映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

SHAME シェイム(2011年製作の映画) SHAME

2015-09-30 | 映画感想
#シェイム

突然始まるカメラ固定の長回しのシーンがいくつかあってそれぞれが緊張感もあるし、人物の感情の変わりようを写していてうまい。

同じ監督の『それでも夜が明ける』での首吊られてる男とその後ろで普通に仕事をさせられている人たちの長回しシーンを思い出した。

おそらく幼少期になにかしらの虐待を受けて育ったのであろう兄妹の孤独や苦しみは当人たちの問題だけではなく社会問題として捉えるべきなんだね。

マンチェスター・バイ・ザ・シー(2016年製作の映画) Manchester by the Sea

2015-09-30 | ネタバレあり
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

観終わった後とにかくとにかく家に帰りたくなる映画です!大丈夫かな?って心配で。。

http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=1751

一個もネタバレしない方がいいと思うのでストーリー書きませんけど、まぁなかなか重ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい過去ですよ。考えられる中で一番きついんじゃないですかね。。
これを観たあとはとにかく早く家に帰りたくなりますよ。

でも全体のトーンとしてはコメディタッチ、と言っていいかと思います。
ケイシー・アフレックとミシェル・ウィリアムズが向き合って喋るシーンも一生懸命すぎて笑ってしまいました。

ハッピーエンドとは言えないけどハッピーエンドがいつも観客に優しいとは限らなくて、少しビターだからこそ自分の人生のいろんな時期に寄り添ってくれる映画なのかも。

思わず口から出た「死なないで」というミシェル・ウィリアムズの台詞がこの映画の核かと。
ミシェル・ウィリアムズだってああいう状態からああいう状態になったけど幸せだなんて思えないだろうし思っちゃいけないって思うだろうしああいう状態からあれが出てきたときにもしかしたらものすごく辛い気持ちになるかもしれないし。でも、死なないで生きることを選んだんだよね。ネタバレ厳禁。

あと、マンチェスターバイザシーってのは地名だそうです。こういう長い名前の街がアメリカの右上の海っぺりにあるそうです。

http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=1751

バーフバリ 伝説誕生(2015年製作の映画) Baahubali: The Beginning

2015-09-30 | 映画感想
ダメなのはわかってるけど、前半の歌と踊りのシーンを全曲3分の1にしたい……!長いよ…。
2でもこれがあるのかと思うと心配。。

以下、褒め言葉。

壮大、圧倒的、迷いがない、馬鹿馬鹿しい、カッコいい、美しい、笑える、渋い、などなどの意味を全部含んだ言葉を「バーフバリ」という一語であらわすようにしていきたい。

バーフバリってるよね!
バーフバリたいわぁ!
バーフバリらないなら…

動詞として使っていきましょう。


最高か!

海炭市叙景(2010年製作の映画)

2015-09-30 | 映画感想
良すぎた。。ずっと観てたかった。。なんで劇場で観なかったんだろう。。
完璧に好き。まいった、やられた。。

短編集を基にしたオムニバスだということは知っておいたほうがいいですね。
それぞれのエピソードに深い繋がりはないので。
(逆の意味での深い繋がりはあるけど)

ただ、函館をイメージした海炭市(このネーミングも素晴らしい)で
生きることに一生懸命なんだけど、
どういうわけだかあまり幸せそうに見えない人たちの空気感は同じ。

有名俳優以外のキャストは函館の方が演じたとのことでそのリアルさは迫力あった。スナックのシーンすごかったもん。。


***


竹原ピストルがもはや妖精のようだった。。
なんなのあの清らかさ。

小林薫やら南果歩やら加瀬亮やら谷村美月やらがそのあと活躍するけど、竹原ピストルの風味で全体包んじゃうもんね。


***


全然関係ないけど
高橋三千綱の小説『二月の行方』を思い出した。

けして子供から「あんな風になりた〜い!」と思われないオトナたち。
でも魅力的でかわいい人たち。

自分も十分オトナなんだけど、、学生時代に『二月の行方』読んで感じた、寂しくてダメなオトナたち。
憧れたんだよなぁ。


まぁまぁとにかく『海炭市叙景』、名作ですので!

ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大戦争(1986年製作の映画)

2015-09-30 | 映画感想
日本妖怪VS西洋妖怪VSハレー彗星。
映画公開の1986年はハレー彗星が接近した年。

日本を乗っ取ろうと計画している西洋妖怪(ドラキュラ、魔女、狼男、フランケンシュタイン、謎のボス)を倒すために、鬼太郎たち日本妖怪が闘いを挑む。
そしてそれとは関係なくネズミ男は金(キン)を盗もうと企む。

話の4分の1が設定の説明で、あとはずっと闘い。
それぞれキャラの説明なんか1秒もなく、それぞれ見せ場があるんだかないんだかって感じでずっと闘う。

たまにはこんな風に伏線の回収とか、引用とか、隠喩とかを気にせず頭空っぽにして
映画観たいもんです。

ラプンツェルのウェディング(2012年製作の映画) Tangled Ever After

2015-09-30 | 映画感想
この辺りからのディズニーの短編映画はもう別次元に突入ですね。

描画技術と脚本の両輪がガッッッッッチリと組み合って、もう段違いのエンターテイメントになってます。

「短編映画ってこんな感じでいいんでしょ」感が一切ない。

本編よりも快活に暴れまわる馬とカメレオンが面白い。
何回も見れるしたぶん何回も笑う。

ウイスキーと2人の花嫁(2016年製作の映画) Whisky Galore

2015-09-29 | 映画イラスト



グラスゴー(スコットランド)沖にある小さな島が舞台。
この島がかわいいっ!港も船も家も島民もみんなかわいい。
なんか全部お菓子でできてるんじゃないかと思うほど。


この映画は実話ベースで、ナチスによるロンドンへの空爆が激しくなっている頃の話。
すぐそこに戦火が迫っているというのに島民が落ち込んでいるのは「ウイスキーの配給停止」。。

〝命の水〟を失って落ち込んでいる島のすぐそこでなんと〝5万ケースのウイスキー〟を積んだ船が座礁。
実話じゃなければ嘘くさくて絵本にしかならない話。

船員を救助した後ウイスキーも『救助』するわけですが、そのウイスキーを探している関税消費庁や民兵や政府の人間などが島に隠されたウイスキーを探し回ります。
島民一丸となって知恵を絞ってウイスキーを隠すが…。

四コマ映画『ウイスキーと2人の花嫁』→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=1936


***

という実話に、結婚間近の2人の娘を持つ父親の気持ちや、戦時中であっても好きになった男性と結婚することで自分の人生を選ぶ2人の娘や、厳格な母に押さえ込まれてきた息子の反乱や、その母親自身の新しい扉、などなど人間ドラマも盛り込まれています。

が、とにかく全体的にほのぼの。
ちゃんと笑えるし、ハラハラするし、感動できる。
しかも98分ですよ。
大好き、こういう映画。





***



〝歴史〟が為政者に作られるものなら〝昔話・伝承〟は庶民が作るもの。
1941年スコットランドで起きた実在の貨物船座礁事件から始まるこの話はスコットランドの人はずっと語り継いで今でも大好きなんだそう。

この話のどういう部分をみんなは好きなのでしょうか。


戦火がすぐそこまできているという段階でも「酒が呑みてぇんだよ!」という素直な欲求でみんなが一丸となって協力し合う姿はたしかに痛快。

この映画で描かれる逞しさやしたたかさに人は惹かれるんでしょうね。
こんな風に自分を貫きたいなと(しかもそこまで迷惑かけてる訳でもないしね…)。

全体主義や厳しすぎる宗教観に飲み込まれてるキャラも出てくるけど、和気藹々と「ウイスキー救出作戦」を実行する人々と比べるとやはり人間性を失っているように描かれている。

『ウイスキーと2人の花嫁』となって現れたこの〝昔話・伝承〟は、細かな事実が消えて削ぎ落とされて本質の〝民衆が求める物語〟として成立してます。





未来を花束にして(2015年製作の映画) Suffragette

2015-09-29 | 映画感想
『ドリーム』もそうだけどこれは女性向けの映画じゃない。

職場で虐げられている女性が観て、「昔の人はこんなに大変だったんだ、私なんてマシな方」「昔の人が頑張ってくれたから今の私の権利があるんだ、ありがとう」って思うための映画じゃない。

反省するために男が観る映画だろうがよ!

今も政治家が妊娠すると怒られる時代。
全然過去の話じゃない。


***

過激な参政権運動をして何度も逮捕されたヘレナ・ボナム=カーターの
「全員逮捕するの?女性は人類の半分いるのよ」
というセリフが印象的。


種族の半分を虐げ続けている不思議な惑星、地球。


***


キャリー・マリガンはいつものごとく素晴らしい。

メリル・ストリープの出番少なすぎてビックリ。

ベン・ウィショーがいくら悪役演じても子犬のようにしか見えないのが面白かった。

臨場感を出そうとするカメラワークが素人の動画サイトのやつみたいで興ざめ。

もうちょい格調高い映画になれた可能性あるのに、惜しい。

ウルトラ I LOVE YOU!(2009年製作の映画) ALL ABOUT STEVE

2015-09-29 | 映画感想
ラズベリー賞総ナメの逆話題作ですけど、言うほど悪くないですよ。

ファンの方には申し訳ないですがたぶんブラッドリー・クーパーが良くないんだと思います。
今や演技派俳優の筆頭ですが、ハングオーバーの頃はまだテレビ演技から抜け出せなくて映画の中では浮きまくり。

サンドラ・ブロックの『あなたは私の婿になる』でも相手役のライアン・レイノルズもちゃんと面白かったから作品の価値が上がったわけで。

サンドラ・ブロックが1人で大暴れする映画だけどほんとに1人で〝踊る阿呆〟をさせちゃったから、サンドラ・ブロックがラズベリー賞獲るハメになっちゃったでしょ。

トーマス・ヘイデン・チャーチは良かった。
サンドラと同じ世界でコメディ演技してたからこの2人のやりとりは安心して楽しめた。

受け手がいないままサンドラが暴走して、謎の事件がいくつか起きて、激しい中だるみにも襲われるけど、後半の坑道落盤事件以降は突然面白い。ふざけ方も好き。

ラストのサンドラの1人語りはさすがでちょっと泣きそうになるし「なんだかすごくいい映画だった」ような気がしてくる。。

ラズベリー賞の脚本賞とってるけど、脚本が悪いのか演出が悪いのかはわからない。

片付けられてない問題もあるけど、この手の映画にそこまで求めるのもねぇ。

ラズベリー賞受賞でむしろ歴史に残るし、観る人のハードルも下がるので逆ラッキー
な映画だとも言えます、かね。。

ハローグッバイ(2016年製作の映画)

2015-09-29 | 映画感想
今年見た邦画の中で一番良かった。『愚行録』が一番だと思ってたけどフワリと飛び越えました。

女子高生のグロテスクな友達関係を描いただけの映画だったらキツイなと思ってたんですが、それはほんの一要素にしか過ぎない。

女子高生を描いてるという感じもしなくて、彼女らを通して各年代の女性の人生を垣間見る冒険のように感じました。

観てる最中、ビフォア3部作を思い起こしました。
(ビフォア・サンライズ、サンセット、ミッドナイト)
会話を大事にスリリングに撮っていたからかな。画面もきれいだし。


女優さんみんな素晴らしいんですが、やはり主演の2人。

久保田沙友のカリスマ性と美しさも凄いんですが、
萩原みのりが演技うま過ぎて食い入るようにみてしまいました。

なんで萩原みのりはこんなにカメラに映されてることを意識しない顔ができるんでしょう。
なんで台本覚えたんじゃなくて今起こったことに対して今初めてリアクションしたみたいなセリフ回しができるんだろう。
バスに乗ってるときの表情と友達といるときの表情が全然違ってて、感動してしまいました。
トイレで「え、なんで知ってんの?」っていう表情なんて完璧。


どんな話か知らずに観に行ったのですが、思った以上にいろんな要素が込められた物語でした。
なのに、くどくない。
伏線の回収の仕方もササッとしてて「はい!いま見事に伏線回収いたしましたぁ!」とウザい映画も多いけど、これは上品。
※なんで警察にすぐ連絡しなかったかとか。


ラストも、僕はだいたいラストについて「長い、いらない、くどい」と思ってしまうんですが、かっこよかった。

結構大きい問題点をラストまで持ちこしてきたから、「この問題を解決しないまま終わるってのもひとつの手か」などと偉そうに観てましたが、ちゃんと逃げずにしかも必要最低限のカットで、しかも主演2人のキャラクターをより強く美しく描いてたのでもうなんかすげぇなと。。


女性がこの映画を観るときっと「学生時代の女友達ってこうだよね」と懐かしく共感するのでしょうが、おじさんが観るともはやあのやりとりはサスペンス。

「大丈夫、安心して。絶対誰にも言わないから」って言葉に「はい、私あなたの弱み握りましから」という脅迫を滲ませながらじゃないと話せないんですか、女子ってヤツは!

萩原みのりと岡本夏美の
「私たち友達だよね」
「当たり前じゃん」
というセリフは、2人ともあんなに殺し屋みたいな視線をぶつけながら言うのが正解なのですか、女子ってヤツは!


あと、僕は学生時代ずっと吹奏楽部だったので、放課後のシーンで裏でずっと楽器練習の音がずっと鳴ってるのが印象的でした。

自分が鳴らしてたあの音は、関係ない人にはこうやって聴こえてたんだな、と。
うるさくて迷惑だったとは思いますが、、吹奏楽部じゃない人にとっても、放課後のあの音は青春のBGMのひとつになってるんだろうなと、思いました。



こう言う映画の場合、男性はほとんど妖精くらいの存在感になっちゃうんですが、その中でも桐生コウジは面白い。
万引き犯を追いかけるシーンの走り方が可笑しい。。あれは演技なのか、桐生コウジのパーソナリティなのか。
「この人奥さんに逃げられたんだろうな」と思わせる走り方。

ハローグッバイ(2016年製作の映画)

2015-09-29 | 映画感想
今年見た邦画の中で一番良かった。『愚行録』が一番だと思ってたけどフワリと飛び越えました。

女子高生のグロテスクな友達関係を描いただけの映画だったらキツイなと思ってたんですが、それはほんの一要素にしか過ぎない。

女子高生を描いてるという感じもしなくて、彼女らを通して各年代の女性の人生を垣間見る冒険のように感じました。

観てる最中、ビフォア3部作を思い起こしました。
(ビフォア・サンライズ、サンセット、ミッドナイト)
会話を大事にスリリングに撮っていたからかな。画面もきれいだし。


女優さんみんな素晴らしいんですが、やはり主演の2人。

久保田沙友のカリスマ性と美しさも凄いんですが、
萩原みのりが演技うま過ぎて食い入るようにみてしまいました。

なんで萩原みのりはこんなにカメラに映されてることを意識しない顔ができるんでしょう。
なんで台本覚えたんじゃなくて今起こったことに対して今初めてリアクションしたみたいなセリフ回しができるんだろう。
バスに乗ってるときの表情と友達といるときの表情が全然違ってて、感動してしまいました。
トイレで「え、なんで知ってんの?」っていう表情なんて完璧。


どんな話か知らずに観に行ったのですが、思った以上にいろんな要素が込められた物語でした。
なのに、くどくない。
伏線の回収の仕方もササッとしてて「はい!いま見事に伏線回収いたしましたぁ!」とウザい映画も多いけど、これは上品。
※なんで警察にすぐ連絡しなかったかとか。


ラストも、僕はだいたいラストについて「長い、いらない、くどい」と思ってしまうんですが、かっこよかった。

結構大きい問題点をラストまで持ちこしてきたから、「この問題を解決しないまま終わるってのもひとつの手か」などと偉そうに観てましたが、ちゃんと逃げずにしかも必要最低限のカットで、しかも主演2人のキャラクターをより強く美しく描いてたのでもうなんかすげぇなと。。


女性がこの映画を観るときっと「学生時代の女友達ってこうだよね」と懐かしく共感するのでしょうが、おじさんが観るともはやあのやりとりはサスペンス。

「大丈夫、安心して。絶対誰にも言わないから」って言葉に「はい、私あなたの弱み握りましから」という脅迫を滲ませながらじゃないと話せないんですか、女子ってヤツは!

萩原みのりと岡本夏美の
「私たち友達だよね」
「当たり前じゃん」
というセリフは、2人ともあんなに殺し屋みたいな視線をぶつけながら言うのが正解なのですか、女子ってヤツは!


あと、僕は学生時代ずっと吹奏楽部だったので、放課後のシーンで裏でずっと楽器練習の音がずっと鳴ってるのが印象的でした。

自分が鳴らしてたあの音は、関係ない人にはこうやって聴こえてたんだな、と。
うるさくて迷惑だったとは思いますが、、吹奏楽部じゃない人にとっても、放課後のあの音は青春のBGMのひとつになってるんだろうなと、思いました。



こう言う映画の場合、男性はほとんど妖精くらいの存在感になっちゃうんですが、その中でも桐生コウジは面白い。
万引き犯を追いかけるシーンの走り方が可笑しい。。あれは演技なのか、桐生コウジのパーソナリティなのか。
「この人奥さんに逃げられたんだろうな」と思わせる走り方。

ジミー、野を駆ける伝説(2014年製作の映画) Jimmy's Hall

2015-09-28 | 映画感想
「障害はいつでも地主と聖職者ね」

ケン・ローチはやっぱすごいなぁ。。

大げさな演出などなく、社会の底辺で懸命に生きる人たちへの視線が優しい。

権力を振りかざす悪役すらも暖かく包んでいる気がする。



「あなたの中には愛より憎悪が勝っている」


****


いつもながら僕にはケン・ローチの映画はどこがどう良いのか説明がつかない。。

なんでこんなに良いのか、言葉にしたらダメな気もする。

インベージョン(2007年製作の映画) THE INVASION

2015-09-28 | 映画感想
『ヒトラー〜最期の12日間〜』の監督なんですね。
面白いですよ、これ。


地球がエイリアンに侵略されて、エイリアンのウィルスに感染した人間は怒りや独占欲がなくなっていく。

感染した人間は表情もなく動きも直線的になりまるでゾンビのよう。

しかし、世界各地で起きていた紛争も解決し、全世界が核廃絶に協力するようになる。貧困も食糧難もなくなっていく。世界は平和に。。


そんな中で、息子を守るためにゾンビ化したエイリアンをバンバン殺していく二コール・キッドマンこそ人間ではなく悪魔のように見せている。

そもそもニコール・キッドマンは精神科医で心が乱れた患者に薬を投与して、怒りや独占欲を抑えて心穏やかにさせるのが仕事。

このエイリアンと何が違うのか。


戦争するのが人間らしさなのか、戦争しないのが人間らしさのか。
「人の命」と「人間らしさ」のどちらが大事なのか。



****


結構深いテーマを侵略・ゾンビものとして開き直ってアッサリとした作りに。
時間軸を少しずらした展開で緩慢になるのを避けてます。

ニコール・キッドマンとダニエル・クレイグと子役もいい。

90分映画として(午後のロードショーとして)十分素晴らしい。制作費もかなり少なそう。

もっと大金かけて大掛かりにしてもっと思考実験的にしたらもっとヒットしたことでしょう。

羅生門(1950年製作の映画)

2015-09-28 | 映画感想
20年ぶりくらいに観たけどおっもしろいわ。こんなに面白かったっけ。。

67年前の映画。
日本映画で初めて海外映画祭でグランプリを獲得した作品とのこと。

****


新井浩文似の坊さんの1人語り
「虫ケラのように殺されたり死んだりする人の話はいくらでも聞いた。でも、今日聞いた話ほど恐ろしい話はない。そうだ。恐ろしい話だ。今日という今日は人の心が信じられなくなりそうだ。」

こんなに心を掴むイントロありますかいな。


この時期はまだチャンバラのシーンで刀が当たってもチャキーンチャキーンていう音は鳴らないんだね。

チャップリンかトムとジェリーのように場面に添った音楽。
妻パートではすっとボレロが流れる。
同一リズムでいつ終わるとも知れない女の昼ドラのような話を「嘘っぽいよね〜」とからかっているようにも聞こえる。


****


20年くらい前に見たけどスッカリ忘れてた。
三人目の証言者は誰だったかと思えば、死んだ夫を降ろした巫女だった。。
しかし正確に事件現場を再現できる巫女。

1番ありえそうなのが夫の話だけどいかんせん喋ってるのは巫女。。

三船敏郎の話が1番シンプルだし嘘つくキャラでもなさそうだけど1番つまらない。

妻の話は1番盛り上がるけど同時に1番嘘くさい。

などと思っていると、4人目の証言者が!
そしてものすごく面白くて情けなくて1番怖い話。。


一体、人間とは信じるに値する存在なのか。

映画のラストには豪雨が止んどる。

グローリー(1989年製作の映画) GLORY

2015-09-28 | 映画感想
デンゼル・ワシントンが凄いっ!
デンゼル・ワシントンが凄すぎて、彼が活躍するシーンは突然別の映画が始まったかのようにスリリングになる。
主演のマシュー・ブロデリックをバリバリと食う怪演。
これでオスカー助演男優賞を獲得。


名画と知りながらなんとなくこの映画を観る気が起きなかったのはマシュー・ブロデリックの甘ったるい顔のせいでした。
アイドル俳優が演技派に転向するために頑張りました臭がして。。

しかし間違い。
ロバート大佐自身が甘いマスクだったようだし、いいとこのおぼっちゃんなのでマシューブロデリックはぴったりでした。



****

『沖縄決戦』を観て以来並みの戦争映画じゃ物足りなくなってしまった病にかかっているのですが、この『グローリー』十分凄かったです。。

『沖縄決戦』に対抗してんじゃないかってくらいに白兵戦と野戦病院の地獄を描いてますよ。。


****


奴隷制廃止の北軍(23州)と奴隷制存続の南軍(11州)の戦いが、南北戦争(1861〜65年)。

南軍は武力では劣ったが「奴隷制を続けたい!」という明快な目的と北軍から優秀な白人将校が多く南軍に入ったことで戦争は長引いた。
(北軍は3ヶ月くらいで終わると思ってた。実際は4年で90万人死亡した)



開戦から3年で北軍は初の黒人部隊を結成。
それがこの映画の主人公たち第54連隊。
北部で自由黒人として生きてきた者や南部から逃れてきた黒人志願兵で結成。

北部でも黒人は奴隷ではないだけでひどい人種差別には遭っていた。
軍に入ってもなかなか軍服や靴が支給されない。
戦闘には参加できずひたすら重い荷物を運ばされるだけ。

第54連隊の指揮官ロバート(実在の人物)は黒人兵士たちの真面目さや強さを知って尊敬の念も抱いていたので、前線にでられるように上官に立ち向かう。



****


第54連隊の隊員のモーガン・フリーマンのセリフ
「俺たちは奴隷じゃない
人間として戦場で戦うんだ」からは
奴隷だった自分が国のために戦う軍人になれることに誇りを持っているとこがわかる。

ただ、
同じく隊員のデンゼル・ワシントンは
「戦ってどうなります?
誰も勝ちません。
あなた(白人)にはボストンの立派な屋敷が待ってます。
俺たちには何が待ってます?」と複雑な気持ちを現してる。

前述の通り、北軍が勝って奴隷制廃止されたとて黒人は白人から迫害され続けることは知っている。


それでもついに最前線に送られて第54連隊の武功が広く伝わると、北軍は正式に黒人部隊が認められた。
18万人の黒人が志願し、北軍の勝利に多大に貢献した、と。



****


この映画の価値は、南北戦争の勝利に黒人の活躍が大きかった事実を正しく伝えたこと。
また、正義側の北軍も南部の街を焼き払ったり強奪したりとなかなかひどいことをしてたことを映画にしたこと。

これが正確なのはロバート大佐が200通に及ぶ母宛の手紙で詳細に記録してあったから。




****



音楽がメルギブの『ブレイブハート』そっくりと思ったら作曲者同じ。
いいの?こんなに同じで。。