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映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』 ラストネタバレあり

2020-08-13 | ネタバレあり




どうしてこんなにも人気スターが勢揃いで
古臭い「館ものミステリー」をやってんのか謎でしたが
観たらわかりました。


ネタバレは以下に。















今のアメリカの移民排斥、人種差別、さらには性差別を断罪するためでしたね。

スターパワーで全世界にアメリカの病理を伝えて、批判しました。

この家族はアメリカの人種差別の塊。
白人主義で移民排斥で男尊女卑。

この家族はみんな
移民の使用人を「あなたは家族よ家族よ」と言って
家族のように扱って〝善き白人〟を演じながら
実は心根ではめちゃくちゃ人種差別してた。

差別しちゃいけないもんだと思ってはいるけど、自分たちでも気づかないうちに差別してた。

しかも遺産がマルタに持って行かれるとわかったら急にわかりやすく掌返しするし。

***

これは『ROMA/ローマ』と同じ。

白人家族は先住民の家政婦に「あなたは家族よ家族よ」と言ってたけど
家政婦をこき使っていることに全く気付いていなかった。
家政婦は全く自分の気持ちを正直に家族に話せない。
妊娠したことも話せない。
クビになるかもしれないから。
白人家族は家政婦のフルネームも知らない。保険に入ってるかどうかも知らない。
家政婦が流産した後にも呑気に海水浴に誘う。
「今日は休暇なんだからお仕事はさせないわ」と言ってたけどめっちゃくちゃカバン持たせてたからね!
こないだ流産した女性に!
それでも白人家族は家政婦に「あなたは家族よ家族よ」と言う。
そして、家政婦は白人家族の子供たちが溺れているのに気付いて命を助ける。
で、その夜、海水浴から帰ると、白人家族たちはリビングで一休み。
家政婦は休む暇もなく洗濯をしに、今にも崩れそうな細い鉄の階段を登って屋根の上に上がる。

『ゲットアウト』してるわけです。
人種差別はダメ!だと頭ではわかっている白人の、本人も気付いていない差別意識を暴いている。

特に『ROMA/ローマ』はアルフォンソ・キュアロン監督の半自伝的な物語ってことなので、監督は自戒しているわけですね。
アカデミー賞作品賞受賞作ですよ。

***

さて、
話は『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』に戻しまして。

この家族(つまりアメリカの病理)を暴くのは、移民の看護師マルタの善良さ。

マルタは嘘をつくとゲロを吐いちゃう。

つまり、嘘をつくということは普通「ゲロ吐いちゃうくらいにクソなこと」という意味。

ゲロも吐かずにスルスルと嘘をつける人が国のトップにいたりしますね。。

そいつはクソだと言っているわけです。

***

移民のマルタはその善良さによって、家族の本性を暴きました。

しかし
マルタ「あの家族が心配です。助けるべきよね?」と探偵に聞く。

つまり、このアメリカのクソな部分が心配だし手を差し伸べるべきじゃないか?と言っています。

探偵「私はそう思いませんが、ご自分の考えに従えばいいのでは?」と。

探偵を演じるダニエル・クレイグはイギリス人。

アメリカに手を差し伸べるのは移民のマルタしかいない。

***

犯人はキャプテン・アメリカを演じたクリス・エヴァンス。このギャップがいいですね。
本人ももちろん承知の上かと。

キャプテン・アメリカである自分がアメリカのクソを演じる。

***

ラスト。

移民マルタは遺産相続で手に入れた屋敷のバルコニーから見下ろす。

下には白人家族たち。

白人家族たちは、ずっと下に見ていて「面倒を見るべき存在」だった移民マルタから見下ろされる。

マルタは白人家族を見ながら、マグカップに入った飲み物を口に含む。
マグカップには「私の家」と書いてある。

おわり



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