映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

フランス制作アニメ 映画『FUNAN フナン』 高畑勲に影響を受けたドゥニ・ドゥ監督作

2021-01-30 | 映画感想
FUNAN フナン(2018年製作の映画)
Funan
上映日:2020年12月25日製作国:カンボジアフランスベルギールクセンブルク上映時間:84分
ジャンル:アニメ
脚本 デニス・ドゥ Magali Pouzol イリース・チン
出演者ベレニス・ベジョルイ・ガレルコレット・キーファーAude-Laurence Clermont BiverBrice Montagne




知識人は狩られ、芸術も教育も個人の自由も奪われた、ポル・ポト政権下のカンボジア。
離れ離れになった親子の物語。
『異端の鳥』の両親側の視線のように観ました。
やはりどちらも客観性と普遍性を持った傑作だから、ちゃ
んと繋がるんですね。

***

ラストにふわっと風が吹くんですが
それが何だったのか観客にはわかる。
そこまでの積み上げが素晴らしい。
ちゃんと観客と映画が一つになってくる。
めっちゃ素晴らしいアニメじゃん!


めちゃくちゃ恐怖の話。
反知性主義や全体主義がまた台頭してきてますからね。。
歴史が繰り返されませんように!



映画『私をくいとめて』 のん 林遣都 ジェンダー的な切り口も

2021-01-30 | 映画感想
私をくいとめて(2020年製作の映画)

原作 綿矢りさ 出演者 のん(能年玲奈)林遣都 田あさ美 若林拓也 片桐はいり 前野朋哉 山田真歩 橋本愛



目次

  1. めっっちゃいいです。
  2. ジェンダー的な意味合いも
  3. イッヌの林遣都


めっっちゃいいです。

東京国際映画祭で観て素晴らしくてですね。
もう一回見てからレビュー書こうと思ってたんですが、、
おそらく観に行かなそうなのでレビュー書きます。



ジェンダー的な意味合いも


『勝手にふるえてろ』っぽさを感じて足が向かない方もいらっしゃるかと思うんですけど、
当たり前ですが全然違うから。

メンヘラ女子が1人でうだうだ言ってるだけの映画ではないですのでご安心を。

『勝手にふるえてろ』も好きですし名作ですが
今作の方がもっと広がりがあるし
サブキャラもいいし
ジェンダー的な意味合いもかなり深く描かれていますよ。

****

ハイスペック男とデートしたあと
ハイヒールを脱いで
裸足でゆっくりと踵を床につけるシーン、良かったですね。

じっくり映してました。

ハイヒール。
あんなにも爪先立ちしているものなのか!と改めて驚きました。




イッヌの林遣都


サブキャラみんないいんですが、
林遣都が素晴らしい。

イッヌ役ですね。あれはイッヌ。人間でも男でもない。

イッヌを飼うかどうか迷ってる女子の話。

しかし実はイッヌではなかった(当たり前)。

じわじわと雄(オス)感が出てきて
「え……、この生き物、人間の雄だったの?」とのんが感じていくのが面白かったですね。

あ、でもこんなのセリフで説明してませんからね。
全部映像のみですから。
僕の解釈です。


****


観に行って!!



映画『AWAKE』 将棋わからなくてもめちゃ面白い!

2021-01-29 | 映画感想
上映日:2020年12月25日製作国:日本上映時間:119分
ジャンル:青春 監督 山田篤宏 脚本 山田篤宏 出演者 吉沢亮若葉竜也落合モトキ寛 一 郎馬場ふみか川島潤哉永岡佑森矢カンナ(森カンナ)中村まこと

面白いっ!でも地味っ!


しかし面白いっ!
さりとて地味っ!
トータルで面白い。



「邦画病」を避けているのでしょうか


邦画でありがちなくどい音楽もないし
「恋愛要素入れとけ!」みたいなとってつけたような恋愛パートもないし
叫びまくる感情表現セリフもないし
ラストもくどくどと長くない。
ありがちな若者たちの居酒屋での喧嘩も、あるんだけど……ササっと切り上げる。

意識して「邦画病」を避けているのでしょうか。
脚本監督の山田篤宏監督、懸命ですし、希望の星です。

**

いくらでもポップ路線、ヒット路線、つまりはよくある邦画路線に持っていくことはできただろうに
意思を持ってそこから一線を隠した脚本と演出になってますね。
とても好感が持てます。
新しい日本映画の波を感じますよ。
極貧邦画インディーズ映画のザラザラした感じともまた違う、
中規模中ヒットくらいの佳作路線。
日本映画界にはあまりないライン。
このラインが増えると映画文化は豊かになるよね!
**




テネットの「考えるな。感じろ。」並みに難しい。


っていうかわからない。。
僕は将棋もわかんないしパソコン関係もわからない。。
吉沢亮がずっと何やってたのかわかんなかった。。
製作者側もそれを細かく伝えようとはしなかったですね。
懸命な判断だったと思います。
ちゃんと感じることができましたから。

**




まず話自体が面白いですよね。


難しいことがわからなくても話の面白さはわかる。
AI対プロ棋士の戦いも「勝負」なのか「将棋〝道〟」なのかのせめぎ合いもハラハラしましたよ。

***


俳優全員いい。演技素晴らしい。


若葉竜也のダークヒーロー感、いいですし。
吉沢亮もラストの表情めちゃ良かったです。
合モトキも1人でポップ要素を担っていて大変そうでしたけど面白かったです。

***


特筆すべきは川島潤哉!





メンターおじ(い?)ちゃん役の人。
本物のプロ棋士なのかな?っていうくらいの雰囲気なんだけど
台詞回しとか表情とかがどう考えても高次元の俳優レベル。
どういう人なんだと思って映画見終わってすぐ調べました。
川島潤哉という方なんですね。

自作自演の一人演劇をされているような方。
孤高の方なのでしょうか。
確かにこの映画でもそんな雰囲気出てましたね。

かと言って触るもの皆傷つけるような雑な人でもなく。
よくありがたちなメンターおじ(い?)ちゃん役になりそうなんだけど
ちゃんとこの人の人生も見えてくるという。。

釘付けになりました。


『君の心に刻んだ名前』ネタバレあり アジア初の同性婚合法化の台湾が産んだ名作映画

2021-01-27 | ネタバレあり
君の心に刻んだ名前(2020年製作の映画)
The Name Engraved in Your Heart 製作国:台湾上映時間:113分



同窓会なんか出席したくないし
出席してものびのび楽しむなんてことも出来ない人たちにとって
この映画は優しい。


目次
  1. なんか台湾のウイニングランのような映画
  2. さっさと地獄に落としてくれ。
  3. ネタバレなしで書くの難しいのでネタバレとメモは以下に。


なんか台湾のウイニングランのような映画


アジアではじめて同性婚を合法化した台湾ですよ。
「30年後の世界を誰が想像してた?」
「じゃあ今大声で言えるか?」
同性婚が合法化しても全ての問題が解決したわけではありませんっていうメッセージさえ発信しちゃうなんて。。
台湾よ、まぶしいぜ、その背中っ!

**

男子二人の顔が似過ぎてて見分けがつかなくて不安になりましたが、、
妻夫木聡に似てるのがアハン!主役のコ!
ギョロっとしてるのがバーディ!
と心に刻みながら観始めました。
が、

二人の演技が素晴らしくてキャラクターが明確に分けられてるので、
すぐ見分けられるようになりましたよ。

**


賢者タイムでのキスはホンマもんよね。

**



さっさと地獄に落としてくれ。

俺たちは地獄に落ちるんだろ。
地獄に堕ちればみんなに会える。

このセリフのせつなさよ。苦しみよ





ネタバレなしで書くの難しいので
ネタバレとメモは以下に。




終盤のカナダロケはカナダからの出資があったからじゃないか、とwikiに書いてありました。
たしかにちょっと長い。。
ナイアガラの滝観光も「無理矢理結婚させられた少女伝説&歴史的事実」という理由づけはあるんだけど、、
ちょっと説明くさいし、
「カナダ来てね!」感がちょっと邪魔。
行きたいけどね、カナダ。
**
神父ウゼーと思ってたら、神父もゲイでしたか。。
彼もずっと苦しんでいたわけか。。
よくできてるなぁほんとに!
そう言えば、
キリスト教を信じて正しく生きてれば天国へ行く。
七つの大罪を犯すと地獄へ行く。
正しく生きて天国へ行った人たちは
天国で
「あ〜私たちは正しく生きてたから天国にいる〜。正しく生きなかった人たちは今頃地獄の業火で永遠に焼かれ苦しみ続けてる。私たちは正しいから天国にいる〜」って思いながら暮らすのかね。
幸せなのかね、それ。
平気なのかね。
「さっさと地獄に落としてくれ。
みんな地獄に落ちるんだろ。
地獄に堕ちればみんなに会える。」
このセリフのせつなさよ。苦しみよ。
こんな悲しいセリフを聞いても自分らだけ天国行ければ幸せなのかね。
**
大人アハン、かっこよかったですね。
戴 立忍(レオン・ダイ)さん。
しかもめっちゃくちゃ上手い。。。
アハンに見えたもんね。
この短い出演時間で助演男優賞取るだけありますわ。
バーディがちょっと残念???
なんかゴスペラーズのひとりにいそうな感じになってましたね。。
まぁ好みによるかな。。
**
瓊瑤(チョンヤオ)は小説家で浮世離れした恋愛模様を描いて映像化も多くされている方、とのこと。
**
♪虹色に染まる街で
天国へ向かう地図を握りしめる♪
なるほどね。
ロマンチックかよっ!!🌈🌈🌈

映画『マ・レイニーのブラックボトム』 チャドウィック・ボーズマン 正当な対応を受けるために戦った伝説の女性ブルース歌手 

2021-01-27 | 映画感想
原題 Ma Rainey's Black Bottom
製作年 2020年
製作国 アメリカ
上映時間 94分

One! Two! You know what to do!

**

目次
  1. 「ブルースは私たち黒人の音楽だ」
  2. 元は戯曲
  3. 舞台はほとんど録音スタジオのみ
  4. ヴィオラ・デイビス
  5. チャドウィック・ボーズマン
  6. グリン・ターマン



「ブルースは私たち黒人の音楽だ」

「ブルースは私たち黒人の音楽だ」的なセリフは映画にはよく出てきてまして
あぁそうなんですね、と知識としてインプットはしてましたけど、
この映画で初めて刺さりました。。
ブルースという音楽!
命であり、血。

**

アフリカ大陸で捕まえられて(人間がされることでもすることでもない)
鎖で繋がれて船に積まれて(人間がされることでもすることでもない)
船の中で病気にかかったら生きたまま海に捨てられ(人間がされることでもすることでもない)
アメリカについたら奴隷として売られ
奴隷として所有され(人間がされることでもすることでもない)
反抗すれば(しなくても)簡単に殺されしてまう。(人間がされることでもすることでもない)
(簡単に殺されてしまうってのは現代でも起きている)
そんな苦しみ悲しみから生まれた、ブルース。
知識としては知っていたし
この映画でもその辺りの描写を露出させてるわけじゃないんだけど
名優たちの何百年の苦難の歴史を背負った名演によって
初めて刺さりました。。
ブルースのこと全てわかったわけじゃ全然ないし
「泣いた〜」「感動した〜」と消費してしまったら
この映画のメッセージと全く反対のことになってしまう。

でも、でも、とにかく、刺さったんよ、マの歌が。
そう簡単には抜けない。

**




元は戯曲

戯曲なんですね、元の話は。
映画自体もかなり戯曲的。
もっと映画らしい話の流れや場面展開にはできたはずですけど、そうしなかったのでしょう。
ブルース同様、黒人俳優たちによって舞台劇として語り継いできたものへの敬意、出すかね。
しかも、舞台ですから映画的な〝逃げ〟がないので
俳優ひとりひとりの力がものすごく伝わります。
それはつまり黒人ひとりひとりの力を見せることになります。

**

舞台はほとんど録音スタジオのみ

当時ですから、全部同時録音。チャンネルなんてないわけです。
その時の空気閉じ込め感がハンパない。
これを見てからマ・レイニーの曲を聴くと、この録音スタジオの様子が思い浮かんで、2021年の日本と1920年代のアメリカがつながる。
後ろに男たちを従えながらマイクの前で歌うマの姿が、100年後の日本人に見えてくる。
こんなにも奇跡的なことだったのか、とこの映画を見て初めて感じました。





ヴィオラ・デイビス



素晴らしい存在感と繊細な表情。
ほとんど重戦車のような存在感であまりを威圧し続けるんだけど
彼女にはそうしなきゃいけない信念があったんわけですよね。
北部とは言え、アメリカで、黒人の、女性歌手の地位なんて、ほっといたら誰も掬い上げてくれない。
マは自分の価値に見あった対応を求めていただけ。
スタジオが白人歌手にはもっと手厚い対応をしているのをマは知っている。
総合格闘技のような死闘が繰り広げられながらのレコーディング。






チャドウィック・ボーズマン



泣けて泣けて。。
「俺がとれぼど白人に怯えてるか教えてやろう。俺白人に〝イエッサー〟と言いつつタイミングを見計らってる。」
おもしろいですね、この人の演技は。
野心家でだけど臆病で、だからこそ尖っていて。
おぞましい過去を背負わされていて。
破綻してもおかしくない複雑なキャラクターなのに、スターオーラが強い重力となって全部を一つの人物として集約させられる。
この人物だけど何万人分の人生を描けているのだ、と。。
もちろん彼を失ったのは悲しいし、拭えない喪失だけど、黒人若手スターとしてこれだけのことを成し遂げたってことは、あと300年くらい語り継がれるのです。




グリン・ターマン


グリン・ターマンも良かったですね。。
ピアニスト。
温かい人物像。
いい人なんだけど、悪い言い方すると無害な黒人。
南部を舞台にした古い映画に出てくるような、逞しく優しい黒人像。
力も強いし知的でもあるんだけど白人に対しては一切何の反抗もできない。
したら殺されるからね。
油断できる秒なんてない人生。
逞しく優しくないと南部アメリカでは生きられなかったんだろうし、映画の中でもそう。

僕なんか子供の頃からこういう映画を見てきたので
黒人像っていうとこういう感じなんですよね。。
子供の頃は何の疑問に思ってなかったというのが恐ろしい。
学校で奴隷制というのを学んでも
「へえ奴隷制があったからかぁ」くらいのものだった。。

だけどこの映画のように
黒人に自由が増えて
チャドウィック・ボーズマン演じるトランペッターのような
野望のある無鉄砲な黒人の若者と対比してみると
この人物の奥行きが見えてきますね。
ヤンチャに生きられる若者を嬉しく見れる気持ちもあっただろうけど、
自分がそう生きられない悔しさも、彼を見るたびに感じたかもしれないし。

そういう世代間の対立が悲しい結末を引き起こしてしまいますね。。。

そしてさらに残酷なラスト。。。

最後にレコーディングする人たちは誰ですか。。。

映画『聖なる犯罪者』ネタバレあり 来てるぜ!ポーランド!

2021-01-22 | ネタバレあり
聖なる犯罪者(2019年製作の映画)
Corpus Christi/Boze Cialo上映日:2021年01月15日製作国:ポーランドフランス上映時間:115分


目次
  1. 来てるぜ!ポーランド!
  2. 冒頭はほとんどコント
  3. アカデミー外国語映画賞候補だけあって完成度が高い。
  4. 神父なりすまし事件と数年前に起きた交通事故。
  5. ネタバレとよくわかんないとこはコメント欄に。。。


来てるぜ!ポーランド!

『残像』『COLD WAR あの歌、2つの心』とノリに乗ってるポーランド映画。
カンヌでもアカデミー外国語映画賞でももはや常連です。
ゲーム産業でも世界的なヒットを連発してるとのことですし、エンタメ業界でガンガン輝き始めたポーランド。




冒頭はほとんどコント

おっもっしっろっいっ!
冒頭はほとんどコントですね。
全然笑わす雰囲気ではないんだけど、設定が固まるまではしばらくずっと勘違いコント。
結構周りが勝手に勘違いしてくれる。
信仰の雑さを揶揄してるとこもあんのかな。

***

アカデミー外国語映画賞候補だけあって完成度が高い。


映像もいいし演技も全員素晴らしいし細部も豊か。
特に冒頭あたりの映像で語る技術がすごいですね。
ほとんど説明台詞ないのに複雑な設定を映像で伝えてる。
呆れました、、凄すぎて。。

***



話が2つあるんですよね。


神父なりすまし事件と数年前に起きた交通事故。
後半からは「交通事故の真相はっ!!?」に重きが置かれて
偽神父は探偵みたいになってくるんだけど
「いや、そもそもお前偽物だから!」っていう、、、,ちょっと複雑な話。。
なんかね、、、難しいんですよ。。



いろんな人のいろんな秘密が暴かれていって


「なりすましてるのは俺だけか?」と
「お前らも〝善人〟ってモンになりすましてないか?」
ってことなんでしょうけど、、、

終盤にかけてちょっと話がわかんなくなってくる。。


***


でも、めっちゃくちゃ魅力的な人間ドラマだし
やっぱ東欧の俳優さんの顔っていいですよね。キリッとしてて渋い。

もう一回観る気力体力は、、ないわ。。






ネタバレとよくわかんないとこはコメント欄に。。。






事故を起こしたとされるトラック運転手である夫は飲酒運転してたと言われてたけど
妻が言うには四年禁酒してたと。
実際夫の遺体から酒もクスリも検出されなかった。
でも「検出されないこともある」として疑いは晴れていない。
妹は事故死したうちの一人である兄から
その事故の直前にある動画が送られてきており、
その動画には悪友たちとドラッグと酒でめちゃくちゃになってる様子が映っていた。
が、妹はこれを誰にも見せてこなかった。
妹はその動画を偽トマシュに見せた。
「事故の原因は若者たちにあったんじゃん!」と気づいた偽トマシュ。
トラック運転手は言われなき罪を背負わされて、
信者にたちによって埋葬すらさせてもらえない。
事故死した若者たちの遺族はこの妻に対して嫌がらせの手紙や落書きをしていた。
夫は無実だと信じる妻はいまだに家に夫の遺骨を置いている。
「若者たちが悪くて、運転手は悪くない」ってな感じで話がまとまりそうな雰囲気出てきたところで
実はまだ言ってないことがある、と妻。
妻は偽トマシュにこう言う。
「あの日、夫婦喧嘩をして夫を外に追い出した。夫は〝死んでるやる!〟と言っていた」と。
夫はヤケになって若者たちの車を巻き添えにして事故死したかもしれない。
そもそも4年ぶりに飲酒したのかもしれない。
***
よくわかんないのは、偽トマシュはこれを誰にも言わんよね。
結局誰にも言わないまま、夫の遺骨は埋葬されることになるし、どう言うわけだか遺族の中にはそれに賛同する者も出てくる。
嫌がらせの手紙をバラされたのもあるだろうけど。
どういうことなんだろな。。
***
夫を埋葬した後、ミサをやることに。村人が多く集まる。
ミサ頑張るぞと思っていた偽トマシュの前に現れたのが本物トマシュ。
自分の名前を名乗られて成り済まされていたことを徐々に知るトマシュ。
しかし偽トマシュがどうやら村人からの人望を集めていたことも写真や色紙などから知る。
結構な長期間であることが写真や手紙からわかる。
トマシュは何やってたんよ。
***
ミサ。
偽トマシュ。祭壇に上がる。
妻、教会の端に立っている。
遺族の1人(マルタの母)がそれに気づいて席に座るように促す。
妻、席に座る。
妻と遺族の和解。
偽トマシュ、後ろのキリスト像を見る。
人間のために裸で磔刑されてるキリスト。
「僕はこんなことはできない」
偽トマシュは服を脱ぐ。
上半身裸。
入れ墨たっぷり。歌を歌う。
村人たちギョッとする。
おそらく「あ、偽物だったんだ…」とわかったってことなんでしょうね。
うわ偽物だったんだ、偽物をずっと信じてたんだ、でもこの人良い人だったよね、私たち間違ったものを信じてきたわけじゃないよね
的な感じ?で?
マルタの母が偽トマシュに「神の御加護を」と言葉をかける。
偽トマシュは逃走。
しかし捕まり少年院に。
偽トマシュ(ダニエル)を許してない男と対決することに。
ガタイもでかいし全然敵わない相手だったその男だが
ダニエルは司祭になりすましていた期間を経て
精神的に大きく変容していた。
誰もが自分の言葉を信じて自分の思い通りに動くという成功体験をしたダニエル。
その男を半殺しにして逃亡。
神なのか悪魔なのかわからないダニエルの顔アップ。
おわり。

映画『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』 日本版もやってほしいな

2021-01-19 | 映画感想
ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋(2019年製作の映画)Long Shot上映日:2020年01月03日製作国:アメリカ上映時間:125分


普通レベルの高スペック美女じゃないんですね。
米国務長官で次期大統領候補の美女!


その彼女と、
割とゲスな(正義漢ではある)記者とのロマコメ。




****






シャーリーズ・セロンがここまでコメディ演技しているのを初めて見ましたよ。
とにかく可愛い。


シャーリーズ・セロンのコメディ演技が魅力の映画だし
ちょっと頑張ってる、ぎこちない感じも魅力。

でも、めっちゃ可愛いんですよ、シャリーズ・セロン!!






***




「いつか王子様が!」っていう王道ロマコメを逆転させた最新型!


ってことだったようですが、制作が決まったのは2017年の2月。


今はもう2021年。。(公開は2019年5月ですけど)


僕が見るのが遅かったわけですが、、
やはりもうちょっと、、、古い。。






****




もちろんこのメッセージを強烈に発するロマコメは必要だし、
この映画はあと7年くらいは機能すると思いますよ。


ただもうすでにちょっと古いなと思っちゃったのは、、
「新しいことやってまっせ感」が強かったからだと思います。




『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』のようにもうデフォルトが未来型で、さらにその先の個人の人間ドラマをサラリと描く映画が出てきちゃってるので。




****




特に近年の映画界はほんとに速度が早いですよね。。。


ちょっと前の映画だと「え、この描写って…」とか
「今更そんなこと大袈裟に言われても…」ってなっちゃう。。。


揺り戻しがありそうで怖いですが。




****




でも、この映画もちろん全然悪い映画じゃないですよ。


これを見て力強く夢見る女の子もいるでしょうし
楽になる男の子もいるでしょう。


日本でもやって欲しいな。


水原希子と濱田岳で。






『おとなの事情 スマホをのぞいたら』ネタバレあり 月食のダイヤモンドリングはどこへ?

2021-01-18 | 映画感想
おとなの事情 スマホをのぞいたら(2021年製作の映画)
上映日:2021年01月08日製作国:日本上映時間:101分




目次

  1. 18ヶ国でリメイクされてきた傑作ホラーコメディ映画
  2. ワンシチュエーションのセリフ劇
  3. ヒガシパート
  4. 日本版は日本らしさを強調しようと思って作ったのであれば
  5. とは言え流石にどうかと思う点は以下に(ネタバレあり)


18ヶ国でリメイクされてきた傑作ホラーコメディ映画

面白かったですよ。
ヒガシパートで2回泣きました。。
まさか泣かされるとは。。

元のイタリア版の『おとなの事情(原題『完璧な他人』)』も観てましたし大好きです。

18ヶ国でリメイクされてきただけあって
話が整理されてますし
「日本らしさ」を強めてるのもわかります。


**


イタリア版だとやっぱ知らない俳優さんが7人出てくるし
名前もペッペとかロッコとかレレとかなので、、、
誰が誰の何色の何なのか覚えるので大変。。


その点、
日本版は馴染みのある俳優さんばかりなのでそこにエネルギー使う必要はない。


ワンシチュエーションのセリフ劇


テレビドラマで活躍してきた俳優さんによるセリフ演技がほんとに上手い。自然。しかも面白い。

映画俳優さんって意外とセリフになると棒だったりしますけど、、、

常盤貴子、田口浩正、益岡徹、ヒガシあたりは本当に上手い。
不自然なシチュエーションなんだから不思議なセリフも多いはずなのに。

とくに常盤貴子が面白い。。。。
ちょっとふざけてますよね、あの人。。
映画の中でめちゃくちゃ自由に動いてくれてる。
田口浩正もそう。
こういう自由なキャラがいてくれると映画は嬉しい楽しい。


**


鈴木保奈美もセリフは上手いんだけど
目の表情がね。。
夫である益岡徹との対決の時、もっと目に表情を出してくれると良かったんだけど。。




ヒガシパート


これはネタバレなので詳しく書けませんが
ヒガシパートを中盤で持ってきたのは正解でしたね。

たしかイタリア版では彼のパートは最後の方だったはず。

かなり早い段階でヒガシの秘密が示唆されるので
ヒガシの心模様を丁寧に描けるので大正解。

しかもその時の田口浩正のセリフもとても良くて、泣いちゃったよ。。





日本版は日本らしさを強調しようと思って作ったのであれば


イタリア版のラストは、かなりホラーなのです。。
『完璧な他人』ですからね。。
めっちゃ怖いのです。

日本版は確かに「日本らしい」。

日本らしい、と言えば
しつこいほどに情感豊かな音楽と
親切すぎるキャラ紹介文と
三谷幸喜的なラストの鈍重さと
くどい「伏線回収しました!」アピール
が日本らしい。。。


イタリア版のソリッドさと比較すると
日本版が受け付けられない人多いと思います。。

もうほんとにくどいから。。

ただ、
情感に訴えさえすれば
それがいくらくどかろうと嘘臭かろうと
観客(一般市民)の感情をコントロールできる
と思ってること自体、とても日本らしい。。。

ラストもなんか自己啓発セミナーみたいな感じだった。。

これで「あ〜良かったね!」って映画終われると思ってんだから、ほんと日本的。。


なので、
日本版は日本らしさを強調しようと思って作ったのであれば、大成功!



とは言え流石にどうかと思う点は以下に(ネタバレあり)



冒頭ですごいしつこく結婚指輪をピカピカさせてて
「なんなんだこれは」と思ってましたけど、
あれは月食のダイヤモンドリングとかかってたわけですよね。

月食で月が一旦消えて真っ暗になるけど
反対側からまた月が現れて
その時ダイヤモンドリングのように輝く。

それと結婚指輪をかけてたんだぁ、
だからあんなにしつこくピカピカ光らせてたんだなぁ

と思ってたら、、

まさかダイヤモンドリングが現れるとこを見せないっっ!
月食で消える時に逆リングになる瞬間はあったけど、、
出てくる時は映さなかった。。

こんなにもくどい映画なのに、、、なぜにっ!!!




『窮鼠はチーズの夢を見る』ネタバレあり ノンケ男性とゲイ男性の恋愛映画

2021-01-16 | ネタバレあり
窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)
上映日:2020年09月11日製作国:日本上映時間:130分


目次

  1. 成田凌はゲイ役、大倉忠義はヘテロ役。
  2. 5年前から脚本開発をはじめた、とのこと。
  3. 女性キャラ良かったですね。
  4. 正直前半はちょっとつまらなくて。。
  5. 漫画原作の映画化
  6. ラスト含め、ネタバレは以下に



成田凌はゲイ役、大倉忠義はヘテロ役


監督としては
BLでもLGBTQでもないものとして作った、と。

さらに
「恋愛でジタバタもがくより人生に大事なことあんだろ」
っていうセリフも出てくるんだけど、


僕は初めて、
日本の〝ゲイ〟の〝恋愛映画〟を観れたなと思いました。


****


いわゆるBLっぽいファンタジーもあるし
大倉忠義がほとんどサイコパスだったりもして
「リアリティ」の観点で言うとだいぶ遠いんだけど、、

やっと、逃げずに、正面切ったゲイ日本映画が生まれたなぁと思いましたよ。


****


5年前から脚本開発をはじめた、とのこと



「ゲイものを扱うから慎重にならなきゃ!」っていうことで時間がかかったわけではなく、
饒舌な原作漫画の映画脚本化が大変だったそう。

それだけ時間をかけたという事実と
あとたぶんこの原作と向き合った時点で監督が「ゲイもの」に対してフラットな視点を持っていたんだと思います。

そのおかげで、すごくどっしりと腹の坐った映画になっていますね。





「叩かれませんように!」って言うオロオロ感が全くない


なんか
「あっちにも気を遣わなきゃ!」
「LGBTQに理解があること示さなきゃ!」
「叩かれませんように!」
って言うオロオロ感が全くない。


後半長々と裁判し始めたりもしない。


ただただこの2人の男を描くことに注力していて
そのためには「周辺の」女性も描く必要があることもわかってる。


****




女性キャラ良かったですね



夏生先輩の、女としてのプライドのためだけに戦ってる感、怖いし、面白い。いそう。ありそう。

たまきちゃんは、パッと見カテゴライズされたゆるふわ美女って感じだけど、結局誰にも内面を見てもらえない彼女の悲しみが伝わりましたね。
いろんな察知能力が高いし、彼女は別に「天然ちゃん」ではないので、
ブチギレしてコーヒーをぶっかけそうなシーンでも、しない。座ってる。そのリアリティ。。コーヒーぶっかけるのは映画の中のキャラクター。実際は何もできず座ってるだけでしょう。。
リアルなキャラクター。


****




正直前半はちょっとつまらなくて



主演2人の覚悟や思い切りに驚きつつも、、話が動かないので、、飽きてきたんですが、、
後半の1時間が怒涛でした。。

大倉忠義がサイコパスで。。。
大倉忠義ってなんでこんなに素晴らしい演技ができるんでしょうか。。






漫画原作の映画化

僕、BLの勉強しようと思って原作漫画を2年くらい前に読んだんですけど
全員めんどくせーヤツだしすんごい喋るので、、
漫画は僕は乗れなかったのです。。

この映画ではほとんど台詞を廃しまして、基本的に映像で語る。映像で見せる。

その分セリフの印象が強まる。

「そうやっていっつも私が何か言うのを待ってる空気がもう…気持ち悪いの…」
とか最高!

二人で相談して作ったオーダーメイドカーテンが届いても1週間段ボールから出さない、っていうティテールも最高。

そしていちいち
「どうして1週間も前に届いてるのにカーテン出さないの!」って言うセリフもない。
それは観客が心の中で思うこと。

観客を信頼してくれる映画。ありがたい。







ラスト含め、ネタバレは以下に


恭一がは今ヶ瀬からもらった灰皿を捨てられなかった。

「これだけは置いといてくれって頼まれたんだ。捨てたって忘れられるわけないのに」と恭一がたまきに話した、その灰皿。

恭一とたまきは婚約したっぽいが、
恭一がその灰皿を棚に隠してあるのをたまきは発見。

カーテン段ボール入れっぱなし事件や
ハンバーグ全然事件もあり、
たまきはその日帰宅。

「今日は帰るって」と、恭一は今ヶ瀬と会う。

恭一と今ヶ瀬はセックス。
恭一「恋愛でジタバタもがくより人生に大事なことあんだろ。一緒に住もう。」と提案。

翌朝、今ヶ瀬はいない。
灰皿がゴミ箱に捨ててある。

喫茶店。
恭一はたまきに別れ話。

たまき「その女性が戻ってこなかった時にまた私を頼ってくれればいいじゃないですか」的なことを言うも、恭一は心ここにあらず。

恭一が席を立ったあと、たまきは席を立てず、一口も飲まれていないコーヒーと紅茶を見つめる。

今ヶ瀬、誰か他の男とセックス。
今ヶ瀬、泣き出す。

恭一、灰皿をゴミ箱から取り出し、洗って、再び飾る。
満足げな顔。

カーテンを元のやつに戻して、今ヶ瀬がよく座っていた椅子に座る。
笑顔。

終わり

****

このあと2人がどうなるかはわかりませんが、、
恭一は「戻ってきて欲しい誰か」ができた自分が気に入ってるだけでしょうね。。

誰かを欲することができる自分に悦に入ってる。
実際戻ってきたらめんどくせーし、サイコパス発動してしまうだろうし。。

それはおそらく今ヶ瀬も同じ。
「愛する人とは結ばれない自分が」が楽。
結ばれると恐怖。

わからないでもない。



映画『43年後のアイ・ラヴ・ユー』 アルツハイマーになった元カノにもう一度愛してると言いたいっ! 

2021-01-15 | 映画感想
Remember Me 上映日:2021年01月15日



今作の宣伝用四コマ映画を描かせていただきました!




現在、新宿ピカデリーのエレベーター(チケット見せて入った奥の方のヤツ)ラッピングされています。



同じイラストを使ったイラストボードは他の劇場でも随時掲出されていくとのことです。

コメントチラシにも掲載される予定です。

お近くの劇場の見かけた際にはちょっと足を止めて見ていただけると嬉しいです!!

以上PRでござました!






ご高齢者のラブコメ映画!


70代〜80代(!)の俳優によるラブコメ映画が普通にあるってことがまず素晴らしい。
近年、多くなってますね。


おそらくこのジャンルも「こんなの誰が観るんだよ!」っていう案件だったかと思いますが、、
結構ヒットするじゃんってことで開拓され、醸成されたジャンルでしょうね。


****


歳を取っちゃうと同年代が主役の映画ってのはどんどん少なくなっていっちゃう。
ハネケの『愛、アムール』とかはあるけど、観る気も起きないだろうし…、長生きする気も失せてくる話だし。。

完全に隠居した人物か、
都合の良い時に現れて消えるメンター老人か、
死のイメージを包含したキャラか、
「早く孫の顔が見たいねぇ」と下の世代にプレッシャーをかける存在ばかり。。


主役になって自由に動ける人物像が少なくなる。


ご高齢の観客が「これマジ自分だわ」って、
映画の主役に自分を投影して、
ハラハラドキドキして、
明るい気分で劇場を出られる映画。

そういう映画が多くなってるのはホントに良いことだと思うし、
他人事ではなくて「ある程度歳とったらおとなしくしてろ」という空気は若い世代だって感じちゃってるから
こういう映画によってまだまだワクワクしてていいんだ、って思えますね。


***


なんか今年は良い青春映画が多かったもんで
振り返ってあの頃はあ〜だったなこうだったなと思い返してブルーになったりもしましたが、、、、
こうやって先を照らしてくれる映画があると、ほんと助かりますよ。。


老人ギャグ


老人ギャグ、病気ギャグ(薬の名前に妙に詳しいとか)、物忘れギャグとかも挟まれるので、きっと共感を持って笑えるでしょうし。

家庭もあって、孫もいたり、パートナーもいたりするけど、
「あの頃のキラキラした気持ちを今!」っていう気持ちはそりゃあるでしょうし
現実には実現不可能なものを観られるのが映画の楽しみそのものですし。
けしてドロドロした話でもなく、
「あの頃」を振り返るだけの映画でもなく、
「今」を少し明るく照らすラストだと思いますよ。


***


カロリーヌ・シオルが可愛いし、演技が素晴らしい。
ほとんどの時間「?」っていう顔をしてるんですが、
話わかってんのかな?思い出したのかな?っていうのがギリギリわからない微妙な演技がほんとすごいですよ。

あんだけ可愛いおばあちゃんってのは夢がありますよね。


ブルース・ダーンもそりゃ素晴らしいですよ。84歳。
 普段だいたい怖い顔してますが、今回は軽やか。
今回は誰も射殺しませんのでご安心を♡



映画『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』 カッッッッッッッッコイイ。。。。

2021-01-15 | 映画感想
スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち(2020年製作の映画)STUNTWOMEN THE UNTOLD HOLLYWOOD STORY 上映日:2021年01月08日製作国:アメリカ上映時間:84分
ジャンル:ドキュメンタリー

かっっっっっっっっこいい。。。。


女優がアクション映画出る機会も増えたし
アクションの難易度が上がってるので
彼女たちの技能が映画界にとって必要不可欠な宝物となってるんですね。




スピードからキルビルからチャリエンからワイスピから、
スタントウーマンの活躍が
彼女ら自身やスタッフなどのインタビューで見せられていきます。

いかに普段サーっと流して観ちゃってるんだってことなんですけど、、、、
正直そんなに危険なスタントだとは思って観てなかった。。
どれほど訓練して、準備して、計画して、話し合って、
さらに深い経験によって痛快アクションシーンになっているのかを知りました。





映画界自体が男社会



1910年代には今よりも女性監督が多かったし、女性のスタントも多かった、とのこと。
ただ「映画は金になるらしい」とわかってから、男たちに取って代わられた、と。






映画界自体が男社会だけど
スタンドの世界ではさらに男社会のよう。
「女性は実力を証明し続けなければいけない。何度も繰り返し。」
「今だにカースタントの前に聞かれる。〝大丈夫?〟と。」

『キャプテン・マーベル』でキャプマが
「あなたに証明する必要はない」と踵を返すシーンは痛快だったけど
現実ではまだまだ証明し続けなきゃいけないんですね。。
   

性差別や人種差別、年齢差別


テレビ版の『ワンダーウーマン』のスタントをやったジーニ・エッパー。
今作の撮影時は74歳!

ジーニ以外にもスタントウーマンのレジェンドたちのインタビューも多いです。
彼女らが語る歴史も勉強になるんですが
その話を聞く若いスタントウーマンたちにその情熱が引き継がれていく姿にも感動します。

**

で、ジーニは74歳なんですけど
「今もスタントをやりたい!わたしにはもうできない…」って本気で泣くんです。。
他の方も「まだまだ若い子たちと張り合いたい!」とやる気満々。

この映画では、性差別や人種差別が描かれますが
年齢差別への反抗もあるなぁと思いました。
まさか74になって「もうスタントできない…」って泣く人がいるなんて思わなかったもん。。。




アクション監督


アクション映画には監督以外に「アクション監督」という役割があるんですが、
女性が任されることはなかなかないらしい。。
40過ぎるとスタントウーマンの仕事はなくなる、という言葉も出てきますが、
本来ならその次の役職として
「アクション監督」があるはず。

でもなかなか女性には開かれていない扉。
ガラスの天井ってヤツね。

**

が、しかしアクション監督に任命されて腕を振るう人物が現れます!

その姿こそリアルワンダーウーマンです!!

映画『ハスラーズ』 アジア系女優主演で1億ドル超えの大ヒット!!!

2021-01-15 | 映画感想
ハスラーズ(2019年製作の映画)
Hustlers 上映日:2020年02月07日製作国:アメリカ上映時間:110分


神妙な気持ちになる人間ドラマ



痛快リベンジコメディかと思いきや、、
なかなか神妙な気持ちになる人間ドラマでした。
ガンアクションも爆破も殺戮もなく、リアルな恐怖がじわじわ来る。
そこまで映画的に大きなことではない事件が起きたあとに
子供を迎えに行って車に乗せて学校まで連れて行く
というシーンが素晴らしかったですね。
この流れをじっくり撮ってるのでこのシーンには相当重きを置いているのでしょう。
主役は犯罪者の女性たちなんだけど
小さい娘を持つシングルマザーである、というの事実を映像で見せる。

キャラクターに対する愛情の深さが伝わるシーンですし
映画全体がそうですね。






インタビュアーの女性のゼロ感


あと、面白いのは
あのインタビュアーの女性のゼロ感。。。
共感も憎しみもゼロみたい。。
単なるひとつのインタビュー仕事をこなしてるだけ。
女だからっていちいち共感した人怒ったりと、感情を起伏させたりしませんよ、って感じ。
面白い。。



ジェニファー・ロペスがここにきて素晴らしい演技!


場末のUMAみたいな存在感。
カッコ良すぎるし、
しかもちゃんと今までの人生も背負った人物。
いやぁ、いい映画っ!

映画『トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』 この映画が多くの人に届きますように!

2021-01-11 | 映画感想
Disclosure: Trans Lives on Screen 製作国:アメリカ上映時間:107分






アップデートさせてくれた映画



去年一番自分をアップデートさせてくれた映画です。
「トランスジェンダー役をトランスジェンダーに」問題とか、
歴史とか現状とか未来とか、これを見ればわかる。
これを観りゃ全部わかる、は言い過ぎだろうけど
まずこれ観てから話をしようぜ、とは思います。




映像メディアで描かれるトランスジェンダーの人物は
嘲笑され、犯罪者扱いを受け、ラストでは死ぬ。
私たちはいつもこんなものを見せられてきた。
自分と似たキャラクターはいつもレイプに遭い、笑われ、殺される。
これを見て思った。自分もこうやって死ぬんだと。





多くのトランスジェンダーが出演




インタビューが多いですが映像資料も膨大なので本当に勉強になるし、、、反省もしました。。。

インタビューが多いってのにはシンプルな理由も多分あって。

「トランスジェンダーの俳優ってめっちゃいっぱいいるんだよ」ってのを可視化したかったんだと思います。

恥ずかしながら初めて知りまして、、驚きました。

そりゃこんなにいるんだから
「トランスジェンダー役をトランスジェンダーに」という声が出てくるのはすごくシンプルなことだよな、と共感しましたし、

機会の不均衡とかトランスジェンダーに対する偏ったイメージが実際にあって、
ほっといても実現されないんだから、そりゃ声あげるでしょうよ。




どうかこの『トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして 』まで辿り着いて欲しい


まぁとにかく悩んでいる若い人がこの映画にアクセスできることを祈ります。

トランスジェンダーの女性の新作邦画だ!っつって勇気を出して見に行ったら

自分と同じような存在のキャラクターが
「私たちみたいな人間は一人で生きていくしかないのよ」って泣き叫んで
誰も1秒もそれをフォローしなくて
どんどん不幸に陥って無惨な結末を迎える

という話で、人生に絶望した人も多いかも知れない。


どうかこの『トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして 』を見て欲しい。

今まで何があって
今どういう状況で
今どんな希望の光が見えているのか。




んなわけねえええええだろうぉぉぉぉぉぉがよぉぉ!


自分という存在は

嘲笑されて当然で
隠していなきゃいけなくて
それは暴かれる危険性があって
暴かれた時に全く人間的な対話などさせてもらえずに
ただ無抵抗に尊厳を踏み躙られるような存在
だと、

思春期あたりにじわじわと刷り込まれていくなんて、恐怖の世界じゃん。。。

それを周りの誰かがフォローするどころか
「すごい感動した〜」とか言ってるなんて、、、地獄じゃん。。。。


****


んなわけねえええええだろうぉぉぉぉぉぉがよぉぉ!
って心から思うし、そう伝えたい。

そしてこの映画を観てほしい。


****


あと、ゲイ(男性同性愛者)の加害性についても触れていたのが新しいと思いました。
ゲイによるトランスジェンダーへの差別、偏見、活動からの切り離し。
ゲイは性的マイノリティの中ではマジョリティだし、
なんと言っても「男」なので既得権益を持ってますからね。
時間としては短かったですがこの点について映画の中で触れていて、さすがだな、と。




「ベーシックプラン」なら800円


この映画、今のところネットフリックスでしか観られませんが、
画質は標準で、視聴できる機器が一台のみである「ベーシックプラン」なら800円ですし
すぐ解約(キャンセル)すれば800円でその1ヶ月は見放題ですし。
ほんとにぜひ、どうか、この映画までたどり着いてほしいです。
強固な答えがあるかどうかはわからないけど、何かしら掴めるものはあると思うので。

****

***




映画見ながら取ったメモ(とても大事な言葉)は以下に






失礼な質問。
ペニスはどこ?
以前の名前は?昔の写真を見せて。
セックスの相手は?
そのおっぱいいくら?
どうやって隠してるの?
小さいの?
オルガズムは?
何十年も同じ質問。

***

映画やドラマで描かれるトランスジェンダーの人物は、
笑いのネタにされ、犯罪者であり、ラストでは死ぬ。

実生活で笑われたことは数え切れない。
それはメディアで習得されたものだと思う。

***

同僚に性別移行を相談したら
「バッファロービルみたいに?」と言われた。

その同僚はトランスジェンダーの情報がそれしかなったんだと思う。
今はトランスジェンダーを理解してくれている。

当事者もの自分を知るのはメディアを頼るしかない。

****

もっと描くこと。
もしまずい描写があっても、情報がひとつじゃなくなる。

***

映画やドラマの中で何回殺されたかわからない。
制作側がトランスジェンダーについての物語をそれしか知らないから。
私たちはいつもこんなものを見せられてる。

自分と似たようなキャラクターは、
いつもレイプに遭い、笑われ、殺される。

これを見て思った。
自分もこうやて死ぬんだと。

***

今までも私たちはずっと他人に歪められてきた。
他人が分析して私たちを語っている。

こんな私を愛する人などいるのだろうかと、思い詰めたことがあった。

****

彼女たちの活躍を知るのは大切なこと。
みんな生きるために隠れてしまう。

****

手術による先入観のせいで、私たちは人間だと思われていない。

現実の私たちは暴力のターゲットにされ、社会の中でも特に差別されている。
個人的な手術のことより、そういう話をしたい。


『えんとつ町のプペル』ネタバレあり 旧態依然の固定概念で覆われた窮屈な映画

2021-01-06 | ネタバレあり

観客(一般人)に考える余地を与えない


窮屈な映画。
自由なように見せかけて実はものすごい固定概念で覆われた映画。

観客が自由に考える余地もない。
喋る喋る。
めっちゃ押し付けてくる。
終盤、ある人物がおんなじことを言葉変えてずっっっと喋ってくる。
聞き馴染みのいい言葉とリズムで喋り続けるからなんか怖くなってくる。。

観客は脳を使う余地がない。
ただただ受けるだけ。
たぶん観客(一般市民)に自由に考えさせるのが怖いんでしょうね。




それを人はセミナーと呼びます〜♪


「俺の話をただ聞いてろ」っていう映画になっちゃってる。
それを人はセミナーと呼びます〜♪

西野亮廣のセミナーを聞くつもりでこの映画を見に行った人もたくさんいると思いますよ。
それはウィンウィンの関係なんだと思います。
ただ、映画を観るつもりだった人はちょっと引くでしょう。
「え?なんか押し付けられた?」と思うことでしょう。




僕はアンチではないと思ってます


ゴッドタンでの西野亮廣さんは好きですし
毎週キングコングも見たりしてます。
なので僕はアンチではないと思ってます。

頭から否定するつもりで映画観るほど
僕は映画というものを信じていないわけではないです。




予測と覚悟


ただ、観る前から
おそらくこの映画は
映画というものが生まれてからのこの120年間で死ぬほど繰り返し語られてきたメッセージを
「世界の秘密を教えてあげよう」みたいなノリで押し付けてくる映画なんだろうなぁ
とは覚悟してました。

**

さらに
そのメッセージってのはきっと主題歌の歌詞のままなんだろうな、と。


しかも
サビの終わりの大事なメロディで結構な文字数使って
「えんとつ町のものがったっり〜」と歌う。
歌うのに数秒かかる。
えんとつ町の物語の話の主題歌でえんとつ町のものがったっり〜と数秒使って歌うような、
そういう映画なんだろうなと予測していました。



ネタバレは以下に



■導入の「こういうの喜ぶんだろ感」

ハロウィンのダンスとか、ピタゴラスイッチ的でユニバーサルジャパンのアトラクション的なアクションに「こういうの喜ぶんだろ感」が満載だった。。

のちにルビッチがプペルを煙突の上まで連れていってえんとつ町を俯瞰するシーンがあって、そこでプペルは「きれい〜」的なリアクションをするし、ルビッチも同感って感じなんだけど、

まず、もうすでに観客は何度となくえんとつ町の美しさを押し付けられてきているので、しつこい。どうせならプペルと一緒に感動したかったよ。

で、えんとつ町が美しいかったらダメな話なんじゃないの?もっとどす黒く灰まみれで油がドロドロしてるようでカビ臭い町のはずでは?

なんで綺麗にしちゃったの?観客が喜ぶと思ったから?それ、話と関係ないよね。。


■友達より血縁

まさかそのままプペルが父親だったっていうラストになるのか!!と心配していたら
まさかそのままプペルは父親だった展開っっっ!!!

何にもないゴミの塊で差別も受けてるプペルと少年が友達になるから感動があったのに。。

臭いからってめっちゃくちゃ洗うのもゴミ人間であるプペルのアイデンティティを消して
同化させようとしてるようでちょっとひっかかったし
ポンチョみたいなのを着させられるのも辛かった。。

結局ゴミ人間プペルは異端のままで世間から隠されて同化されようした存在。

それでもそんなゴミ人間と少年に友情が生まれたことに感動があったのに、、
結局、血縁かよ!!!

しかも正体はあんな立派なお父さん。。。。

まさに理想のお父さんの権化。

異端者であるプペルは消されたじゃんっっ!!

理想の父となんの問題のない息子の話でした。。
とほほ。。
なんか話が小さくなって終わってしまいましたね。。。


偏ったジェンダー表現…

「男は泣くんじゃない」って何回言った???

「夫のわがままを受け入れる妻の度量の広さ」みたいな表現もあったよね。

女性キャラ、3人くらいしかいなかったね。。
ほっっとんど男だけだったよね。。

まさか意図的にやったの?
もしくは考えナシでやっちゃったの?
どっちにしてもヤバくない??
これ、世界で公開すんの??



■典型的なキャラクターの集合

荒っぽいし夢みがちだけど誰よりも家族を愛している大きな背中のお父さん。
病弱だけど優しくて心根は誰よりもつよいお母さん。

旧世界の典型キャラ。。

いじめっ子も煙突掃除の男たちも典型。
異端審問会もKKKのようで人格が見えなくてもったいない。。
異端審問会は異端審問会で世界を平穏にしたいという信念があったわけでしょ。
あんなにも記号的な悪役にしたらほんとに話がうすっぺらくなる。

キャラクターが物語を成立させるためにしか動いてくれないから、
観ていて息苦しい。。

言いたいことを言うためだけに存在するキャラクターたち。
哀れな存在ですよ。。

ゴミ人間プペルなんてついには物語に消費されて消えてしまったからね。。
あの可愛いプペルが。。。

製作者がやりたいことの前ではまったく独自の動きができない不自由なキャラたち。

これはまさにえんとつ町で行われていたこと。
それをこの映画はやっちゃってる。



■諦めずに上を見ろ!の周辺に敷かれた旧世界

でも前述の通りこの映画全てのキャラクターは旧態依然とした典型なキャラ。
上を見ろ上を見ろと繰り返す映画だけど、
足元はガッチガチに凝り固まった旧世界。。。。。

異端に優しい世界ではないよ。

「この異端はいいけど、その異端はダメ〜」って
平気で言ってきそうな世界。

これは現実世界と同じ。
現実のクソ世界とこの映画の世界は同じ。

この映画は
異端だったルビッチが命かけて飛び出したことで異端ではなくなった、
という話。
 

■努力しないお前が悪い映画

ルビッチの努力の話。個人の努力の話。
異端扱いを受けて隠れて生きてる人がいたらソイツ自身が弱くて悪いことになってしまう。
誰もが
「勇気を出して星を探そうよ!」ってなれないでしょ。
結局は命をかけて頑張ったことで自分の地位を確立した父子の話。
しかもその足元には旧世界。。
 
そのつもりはなかったはずですが、
なんかすごく息苦しい映画になってしまいました。

映画『マーメイド・イン・パリ』 飛び出す絵本演出やストップモーションが楽しい 

2021-01-03 | 映画感想
マーメイド・イン・パリ(2020年製作の映画)
Une sirène à Paris/Mermaid in Paris上映日:2021年02月11日製作国:フランス上映時間:102分



古今東西で何度となく語られてきた「人魚」

日本だと、日本書紀に書かれている619年に滋賀県あたりで発見されたのが一番古い記録らしいです。
日本の人魚はそもそも人面魚的なフォルムだったのが、
江戸後期あたりに西洋式の「上半身美女+下半身魚」に変化していった、とのこと。
話を作る人も人面魚よりは西洋型人魚の方がモチベーションが上がったのでしょうね。
江戸時代には富山県あたりで「角を持った全長11メートルの人魚を人々が450丁もの銃で撃退した」らしいですよ。
人魚の出現は吉兆でもあり、もし殺してしまった際には厄災に見舞われる、と。
神的な存在ですね。
人魚の肉を食べると不老不死になる、というのもめでたいような恐ろしいような設定もあります。

この『マーメイド・イン・パリ』では

というように人間が自由に想像し、崇め、畏れてきた人魚。
『シェイプ・オブ・ウォーター』では現代社会の差別のメタファーとして登場し、
大ヒット&映画賞総ナメという快挙でした。

****

****

からの、この『マーメイド・イン・パリ』
ロマンティックコメディの体裁をとっていますが、
かなり現実的な話だと思いました。
人魚の歌を聴いた男は「恋に落ちて死ぬ」という古来の設定を活かしていますが
これが現実社会で行われたらどんな展開になるのかってことですね。
殺人ですもんね。。
その家族からしたら悪魔ですわな。
主役の男、ガスパールにはこの人魚の歌の殺人攻撃は効かない。
なぜなら失恋の痛手によって心がすでに死んでるから。
人魚としてはサッサと海に帰りたいんだけど
ガスパールは人魚のケガが治るまで家にいたほうがいいってことで家に軟禁。
その間に男と人魚は心が通じ合っていくけど
隣人(ロッシ・デ・パルマ、最高!)やら
人魚を捜索する女医(ロマーヌ・ボーランジェ!懐かしい!)やらが出てきて人魚出現事件はおおごとに。



飛び出す絵本演出やストップモーション

飛び出す絵本演出やストップモーションなどのイリュージョンにも手作り感が可愛いですし
この映画を覆う現実感を邪魔していない。
テンポもバランスもいいですし、
何かが飛び抜けてめちゃくちゃいいかと言われると、、あれなんですが、、
ちゃんとした佳作映画として良いものだと思います。
102分だし。


****