[シェルノサージュ 公式HP]
http://social.gust.co.jp/pc/ciel/
いつバグが出てまた進行不能になるか分からないので、取り急ぎシナリオをクリア。
最後のヒュムノスのムービーは圧巻。映像と歌の効果があいまって、「ああ、これがアルトネリコ3のときに実現できていれば」と感じるような、素晴らしいラストでした。シナリオのチープさとかそういうのが全部吹っ飛ぶ出来。
ただまあ、とにかく短かったですね。純粋にメインシナリオのみを抽出すると、おそらく読むのに一時間もかかってないです。テキスト量換算すると一般的なライトノベル100ページ分くらいの感覚。ガストのファンの方にわかりやすく説明すると、『アルトネリコ』シリーズでいうところのコスモスフィアでレベル1~2をこなしたくらいの分量かなと。
とりあえず、客を舐めんのもいい加減にしてください。
本来であれば、まともにプレイできない人がいるという時点で返品&返金対応するのが当たり前ですけど(ゲーム業界はこのへん環境が緩すぎるよね)、百歩譲って、いや、一億歩譲ってあらゆるバグを見て見ぬフリするとしても、この『シェルノサージュ』はひとつの作品としての完成度が低すぎます。
まだ完成してないんだから当たり前? DLCでシナリオを配布することになってるんだから完結してない作品を評価するのはアンフェア? いやいやいや、そりゃ違うでしょ。だってコレは一本のパッケージとして販売してるんだから、キチンと一本のゲームとして楽しめるような内容になっているべきでしょ。
他作品を引き合いに出すのもどうかと思うんですけどね。先日までプレイしてた『FE覚醒』なんかも追加コンテンツに関してはホント眉をひそめるような内容で、DLCの薄っぺらさと販売間隔の短さに辟易としていますけど、あれは本編が一つのゲームとして完結した上でユーザー側に取捨選択を迫るモノになってるんですよ。『シェルノサージュ』みたいなのは、もう、純然たる〝未完成品〟でしかないです。コレ、最初のパッケージを無料で配って、「続きが気になる人は次からお金出して買ってくださいね」って売るタイプの作品ですよ。断じて、最初にお金を払って買わせる〝商品〟であってはならない。
いやね、言っちゃ悪いですけど、『シェルノサージュ』を『FE覚醒』で例えると、第3章までしか入っていないものを〝商品〟として売りつけたようなものです。追加のシナリオが配布されるまでは異伝マップで遊んでねー、みたいな。そんなもん真っ当な〝商品〟と思えるわけねえだろ。オタク舐めすぎ。
DLCとして配布されるシナリオの完結がかなり先になるという情報は出ていたので、ある程度ボリュームが少なくなるというのは予想してましたけど、それでも僕は『アルトネリコ2』で言えばインフェルスフィアにいくあたりまでの内容が描かれるんだと思ってました。ところが蓋を開けてみればラクシャク保養地でクローシェと出会うところで「次回につづく」なわけですよ。これをフルプライスで発売した卑しい根性にビックリ。
ユーザーと一緒に作り上げていくなんて言うとカッコよく聞こえますけど、それって未完成の品物を売りつけてるってだけですからね。個人的に、DLCってのはあくまでも+αの要素だと思っているので、そもそも「DLCがなければ体験版未満の内容」であるなら、そのことをキチンと説明すべきでしょう。
加えて言うなら、一般的なネトゲのようにパッケージが無料のゲームと違い、『シェルノサージュ』は既にユーザーに向けてパッケージを売ってしまっているので、この先どのようなトラブルがあったとしても、最後までDLCシナリオマラソンを走りきらなければ信頼を完全に失いますし、配布(=開発)が遅れるだけでも大ブーイング浴びせられる立場ってことを自覚して頂きたい。
僕がもう一つ驚いたのは、公式で「バグ対応できるまでDLCの開発は凍結」と発表したことなんですが、コレって誠意ある対応のようにも見えますけど実際はそうじゃなくて、バグ対応するのは当たり前だし、続きのシナリオは延期せずに月一ペースで開発するのも当たり前なんですよ。バグを言い訳にして、DLCの配布が遅れるようでは、パッケージを買った人間を裏切ることになります。
だってプレイできるのが当たり前なんですから。当たり前の対応をするために、当たり前のことができなくなっては本末転倒です。最初に金取るってのはそういうことなんですけど、どうもこのあたりの自覚が薄いみたいで困ります。某エロゲでは、未完成で出した挙げ句、追加シナリオの配布に何年もかけていましたが、これと同じことはコンシューマー業界ではできませんよ。もし『シェルノサージュ』がコケたら、もうコンシューマ業界じゃやっていけないということをちゃんと分かってるのか甚だ疑問です。
ちゅうか、ウリであるハズのイオンとのコミュニケーションパートも、マジで同じやり取りばかりなので一瞬で飽きちゃいますからね。しかも進行不能バグの引き金になる行動が多すぎるせいで、ゲームを起動している時間の大半を、イオンの行動を眺めているだけに当てているプレイヤーは相当数に上るでしょう。
あとイオンのキャラに関しても、じわじわと親しくなっているような感じがまったくしない(初期状態からわりと親密度maxの接し方をしてくる)のはちょっと嫌なんだよなあ。「優しくしてくれて嬉しい♪」とか、媚びる台詞さえ喋らせとけばいいやみたいなあざとさが見え隠れして、もう少しプレイヤーがのめり込めるような工夫をして欲しいもんだわ。
つーわけで、商品未満であるという前提で、このレビューサイトに準じた形で採点してみようかなと思ったり。
■オリジナリティ(3/5)
ゲームとしてのオリジナリティは2点。既に『ラブプラス』などが世に出ているため、リアルタイムコミュニケーションの目新しさは薄れている。またシステム面の杜撰さにより「キャラと共同生活をする」のではなく、「キャラの生活を眺めている」、「プレイヤーがキャラの生活リズムに合わせて行動する」面のほうが大きいため、ご大層な謳い文句のわりには前時代的な雰囲気が漂っていて古くささを感じるのが残念。というか、一つの工作にリアルで数時間もかかるようなシステムを採用したやつは本気で頭が悪いと思う。独り言を延々と聞くだけのソフトはゲームとは呼べないだろう。
一方、設定のオリジナリティは5点をつける。いかにしてプレイヤーとイオンのやり取りに必然性を持たせるかという部分はよく考えられており、『アルトネリコ』シリーズで多くのファンを魅了した世界観の設定などには相変わらず目を見張るものがある。
ゲーム部分のオリジナリティと設定のオリジナリティを足して二で割って3.5。大きな期待感からの落差という意味で、心情的に3寄りなので3点をつけた。
■グラフィックス(3/5)
イオンのモデリングは頑張っているが、これまでのガスト作品同様、あらゆる動きに質感がないのは非常に残念。そろそろ地面を滑るように「歩行もどき」で移動する3Dキャラはどうにかして欲しい。上記した『ラブプラス』の他にも『フォトカノ』など、3Dモデルでも人間らしい動きを追求した作品が増えてきている中、原画の再現度だけで勝負するのは些か厳しいかもしれない。一刻も早く次のステージに登ることが望まれる。
またイメージボードなどから感じ取れる独特の雰囲気を、ゲーム内で再現できているとはお世辞にも言い難く、コミュニケーションパートにおける室内のモデリングには目をつぶるとしても、シナリオパートにおける背景のモデリングはチープの一言。また「イオン作るのでいっぱいいっぱいでした」と言わんばかりに、他のキャラのモデリングがショボいのは如何ともし難い。特にター坊の母親くらいは、モブと違うモデリング作ってあげましょうよ……。
しかしながら、OPムービーとヒュムノスのムービーは、他の不足を補って余りある、一見の価値アリの出来。このクオリティにリアルタイムのモデリングを追いつかせることが、今のガストにとっては急務だろう。
■サウンド(4/5)
曲は素晴らしい。
曲数が少ないのは大きなマイナスだが、PSVITA本体のスピーカではなく外部スピーカなどで聞くことをお薦めする。より一層サウンドの雄大さが感じられるだろう。
またキャラクターのボイスは、メインヒロインのイオンを含めてかなりそれぞれのキャラクターに合っていた。ここでもモブキャラの適当さが足を引っ張っていたが、そのへんは『アルトネリコ』からの伝統なんだろうか?
■熱中度(2/5)
致命的なバグによりモチベーションが削られたというのを見て見ぬフリしたとしても、コミュニケーションパート、シナリオパートはどちらものめり込むほどの内容ではない。コミュニケーションパートは同じやり取りの繰り返しでゲンナリするし、シナリオパートは前述したように質的にも量的にも到底満足できるものとは言えず、記憶の修復作業そのものが単純操作なので熱中を促すようなものではない。
また個人的にはコミュニケーションパートとシナリオパートの関わりが希薄に感じるのが何よりも大きな問題。イオンに感情移入して欲しいと考えるのであれば、シナリオパートの進行に応じてコミュニケーションパートの内容をもっと大胆に変化させるべきだったと思う。シナリオパートで特定のキャラが死んでしまっても、イオンは夢セカイから戻ってきたときに短い感想を述べるだけで、次の瞬間には「デートの約束しよっ、えへへっ」とか笑ってたりする。こんなのはホラーを見ているに等しい。一気に冷めるよ。
■満足感(1/5)
前述の通り。質的にも量的にも到底商品レベルではない。
第一の扉の舞台になる万寿沙羅の街にしたところで、描写不足すぎてイオンがあそこで生活していたというふうにはまったく思えず、最後までどういう場所なのかピンとこなかったというのが、今作の薄っぺらさをよく表している。
イオンの記憶修復という設定上、情報が断片的になるのは演出の一環だとも思うが、それを踏まえてもキャラや街に思い入れを抱くことができないような状態が正常なのだろうか? 綿密な設定がウリの一つになるはずのシリーズなのに、設定の説明の仕方に手抜き感が漂うのは本当に残念でならない。
■快適さ(1/5)
ゲームコンセプトを考えた場合、セーブデータを初期化して最初からプレイすることを促すようなサポートは最悪。コミュニケーションの積み重ねがウリだと考えているなら、たとえ一時的な対処であっても、口が裂けてもあんなこと言えなかったと思う。
あと、何をするにもネットに繋ぎにいく仕様はハッキリ言って大失敗。シャール関連のコミュニティを重視したいという思惑は賛否ありそうだが、仕様の練り込みが足りないせいで、いちいちローディングに手間取るのがストレスにしかならない。
また、繰り返しになるが、イオンの生活サイクルが24時間単位というのはやはり異常であると言わざるを得ない。リアルの5~10分でできることがメールチェック程度というのは、携帯して家の外でプレイすることを全く想定していないと思うのだが……。これで「3Gなら表でもイオンちゃんとコミュニケーション可能!」とか煽っていたのだから失笑してしまうなあ。
■総合(30/100)
近年の一部のゲームメーカー(特にエロゲ系)に見られる「客ではなくファンを相手に商売する姿勢」にはいい加減辟易としてます。広告宣伝にだけ金かけて売り逃げする詐欺まがいのやり方にはもうウンザリ。
なお『シェルノサージュ』に関しては、今後の進展を見守っていきたい感じ。なんだかんだで毎月(もう無理そうだけどね)新しいヒュムノスを聞けるというのは魅力的なので。