永遠の門 ゴッホの見た未来(2018年製作の映画)
At Eternity's Gate上映日:2019年11月08日製作国:アメリカフランス上映時間:110分
監督ジュリアン・シュナーベル 出演者ウィレム・デフォー オスカー・アイザック マッツ・ミケルセン ルパート・フレンド
目次
- この記事は豪快なネタバレあります
- 『潜水服は蝶の夢を見る』のジュリアン・シュナーベル監督
- 「ファン・ゴッホ」全体で苗字
- この映画は『ゴッホ:人生』(2011)を元にしている
- 耳切断事件と死とBL感の真相
- 『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』
- ガブリエル(ギャビー/ラシェル)という女性
- ゴーギャンの気持ち
- 彼の死
- この映画では
この記事は豪快なネタバレあります
『潜水服は蝶の夢を見る』のジュリアン・シュナーベル監督
まずはこの映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』は、ゴッホの視点で世界を見ることができた感があって良かったです。
精神の病に苦しむゴッホの社会とうまく付き合えない様子が
〝潜水服に閉じ込められている〟ように見えて
監督誰だろ?と調べたら
『潜水服は蝶の夢を見る』のジュリアン・シュナーベル監督でびっくり。
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「ファン・ゴッホ」全体で苗字
ゴッホの生涯はいまだに解き明かされていない謎が多くて、
ファン・ゴッホという呼び方も日本ではまだ定着していないですね。
「ファン・ゴッホ」全体で苗字だから、ファン・ゴッホと呼ぶようになっています。
名前はフィンセント。フランス語発音だとヴァンサン。
ファン・ゴッホもフランスだとヴァンゴーグになるそう。
でもユーミンみたいなもんで、ゴッホという愛称というか商標登録というか、一般市民が彼を呼ぶときはゴッホでいいんじゃないねえかと思います。
てことで、ゴッホと呼びます。
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この映画は『ゴッホ:人生』(2011)を元にしている
ゴッホほど人気の画家もそういなくて
全世界から彼の人生について興味が止まらない状態なので
重箱の隅を突くような「謎」がいつまでも残っているのだと思いますが、
「1800年代末の売れない画家の人生」だと考えると、相当明らかにされている方だと思います。
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彼の人生のいろんな場面でいろんな説がありまして、
いろんな説がある中でも
この映画は、2011年に発行されたスティーブン・ナイフェとグレゴリー・ホワイト・スミスの『ゴッホ:人生』での新情報を元にしているとのこと。
2018年公開の映画ですから、2011年の〝新情報〟を元にするのは自然な話。
しかし、おそらくこの映画の制作中の2017年に、
さらなる新情報でアップデートした書籍『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』が出てしまった、という可哀想な状況。
でも大丈夫!!
この映画自体がそれほどゴッホの人生について精密に描くことを重点に置いてはいないから。
事実を正確に!というよりは、ゴッホの視点で見た世界、混沌とした世界を体感するような映画なので、
情報が間違っている(かもしれない)ことはこの映画のマイナスには(あんまり)ならない。
そもそも享年37歳のゴッホを63歳のウィレム・デフォーが演じている時点で、表面的なリアルよりは内面的なゴッホを描くことに注力した映画であることは推察できます。
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耳切断事件と死とBL感の真相
しかし、僕は気になっちゃった。。。
耳切断事件と死。
「あれ?ゴッホって耳たぶをちょっと切っただけだったんじゃなかったっけ?」と。
この映画では、耳の6分の5くらいのサイズを切り落としたのはことになっている。
しかも、ゴッホからのゴーギャンに対するBLチックな感情もまっっったく匂わされていない。
さらには彼の死。
自殺と聞いていたけど???
あれ?
僕が知ってるゴッホ情報と違う。。
ていうか、僕はゴッホについてちゃんと調べたことあったっけ?
ゴッホ展に行ったことはあるけど、あとはテレビとかによってふと流れてきたゴッホ情報をなんとなく受け取ってなんとなくわかった気でいただけでは?
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『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』
ゴッホの耳 ‐ 天才画家 最大の謎 ‐ 2017/9/21 バーナデット・マーフィー 著
てことで
『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』読みました。
本読むの苦手なので何日もかかりましたが。
バーナデット・マーフィーさんというかなり特異な人が異常な執拗さでゴッホとその周りの人物とその街を調べ上げたことによって
新たにわかったことがいくつかあった、とのこと。
まず驚いたのは、ゴッホや周辺の人たちの人生あまりにもねじ曲げられてきたこと。
あらゆる場面でそれぞれあらゆる説がまかり通っていて
よりセンセーショナルな方へ盛り上がってきたこと。
僕みたいに大して調べもしない人間は吐き出されて流れ着いてきた情報を
「へぇへぇへぇへぇ」と受け取ってなんとなく記憶してきちゃった。
『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』の真実性については、今後また精査されていくとは思いますが、
まずは、ゴッホ周辺の事実ってのはこんなにも揺れ動いているものだったのかということに驚きました。
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ガブリエル(ギャビー/ラシェル)という女性
『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』によると
ガブリエル(ギャビー/ラシェル)という女性は早朝は広場の店で掃除の仕事をし、夜は娼館でも掃除の仕事をしていた。
ゴッホとガブリエルは挨拶程度の交流があり、ゴッホはガブリエルのことが好きだった模様。
ガブリエルは犬に噛まれ大きな傷を負っていた。
ゴッホは切り落とした耳をガブリエルに手渡した。
切り落とした耳のサイズは上から5分の4くらいのサイズ。
耳たぶは割と残ってるって感じだが、耳としてはほとんど切り落とされてる感じ。(『永遠の門 ゴッホの見た未来』で切り落とされたサイズよりは小さい)
耳の上には動脈があってピューピュー血が出て床やら家具やらが血まみれになり掃除に金がかかったそう。
また、現代の医師によるとカミソリで耳を切ることは「ナイフでバターを切るくらい簡単」とのこと。ゾゾゾ。。。
その耳を
「僕の記念に」とか
「これを大切に取っておいてくれ」とか
「いずれ役に立つから」などと言ってガブリエルに渡した。
ガブリエルは恐怖のあまり気絶。
前年、切り裂きジャック事件が起こっており、切り裂きジャックも耳を切断してたし、この情報はフランスにも広く周知されていた。
そんな中、そもそもちょっとヤバい感じだった男から切り落とした耳渡されたら気絶しても不思議ではない。
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ゴーギャンの気持ち
ゴッホはゴーギャンを焦がれていたけど、あくまでも友人として&画家としてであり、さらには「画家たちが集う家を作りたい!」という目的があってのこと。
ゴーギャンとしては、そもそもゴッホのことをそんなに知らないんだけど
ゴッホの弟テオに借りがあったし
画商とのつながりのためにゴッホとの同居を(かなりしぶりながらも)同意。
そんなに知らない人(ゴッホ)が精神を病んでいきかなり迷惑だしかなり困ったはずだけど、ゴーギャンは割とギリギリまでゴッホと一緒にいた。
耳切断事件で「これはさすがに…」ってな感じでゴーギャンはパリに去る。
が、精神の病で苦しんでいるゴッホをひとり置いてパリに戻ったゴーギャンには罪悪感もあったし批判もされたが、ゴーギャンは十分に親身になってゴッホの面倒をみてきたのではないか。
彼の死
ゴッホの死は自殺。左胸の下あたりを自ら銃で撃ち、2日後に死亡。
というのが
書籍『ゴッホの耳 天才画家 最後の謎』の説。
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この映画では
「ゴーギャンに戻ってほしくて」(ガブリエルを介して)ゴーギャンに耳を渡したことになってる。
つまり耳切断事件のときにはすでにゴーギャンは家を出て行っていたことになる。
実際は耳切断事件のときまでゴーギャンとゴッホは一緒に住んでいた。
ゴーギャンは警察の取り調べを受けている。
ゴーギャンが去ったのは耳切断事件のあとである。
また、
ゴッホは10代の若者2人に銃で撃たれた傷が原因で死んだことになっている。ゴッホは若者に撃たれたことを誰にも言わずに死んだ、と。
これらはかなり大きな違い。
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ゴッホによるゴーギャンへのBL的な感情
ちなみに映画にもゴッホによるゴーギャンへのBL的な感情は描かれていないし
書籍でも考察によってゴッホの同性愛性質は肯定されていない。
もちろんそれは本人にしかわからないものだけどという大前提の上で、割と女性好きだったという言動によりやんわりと否定されている。
さらに、わざわざ書く必要のないことだけれども、
大大大前提としてBL的な気持ちがあったり同性愛的な性質を持っていたとしてもなんら問題ではない。
問題は僕はどこで間違いを信じてしまっていたのか、ということ。
僕はゴッホはゲイorバイだと思っていまして、、
いったいいつどこでそのような情報を受け取ってしまったのだろうか。。。
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ゴッホを支えたテオの物語でもある
僕つねづね、
絵が全然売れない兄(ゴッホ)を
画商として金銭的にも精神的にも支え続けた弟テオの物語が知りたい
と思ってました。
この映画にもテオは割と出てきますが
書籍の方にたっっっぷりとテオの物語が描かれておりまして
とても満足いたしました。
この映画、もしくは書籍をお読みください。
まとめ
自分はこんなにもゴッホのこと知らなかったのかと驚きましたし、、
それなのに大体知ってるような気分でいたことに反省しました。。
こんなにも曖昧な情報や間違った情報をな〜んとなく信じていたことに、気づきもしなかった、ことがちょっと自分でも恐ろしい。。
今後気をつけて生きていきたいと思いました。。
ごめんね、ゴッホ。