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【ラノベ】千の魔剣と盾の乙女

2011-05-16 | ライトノベル
千の魔剣と盾の乙女 (一迅社文庫) 千の魔剣と盾の乙女 (一迅社文庫)
価格:¥ 670(税込)
発売日:2010-12-18

 読了。

 おっもしれぇえええええええ!!!!!!

 いやー、またしても自分好みの作品に出逢えました。この「バッチリ趣味に合う作品に出逢えたときの喜び」は何物にも代え難いよなあ……。こういう出逢いこそが、僕にとってすんばらしいカタルシスをもたらしてくれるわ。マジで脳汁出る。幸せ。

 で、この作品、実は先日読んだ『魔弾の王と戦姫』の作者である川口士さんの手によるものなんですが――やばいやばいやばい! ひょっとすると、作者買いできるレベルで、この人と波長が合っているかもしれないのだわ!
 ちなみに、『魔弾の王~』の感想を書いたとき、コメントで「川口さんの他の作品も面白いですよ。『星図詠のリーナ』は世界観やキャラがしっかりと練り込まれているのでお薦めです」と教えて頂いており、コレが購入のきっかけになったのは言うまでもなく。
 なお、どうして件の『星図詠のリーナ』ではなく『千の魔剣と盾の乙女』のほうに食指が伸びたかというと、あらすじを調べた感じ「ああ……萌豚の僕は、まずこちらを買うべきだろうな」と判断したから。より具体的に言うと、女主人公より男主人公の物語を欲していたということと、完結(敢えて打ち切りとは言わない)済みの作品よりも現在進行形で続いている作品のほうに惹かれたという感じで。
 その判断は結論から言うと正解だったというか、たぶん川口さんが書いたものはどれも面白いんだろうなと思ってしまったというオチ。上でも書きましたけど、今後はよっぽど設定が好みから外れていない限りは作家買いしようと心に決めました。や、作家としての力量を読者に信頼させるってスゲエことだと思います。まあコレって、落とされた側(僕)が言うと、自分がちょろいことを認める発言でしかないんだけど
 川口さんの作品って、なんかこう、設定をひとつ取っても丁寧に作り込まれていてひと味違う感じがするんですよね。で、それよりも何よりも重要なのは、物語の進行ペースだったり、キャラクターの持つ価値観や言動だったりといった、いわゆる「作品の土台」を成すものがめちゃくちゃ好みに合うって感じ
 ぶっちゃけ、メインキャラの言動にイラッとしねえのよね……。
 わかりやすい例を挙げると、『千の魔剣と盾の乙女』のメインヒロイン(ですよね?)のエリシアは、かなりテンプレなツンデレキャラで、主人公のロックに好意を寄せているのはバレバレなのに素直になれず、憎まれ口を叩いたり、時に暴力をふるったりします。ツンデレという属性が一世を風靡してからは珍しくない設定です。
 で、こういうのって気にならない人は気にならないんでしょうけど、僕は「ツンデレだから(あとでデレるからor主人公に好意を持っているから)というのを免罪符にして、どれだけ理不尽にふるまおうと作中で言動について糾弾されないツンデレヒロイン」が大嫌いなのですよ。このへんは完全に個人の好みなので、人にとって許容範囲は大きく異なると思うんですが、最近だと『緋弾のアリア』のアリアとかがわかりやすいNGの例です。僕にとっては。
 川口さんは、このツンデレヒロインを動かすときのバランス感覚がホントに絶妙。エリシア自身が反省したり、謝罪したりすることもあれば、他のキャラがたしなめることもあったりで、テンプレ的なツンデレヒロインでありながら、不愉快に感じることもなく、魅力的に描けているんですよね。こういうのは、人間関係の押し引きを書くのが上手いとでも言えばいいんでしょうか。
 とまあ、そんなわけで、キャラを書くのが上手い作家さんは信頼に値するということで。
 以下雑感。

・「大陸が魔王率いる魔物に半壊させられたので、人々は大陸から都市を切り離した(魔物は海を渡ることができない)。その都市は海流を漂っており、都市内部と周囲に点在する島々で人は生活している。また、年に一、二度、都市は大陸と接する時期があり、魔物たちはそこを狙って都市を攻め滅ぼそうとしているので、人々は戦力を集めて防衛戦を行っている」という世界観設定の時点で上手い。ワクワクする。

・ロックがホルプを手に入れる経緯は些かご都合主義にすぎる感はあるが、敢えて突っ込むほどではなかった。キャラ描写でストレスを感じないと、このあたりの許容範囲が広がるのは単なる贔屓目ではないはず。1巻の段階ではタイトルの<千の魔剣>=ホルプということはわかるが、<盾の乙女>=エリシアに関しては未だに本領を発揮していないっぽいので、今後の展開に期待したい。

・一つだけ難があるとすれば、現段階でキャラクターの戦闘能力がどれくらいなのか、という点についてピンとこないというところだろうか。敵も味方もトルクの色でおおよそのレベルがわかるというのは親切な設定だが、ぶっちゃけホルプを持たない状態のロックの強さがハッキリしないんだよなー。師匠が金トルクとタイマンでやりあえるってのはわかったけど、実際のところホルプ抜きのロックの実力がどの程度なのかというのは明示されませんでしたし。序盤の銀トルクにすら殺されかけるってのがホルプなしの実力だとしたらちょっとガッカリですし。でも周囲の口ぶりからすると、明らかな実力不足ではないっぽいから、このへんも今後に期待ってところだろうか。

・ハイ、ハーレム路線頂きましたー! 僕にとってはご褒美です! エリシアとフィルだけでもヨダレが出そうなのに、これからヒロインが増える予兆があるのは嬉しい限り。『IS』みたいになることもなさそうだしな!

・どうも川口さんは絵師に恵まれないというのが通説らしいけど、このアシオさんの絵はなかなか好みですよ? エリシアが脱ぎ役になるのが嬉しい程度には気に入りました。ニーソに乗ってるふとももの肉最高。わかってるわ、アシオさん。いやまあ、表紙でパンツ丸出しなのはどうかと思ったけど

 2巻も購入済みなので読むのが楽しみですということで一つ。

 ちゅうか僕もそうですけど、『魔弾』で川口さんを知った読者が多いので、ここのところ今までになく注目が集まっているらしいです。これまで打ち切りの憂き目にあうことが多かった作家さんについに日の目が――!! 的な喜びを抱いているファンの方が多いらしいです。
 よーし、皆、買おうぜ! そして思う存分ヒロイン追加して頂こうぜ!
 身も蓋もない話、上で書いた理不尽なツンデレヒロインを初め、インパクト重視で頭オカシイみたいなキャラのほうがウケがよかったりするんですよねー。逆に、そういうふうにならないように気を遣うと地味になってしまったりすることも多くて、それはキャラ造型だけではなく、物語の構成そのものにも言えることだったりして。ですので、川口さんがこれまであまり注目を集めなかったというのは、少し納得する部分もあります。パッと見の派手さとはほど遠い作風の作家さんなので。
 だけど、『魔弾』で脚光を浴び始めたからな! コレで一つアニメ化してブレイクでもすりゃあ一気に人気作家さんになる可能性もあるしな!
 人気と実力を兼ね備えた作家さんって稀有なので、すっげー今後が楽しみです。
 あー、『サクラダリセット』ももっと人気出るといいなあ。