映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

愛がなんだ(2018年製作の映画)

2019-10-31 | 映画感想



まさかこの調子で125分行くんじゃねぇだろうな。。

と思ってたら37分目でやっと展開。
ふぅ。

残酷物語開幕。。



****


こりゃヒットするわ。
面白いもん。


****



ああはなりたくねぇなぁと思いつつも
何にもない今の自分と比べたらすでに何かは持っている〝オトナ女子〟を
筒井真理子や片岡礼子や江口のりこが演じている。


****


「世の中の男を2つに分けたら俺って絶対〝カッコ悪い方〟じゃん」
って成田凌が言う。

殴るぞ、成田凌!


****



モンスター深川麻衣も良い。

岸井ゆきの「寂しくなることあるのッ!?」
深川麻衣「あるに決まってんじゃん、あたしのことなんだと思ってんの」



最後尾のサブキャラかと思いきや、
メンターだった若葉竜也も素晴らしい。



****



片岡礼子「大丈夫よぉ。何悩んでんのか知らないけど。」



****



『生きてるだけで、愛』と比べると
誰も精神病んでないし普通の人々の普通の地獄の話。


真正面からの執拗な長回しも、全体的な色合いも海外映画の雰囲気。




そりゃヒットするわ。


 


馬の骨(2018年製作の映画)

2019-10-31 | 映画感想



冒頭から生き埋めにされる桐生コウジさんが哀しくも可笑しい。。

****


イカ天に出演経験のあるバンド〝馬の骨〟。
そのボーカルだったのが桐生コウジさん。

映画でよく観る役者さんです。

桐生さんが監督・脚本・主演を務めたのが本作。


****


今もイカ天でもらった特別賞の盾を大事にしながら中年になった男と
歌が下手な地下アイドルの少女の交流。


〝次〟へ行きたいともがく2人を中心とした物語だけど
サブキャラたちへの視線も優しくて温かい。


死んだバンドマンの奥さんが椅子に乗って盛り上がるシーンは泣ける。。



****



起承転結の起が素早いのが良いですね。

あ、そんなとこまで話進めちゃう?
っていうところまで一気話を進めてから

登場人物それぞれの奥行きを描きつつ、横道の展開へ。



****


拠点となる千葉のシェアハウス(ていうか農家)の雰囲気がいいですね。

そういえばほとんどのキャラに家族の説明がなかった。

親がどうとか、配偶者がどうとか。
ほとんど説明なし。

個として集合して、あたかも家族のような空気感で暮らしている。

「血縁によって無条件に自分を受け入れてくれる存在」(=家族)がいない世界。


居心地はいいけど厳しい世界でもあるわけですね。



****


『ハローグッバイ 』でも桐生コウジさんの走り方が面白かったんですが、
やはり今回も面白い。。

この映画もコメディですがウケ狙いのコメディ演技をしないのがいいですね。

一生懸命生きてる男なんだけど、なんか笑える。。
ってのが最高。。


****


若い頃の栄光(?)を断ち切るおっさん映画です。

栄光にすがりついてるわけにいかないのも知ってる。
すがりつくほどの栄光じゃないのも知ってる。

おっさんになると、新しい自分になるのは今じゃなくていいし、来年でも再来年でもいい。
新しくならなくてもいい。
でも、新しい自分になりたい気持ちは消えない。


一方、ユカや垣内などの若者は
今すぐ新しい自分にならなきゃ!という切迫感が強い。

ぬるぬる生きてるおっさんへの苛立ちも強い。

この対比が面白かった。



 


『ボーダー 二つの世界』ラスト&ネタバレあり

2019-10-29 | ネタバレあり

 


『ジョーカー』の次にこれでしたが、、
こっちも全然負けていないというか
むしろこっちの方が映画の力を感じました。

実は昔懐かしい映画らしい映画だった『ジョーカー』と比べると
こちらは
イラン出身の新人監督の描く世界は新鮮で蠱惑的です。



****



ヒロインのティーナを演じたエバ・メランデルさんが素晴らしい。一位です。俳優コンテスト一位です。


スウェーデンでは相当実力派として知られる女優さんのようですね。

技術力にも目を見張りますが
あの風格、威厳がものすごい。

で、それでいて可愛げもあるんです。
あのルックスで可愛いさを出せるんだからもう呆れちゃいます。。

特殊メイクで顔の多くが動かせないはずなのに、ミクロン単位で表情筋を操って、深い感情を伝えてくれます。


****



音楽も良い。


可聴域ギリギリの低音がビリビリ鳴り、サスペンス感が増します。

ちょっとうるさいかなと思う場面もありましたが。。



****


想像を超える世界に連れて行かれて
その魅力に囚われてしまう感じ。

社会性とかとは全く関係のない自分の中の箱を開けられてしまう感じ。


ミミズって美味しいのかもしれない(←ヤバイ状態…)。。




****


どうかネタバレ踏む前に観に行ってくださいね。




ラスト&ネタバレは以下に。。























2人はムーミン(ムーミンもトロールです)の仲間たちでしたね。
さらにヴォーレはジョーカーでした。

ヴォーレはずっと人間たちに虐げられてきて、ダークサイドに落ちてしまいました。

そう考えるとティーナ(レーヴァ)は少なくとも大人になってからは虐げられている感は少ない。

子供の頃は壮絶ないじめに遭ったでしょうし、自分がトロールであることを隠されていたことはショックだったと思います。

が、自分の特技を生かした仕事で活躍できて、上司や同僚からも頼りにされている。
お隣さんも優しい。

人への恨みがない(もしくは減った)彼女はダークサイドへは落ちることはなかったんですね。
ここがグッとくるポイント。

しかし、ラスト。

ヴォーレが船から逃走したあと、おそらく、いづらくなって職場を離れたティーナ。
職も失い、お隣さんとの交流もなくなり、人間的な社会性をなくしたティーナ。

自分の仲間たちがそうして生きているでろう、森の暮らしを始めていました。

そんなところに宅急便。
ヴォーレが産んだ有精卵。

愛おしそうにその子を見るティーナ。

映画はここで終わるけど、彼女はフィンランド行っちゃうんでしょうか。

それが彼女の幸せなのかもしれない。




 


映画『ブラック・クランズマン』ラスト&ネタバレあり

2019-10-25 | ネタバレあり


上映日:2019年03月22日 / 製作国:アメリカ / 上映時間:128分






「全然昔話じゃない」という文言をよく映画の感想で書きます。

差別や戦争をモチーフとした”歴史モノ”で
「今もおんなじようなもんじゃない?」というメッセージを発している映画。

「数十年前はこんなひどい差別があったんだ、信じられない…」みたいな感想を読むと
「おいおい、今もだぜ」と思って、この言葉を口すっぱくして書いています。


*****


映画『ブラック・クランズマン』はまさに直球で「全然昔話じゃね〜よ!」とキレてますね。激オコ。

「今の方がヒデーんじゃね」とまで言ってますね。


*****



僕は前半が乗れなくて、、、睡魔と戦うので精一杯でしたが
潜入捜査がピンチになってきたあたりから
物語も盛り上がるし不穏な空気もマシマシで、
目パッキリ開けてラストまで食い入るように観ました。


*****


ラストですね。。
ニュース映像というか、視聴者映像が流れます。

世界各地で自国主義が盛り上がっていますが
アメリカでも白人主義が台頭しておりまして
それはニュースで知ってはいました。

が、こうやってまとめて羅列されると
これ以上のホラー映像ないですよね。。。

何ですか、あの車。。。
「この映像見ちゃっていいの????」とおそれおののく映像。。。


****


全然キレていい状況ですよね、今の世界は。

でもキレない。
『グリーンブック』のようにキレない映画が多い。
(『グリーンブック』好きですよ)

でも、ガンガンキレてる映画があったって一瞬もおかしくない。。
当たり前の状況です。


『シェイプ・オブ・ウォーター』ではギレルモ・デル・トロの怒りをバッチリ受け取りました。

『ブラック・クランズマン』ではスパイク・リーの怒りを正面から受け止めました。

怒ってるよ、俺だって!
怒るよ、そりゃ!




ラストのネタバレについては以下に。































ラスト。
潜入捜査は成功したものの、予算削減ということでチームは解散させられてしまう。
ショックを受けたロンだったが、
自室に戻り彼女と「まぁまぁ頑張って結果出せたよね」的な雰囲気でのんびりしていると、突然ノックの音が。。

銃を取るロンと彼女。
バーーンとドアを開け、廊下に出て、カメラに銃を向ける二人。唖然としている顔。
カメラは離れていく。


画面は切り替わり、ニュース映像(視聴者映像)に。

トランプ政権下で再び台頭するKKKの姿。
はっきりと白人主義を打ち出すデモ隊。

それに対する反対デモをしているところに黒いスポーツカーが突っ込む。

全然ノーブレーキでデモに突進して、多くの人が跳ね飛ばされるという現実とは思えない映像。

轢かれた女性は死亡。
彼女の名前はヘザー・へイヤーさん。


彼女の献花台に「NO PLACE FOR HATE!」。
憎しみに場所はない!

そして、逆さになったアメリカ国旗が大写しになる。
赤、白、青の色を持ったアメリカ国旗が
徐々に彩度を落として白と黒のみになる。

白色と黒色が強烈に対比した国旗。




終わり。




 


映画『ジョーカー』(2019年) ラスト&ネタバレあり 爪が丸い… 

2019-10-25 | ネタバレあり

ジョーカー



公開直後に観たけどあまりに心奪われて言葉になりませんでした。。


***


ホアキン演じるアーサーがもちろん可哀想だし、
自分との共通点が見えてくるたび苦しくなって、、
「いやいや、おれはアーサーじゃないし、まさかジョーカーなんかにはならない!」とグッと体に力が入る瞬間も多かったです。

アーサーの動きが気持ち悪いですし、楽屋で座ってるシーンの背中は痩せて骨ばっていて、魔物か妖怪のように見えました。
手足も長いし、肩がちょっと上がっていて、ずっと何かを警戒しているような感じ。

自分とは別の生き物として客観的に観たいのに、全然そうさせてくれない。

アーサー(てかホアキン)の手の爪が丸いんです。
手を大写しにするシーンがありまして、僕も大人なのに爪がまん丸でちょっと恥ずかしいんですが、「爪一緒じゃ〜ん…」と恐ろしくなりました。。


***

四コマ映画『ジョーカー』→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2389

***

大ヒットですね。ま、話の筋も想像しやすいですし、実際に映画はものすごくわかりやすく作られてますからね。

ただ謎もありまして、監督は謎を謎として残したまま、絶対に答えを明かさないつもりのようですね。
(でもだいたいしばらくすると「あまりに何度も聞かれるから」っつって喋ったりもしますが)
なので、この話が結局どういう話だったのかは、現時点では明確ではありません。

****

自分がジョーカーになる可能性もあるし、自分がジョーカーを生み出す可能性もある。

この映画、ちょっとしたリトマス試験紙ですよね。
どういう感想持つかで人間性見えてきそう。

僕は「自分もジョーカーになる可能性がある」と怯える方が健全だと思いますけど。。






ラストのネタバレは以下に。






































相談員(?)を殺害して逃走。
アーサーを捕まえようとする職員と追いかけっこしてまるでチャップリン映画のようにコメディ風味で終了。

最後のセリフ
「理解できないさ」

この映画見てまるでジョーカーの作られ方を、サイコキラーの作られ方を理解したような気になっていたけど、甘い。
んなもんは理解できないし。ジョーカーには近づいていない。


ジョーカー


第三夫人と髪飾り(2018年製作の映画) ネタバレ&ラストについて

2019-10-21 | ネタバレあり

 



物凄いものを観てしまった。。。

美術も衣装も所作もひたすらに美しいんだけどキレ味ハンパない。

「昔話だと思う?」とカメラ目線で訴える視線が痛い。

こんなに美しい自然なのに、牢の中で刑を受けているような人生よ。。


****


女の子を産んだ途端「男じゃないのか」と言われた、というのは最近ツイートで読んだ話。
21世紀の日本の話。

この映画は19世紀のベトナムの話。


****


ほとんど〝産む機械〟として嫁にとられた3人の夫人。

しかも〝男を産む〟ことを望まれている。

この3人、微妙な関係性ではあるけど、お互いに境遇の辛さは誰よりもわかり合えるので、
この牢獄のような家でなんとなく力を合わせて生きている。


****



しかし、
妊娠した第三夫人が果物を食べようとすると
第一夫人が「果物はお腹に障るからダメよ」とストップかけて
自分は果物パクパク食べるという地獄シーンもあり。

これがポスターに使われている三夫人がピクニック的なことしてるシーン。


****


養蚕と家畜のシーンをたっぷり見せてきて、
どのシーンも迫力だし綺麗。


蚕は幼虫のときに自分で頑張って細い糸で繭を作って
「さぁ成虫になるぞ」ってとこで
人間に茹でられて糸だけ抜き取られる。

女性らはその絹で編んだ美しいアオザイを着てる。


蚕や鶏や牛を長々と映すことで
女性らも「子供を産む」という点のみを搾取されていることが浮き上がってくる。

この残酷さ。。
女性監督ならではかと。
男性ではここまでは踏み込めない。。


****


ラストもすごい。

ラストは賛否両論あるだろう、っていう感想を観ましたけど
そうでしょうかね。

「そりゃそうだろうよ…」って思うラストでした。
それでも衝撃でしたが。


ラストについては以下に。。




























第三夫人は娘を産む。泣き止まない赤ちゃんの口元で毒草を揺らす。

息子に嫁いできた女の子は息子に拒絶されて、「唯一の役目さえ果たせないのか!」と父に言われ、川で首吊り自殺。

「大きくなったら男になりたい。仏様に頼んでるの」と言っていた孫娘は長い髪を自分で切り落とし、カメラ目線。

エンドロール。
しばらくは川のせせらぎの音。
からの歌。

終わり





チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛(2017年製作の映画)

2019-10-11 | ネタバレあり


チューリップ・バブルに湧いた17世紀のアムステルダムを描いた映画かと思って楽しみにして観ました。

が、残念ながらアリシア・ヴィキャンデルちゃんの極ビッチ話でした。
なかなか観たことないレベルのビッチでした。

制作費2000万ドルで世界興収800万ドルという大コケ。


****


美術や衣装はかなり豪華ですし
トム・ホランダーやクリストフ・ヴァルツが面白いです。

ペラペラ喋る女中も良い。

終盤、コメディかよ!っていう珍作戦が実行されるんですが、ほとんどコント。

『ハングオーバー!』のザック・ガリフィアナキスが予想通りの活躍を見せてます。


****


アリシア・ヴィキャンデルちゃんは『リリーのすべて』以降だいぶ作品選びに失敗してますね。



ネタバレは以下。





























ソフィア(アリシア)と画家が不倫。
女中は魚売りの子供を妊娠。

ソフィアは女中が産んだ子を自分の子供だと嘘をつく。
で、ソフィアは出産後に死んだことにして、画家とアフリカでクラス計画を立てる。

女中は無事出産。
ソフィアは死んだふりをして棺桶に入れられ、船で移送される。
『glee』のシュー先生がいる小屋で棺桶から出されて待機。

でも画家が全然迎えに来ないので、「熱は冷めたわ」っつって家に帰るが、
子供を抱く夫の笑顔を見て、家に入れずに逃亡。

**

その頃、画家はチューリップの球根で金を用意するはずだったが
ザック・ガリフィアナキスが球根を玉ねぎと間違えてたべっちゃって、金は入らない。

**

女中がソフィアの夫に事情を話す。

女中は自分の子供と魚売りと共に、ソフィアの夫の豪邸に住むことに。

夫は「ソフィアを子供を産む道具みたいに暑かった自分が悪いんだな」と自分を責めつつインドへ去る。
女中に豪邸と資産を与える。「真実は我々3人の胸の中に」

**

画家はソフィアが投身自殺したと誤解する。

**

8年後。

画家はちょっと名を挙げており、礼拝堂で絵画を描く仕事を得る。

その礼拝堂でシスターとして働くソフィアを見かける。
終わり。




映画『ソ満国境 15歳の夏』(2015年製作の映画)

2019-10-11 | 映画感想



今まさに観るべき映画でした。

****

日中戦争。ソ連と満州の国境。

国境を守れないと覚悟した軍部は国境から軍を撤退させる。

この撤退作戦がバレないように
15歳の学徒が国境に送り込まれ、置き去りにされた。
これは当時の教育機関も認めた作戦だった。

飢えの中、集団で逃避するも、途中で日本が敗戦。
満州国も消滅。

少年たちはソ連の捕虜として収容。
引率の先生はシベリアへ連れて行かれたっぽい。

引率者も失った状態で
捕虜として収容され、
50日後、突然解放。

なんの指示も助けもなく、15歳の少年たちが力を合わせて歩き続ける。


*****


この体験をされたご本人である田原和夫さんの「ソ満国境15歳の夏」が原作。

この物語を、福島の原発事故に遭った現代の15歳の少年少女が調べるというストーリー。


*****

道中、衰弱しきった少年たちを助けたのは中国の石岩鎭という村の人々だった。

当初は
「今更日本人に恩を売っても何の役にも立たん」
「人の土地に入るな!」
と反対するものも多かったし
100人以上の中学生たちの宿と食糧を分けられるほど豊かな村ではなかった。

しかしこの少年たちが国から捨てられたと知った村人たちは助けることを決め、
その村の40世帯にそれぞれ2〜3人の少年たちが匿われ、宿と食事を与えられた。


*****


少年たちの引率を任された金子昇もよかった。
どれほど全員を家に返さなくてはというプレッシャーを一人で背負った軍人をまっすぐ演じていました。
この人も軍部から捨てられた人。

田中泯もさすが。
田中泯と一緒に演技をしているときは子役たちの演技も格段に良くなる。


夏八木勲ら存在感ハンパない老優たちの演技も味わい深いです。


*****


もうちょい映画としての完成度が高いと良かったけど
こんな素晴らしい実話をちゃんと伝えてくれるこの映画には感謝せねばならないですね。



 


アデライン、100年目の恋(2015年製作の映画)

2019-10-11 | 映画感想



キャサリン・ハイグル→ナタリー・ポートマンとキャステンィグが流れての
ブレイク・ライヴリー。

正解でしょう。

古き良きハリウッド女優のような美しさと貫禄がハンパないし、演技も良いよ。

ブレイクのライヴリーちゃんを観てるだけで楽しいってのは素晴らしい資質ですよ。


****

映像も綺麗で
黒もビシッと決まっていてカッコイイ。

みんないい人なので見ていて気持ちもいい。


****


話としてはね、、あぁそうですか、ってなもんでしたが。

あんまり一人一人を深く掘り下げられてるとは思えませんでした。



映画『虹色の朝が来るまで』 ネタバレ&あらすじ ろう者×LGBTQの物語

2019-10-08 | ネタバレあり



ろう者(聴覚障害者)のLGBTQ映画。
全編手話で字幕が出ます。
出演者はほとんど演技未経験のろう者とのことです。

****


ろう者でありセクシュアルマイノリティである、
ってことなので情報量が多いんですよ。
登場人物も多いし。

でも、ものすごく手際がいいですね。
セリフで説明するシーンと
セリフ無しでいけるシーンをリズム良く並べているので
テンポよくサクサク進みます。

無言で動作や表情だけで描くシーンも多く、セリフで語るより切ない気持ちにさせられます。


****


63分の中で登場人物も多いんですが
バックグラウンドにも強弱をつけているので疲れない。

十分に描けている人物がいるから
バックグラウンド少なめの人物たちも観客が勝手に想像し始めるので、全員が豊かな人物に見えてきます。


****


LGBTQのQってのは
クエスチョニング(Questioning)と言い、自分のジェンダーや性同一性、性的指向を探している状態の人々のこと。

(セクシャルマイノリティ全体を表すQueer(クィア)のQでもあったりする)



監督が当事者でいらっしゃるとのことなので
この辺りのことが心配なく描けていますし
端的でもありそれぞれが叙情的です。


****


LGBTQとは?
ってのを教科書的に知ることもできると同時に
キュンキュンラブストーリーとしての楽しさあるので
63分ちゃんと楽しめると思います。



****


主役2人、とくに長井恵里さんは堂々としていて主演女優としての存在感もありました。

あとはなんと言っても、ゆりママを演じた菊川れんさんが素敵だし面白い。

表情や動作から優しさ暖かさが滲み出てるし、完全に演技としてバーのママになりきっておられて素晴らしいです。


あと、群馬の街の映像も何気ないけど綺麗でした。


****



あらすじは以下に

































彼氏とオシャレな立ち飲み屋で会話する華。

「ごめん、好きな人ができたの」
「冗談やめろよ」
「その人といると心が温かくなるの」
彼氏、落ち込みながらも受けれる。

****

朝チュン。華とあゆみが二つの布団を並べて寝ている。

華のスマホが鳴る(バイブ)。
「お母さんから。帰ってきなさいだって」

****

1年前。
華とあゆみがカフェで会話。

「私彼氏と合わないのかな。彼はいつも先のことばかり。私は今を大事にしたいのに」と華。
「華の今を楽しむ姿ステキだと思うよ」とあゆみ。


****

家。2人で食事。口元についた食べものを拭いてあげたりしてイチャイチャ。
華を見つめるあゆみ。一緒にお風呂。ホラー動画見て怖がる華。イチャイチャ。

****

冬。
「彼と別れたよ。あゆみが男なら付き合ってたよ」と華。
「女同士でもいいでしょう」とあゆみ。

****

現在。
あゆみは美容院で働く。見習い?お客さんも先輩美容師もろう者で手話で会話。


****

日本家屋。華の家。まだ日が高いうちからすき焼き。
「お父さんおめでとう。三連勝だね」と華。
父はボウリング大会で勝った模様。父と母と華。3人は仲良し。

「あなたの彼、3ヶ月前からサークルに来ないけど」と母。
「別れたわ。今は女の子と付き合ってる。あゆみ。知ってるでしょ」と華。
「あの可愛い子?」「俺の教え子だ」
「もうヤったの?」と母。「うん」と華。
「姉みたいな感じじゃないのか?」と父。「違う」と華。
「出て行きなさい!気持ち悪い!」と母。
華は出て行く。

車を運転する華。車を止めて泣く。

****

車。運転席に華。助手席にあゆみ。
群馬のどこかの沼で止める。車を降りる。「綺麗だね」

「元カレと寄りを戻せ。気持ち悪いって」
「正直に私たちのこと言ってくれたんだね、嬉しいよ」とあゆみ。
泣く華。抱き合う2人。


*****

美容室。
常連客「こないだ北海道行ったの。じゃがいも美味しかった。ご両親に渡して」
「は、はぁ。。」と華。

*****

華とあゆみの家。スイカ。

「あゆみのお母さんは私のこと反対する?」
「どうだろう。」
「女で一つであゆみを育ててくれたんでしょ。私のことは言わなくていいよ。負担かけるから」

あゆみはノートにLGBTQの解説を書き始める。

   心 女 男
   体 女 男
恋愛対象 女 男

と書く。


華は心と体は女に丸をし、恋愛対象は「あゆみ」と書く。
あゆみも「華」と書く。イチャイチャ。

***

あゆみの勤め先。ケーキ屋さん。コーヒーを飲む華。

女性店主の息子、学校から帰宅。ドーナツ食べながら華と何気無い会話。
「宿題あるでしょ」と母は息子を二階にあげる。

「これ終わったら東京行かない?私たちみたいな集まりがあるの」とあゆみ。
「ろうの世界は狭いって知ってるでしょ」と華。

「今日3時じゃなくて2時に上がっていいわよ」理解のある女性店主。

***

渋谷。ものすごい喧騒。ナンパされて拒否する華。2人ははぐれる。渋谷のスクランブル交差点の反対側同士で手話で会話。
「もう来なきゃよかった」と華。

バーの店内。10人くらいの男女。

「どこから来たの?」とゆりママ。「埼玉」と嘘つく2人。
「あなたを見たことあるわ」とゆりママはあゆみを見ながら言う。

「この店は店員が全員ろう者なの」とゆりママ。客もろう者。
イチャイチャする女性2人を見てほっこりする。

****

【回想シーン】
布団の中でラクダの真似をする華。
「ラクダ?」とあゆみ。からのキス。イチャイチャ。


****


店。のびのびした客たち。
「私疲れちゃった」と外に出る華。

華は店の外に飾ってる絵を見る。「これは虹?」

客が一斉に出てくる。あゆみも。
「来てどうだった?」「疲れちゃった」
「ここ9時までなの。」みんな帰る。

「今日は帰るの?」とゆりママ。
「はい、群馬に」とあゆみ。「群馬…?」
嘘がバレた。

「ちょっとだけ飲んで行かない?」とゆりママ。

*****

閉店後の店内でスタッフたちと飲む。自己紹介。
華、あゆみ、ゆりママ、スタッフの優太と翔とあい。
優太とゆりママはFtM。

「2人は付き合ってるの?」と聞かれて「いえいえ」とまた嘘をつく。

翔の彼氏はあゆみの姉の同級生だと判明。ろうの世界の狭さ。


****

【回想シーン】
7年前(翔が中3の頃)。
放課後野球の練習をしてるとイケメン先輩が投球を教えてくれるようになる。
ある日、「好きです」と告白すると
イケメン先輩は無言で立ち去ってしまう。

翔の家。寝てる翔。登校拒否してるらしい。担任が尋ねて来る。
ゲイであることもみんなにバレてしまったようだ。

男性担任
「元気?大丈夫?人を好きになる気持ちはわかる。いまの社会はまだ理解が足りないんだ。いつかぴったり会う女性が現れるはず。先生も結婚してよかったと思ってる。お母さんに感謝の気持ちを忘れないでね」
と独善的な地獄ワードを連発する。

(先生も結婚してよかったと思ってるってこの先生もゲイ?)

遺書を残して川へ飛び込み自殺しようとする翔。

近所に住んでいて顔見知りだったゆりママが偶然発見し、力ずくで取り押さえる。

*****

店。
「ゆりママがいなかったらいまの俺はいない」と翔。

あゆみ「前は女だったって聞いたけど…」と優太に尋ねる。
「俺はね」と優太の回想シーンスタート。

*****

【回想シーン】

中学か高校の入学式当日?
鏡にセーラー服を着た自分。セーラー服をゴミ箱に脱ぎ捨てベッドに突っ伏す優太。
それを見て怒る母(聴者)。「どういうつもり!?」

別の日。優太の部屋を掃除する母。ベッドの下からガーリーな服が隠されていることに気づく母。

***

店。
「母さんは俺の好きにさせてくれた。でも体と戸籍を変えた時」
回想シーンスタート

***

【回想シーン】
食卓で一人泣く母。「どうしたんだよ」

「本当は男に変わることを受け入れられなかった。誰のせいなんだろう。でも優太の人生は一度きり。自分らしくいてね」と母。


****

店。
「カミングアウトするつもりはない。でもパートナーがいるいまは一番幸せ」とあい。

「私たち付き合ってます」と華。
「わかってたわ」とゆりママ。

親のことが不安なのはわかる。でも俺たちがいるから。私たちはあなたの味方よ。

泣く華。

「ただ、あゆみが好き。結婚してる人たちと同じように。二人幸せになりたい」と華。

*****

朝。
そのまま店で寝てしまっていた。「帰ろう」
みんな店を出る。外は明るい。

絵。
「雨が降らなければ虹は出ないの」とゆりママ。

******

橋の上でキスする二人。
空へパン。

おわり。








映画『運命は踊る』(2017年製作の映画)

2019-10-05 | 映画感想



素晴らしい。
敵が映らない戦争映画。

戦争状態にある国ならではのリアルで容赦のない戦争映画。


****


冒頭、息子の戦死を知らせる兵士たちのなんと事務的なこと。。

言うセリフ全部決まってるし、
ショックで気を失う母にサッと注射するし、
「ショックで何も食べられなくても水だけは飲んでください」っつって
1時間に一回「水を飲んでください」とスマホ画面に表示させるアプリもある。


****


戦死にかかるコストを効率よく解消するマニュアルが出来上がっている。


しかしもちろん人間の心はこんなマニュアルでは癒されない。


しかも、運命はもっともっと残酷。



****



映像も素晴らしく
全編通して緊張感はあるけど
二幕目はにはコミカルなシーンもある。
(ラクダ可愛い)

三幕目では、ミステリーでさらに引きつけます。
あれ?どういうことだ?と。



****



エンドクレジットに流れる音楽をずっと聴いてました。
物語の余韻がもの凄かったから。。


 


ネタバレ 映画『WEEKEND ウィークエンド』(2011年製作の映画)

2019-10-05 | ネタバレあり




賢者タイムが同時にザンッと訪れるのが男性2人の情事ですね。

あんなにも燃え上がっていたのに、、終わった途端、1週間分の経理書類の整理ができそうなほどの賢者タイムが2人同時に来る。

あのシーンちょっと可笑しかったですね。。


****


『ビフォア・サンライズ 恋人たちの距離』のように限定した時間の中で両者がとにかく喋ります。

朴訥とした主人公ラッセルより
最初はウザいグレンの方がキャラとしては面白い、


ストレート映画(『ノッティングヒルの恋人』)であれば感動のシーンでも
男同士でそれやると突然社会問題化してしまう。
よくある感動シーンなのに。


****


駅のシーンは素晴らしい。

最初はフェンス越しに遠くから撮ってるけど
だんだんアップしてって
最終的には2人の顔だけになる。


遠くから見てると
おじさん2人がシンデレラエクスプレスやってる様子。

カメラが寄ってって
この2人の顔が大写しになると
人間性が見えてきて笑うなんてできないし
もちろんヘイトなんてできるはずもない。

でも遠くからは「ホモッ!」という罵声が聞こえてくる。



ネタバレは以下。




























「全然覚えてないんだ」というラッセルの声で終了。

これはグレンがテープに録音したラッセルの声。

テープではラッセルは事細かに昨夜の出来事を語るので
実は全部覚えてるわけです。

覚えてないってのはウソ。

2日前は息するようにスルスルとウソついていたラッセル。

グレンとの二日間を経て成長したラッセルくんなのでした。






 


映画『お嬢ちゃん』(2018年製作の映画)

2019-10-05 | 映画感想
こりゃかなりいい映画ですよ!

萩原みのりがすげえし、
立て続けに襲って来る長回しがクセになってくるし
セリフはめちゃくちゃ面白いし
役者さんが隅々まで上手い!

導入もほんと素晴らしい。
なにあの始まり方。
誰だったの?アイツら。
もう心奪われる導入。


ほとんど全てのシーンが長回しなんですけど
どうやって撮ってるんだろう。
ものすごく自然だし。
ものすごくセリフが多い。
みなさんほんと素晴らしい演技。


*****

「どいつもこいつもくだらない」って思ってる時って
孤独なんですよね。。寂しいんですよね。。

怒りや寂しさを結合させて純化した物質がみのり。
胎児のようにも見える。

みのりは自分や大切な人のために闘うたびにダメージを負って怒りと寂しさはさらに強く結合していってしまう。


僕の中にもみのりはあるけど、流石にもうお坊ちゃんじゃない(しお嬢ちゃんでもない)から外には出さない。

この映画では、みのりはなんの防御壁もなく生まれ出てしまって、その姿は哀しい。
いたたまれないし、身につまされるし、みのりをホッとさせる術が僕にはなくて申し訳ない気持ちにもなる。。


****

『ハローグッバイ』で
「この人カメラ回ってること気付いてないのかな」ってくらいに自然に喋ってた 萩原みのり さんでしたが、
今回はまっっっったく演技が違う!
別の女優さんかと思ったくらい。

人間というより、
ほんとに分子が振動して熱が放出されてるのを観ているかのよう。なんなのこの人!

****


土手理恵子さん、結城さなえさん、上田萌さんらも素晴らしかったし。
桜まゆみさん遠藤隆太さんの達者さには舌を巻きながら笑いました。。
沿線での鶴田翔さんのシーンは撮り終えたとき拍手が起きたのでは?
永井ちひろさんの「こういう人いるぅ」感は一周回って恐怖。

出てる方全員凄かった。。


***


鎌倉のロケも良かった。

僕は小中高と鎌倉で育ちまして、
観光客大っ嫌いだったし
観光地としての鎌倉は全然好きじゃなかった。

この映画では生活の場としての鎌倉が映っていました。

監督も鎌倉育ちとのこと。なるほど。

あらすじ&ネタバレ『サタンタンゴ』

2019-10-01 | ネタバレあり

 

サタンタンゴ



朽ちた牛舎や家屋の横パン。
大量の牛が出てくる。
雄牛が雌牛に交尾を迫るが雌牛は声を出して逃げる。
一頭が「はっじまっるよ〜」みたいな感じでカメラの前まで寄ってくる。

横パンしながら牛と豚、アヒルも登場。
荒れた村。



ナレーション
「雨季が来て畔が泥沼になり、町と隔絶される。街からの音は聞こえるはずもない」


***


四コマ映画『サタンタンゴ』→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2371



***

1【やつらがやってくるという知らせ】



屋内。窓からの日差し。真っ暗だったが、長回しで次第に明るくなる室内。
「分け前を取ったら今夜出よう」とフタキ。

水を貯めた桶にまたがり股間を洗う女。精液を掻き出してる模様。
シュミット夫人。
「亭主が来たわ!」慌てる2人。

「今夜には高飛びだ!」とシュミット。
「一年働いた分を取られてたまるか!やっと農園が帰るんだぞ!8人で分けたら何も残らん!」
「お前と三等分だ」
「クラーネルと組んで金を持ち逃げしようとした男を信じられるか?」
「浮浪者みたいな連中が金を持ってたら名前も聞かれずに逮捕されるわ」
「都会で働くんだ!全て忘れて!」

****

ドアをノックする音。「シュミットさんいる?」と女の声。

「追い出せ!入って来たら殺せ!」
シュミット夫人が対応。

イルミアーシュが戻ってくるらしい。

「一年半も前に死んだやつがくると?」
「やつは魔術士だ。クソからでも城を作れる」とフタキ。
「イルミアーシュからは逃げられない」

シュミットが先に外へ。フタキが後を追う。

ナレーション「がんばれ!黄金の人生だ!」

*****

2【我々は復活する】


警察署の中、椅子に座る2人。
ペトリナとイルミアーシュ。
部屋の中に呼ばれて召喚状と身分証明書を提出。

警視は「人は自由が嫌いだ。怖いのだ。恐ろしいことなどないのに。秩序こそ恐ろしいのだ」

2人は警視からある任務を受ける代わりに釈放される。

*****

2人は酒場へ。
「全員爆破してやる。鼻にダイナマイトを詰めて殺してやる」と叫んでから外へ。

「やつらは下僕だ。一生変わらない
何が起きたかわかっていなんだ。動物の群れのようについて行きたいだけだ
お互いに疑心暗鬼になりながらも、毎晩布団の中に隣の女房がいればいいのさ」とイルミアーシュ。

シャニが合流。2人が死んだという噂を流した男。

*****

部屋の中から双眼鏡で外を監視する男。医者。

「フタキはそうやら何かを恐れている。フタキは死を恐れている」
外の様子をノートに記録していく。
「人は皆死ぬ。フタキ、お前もだ」
スケッチする。昔の栄えていた頃の村を描いたスケッチ。
昔に描いたスケッチを引っ張り出して、それを見てまた描く。

シュミットが裏口から出てくる。
アルカリの草地に。
向かう道で立ち止まり、フタキはコッソリ家を抜け出し納屋に行き、壁に隠れる。
フタキは動かない。
と記録する。

雨季には徒歩で街に行けなくなる。
春までバスは来ない。
村から出られない。

医者、酒に酔って転んで倒れて立ち上がってベッドに。何回も転んでしばらく動かなくなってから再び動き出す。
「だいぶ酔ってしまったようだ」
インスリン注射を打つ。
「酒がなくなった。どうやら外に出なくてはならないようだ」

***

医者は外に出る。外は雨だが傘を差さない。息が白くなるほど寒い。
最初から最後までずっと雨降ってるが誰も傘を差さない。

廃墟に逃げ込む医者。2階から女性が電話する声が。

「先生やる?安くしとくよ」と女2人が、火を囲んでいる。
この廃墟で客を取っているよう。

「シャニもいる。そうやって生活すれば?」
「男に金が入ればキンタマが黙ってない、女にも金が入るわ。」

廃墟を出る医者。
「もう長くはないわね」と医者について語る女たち。

ずぶ濡れになり倒れる医者。
死んだかと思いきや再び立ち上げる不死身医者。

林の中、少し先の道を歩く人に声をかけるも気づかれず、倒れる。

翌朝、発見され肩を担がれ救出。馬車の後ろに先生乗っけて馬車は進む。

****

<休憩>

****

3【蜘蛛の仕事 その一】

酒場。店主と男。もう1人客が来る。外は雨。

時計の音?(三拍子。秒のテンポではない音がずっとBGMで鳴っている)。
すごい雷。

ケレメンが入って来る。
「イルミアーシュとペトリナが来る。」
「イルミアーシュが無煙火薬の話をしていたらしい」
「俺のものはお前たちには渡さない!ここにあるのは俺のものだ。」と店主。
店主は倉庫でやけになり、大量の瓶を叩き割る。
しばらくして落ち着き、箒で割れた瓶を掃除。

「連中は朝にはここに着く」「いまは11時か12時だ」
「地面が臭いわ」とシュミット夫人。

****

4【ほころびる】


兄と妹が土に金を埋める。
「金の木がなるの?」と妹。
「水をあげ続ければな。みんな羨ましがる。」
「金があれば客間で寝られる?」

兄はシャニ。妹はエシュティケ。

母が客を取っていて、エシュティケは家に入れない。
朽ちた納屋に入り、そこからドアを見つめるエシュティケ。

エシュティケ、猫を抱えながら鼻歌。
「粗相したのね!」と猫を叱る。
猫を引きづり、叩きつける。「私の方が強い」
猫を網に入れる。猫、寂しそうな弱い鳴き声。

家から白い粉を入れたミルクを持ってきて
猫の顔を押し付けて無理やりに飲ます。

みるみるうちにおとなしくなる猫。
エシュティケは部屋の端から猫をじっと見ている。
猫はミルクに顔を突っ伏したまま動かなくなる。

白い粉は猫いらずだった。

猫の遺体を脇に抱えて林に戻ると金は土から掘り出されていた。
「俺が必要だったから取った」と兄。

エシュティケは雨の中、窓の外から酒場を覗き込む。
酒を浴びるようにのみ、踊る大人たち。

人間みたいな顔をした少女。
(人間離れした顔の少女)

エシュティケは畔を歩き続け、廃墟に。
ポケットの猫いらずを飲む。
脇に猫を抱えたまま仰向けになる。

「ついに物事は単純になった。
1人じゃないとわかってた。
天国にはみんないる。天使がくるのがわかった。」
とナレーション


*****

5【蜘蛛の仕事 その2(悪魔のオッパイ 悪魔のタンゴ)】


イルミアーシュとペトリナが村に着く。

酒場ではみんな金を分けている。
「娘を見かけなかった?見つけたらひっぱたくわ」とエシュティケの母。

ボークトットボークトット。

「連中を見つめるとすぐ悟られる。消えちまう。
本当の危険は下から来る。恐怖の停止状態がくる。
助けも来ない。
イルミアーシュは玉ねぎ一個で大成功した。
10日間タダで飲んだ。
ここは俺は築いた。
いつかこの国にも秩序が必ず訪れる。」
と店主。

***

泥酔しながら踊り狂う。それを窓外から覗くエシュティケ。誰も気づかない。

酒場に来た医者はエシュティケに気づいたが冷たくあしらってしまう。

エシュティケはこの後、朝まで歩き、自殺する。

****

額にパン乗っけて何往復もする男。
急に音楽止まる。ハリチ校長登場。

「さすがハリチだ」
「タンゴはいかが?」シュミット夫人がハリチを誘う。
「あなたは他の連中とは違うわ」

「連中がまた仕事に戻れて、私も好調に戻れたら、あなたを街に連れて行きたい」とハリチ。

みんな疲れて眠る。蜘蛛がビンやコップに糸を張る。
顔にも糸。

準備を始めている。再び動き始めるのだ。

***

休憩

***


6【イルミアーシュが演説をする】

エシュティケの遺体をみんなで囲む。

この悲劇の原因はなんなのか。この無垢な少女を殺したのはなんなのか
全員が無罪だと、皆さんは無実だというのでしょうか。
ならこれは何。
無実の人々による被害者?

イルミアーシュの演説によってみんな金をエシュティケの棺桶に入れていく。
金が貯まっていく。


****

7【正面からの眺望】

イルミアーシュとシュミット夫人がSEXした後。
服を着て髪を整える。

酒場の前でイルミアーシュ演説。
「さあ出発です。皆さんは自由なのです」
出発する村人たち。

それに対し「くたばっちまえ!」と叫ぶ店主。
「店を閉めるしかないね」とおそらく店主の母。


****

荷物もまとめて出ていく人たち。家具も壊していく。
「ジプシーに盗られるよりはね」
「美しく素晴らしいハンガリーよ」
一行はある廃墟に到着する。
そこはアルマーシ荘園。5棟はある大きな建物。

女性は酒を飲む。ここで寝泊まりをする。
「輝く未来が待っているぞ!」

フクロウが一羽、ジッと見ている。

村人は寝入るがみんな悪夢にうなされる。


*****

8【天国に行く?悪夢にうなされる?】

イルミアーシュの演説。カメラの位置、先ほどと反対。酒場からの視点。

*****

「連中が気づいたら大変なことになるぜ」とペトリナ。
「俺たちの時代が来たんだ。イルミアーシュ版の蜘蛛の巣の網だ!」とイルミアーシュは村人を上手く騙せたことに安心している。

シュテイゲルワルトの店に向かう。
霧に怯えるイルミアーシュ。「霧を見たことないの?」

途中、町の広場で馬が大量に現れる。
「誰を応援する?自分だ」
自由になり、あてもなくうろうろする馬たち。人間のよう。


シュテイゲルワルトの店。

警視に手紙を書く。内容は意味がわからない。

猟銃商人を呼ぶ。爆弾を頼む。
「私は民衆解放者ではない。悲しみの研究家だ」とイルミアーシュ。

***

9【裏からの眺望】


荘園で朝を迎えた一行。イルミアーシュが来ない。
「あいつは何を考えている」「俺たちは何しにきたんだ」
「俺たちはまた無一文だ!」

「エシュティケは猫いらずを飲んだだけだ!」
「イルミアーシュが来るのを待とう」
「誰のせいで金を取られた!」

イルミアーシュが来た。イルミアーシュに不満をぶつける一行。

「俺はみんなのためにもう3日寝てない」とイルミアーシュ。
「荘園計画を進めている。が、あの連中から監視されている。しばらくの間、圏内に分散し、彼らの監視がゆるくなるまで待ちましょう。その間、お互い連絡をとってはいけません。私とだけ連絡を取れます。さ、出発だ」

「金を返せ!」
「根性も信念もないなら返そう。自分の利益がわからないものには必要ない。」
返された金をまたイルミアーシュに返してしまう。。


****

トラックの荷台に乗せられてどこかへ。すごい雨。もちろん傘ナシ。

****

どこかについて、数人降ろされる。
数人(ハリチとフタキ)に荷台に乗ったまま。

イルミアーシュはメンバーそれぞれに地名を伝え、そこで用意した職に就くように指示する。
それぞれに当面の金(1000フォリント)を渡す。
「本当の任務を忘れないように!」

フタキだけは荷台から降り、去って行く。
悪い足を引きずって画面の奥まで見えなくなるまで映される。
フタキだけが唯一、イルミアーシュから逃れることができた。人間の希望。


******

10【悩みと仕事ばかり】

イルミアーシュとペトリナとシャニが街を歩いている。
もっっのすごい風が後ろから吹いている。枯葉やゴミなどを巻き上げている。

イルミアーシュから報告書を受け取った警官。
タイプする。

シュミット夫人。誰とでも寝る女。これに例外はない。

などと村人一人一人についての報告。

フタキはただ1人危険。だが、役に立つ。

タイプし終えた警官2人。「今日もいい日だったな」


*****

11【輪は閉じる】

医者の部屋。酒を飲む医者。

連中は何もせず、動かないでいることで、自らが最も恐れているものに捧げていることにも想像していないのだ。
どうせいびきをかき、天井を見ているだけ。
外に出る気もない。


上着を着て外へ。
鐘の音が聞こえる中、雨の降っていない道を
こちらに向かってまっすぐ歩いて来る医者。

荒廃した畑、斜めのカメラアングル、ドロドロの畔。
耳鳴りのように響く鐘の音。礼拝堂に近づく医者。
「トルコ軍が来るぞ!」とエンドレスで叫びながら鐘をうつ男がいる。

狂った男の鳴らす鐘を背に歩く。
「私はバカだ。天の鐘の響きを魂の鐘と間違えてしまった。私としたことが」と医者。

家の窓に内側から板を張っていく。部屋は次第に真っ暗になっていく。

医者はノートに書く。
「フタキは鐘の音を聞いて目を覚ました。一番近い礼拝堂は8キロ離れているが、そこには鐘がなかっただけでなく、戦時中に塔も倒れてしまっていた」




映画終わり




*****



"労働忌避(働いてない)の罪でイルミアーシュたちは逮捕されたけど、警察のスパイ網を組織することを交換条件にイルミアーシュたちを釈放。
彼らは農民たちに真実を伝えることなく言葉巧みに金を巻き上げて、警察のスパイとしてあちこちに送り込んだ”

ハンガリー語学者・元東海大学准教授である深谷志寿さんの解説より引用




四コマ映画『サタンタンゴ』→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2371



サタサタンタンゴ