映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

ラスト&ネタバレあり Netflix映画『パドルトン』

2020-05-22 | ネタバレあり
NETFLIX映画『パドルトン』












これはもう恐ろしく好きです。。
過剰じゃないのもいいし、どんな辛い場面でも笑いがあるっていうリアリティもいい。



****


四コマ映画「パドルトン」 → http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2519


****

主役2人を演じる俳優さんはどちらもコメディを得意とする人なので、「2人の会話が面白い」という以前に、2人の空気が面白い。

2人が一緒にいるだけで面白いってこんな幸せなことはないわけで、だからこそこの2人は一緒にいるわけで。
コメディアンだからこそこの2人の関係に真実味を与えられてるんだと思いました。

いくら重鎮の演技派が賞狙いの演技をしても、どんどんウソ臭くなりそう。マーク・デュプラスとレイ・ロマーノがそもそも持ってる空気感がこそがこの映画が成功した種ですね。

***

2人はカンフー映画が好きで古い『デスパンチ』という映画を何回も一緒に観てる。
(『デスパンチ』という映画は実在しなくて、『パドルトン』のために撮られたものです)
たぶん800回くらい一緒に観てるんだけど、ラストのある状況で観ると、今まで観てきた『デスパンチ』ではなくなっちゃっている。

パドルトンも同じ。何回もやってきたパドルトンだけど、ラストでは違う。
ピザの味もたぶんそれまでとは違う。
パズルも違う。

ほんと恐ろしいですよ。どうしたらいいのかと思っちゃう。。
「幸せにならない方が幸せなんじゃないか」とめちゃくちゃなことを思ってしまう。。
幸せになればなるほど辛いじゃねえか、と。
生きるってなんなんだと。

****

ゲイに間違われるシーンも面白いし、重要。
単に「男同士で仲良くしてるとゲイに間違われがち〜」っていうあるあるシーンではなくて、もう一歩先のことを示してますね。

「親切心だろうけどおじさん同士が仲良くしてること自体を特別視してない?」ってことですね。
これが女性同士ならあのシーンは生まれなかったでしょうし。

「おじさん2人がっ!」っていうのがフックになるっこと自体どうなの?というこの映画自体をも客観視してるシーンですね。

だいぶ好意的に捉えてるとは思いますが、、ひとつひとつのシーンが本当に丁寧に積み重ねられていますので、たぶんこのシーンもちゃんと考えられてのことだと思いますよ。


****

ネタバレしないように書くのが難しいので、終わり。

ネタバレは以下に。













パドルトンというスポーツは存在しません。2人が作った2人だけのスポーツです。

朽ち果てた野外映画のスクリーンの裏の大きな壁を使ってますね。
誰も気にも留めない場所。
2人のノンケおじさんが家族のような関係を築いて暮らしている、という誰からも発見されていない2人の関係と似たような場所。

パドルトンのルールは、壁に打ったボールがドラム缶に入ったら勝ち。
『デスパンチ』のドラム缶と一緒ですね。


****

アンディが作ったクイズはウソでした。答えのないものだった。
一年半このクイズを考えていたマイケルは怒る。

「クイズは楽しいものなのに、君は答えが出ると悲しそうにする。それが嫌だった。答えがないクイズなら悲しくならない。クイズがプリントされたそのシャツもずっと君のお気に入りでいられる」とアンディ。

***

実は結婚していたことがあることをマイケルがカミングアウト。
知らされていなかったアンディはびっくり。

どんなに仲が良くても「知らないことがある」「言ってないことがある」ってのもリアル。

「結婚には失敗したけど、僕はわかったんだ。これだったんだ。僕の居場所だって」とマイケル。

***

「これをやってる最中に死んだ奴いるかな?」っていうくらいに大変な
100錠の錠剤を割って中身の粉を水に溶かすという作業を全て終える。

飲んでから効果が現れるまで1時間かかるってことで、外を2人で散歩。
マイケルは毛布に体を包んでいる。

木の匂いを嗅ごうとするマイケルとアンディが止める。
「毛虫がいっぱいいる」
「今更なんだ」

***

「死後の世界があるとしたら君になんらかの方法で連絡できるかも。
君は僕に連絡してほしい?」

「きつい質問だ。」

「コップを動かしたり、曇りガラスに言葉を書くとか。」

「いやだ。ぎょっとするのが嫌だし。夜中もダメ。
なんてこと言うんだ。今後変なことが起こったら、君だって思ってしまう。風が吹いただけでも君じゃないかと。
合図を決めておこう。」

「それを言おうとしてたんだ」

1時間のアラームが鳴る。

無言で部屋へ戻る2人。


****


死に場所を考える。

2人の思い出の場所であるソファにしようかとするが、思い出の場所だからこそやめる。

運ぶことを考えると床。玄関に近い床。かと思うが、やっぱ嫌。

自分が死んだ後に面倒にならないように床にしようかと思ったけど
やっぱ最後まで自分のわがままを貫こうと思い、ベッドを選択。

マイケルはアンディにもたれかかりベッドの部屋へ。

最後の薬を作るアンディ。涙をキッチンペーパーで拭く。

ぐったりして座っているマイケルの隣に座る。
コップに入った薬を渡せない。
コップを奪うマイケル。
一度床に置いてから一気飲み。
顔を見合う2人。

ベッドに2人で並んで横になる。

「震えが」「怖い」「怖いよ」

「怖がることなんてない。大丈夫だと思うから」

「あんな薬飲むんじゃなかった」

「大丈夫だ」

「君にはわからないだろ」

「大丈夫。大丈夫だ」

「君は良くやってくれてる。すごいよ」

「感じがつかめてきた」

「神様、手を握って」

マイケルの手を握るアンディ。

「君に愛してると言っていいかい?」とマイケル。

「いいよ」

「良かった。気分が落ち着いた」

「大丈夫だ」

「目を閉じるよ」

「わかった」

目を閉じるマイケル。手を握りマイケルの肩に手を置くアンディ。次第に呼吸が少なくなり動かなくなる。

「愛してるよ、マイケル」とアンディ。

マイケルは動かない。呼吸音もしない。
涙を流し、ベッドに仰向けになるアンディ。
すぐに立ち上がり、部屋をウロウロする。


翌朝。
業者が来て、サイン。
マイケルが入ってるにしては小さな段ボールがバンに乗せられる。
(座っているような姿勢で入っているのかと)

1人でパドルトンをする。寂しそう。

家に戻り、パズルの続き。
夕焼けの砂浜にビーチパラソルとビーチチェアが2つ並んでいる絵柄。もうちょっとで完成しそう。

『デスパンチ』を観ながら1人ピザを食べる。

弟子が師匠にデスパンチを喰らわした後のシーン。
師匠「本当か…?」
師匠は倒れて死ぬ。
弟子は苦しみながらも少し笑みを浮かべ「友よ、また会おう」と言う。

何回も観た映画なのに違ったように感じるアンディ。

別の日。
マイケルの車に乗っているアンディ。
以前と違いアンディは車の運転をし始めた。マイケルの車を結局は譲り受けて。

マイケルが住んでいたCの部屋にシングルマザーと思しき女性とその息子が引っ越してくる。

アンディ、自分から話しかけて、荷物を運ぶ手伝いをする。
Cの部屋の前まで荷物を運ぶ。

「その部屋は一番いい部屋だ。ここに入る君はラッキーだ」と母親と息子に話す。

「僕はアンディ。君はゲーム好きだろ。パドルトン は?」

「知らない」と息子。

「そうだよな、僕たちが作った」 

「どんなゲーム?」食いつく息子。

息子もちょっと人見知りするタイプっぽい。その息子とアンディが会話してるのを微笑しく見る母親。

パドルトンのルール説明をする。
「つまらなそうだけど意外と楽しい。今度やろう」と誘って、部屋を戻る。

少し笑顔のアンディ。

終わり。

ラストネタバレあり 映画『Wの悲劇』

2020-05-18 | ネタバレあり

映画『Wの悲劇

監督
  • 澤井信一郎
脚本
  • 荒井晴彦
  • 澤井信一郎
原作
  • 夏樹静子
主題歌/挿入歌
  • 薬師丸ひろ子

出演者
  • 薬師丸ひろ子
  • 世良公則
  • 三田佳子





原作小説『Wの悲劇』は別荘での殺人事件の話で、アガサクリスティ的なヤツ。

この映画版は、その『Wの悲劇』という舞台を演じる劇団の話なんですね。


薬師丸ひろ子はそこの新人女優。
そのライバルが高木美保。
三田佳子はそこの看板女優。



****


四コマ映『Wの悲劇』→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2515




****


なかなかいろんなことがパワフルにスピード感を持って展開していきますよ。
108分にまとめられてるのはすごい。
ネチネチ引っ張るところとササっと過ぎ去るとこの差がすごい。

(劇中劇の『Wの悲劇』のラストの雑さよ…)


とにかく三田佳子が美しさと面白さが物語の推進力ですし、この映画の本質の魅力となっていますよ。
ほんと面白い。何回も笑ったわ。。

車から出てくるだけで面白いし、
化粧落としながらスタッフに「お疲れー」って言うだけなのに面白いし、
高木美保を鼻で笑うのももちろん面白い。

パトロン腹上死(久々に聞いたわこの言葉)事件の直後の
長回し&長台詞はほんと名シーン。


***


WはWomanのこと。
つまりタイトルは『女性の悲劇』ってことになりまして、女性差別、ウーマンリブの視点がこの映画の核心ってことになるのでしょう。

この映画に出てくる女性たちの「濃さ」に比べると
男たちは一様に薄っぺらい。

こんなにも男たちは薄っぺらいのに
結局は男性の視点で消費されて
結局は「女同士の闘い!」ってことで矮小化されてしまう。

男一人一人の存在感は薄いけど
「男の支配」っていうのは見えないところで大きく覆いかぶさっている。

っていうようなことについて、批判的に描いている、と、言えなくも、ない、、かな。。

古代ローマで剣闘士(グラディエーター)たちが円形闘技場で戦わされてるのを観て楽しむかのように
「女同士のプライドを賭けた戦い!」っつって上の方から楽しく見物する観客自身を批判している映画、

だと捉えるとなかなか深みのある、これからも残っていくであろう映画だと考えることもできますかね。。

ネタバレは以下に。













三田佳子(羽鳥翔)
薬師丸ひろ子(静香)
高木美保(かおり)
世良公則(森口)

羽鳥のパトロン腹上死事件の身代わりとなった静香。
なかなかのスキャンダルと背負った静香はそれだけマスコミからも注目を集める。

約束通り、羽鳥は
『Wの悲劇』の主役を演じていたかおりを主役から下ろす。
かおり、泣く。

静香は主役を見事に演じ、観客から拍手喝采、団員たちからも絶賛。

その公演の終わりで楽屋裏から帰ろうとする静香。
マスコミやファンが押し寄せてフラッシュをパシャパシャ浴びる。
気持ち良さそうな静香。

そこにかおり登場。
「全部聞いたわ。翔さんの身代わりになって私の役を奪うなんて!許せない!」と激昂。
ナイフを握って静香に向かって一直線で走る。

そこに花束を持った森口が駆け寄る。
かおりのナイフは森口の腹に刺さる。

警備員はかおりを連れ去る。
どういうわけだかマスコミやファンも去る。
腹を刺された森口を誰か病院に連れて行ってあげて欲しい。

パトロン腹上死事件の真相を知っているのは羽鳥しかいない(はず)なので、羽鳥がかおりにチクったのでしょう。

先ほどの舞台で静香が喝采を浴びているのを羽鳥がつまんなそうに観ているカットがあったので、「役は振ってやったけど、そこまで喝采浴びるんじゃねえよ」って思ったんでしょうね。

でもそれを聞いたかおりが静香を殺そうとしますかね。。

後日。

静香は引っ越し。
怪我が治った森口と再会。

もう女優の心になってしまったしこれからもコツコツと女優をやっていくしかないと静香は森口と別の人生を歩むことに。

バレエの最後の挨拶のように、スカートの裾を両手で掴んで、左足を前に右足を後ろに。
涙を浮かべながら笑顔。
森口、拍手。

カメラが静香の顔にズームアップ。
「え、この顔でいいの??」と思う表情でストップ。

ユーミン作詞作曲薬師丸ひろ子歌唱の「Woman "Wの悲劇”より」が流れ始める。
エンドロール。
画面は最後まで静香のアップのまま。

おわり。


Wの悲劇








ラストネタバレあり 菅田将暉主演 映画「アルキメデスの大戦」

2020-05-15 | ネタバレあり





冒頭の戦艦大和の沈没シーン、圧巻。。。。。。。。。。。

数え切れないほどの戦闘機によって空から攻撃を受けて
戦艦大和はその巨大さゆえにむしろ撃たれ放題。

戦闘機から放たれた魚雷も、的が大きい分、外れることも少ない。

「いったい何本の魚雷が命中してるかわからなかった」という証言があるほど、とのこと。

大和の〝史上最大にして唯一の46センチ砲〟も機動力が乏しく、敵機を落とせない。

****

そして、松浦慎一郎さん登場。

やっと敵機を一機落とすことに成功!

松浦さん「やったぜ!」とビッグスマイルで喜んだのも束の間、
パイロットはパラシュートで脱出。

ゆっくりと海面に着水。
そしたらすぐに飛行艇がパイロットをササっと救出。

その鮮やかさ。無駄のなさ。

そして何よりも
兵士1人の命が大事にされている場面を見せつけられる。

https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/d2/5cd72878b771c2c1cdd50feeb8cac08d.jpg

https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/82/d6ddb4f54b529b86d33af298842a9381.jpg

https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/b7/0d8eacf7f3b40f6812a9cec7d22a8512.jpg

https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/aa/3055146d5a9a572a5510499bb987dc1f.jpg



時は1945年4月。
敗戦の4ヶ月前。

一億総特攻の魁として「海上特攻」と命名された戦艦大和の闘い。

特攻すなわち特別攻撃隊。
体当たり攻撃とも呼ばれる。

航空機による特攻を「航空特攻」。
人間魚雷の回天などは「水中特攻」。
ボート型の震洋などは「水上特攻」。

国のためであれば兵士の命など……、という文字通り決死の作戦。

大日本帝国を象徴する超弩級戦艦大和でさえも「海上特攻」として駆り出される戦況。

****

大和の砲台に乗れるなんて相当優秀な兵士だったはず。
誇らしい気持ちで大和に乗り、お国に命を捧げることにも名誉を感じていたのかもしれない。
(兵士たちも今回の作戦が特攻になることは分かっていたらしい)

自分たちの戦いによって戦況は好転し国を守れると思ったかもしれない。

**

だが、
連合国軍はパイロット1人を救出する余力もあるし
人の命を大事にする「人間らしさ」「平常さ」を持っていることを見せつけられて
ただただ唖然とする。

飛び立つ救出艇からのカメラアングルで彼を捕らえる。
「え……」ってな感じで恐れや畏れ、もしかしたら憧れのような表情。

素晴らしい。

余計に気分を煽るようなBGMもない。
ただ不穏な低音がビリビリと鳴っている。

ついに大和撃沈。

波が甲板に乗り上げて、兵士たちの血を洗い流す。赤い波が恐ろしい。

甲板は大きく傾き、自慢の巨大砲台も重力に呆気なく負けて、砲身をぐったりと下げる。

兵士たちの声が怖いですね。。

落ちないようにしがみついていた人ほど高く持ち上げられ、最終的にはその高さから落とされる。
柵や砲台に打ちつけ体が分解される。

海に投げ出された乗員たちに覆いかぶさるように戦艦は転覆。

艦橋にしがみつく乗員が鈴なりになっている中、
艦内に搭載されている爆弾が爆発。

大和は3つに分断され、沈没した。

****

あ、まだ始まって8分くらいしか経ってません。。
もうこの大和撃沈シーンのすごいこと。。

もう泣けて泣けて。。
辛くて辛くて。。

(でも正直興奮もして。。ごめんなさい。。)

****

で、
物語は12年前に遡りまして
「なんでこんな時代錯誤の巨大戦艦なんか作っちゃったの?」という話が始まります。

**

まずは
なんで戦艦ってものが時代遅れなのかの解説。

これからは戦闘機の性能が上がり、戦闘機が主力になるはず。

しかし
「戦艦こそ勇敢で淡麗である」
「海軍のくせに戦艦を馬鹿にするのか!」と保守おじさんたちがワイワイと愉しんでいる。

**

「あんなバカどもが国の金を好き放題に使っている。
軍人たちの権力争いと財閥が至福を肥やすために必要のない軍艦が次々と作られていく…
軍は巨大化し、それが国の力だと勘違いし、それを誇示したくなる。
そんなことになったら確かに戦争が起こる」
by菅田将暉

そこに山本五十六。
戦争を避けるために君の数学の力を貸してほしい。と。

**

史実として最終的には戦艦大和は建造されてしまう。
そして冒頭の通り撃沈する。

その未来がわかっているからこそ、成立する映画ですね。

どっちに転がるんだ??っていうドキドキ感より
負け戦に果敢に立ち向かう菅田将暉と柄本佑が悲しく、愛おしいわけで。

**

民間業者との癒着や
予算を低く見積もっておいて実は倍近く建造費がかかるとか
古いものに悦に入るとことか
なんか現代日本を見ているよう。

ラストの展開も過去の話ではないですね。

日本はいつかまた巨大戦艦を海原に放つみたいなことやるよ、どうせ。

というメッセージを感じた。

**

この映画には一般人はほとんど出てこない。

菅田将暉は100年に一度の数学の天才。
浜辺美波は財閥のお嬢様。
あとは軍人。

**

当然、反戦映画ですよ。
愚かしいことやったし、その体質変わってないよね、というメッセージです。

でもたぶんこのラストを見て「あ〜やっぱ日本帝国最高!」って悦に入る人いると思いますよ。
それが恐ろしい。

ラストネタバレは以下に。























菅田将暉は、平山案(大和)の製作予算の算出に成功した。

8000万円だとされていた予算は実際には1億7000万円かかることが判明。
造船会社と密約を交わしている疑惑も浮上。

平山案は負けた、かと思いきや。。

「予算を低く見積もったのは日本を守るため。日本が約2億もの予算をかけて戦艦作っていることが米英に知られたら、米英はさらに大きな戦艦を作るだろう。それよりは米英に知られることなく突然超ド級戦艦を敵前に現すのが効果的。敵を欺くならまず味方から。そのために予算を低く見積もった。多少の不正は誠の真実の前では無効。」的なことを平山は言う。

みんなぐうの音もでないって感じで、一転して平山案で行くことになる。

しかし菅田将暉の反撃。

菅田将暉が書いた平山案の戦艦の図面を広げる。
年に2度は起きる規模の台風でこの戦艦は飲み込まれてしまう、と主張。

「どうやら私の負けのようだ。このたびの私の設計案は引き下げていただきだい」と平山。

平山、会議室を退席。

「藤岡案の空母が建造されることに決定した」とナレーション。

回想シーン。
実は山本五十六は平山案を潰して戦争を避けたいのではなく、
自分が推す空母の方を建造して「真珠湾攻撃」を目論んでいた。

戦争を避けるためだと菅田将暉を騙していた。

一ヶ月後。

菅田将暉と平山。

戦艦大和の20分の1の模型が出来上がっていた。

平山が菅田に言う。

「君の数式を教えてもらいたい。
正直になりたまえ。君はこの船を一度生み出したことがある。
これが完成した姿を見たいと思っているはずだ。
この船を作ろうが作るまいが戦争は起きる。
世界は日本を憎悪している。
戦争をしないと言う選択を国民が許さない。
国民は日露戦争での勝利に酔っている。
ことはこの船一隻が左右する段階ではない。
我々はその先を見つめなければならない。
私や君のような人間だよ。
君は同志だ。
アメリカと戦争起こせば、必ず負けると思っているだろ。
私も同じだ。
国力の差が圧倒的だ。
日本人は負け方を知らない。
最後の1人まで戦い続けるだろう。
そうなればこの国は滅びる。
しかし、そのとき日本の象徴となる巨大戦艦があったらどうだろう。
それが沈められたとき。その絶望感はこの国を目覚めさせてはくれないだろうか。だからこの船は巨大で美しく、絶対に沈まないと信じさせなければならない。
期待させ、熱狂させ、ついには凄絶な最期を遂げさせることがこの船に与えられた使命なのだ。
私は日本の依代になる船を作りたい。

※依代… 神霊が依り憑く(よりつく)対象物のことで、神体などを指すほか、神域を指すこともある。

滅びの道に進む前に身代わりとなって大海に進む船だ。
だからこの船にふさわしい名前を考えてある。
この船の名は大和。」と平山。

「数式を渡してくれるね」平山

拒絶できず飲み込まれる菅田将暉の表情。

**

9年後 真珠湾攻撃から2ヶ月後。

大和の進水式。
甲板に整列する乗員たち。

完全に軍人の顔になっている菅田将暉が山本五十六に敬礼。

船を降り、海に浮かぶ大和を見て泣く。

僕はあの船が日本そのものに見えるんだよ。

「そうですね!まさに大日本帝国の象徴です!」と隣の若い軍人。

大和、海原を進む。空は曇天。不吉な印象。

暗転。

おわり。






シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢(2018)

2020-05-14 | 映画感想






素晴らしいですね。

「作らねばならない」という何かに囚われた人間。
側から見れば狂ってるけど、美しい。

なんの忖度も、商業目的も、「いいね!」欲しさもない、ただただ作りたいから作るというシンプルな強さ、美しさ。

ここまでの人が近くにいたら困るけど、、憧れるわな。。

**


〝シュヴァルの理想宮〟と呼ばれる建物の迫力、奇怪さ、美しさに頼ってないのがいいですね。

俳優さんたちが素晴らしい。

サッとワンシーンだけで出てくる俳優さんたちも存在感あるし、どういうわけだか見栄えがよろしい。

シュヴァルの娘もいいし、息子の切なさもいいし、
奥さんも素晴らしかったですね。

「フランスでは有名な美人女優なんだろうな」くらいにしか思ってなかったけど、歳を重ねるごとにちょっと怖いくらいの存在感を出してくる。



**


まぁなんと言っても主役シュヴァルを演じたジャック・ガンブランですよ!
かなり演技賞獲ってる方なんですね。

まず顔が本人とソックリ。
佇まいや表情がちょっと別の世界の人って感じ。


宮殿を作るために石灰に水を混ぜたものとか、コンクリート的な泥をこねるシーンが多いんですが、
後半、シュヴァルが泥みたいな存在になるんですよ。

「あ、この人には話が通じない…」って思わせる、泥みたいな表情、佇まいになるんですよ。

いやぁすごかった。。
あれ演技なんですよね。。



**


1800年代末期のフランスのど田舎の話です。

郵便配達員のシュヴァルは、
世界の建築物の描かれた絵葉書を集めるのが趣味。

郵便局局長もシュヴァルに優しくて
そういう絵葉書を見つけたらシュヴァルにわたしてあげる。

ある日天命を受けて、絵葉書が得た知識のみで自分の理想とする宮殿を庭に作り始める。


**


娘は「この宮殿で王子様と結婚するのが夢」だと父を応援します。


あぁ、話を知ってると泣ける。。

観て。。


**


シュヴァルは毎日配達のために60キロくらい歩ける体力があった。

毎日昼間10時間働いて、夜間10時間宮殿の建築をやってた。

めちゃ健康だったわけよね。

ひとり長生きしちゃう悲しみもあったんだよね。。




ネタバレあり 韓国映画日本版リメイク『見えない目撃者』

2020-05-11 | ネタバレあり





見えない目撃者


「良作になったかもしれないのに惜しい」
もしくは
「惜しいところはあるけど良作」
というレビューが多いのでは。


**


僕はですね

車に火がついて
「火がついたっ!」ってセリフで言う映画嫌いなんです

車から出られない様子の弟が
「出られねぇ!」ってセリフで言う映画嫌いなんです

映画見てる全員がわかることを大声で言わなくていい。

冒頭がコレなので
レンタルで500円払ってなきゃこの時点で観るのやめてましたよ。

無料配信だったらやめてた。

500円払ったんでね、ラストまで観ましたよ。


**


ちゃんと最後まで見てよかったです。
だいぶ面白かったです(笑)。


予想以上に猟奇的な事件でした。。
胸糞悪〜いグロ案件ですので
そこそこの覚悟で臨んでくださいね。


**


雰囲気はかなりノワールっぽいです。
最近の日本映画ではなかなかない色彩。

雰囲気はだいぶいいですよ。

で、
上述したように展開がわかりやすいので安心して楽しめる。


結構刺激的なシーンが突発的に起こるので緊張感は保たれる。


なおかつ
コメディ要素も入れてくるのが良いですね。
コメディが入ると人間味が加味されて奥行きが出ます。



**


森淳一監督、次作以降かなり期待できるんじゃないでしょうか。


**



ただやはり

拳銃の音が鳴って
「拳銃の音だ!」とかの説明過多なセリフは気分が削がれますよ。。




ネタバレは以下に。














ラストの日下部との対決は残念でした。。。
もっとスピード感出して欲しかった。。

風呂場で発見されたレイサが、声出すなっつってんのに声出しちゃうのとかはいい演出でした。

女の子たちはみなさんいい演技でしたね。
それだけにほんと〜〜に胸糞悪い事件になりました。。
見てられないレベルの嫌な事件。。。

日下部が蝋人形みたいになっちゃってたんですが、もっとラストまで普通のつまらない人間っぽさがあった方が逆に怖かったのでは。

盲導犬パルちゃんが日下部にやられるシーン。
パルちゃんが倒れる名演技は可愛らしくて笑いました🤣

**

もっと時間かけてもっと準備して撮影したいですね。
この規模の映画、こういうタイプの映画にも潤沢な予算が回る映画界になって欲しいものです。



見えない目撃者