を殺害した植松聖死刑囚は、記者をまっすぐみすえて、確信に満ちた表情を見せた。戦後、最悪の殺人事件とも言われるこの事件の加害者に、反省を促すきっかけはないのか。当初、「虚勢」を強く張る姿しか見せなかった植松死刑囚は、2年近く10回以上の面会を繰り返すうちに、記者に「弱さ」を覗かせる場面も出てきていた。「私は成果主義者なんです。効果が出ないものにエネルギーを使いたくはないんですよ」。神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった事件で、死刑が確定した白石隆浩死刑囚は、被害者遺族に対して「謝罪する気持ちはない」と言い切った。反省につながる糸口さえ見てとることができない白石死刑囚に、記者は葛藤を抱えながらも面会を続けた。「今、俺にとって生きがいについて考えることはつらいんです」。犯行当時18歳7ヶ月だった千葉祐太郎死刑囚は、記者の前で頭を抱えてうな垂れたまま、動かなくなった。母親から虐待され続けた過酷な幼少期をもつ千葉死刑囚。記者は「最後まで反省を深め続けるためにも、生きがいをもつことの大切さ」を説き続けた。記者と千葉死刑囚にとって、拘置所の面会室は「生きがい」について考える「真剣勝負の場」だったのである。
監督 西村匡史
(Filmarksより転載)




監督はTBS報道局記者の西村匡史 (にしむらまさし)さん


西村さんといえば、西ピーの愛称で
TBSのYouTube番組『WORLD NOW』でなかなかの天然&のびのび感&誠実さを醸している方。

【【WORLD NOW】“森と湖の国”フィンランド・ヘルシンキから生配信 おしゃれな北欧の街をぶらり ロシア脅威でNATO加盟に向けて加速も| https://www.youtube.com/live/dM9-T3jTHaE?si=1z0PDB3MtqSLEQMu


↑ WORLD NOWまた復活して欲しいなぁ。

**

西村さんのこの天然&誠実なキャラクターがあってこそ、重大事件の死刑囚たちが面会に応じて胸の内を話すようになるのだとわかります。

それ故に、何故人は人を殺してしまうのか(人を殺せるのか)を起こしてしまうのか、という疑問に立ち向かえるのだと思いました。


**


法廷画家さんの絵が怖い。。非常に怖い。。




おそらく普段は法的画家をされている方が面会に同行して、死刑囚の様子を絵にしているのですが、
それが、、、、怖い。。。。

人を殺して反省をしている死刑囚を描いた絵は大丈夫なんですけど、
全っっっ然反省する気もない死刑囚の顔が怖すぎる。。
きっとほんとにこういう顔をしてるんでしょうね。
人ならざる者にしか見えない。
超こえーの。。



**

四人の死刑囚が扱われいて

それぞれの事件の背景、本人の育ってきた環境(だいたい壮絶)、被害者・加害者の家族の様子、などを丁寧に映していきます。

4つの事件中2件は映画化されていて観ましたが
それで知ったつもりになっていたけど
全然わかっていなかった。。

**

どれも怖すぎるんですが、、
僕はやはり戦後最悪とされる植松聖死刑囚。


相模原障害者施設殺傷事件の犯人。

犯人は犯行前にヒトラーの優生思想に共感して大量殺人を実行して、全然反省していない。

ヒトラーの優生思想でいうと僕も殺されてしまう方にいるので、
ものすごく怖いんです。
映画『月』で体感したことです。

**

どうしてそんな考えを持つ人間ができてしまうのかっていう、
生育プロセスを専門家によって明らかにしていくことは、
犯罪を起こさせないためにも
より良い社会にするためにも
必要なことだと思います。

が、
同時に〝正しい家族であるべきだ〟という思想に繋げるのは危険だと思いました。

あ、このドキュメンタリーでは全然そんなメッセージ発してないですよ。このドキュメンタリーでは全然そんなメッセージ発してないですよ。大事なので2回書きました。

片親だからとか親が10代だからとかに問題があるのではなく、
家庭内での虐待とか暴力とかが〝起因の一つとなって〟人格が歪む〝ことがある〟。

むしろ〝正しい家族でなければならない〟という圧力も原因の一つになり得ると感じました。


**


あと、裁判員制度。

この制度が導入されるときにはものすごく報道もあったけど最近あまり聞かないですね。

裁判員制度の中では市民が死刑に関わる裁判に参加することになる。
いつ自分が〝合法的な〟殺人を決定することになるのかわからない。

このドキュメンタリーでは、裁判員になり死刑を下した方のその後の苦悩も描かれていました。

また、自分は死刑に反対したんだけど賛成多数で死刑が決まった裁判員の方の言葉も重かった。

少年犯罪でしかも
審理期間5日で死刑判決が下った事件もあった。

死刑制度は世界では少数派。
冤罪も重い重い人権侵害。
考えていかなきゃいけない問題。


これ観て戦意高揚できる? 国策映画『土と兵隊』(1939年)

2024-06-28 | 映画感想

土と兵隊(1939年製作の映画)
製作国:日本
上映時間:155分
監督 田坂具隆
原作 火野葦平
出演者 小杉勇 井染四郎 見明凡太朗



目次

  1. 「国策映画ってそもそも何だ?」というフェーズ
  2. この映画観て戦意高揚する??
  3. ①日本軍の強さ②兵士たちの仲の良さ・人の良さ。
  4. 主演の小杉勇と人間ドラマ部分は確かに魅力的
  5. ただただ歩く
  6. 7割くらい何言ってんのかわかんない
  7. 本物の武器&演習映像
  8. 以下、ネタバレ



「国策映画ってそもそも何だ?」というフェーズ


先日『関心領域』を観て以降(まだ感想書けてない…)、グルグル考えちゃって現在は「国策映画ってそもそも何だ?」というフェーズにおります(どこ)。

古川隆久著『戦時下の日本映画 人々は国策映画を観たか 』も並行して読んでいます。
意外と国策映画はヒットもしなかったし国民は娯楽映画やニュース映画に流れていたし、批評家からの評価も低かった。
というのが面白かったです。
まだ読み始めたばかりですが。。

**

この映画観て戦意高揚する??

この『土と兵隊』。
まず単純にこの映画観て戦意高揚する??っていうくらいに淡々と〝はい、地獄です〟ってのを表現してると思いましたけど。

ただ、、この映画に対する現代のレビューをザッと読んだ感じでは
現在でも戦意高揚しちゃってらっしゃる方がいたので、、
人によっては国策映画として〝現在でも!〟機能しちゃうっぽいです。。
というか、
戦意高揚したい人は戦意高揚スイッチが敏感でいらっしゃるんですかね。

戦意高揚スイッチが硬めの人はむしろこの映画だと「戦争最悪〜。子供や孫を戦地に送りたくな〜い」としか思わないのだが。。

**

この映画、
戦後、国策映画だとしてGHQに接収され、現在残っているフィルムはGHQによって30分カットされたもの、ということなので〝やばいシーン〟はカットされていると考えていいでしょう。

なのでなかなか判断は難しいですが、
むしろ「戦争は人類の勝手なものであり、他の動物たちには関係のない迷惑なもの」というメッセージはセリフとして明確にされているシーンが残っているし、
行軍の悲惨さや
地元民の無惨な死、
敵兵との心の交流とも感じるような詩的なシーンなど
戦意高揚を主たる目的としてる映画にそもそも含まれているのが不思議と言えるようなシーンが多くみられました。

**

①日本軍の強さ
②兵士たちの仲の良さ・人の良さ。

ただ強烈に印象があるのは
①日本軍の強さ
②兵士たちの仲の良さ・人の良さ。

戦中に作られた戦争映画だけあって武器が本物。。
そして演習の映像も使われているようで、そのリアルさは圧倒されるし正直見入ってしまう映像的な魅力が強くありました。

②の「兵士たちの仲の良さ・人の良さ」については
軍隊にいじめがあったことは告発されているし、
そりゃもしかしたらこんなほのぼのとした隊が存在したのかもしれないけど
ほのぼのの方を2時間たっぷり描くのは意図的だし
実際にあった心温まるエピソードだけを膨らまして描いたとしたら
それは〝美化している〟と言われても仕方ないと思います。

<スリッパ構える古年兵 軍隊での「いじめ」、遺した兵士:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASP85775VP85POMB00P.html>

<ある自衛隊員の自殺 いじめやパワハラで生まれた“心の傷” :クローズアップ現代 https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4500/ >

**

主演の小杉勇と人間ドラマ部分は確かに魅力的

人間ドラマ(休憩シーン)は、戦闘シーンとの対比もあるし「こうであって欲しいなぁ」という希望もあって、ほのぼのしながら観ました。

主演の小杉勇の野性味ありつつ憂いを帯びた表情が素晴らしいし、笑顔は笑顔でカラッとして豪快で、主演俳優としてかなり魅力的。

ちなみに小杉勇は戦前は「傾向映画」の新しいスターとして活躍していた、と。
傾向映画ってのは当時の経済恐慌や社会文化状況を反映して、階級社会の暴露や闘争を描いた〝左翼的〟な傾向のある映画のことのよう。




**

ただただ歩く

陸軍なので?とにかく歩く。
泥濘だろうと岩場だろうと川だろうと速度を落とさず「うわぁ泥じゃん」的なリアクションもなくただただ歩く。

これが陸軍だと言わんばかりに歩くシーンが多いし、長い。

これが僕はとても良いと思いました。
しかもタイトルは『土と兵隊』。
歩く兵隊とかではなく、土。

原作小説を書いた火野葦平は日中戦争に招聘されたとのことなので、自分の体験もあるんでしょうか。
陸軍は土との闘いであり土と共に生きるというアンビバレントさを感じました。


**

7割くらい何言ってんのかわかんない

あ、あとフィルムの状態がひどい。これは経年劣化ってことなんですよね。
当時はもっと映像も音も鮮明だったはずですよね。

もうね、頼むから日本語字幕つけて。。
そんな予算どこから出るんだってことか。。
7割くらい何言ってんのかわかんない。。
ネットであらすじを調べながら観ました。。

**

本物の武器&演習映像

ドキュメンタリータッチで撮影されたとのことだけど、それがどういう撮影を意味してるのかはわからない。
戦闘以外のほのぼのシーン、人間ドラマシーンはめちゃくちゃセリフの決まった劇映画。

てことは戦闘シーンがおそらくドキュメンタリータッチなのでしょう。
まずおそらく武器が本物。。

手榴弾投げたりしてるけどあれも本物?危ないでしょ。。もし投げる場所しくじったら??

遠景撮影が多く、兵士の量が尋常ではない。
これが演習映像か。

あと、ただただ建物を銃撃するシーンが長くあるんですけどあれも演習かな。
敵が見えてこない。
敵側にカメラがない。これもドキュメンタリー感がある。

視点はずっと日本側だし、人間の視力以上に敵側が見えないのもドキュメンタリータッチと言えるかな。

**

爆撃と兵士の距離が近すぎて心配。。

撮影技法によってそう見えるだけかも知んないんだけど。。
夥しい数の日本兵が
ぬかるみだろうと川だろうと岩場だろうと上り坂だろうと下り坂だろうとひたすらただ歩く。

セリフも音楽もない。

夥しい数。ほんとに。。

そうそう観たことないですよ、この数。。
馬もいる。犬も結構いる。

そしてたまに小休止。死ぬ寸前かのように疲れ切っている。





以下、ネタバレ




前衛が敵と衝突している間、ちょっと後ろにいる兵隊たちは草むらに仰向けになってほのぼのと「前衛が衝突してますなぁ」とかたらっている
「天皇陛下の恩ために…」と絶命する兵士
「立派だぞ」と長官。
塹壕で眠る兵士たち。
ひとりが「俺たちは何をしてるんだ。俺たちはいまどこにいるんだ」
「何を生意気な(笑)」
みんな笑う
さらに放屁。
「毒ガスは敵の方にやってくれ」
みんな笑う。
難民たちが逃げてくるんだけど中国の兵からも撃たれている。
(日本の捕虜にされると困るから?それは沖縄戦で日本兵もやったこと)
「ひどいことしやがる」
どうやら赤ちゃんひとりを残してなぜか難民全員死亡。
赤ちゃんの泣き声に耐えきれず敵の発砲の中、小杉勇は赤ちゃんのもとへ。
中国語らしき子守唄を歌う母親も絶命し歌が途絶える。
小杉勇は赤ちゃんに毛布をかけて泣き止ますことに成功。
そのに銃撃。その音に驚いて泣く赤ちゃん。
なくなくその場を離れる小杉勇。
敵のトーチカに手榴弾を投げ込んでトーチカの中に侵入。
無傷で生き残っていた(なぜ)敵兵と火野伍長との無言のやりとりや、
トーチカの中に散らばる弾薬や薬莢、中国語の書かれた紙などを淡々と映す。
子山羊を抱く若い兵士ふたり。
「コイツを戦争に巻き込むのは可哀想だ」
「戦争は絶対だ」
「それは人類の絶対であってヤギの絶対ではない」
「それはお前の感傷だ」
「感傷があるからこそ人生は美しい」
「その人生より絶対なのが戦争じゃないか」
「じゃあ」と子山羊を渡す
酒を見つけて運ぶ兵。
「今夜は一杯できるなぁ。」
五右衛門風呂に川から運んだリレー方式で水を貯める。
「まさか風呂に入れるとはなぁ」
「夜までには沸かすので伍長、先に入ってください」
弟よ、我々はまた前進するだろう
どこまで行くのかわからない
しかし堂々と我々はもはや進軍ができるだろう
こうしてこの進軍を続け得るものは自分の肉体ではないということを知ったのだ
俺も驚いたよ、靴を脱ぐと靴下が溶けて無くなってんだ
結構大きな街だったっぽいが建物が破壊されている様子が淡々と映される。
木には鳥の巣。野犬や猫たち。
そしてまた前進の命令が下る。
また無言で前進する兵士たち。
結局入らなかった風呂が結構長い時間映される。




カモーンっ!咆哮の痛快!映画『チャレンジャーズ』

2024-06-24 | 映画イラスト

チャレンジャーズ(2023年製作の映画)Challengers
上映日:2024年06月07日
製作国:アメリカ
上映時間:131分
監督 ルカ・グァダニーノ
脚本 ジャスティン・クリツケス
出演者 ゼンデイヤ ジョシュ・オコナー マイク・ファイスト



こりゃ面白いっ!
面白さで言えば今年一番っ!


『関心領域』同様、もしかしたら何やってんのかずっとわかんなかった人もいるかも。
だとしたら「結局なんなんだ…」って思ったことでしょう。。御愁傷様です。。

それこそ関心領域だよね。。
普段からないものとして扱ってるからこの映画観ても見えてこないのかも。

しかしフィルマークス4.0!高いっ!
さすがフィルマークス民っ!
みなさん好きですねぇぇ。まったくもおぉ。


**


「面白い」という噂は聞いていたものの
この設定で何がどうなれば面白いんだ?と観る前は不安でした。
が、131分ずっと面白かった。。
あぁびっくり。。

僕のパートナーがテニスをやる人なので
テニス描写については微妙とのこと。
テニス界の描き方もイマイチっぽい。

ただテニス関係ないっていうか。

一対一の戦いで、
ひとつのボールを打ち合って
観客は右左と常に首を振りながら〝観戦〟して、
っていうスタイルがまさに!!
っていうことなわけで。

**

めちゃ下ネタを含んだネタバレは以下に!!









西洋のAVでは女優さんがエクスタシーに達する時に 「come on」「I'm coming」とお叫びになる。

ゼンデイヤさんはラストで「カモーンっ!」とお叫びになられました。
つまりは絶頂に達されたんですね。
自分を取り合ってる男2人が抱き合うシーンを見て。
**
そもそも10代の時にキスし合ってる男を観て満足なさったゼンデイヤさんなわけです。
腐女子の才能が萌芽した瞬間だと思いますが それ以降は特にそこに情熱は注がなかった。
あの2人をくっつけようという動きはしなかった。
ただ、 自分は仕事もできて稼げる、 娘もいる、 手伝ってくれる母もいる。
男は?
アートはまるで犬か猫か、ペットのようになってしまった。つまらない。
(嵐の夜。車から降りて歩き出した時「ホテルはこっちだ!」と自分の間違いを正してくれた男である)パトリックにもいわゆる男性的な魅力は感じるけど、
まぁシンプルにウザい。
ヘテロセクシュアルである(っぽい)ゼンデイヤさんにとって男に対するファンタジーはもはやBL的なものにしかない。
おそらくゼンデイヤさんはそれに気づいてなかった。 この試合。
どっちが勝とうが負けようがどっちしても幸せではない。
どうでもいいんだけど、勝ち負けが決まることが一番イヤ。

そうこうしてるうちに パトリックが「ヤッたよ」の合図をアートに送る。
アートはそのメッセージを受けて、試合放棄。
かと思いきや、試合を終わらせない展開に持っていく。

まるで遊びか、愛の行為かのようなボレーの応酬。
試合でボレーがあんなに続くわけがない。
からの抱擁。
そしてゼンデイヤさんの咆哮(カモーンッ!)!
笑ったぁぁ。

**

女性が男性を性的に消費してやるっ!とまでは言わなくても 「私にとって男の役割はそんなもの」っていう痛快さも感じた。

同時に 男性にとってもある種の解放も感じた。
トロフィーのような美女を妻にしなきゃ男としての格が下がるという呪縛からの解放、のような。
(彼らはゲイではないと思うし)
僕は腐女子について詳しくないし 腐女子の精神性についてはちゃんと理解はできてないんだけど
やはりあのラストの「カモーンっ!」の咆哮の痛快さには納得させられました。

男に対して性的なファンタジーはあるんだけど 男が女性に対して性的に欲動している様子は「重い」とか「めんどくさい」などの負の感情があるんでしょうね。

女性が介入しない男同士で性的に欲動し合っている様子なら、自分は安全でめんどくさくもなく楽しむことができるのでしょう。
違ったらすみません。。

***

夫が試合に負けたら離婚する!?とか
パトリックのコーチに!?とかが
あったはずなのに 「カモーンっ!」で全部吹っ飛んで映画終わった!
痛快極まりない!

ギヨーム・ブラック監督 38分に青春詰め込んだ ドキュメンタリー映画『リンダとイリナ』

2024-06-24 | 映画感想

リンダとイリナ(2023年製作の映画)Un pincement au coeur/Linda and Irina
上映日:2024年06月15日
製作国:フランス
上映時間:38分
ジャンル:ドキュメンタリー
監督 ギヨーム・ブラック



どうやって撮ったのか
ドキュメンタリーだということが信じられない
的確すぎる
オシャレすぎる

単なるブルーのトレーナーがオシャレすぎる
トミーヒルフィガーをあんなに自然にオシャレに着こなしている男子を日本で観たことがない
くそぅ、フランス人めっ!

その謎を知りたいのだがパンフもない
監督インタビューもない
フランス語で検索してみたけどインタビュー出てこない
きっとただただドキュメンタリーなんでしょうよ
ただただ現実に起こっていることをカメラにおさめたのでしょうよ
(ドキュメンタリーが逃れられないフィクション性は包含しつつも)

**

ああやっぱりおればギョームが好きぃぃぃっ!

**

〝これは絆と友情についての映画で、
私に人生の一部を差し出してくれた二人の若い女の子、
リンダとイリナの知性と感性に多くを負っています。
私は、この映画をとても誇りに思っています。〟
と監督の言葉。

ほんとに人生の一部を差し出している。
あまりに無防備に。

しかしそれはほとんどの地球人が共感する青春であり、
実は青春期だけではない人生の核になるもの。

純粋で聡明な彼女らの、言葉、表情、行為が、
「あぁ!あぁ!ああっっ!!」(語彙)と大人にナイフを突きつける。

**

若いからこそ経験が少なくて自分を狭めてしまっているコ。
若いからこそ自分の欲求に素直なコ。
永遠に諦めているコ。
毎秒毎秒満足したいコ。

どちらもツラい。。

諦めているコの方がラクなわけよ。
友情も愛情も期待しなければ傷つかない。
でも、そんな人生って……。
毎秒毎秒充足したいコは、ほぼ毎秒辛い。

彼氏候補のイケメンとデートしても、友達とTikTokしても、友達と海に行っても、楽しいのは秒。
その次の秒では虚無。

**

どちらの気持ちもわかる。

しかし、僕はおじさん。。つまり男。

この映画からはフェミニズム的な文脈も感じました。

聡明な彼女らからの言葉から性差による社会格差が読み取れた。
おっさんの僕が簡単に共感していい領域ではない。

**

性差によってその人らしさが阻害される社会構造や空気、風土があるのなら
それを打破する方向に尽力するのが
せめておっさんが出来ることかと。

**

映画観て、
あ〜良かった〜面白かった〜って
秒で消費するだけの人生なんて、ポイズンッ!

1956年のスペクタル 映画『白鯨』

2024-06-24 | 映画感想

白鯨(1956年製作の映画)MOBY DICK
製作国:アメリカ
上映時間:116分
監督 ジョン・ヒューストン
脚本 レイ・ブラッドベリ ジョン・ヒューストン
出演者 グレゴリー・ペック レオ・ゲン リチャード・ベースハート オーソン・ウェルズ ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス





エイハブ役のグレゴリー・ペックは登場から秒でミスキャストだとわかりますね。。


紳士すぎる。上品すぎる。

なんとか怪演しようと頑張ったし
カメラも照明もメイクも頑張ったんだけど、、、って感じでしたね。。
どうやらご本人も納得していかなかったようで『ジョーズ』での使用を断ったらしい。
ほんとは配信とかされるのイヤなのかもね。

**

1956年の映画だと考えるとこのスペクタルは凄いですよ。


誰か死んでるのが普通なくらいのアクション。
骨折とかはしてておかしくない。

あと、この古い時代の俳優のグッドルッキングさがえげつない。。
お前は彫刻か!
お前の鼻は何メートルなんだ!
って俳優がゴロゴロ出てくる。

その目み麗しさと、70年前の最新エンタメ感と、〝人間と宗教〟、がこの映画の楽しみ方かな。

**

船長のエイハブはサイコパス。

2番手のスターバックは、コーヒーチェーンのスターバックスの由来となった人物。
心身深く理知的でまともな人。

しかし結局はエイハブの意思を継いで皆殺ししちゃうんだけどね。。

**

現代でいうところの漫画原作のエンタメ映画化なんだと思います。

スペクタクル小説をスペクタクル映画にしたよ、という。
ちなみに当時からしてそんなに評価が高かったわけではない。
いまみてもそんなに面白いわけではない。

ただ、70年の前の1956年のエンタメ映画の最先端を楽しむにはとても良いものだと思います。



映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』ラストネタバレあり 「地球では檻に入らずに歌っていいのか?」 

2024-06-16 | 映画感想
不思議惑星キン・ザ・ザ(1986年製作の映画) Kin-dza-dza!
上映日:2016年08月20日
製作国:ソ連 ロシア
上映時間:135分 
監督 ゲオルギー・ダネリア
脚本 レヴァス・カブリアゼゲオルギー・ダネリア 
出演者 スタニスラフ・リュブシン エフゲニー・レオーノフ ユーリ・ヤコヴレフ レヴァン・ガブリアーゼ  




名作っ!


コメディの皮を被った政府批判!

いや、そもそもコメディとはそういう側面が強いものなはず。

低予算の雰囲気映画かと予想してたが、否っ!
映像も素晴らしく、なんと丁寧に考え抜かれて作った刺激的な作品か!

すぐ2回観ましたけど、2回目観ると演技の素晴らしさもわかりました。
1回目は話を追うので必死(しかもわからない…)でしたが
2回目心を落ち着けて観たらあらあら、抑えた演技の中で繊細な感情表がみなさん素晴らしかった。。

スパシーバっ!

**

SFコメディに仕立てることで検閲をスルリと抜けたとのこと。
なるほど、これがSFの効能の一つか!

中国でもBL映画を撮るために登場人物を人魚にしたりと、
作り手たちは閉じ込められている檻からなんとか両手を出して創造している!



**

『リバー、流れないでよ』に出てくるアレがキンザザ由来である、というのを知って
キンザザは興味はあったものの「眠そう」ということで避けてきたけど、
僕今週風邪で気管支炎で仕事以外ほぼベッドで倒れてて暇なので観ました。

**

1回目は、地球の未来の姿なのかな?と。
違いましたね。

キン・ザ・ザは当時のソビエト連邦の写し鏡だったんですね。

何の正当性もない階級社会。
そして階級社会を「生きる目標がある。上下がない世界では生きられない」と教え込まれている。

警察は暴力&賄賂。

表現活動はがんじがらめで、それはまるで檻に閉じ込められて歌を歌うことのよう。

規制や風潮の檻からなんとか両手を出して創造する様子は滑稽だけど愛おしい。

「地球では檻に入らずに歌っていいのか?」のセリフが切ない。

※地球でもほとんどの場合檻に入らないと歌ってはいけません



**


プリュク人はとにかく嘘をつくし、自己中心的で冷徹。
演じる彼らがキュートなので一見そうは見えないけど、酷いぜアイツら。

しかし厳しい社会構造の中で生きる彼らに、実際同じような社会構造に押し込められている地球人(観客も)は彼らの健気さを認めざるを得ない。



**

1回目観た時はずっと3割〜5割意味がわからず観てました。
それでもすごく面白かった。

だいたいの筋がわかって2回目観ると名作っっ!

省略がクール過ぎて。。
まず瞬間移動がほんとに瞬間。

何のエフェクトもなくパッと移動してるから観客はなんのことだかわからない。
それは主人公2人と同じ。

シーンのカットもクール。
バイオリンを割ったらマッチ棒を見つけた。
次の瞬間宇宙船が飛んでいる。
物語や設定が全部頭に入ってないと理解追いつかないですよ。。

だから後半どんどん、何をするために何をやってるのかが全然わからなくなる。
靴下の男も1回目はわかんなかった。
冒頭の地球に来ちゃってた男だったのね。

そして彼はマシコフとゲデバンが別の場所に移動しててもちゃんとそこに現れてくれる設定なのね。
知らないから、それは。。

**

あ、そうだ。
丸っこいウエフが「うるさい」って言ったんですよ。日本語で。

https://x.com/fukui164/status/1802112775004824012?s=46&t=_F65pl4IWo6ngp0pQDRjZQ

パニクってるっていう演出かと思うんですけど、
「キンザザ 〝うるさい〟 〝日本語〟」で検索しても出てこない。。

ロシア語で音も意味も近しい言葉があんのかね。


**


「ママ ママ どうしよう 寒い冬が来るのに ショールもコートもないよ」
の歌が最初は時代錯誤のものだなぁと思っていた
(映画の中でも〝古い流行歌〟)けど

次第に緊迫感が強まってくると「ママ ママ どうしよう」が切実なものに聞こえてくる。

それはおそらく当時のソ連でもそうだったはず。
この歌は〝古い流行歌〟ではなく、まさに今!厳しい冬を前にあたたかいコードのない子供がいるという貧困問題が、ちゃんと目を向ければあるのに目を向けていない。

それは日本も同じ!
20代や女性を含めた数百もの人が食事を求めて都庁の下に毎週集まっている。

その頭上では何十億もかけた(何十億もかかってるわけのないレベルの)プロジェクションマッピングが映されている。

ディストピア(反理想郷、暗黒世界)じゃんっっ!!
ファッッックっ!!
キューーーーーーー!!!!

**



ラストネタバレは以下に。




終盤、何度も嘘をついてきたプリュク人を救うために、
地球に戻るチャンスを捨てるシーンは泣けるし
プリュク人のふたりは結局マシコフとゲデバンの優しさにはピンと来てなかったっぽいとこも良い。 

ラスト。
 靴下男が瞬間移動を発動させる(地球人ふたりの許可も得ずに…)と
 次の瞬間冒頭のシーン。 
マシコフが帰宅するシーン。 

これもね、いちいち覚えてないですからね。。 
これが冒頭のシーンであることを。。 

場所だけじゃなく時間もちょっと戻ってるってことね。 
どうやら記憶も消えてるっぽい? 

パンとマカロニを買ってきてと頼まれたマシコフは外へ。

 ゲデバンから道を聞かれる。
 顔を見るが思い出さない。 

そこに清掃車。
車の上には黄色いランプが点灯している。

 PJ様かと即座に反応してクーするふたり。
当然街の人は誰もクーなどしない。

 ふたりが見つめ合う。
 「バイオリン弾き」 
「おじさん」

 名前は忘れちゃった??

 微笑んで空を見上げるマシコフ。
 宇宙のどこかで今もクーしているであろう彼らを思い出してたのかな。

おわり

映画『カラーパープル』 意外なビアン映画! 

2024-06-15 | 映画感想

カラーパープル(2023年製作の映画)The Color Purple
上映日:2024年02月09日
製作国:アメリカ
上映時間:141分
監督 ブリッツ・バザウレ
脚本 マーカス・ガードリー
原作 アリス・ウォーカー
出演者 ファンテイジア・バリーノ タラジ・P・ヘンソン ダニエル・ブルックス コールマン・ドミンゴ コーリー・ホーキンス H.E.R. ハリー・ベイリー


てか、H.E.R.で出たんだ!!

ジェフリー・ライト繋がりで『カラーパープル』。

ジェフリーは牧師役。
ジェフリーとタラジ姐さんは父娘役。
実際は2人は同い年。58歳!!

**

シュグ役のタラジ姐さんがやはり素敵すぎる。
面白すぎる。
さすがの素晴らしさ。

**

タラジ姉さんとセリーとの愛のステージも、
終盤のセリーのソロ歌唱も
大っっっっっ変申し訳ないんだけど、、、
ちょっと安っぽく見えた。。

監督は42歳の新鋭ブリッツ・バザウーレ。
これからかな。

**

人種差別よりも性差別の方に比重が置かれていますね。
1985年版は観ていません。
こういう話だったとは。。

女性たちの連帯の物語。
そして、レズビアン要素もあったとは。

1983年の小説はどれほど衝撃を与えたのでしょうか。
ピューリッツァー賞受賞。

原作者のアリス・ウォーカーは
女性と同性婚をしてた経験もある方。

**

ミュージカルらしく全体的に大味な印象が残念。

おそらく元の小説がそうなんだろうけど、キャラクターの書き分けが少ない。
登場人物は多いけど、強い男と弱い男と強い女と弱い女しか出てこない。

映画『ジョー・ベル ~心の旅~』 反省したんですよね 

2024-06-15 | 映画感想

ジョー・ベル ~心の旅~(2020年製作の映画)Joe Bell/Good Joe Bell
製作国:アメリカ
上映時間:94分
監督 ライナルド・マルクス・グリーン
脚本 ラリー・マクマートリーダイアナ・オサナ
出演者 マーク・ウォールバーグ リード・ミラー コニー・ブリットン




「ここはアメリカだ!自分の意見を言う権利がある!」

と差別主義者を擁護する父。
彼の息子はゲイ。

**

この映画が無知で無教養な自分を反省するために作られたのならばいいけど
「反省してま〜す」と喧伝するために作られたのなら、
実話ベースのこの物語のご本人たちの人生を愚弄するものだと思う。

この映画を観て「絶対にそんなことない!」と擁護する自信はわかなかったな。


映画『素晴らしき、きのこの世界』キノコ教? 

2024-06-15 | 映画感想

素晴らしき、きのこの世界(2019年製作の映画)Fantastic Fungi
上映日:2021年09月24日
製作国:アメリカ
上映時間:81分
監督 ルイ・シュワルツバーグ
脚本 マーク・モンロー
ナレーション ブリー・ラーソン



ヒトの脳が巨大化したのは幻覚系のキノコを食べ続けたことも要因の一つという仮説。

キノコ教とでも言いたくなるような
ほぼ宗教みたいなキノコへの信仰。

映画の後半は
シロシビン(マジックマッシュルームの一種)の抗うつ剤としての有用性の話。

そして終盤はほんとに宗教の話。

映画『アメリカン・フィクション』 久しぶりに吸い込まれた 

2024-06-15 | 映画感想

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)American Fiction
製作国:アメリカ
上映時間:118分
監督 コード・ジェファーソン
脚本 コード・ジェファーソン
出演者 ジェフリー・ライト トレイシー・エリス・ロス ジョン・オーティス エリカ・アレクサンダー レスリー・アガムズ アダム・ブロディ キース・デヴィッド




好き!最高なんだけど。

久しぶりに吸い込まれた。
続けて2連続で観た。
「5」はさすがに高すぎかもしれないけど
今の気持ちとしては「5」だ!

**

小説原作の映画らしい良さがありますね。


小説が原作の場合どういうわけだか話の展開が読みにくいものが多い。
横道のエピソードが盛りだくさんというか。
それがとても自然で、豊かで。
うますぎる映画脚本とは違った良さがあって好き。

**

まず日本語吹き替えで観ました。


こういうオトナのコメディタッチの人間ドラマを演じる声優さんたちのアクトって素晴らしいですよね。
ちゃんと血の通った人間を愛おしく演じてくださってる。
声優さんの技能も込みでこの映画、まず大好きになりました。

2回目は字幕で。
ジェフリー・ライト、声全然ちがうじゃんっ!!

**

〝アジア人差別。


差別も何もアジア人見えてない〟までも描いてくれてる。
「今こそ黒人の声を聞かなきゃいけないのよ」っつって多数決で黒人の声無視するの皮肉が最高。

**

おそらく奴隷制の時代の黒人役を演じさせられている俳優と手を振り合うシーンも。

「まだやってんのか」
「白人がまだ観たいんだってよ」
とでも会話してそう。

**

リューベン・オストルンド監督がこの映画を作ったら、もっと嫌でもっとブラックなコメディになったはず。

それはそれで良いだろうけど
この映画のライトさは本当に魅力的。

ジェフリー・ライトが良かったなぁ。
こういう演技が演技賞総ナメして欲しい。

**

主役であるモンク自身のの背景はあまり語られない。
結婚歴なども明確ではない。
父親は天才の産婦人科医で孤独で銃で自分の頭を撃ち抜いて自殺。
モンクの周りの出来事は語られる(し重い…)けど、モンク自身の過去はあまり描かれない。

**

親の介護については本筋とそんなに関係ないと思う。


介護費用を稼がなきゃいけないという理由づけのためだけもの。
しかし、介護(老いた母)に時間を割いているし
演じたレスリー・アガムズの演技も素晴らしく存在感がある。
てことは、介護(母)はこの映画の中でも重要なものなのでしょう。
その意味は。

人生の冬。
自分たちの未来ですかね。

どんどん忘れていって、自分が自分じゃない時間が増えていく。

**


原作小説も話はほとんど同じ。
小説の方がバッドエンドな印象かな。

**

結婚式でブーケトスを受け取ったのはゲイの兄。

**


「黒人は貧しい
黒人はラップを歌う
黒人は奴隷で
黒人は警察に殺される
英雄伝にもされる
悲惨な境遇の黒人が尊厳を守り抜いて死んでいく
作り話だとは言わないが
もっと他にもあるだろう」

**

差別する者たちが
被差別者の〝差別されている様子〟を描いて
罪悪感を持つことで
「あぁリベラルっ♪」って思えて満足している現状をライトなコメディで描いています。

気をつけないとね。。。



映画『生きる』ラストネタバレあり 死に近い人間の異形さ 

2024-06-15 | ネタバレあり

生きる(1952年製作の映画)
上映日:1952年10月09日
製作国:日本
上映時間:143分
監督 黒澤明
脚本 黒澤明 橋本忍 小国英雄
出演者 志村喬 治日守新一 田中春男 千秋実 小田切みき 左卜全 山田巳之助






『生きる LIVING』を先に見まして
元のこちらも観ねば、と。

主役の渡邊は無為に生ききた、という設定だけど
まったくそんなことないじゃんね。

妻を早くに亡くし、幼い息子を男手1人で育てて、勤め先も無欠勤で働き続けてた。

**

戦後日本の必死に享楽的に生きようとしてた社会の背景もいい。

ヒロインの小田切みきの存在感が素晴らしい。
(顔が飯島直子に激似ですね)

渡邊と親しくしつつも
死期間近だと知ったときに
〝死に近い老いた人間〟を気持ち悪く、おぞましく、哀れな表情で
渡邊を見るのが生々しくて素晴らしい。

優しく励ましたり同情したりするのではなく、
軽く「キモっ……」って思ってそう。。

**

死に近い人間の、ちょっと人じゃなくなったかのような不気味な存在である渡邊。

〝志村が『ゴンドラの唄』を歌うシーンでは、黒澤から「この世のものとは思えないような声で歌ってほしい」と注文され〟たとこと。

**

終盤は渡邊について役所の人間たちが語り合い、
渡邊という人がどういう人間だったのかを形作っていく。

オチがいいですね。
オチは以下に書きますか。



ラストネタバレ


通夜の終盤で「渡邊さんの意思を継ごう!」と役所の人間たちは熱くなったのに
後日、今までと同じように市民を別の課へたらい回しにする。

日守新一が抗おうと立ち上がるも誰も賛同せず、日守新一も諦める。

結局何も変わらない。

いや、渡邊が作った公園に子供たちの元気な声が今日も空に響いている。






映画『FALL フォール』ネタバレあり 高所恐怖症の人ご覚悟をっ! 

2024-06-15 | 映画感想
ハンターDうぜー!

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面白っ!

僕は極度の高所恐怖症です。

ガラス張りのエレベーターとかムリ。
バルト9のエスカレーターもムリ。
外が丸見えだから。
だからバルト9行かない。
ヒューマントラストシネマ渋谷のエスカレーターもほぼムリ。あんまり行かない。

ジェットコースターも乗る前の鉄筋の階段でもう怖い。
それくらいの高所恐怖症。

**

この映画iPadで見たんですけど、それでもアホほど怖い。
もう最初から怖すぎて手汗が止まらない。

ずっと手汗が止まらないんよ。。
自分でもどうかしてると思いますよ。

実際には存在しない塔を、
どうせCGたっぷりのグリーンバックで女優さんが2人で頑張ってるだけなのは
頭ではわかってるのに手汗が止まらん。。
不思議。理屈じゃないんよね。

これを映画館で観たらわめいてたしたぶん冒頭で逃げ出してましたよ。。

ラストネタバレは以下に。







ハンターDがあそこで落下してイマジナリーDと化していたのはわかってましたね。

 肉食である鷲の肉って不味いらしいですよ。 でもあんなに元気になるんですね。 超回復してました、ベッキー。
 そしてラスト。
 ハンターDがクッションDに。 腹にスマホ埋め込まれました。 最高。
 地上に落としたスマホがメッセージ送信! 無事にジェフリー・ディーン・モーガンが受信!

ヘリでしょうね。
ヘリでベッキーは救出されたのでしょう。

なんか良い話みたいにまとめてましたけど めちゃくちゃ迷惑だから!

映画『ルッツ 海に生きる』 「しょうがない」に飲み込まれていく 

2024-06-15 | 映画感想

ルッツ 海に生きる/ルッツ(2021年製作の映画)Luzzu
上映日:2022年06月24日
製作国:マルタ共和国
上映時間:95分
監督 アレックス・カミレーリ
脚本 アレックス・カミレーリ
出演者 ジェスマーク・シクルーナ ミケーラ・ファルジア  デイヴィッド・シクルーナ




赤ちゃんへの注射代一回300ユーロ(約5万円)。
禁漁中に獲れてしまったメカジキを売れば500ユーロ(8万5千円)。
「いつから禁漁に?1000年前からやってる」

**

まず映像素晴らしい。
海、船、街並み。
愛情が感じられる撮影。
だからこそこの展開が辛いのだが。。

社会派な内容ではあるんだけど
ミニマムな家族ドラマが濃厚だし
後半からはちょっとケイパー映画的なスリリングさも加わってくるので、そりゃ面白いんですよ。

**

冒頭で、昔ながらの漁の様子を丁寧に愛おしく撮影してくれたからこその切なさ。。

こんな桃源郷のような世界、まだ地球上にあったのか!と。
でも、、、なかったんよね。。

「しょうがないよ…」で済ましてはいけない社会問題、、なんですよね。。

傑作ドキュメンタリー映画『94歳のゲイ』上映中!

2024-06-15 | 映画感想

94歳のゲイ(2024年製作の映画)
上映日:2024年04月20日
製作国:日本
上映時間:90分
ジャンル:ドキュメンタリー
監督 吉川元基
ナレーション 小松由佳


傑作ドキュメンタリー!

すごかった。。
お堅い文化人類学的映画かと思ったら
(社会問題を描きつつも)
長谷さんの品の良さとチャーミングさ爆発の温かい人間ドラマでした。
終盤で現れる王子様が王子様すぎてもはやイマジナリー王子様だったのではと。

**

戦中を生きぬいたセクシュアルマイノリティの反省を記録した貴重な歴史的資料であることも事実だし、
すでにテレビで放映されて長谷さんの人生が広く知られて人間関係にも変化があり
長谷さん自身の行動範囲も広がった様子も
この映画版のドキュメンタリーでは描かれるので
展開が多くて面白いですし、
やはり長谷さんが可愛いんですよ。

孤独とはいえ拒絶してるわけではなく
「こんなことが僕の人生で起きるのかぁ」と驚きつつもスルッと受け入れて楽しんでいる様子が痛快ですし
見習いたい姿。

**

映画館で観れたのも良かったです。

ポレポレ東中野にて。
客席はほぼ満席。

観客のうちゲイ男性は多くて3割程度だったのでは。
(もちろん見てわかるわけではないのでこよ数値の正確性にそんなに自信はないですが。。)
少なくとも半数近くはヘテロ寄りの方だったかと。

「高齢者のゲイの人生」について温かい気持ちで観ようと思う人たちがこんなにもいるのは嬉しいことですね。