ブログよりも遠い場所

サブカルとサッカーの話題っぽい

【サッカー】ありがたし!

2011-02-12 | サッカー・アルビレックス新潟

[ユニフォームスポンサー(背中)に株式会社コメリ決定のお知らせ]
http://www.albirex.co.jp/tools/page_store/news_3252.html


 いやっっほおおおおおおおおおおおおうううう!!!!!

 最近、代表の試合中に流れるCMなどでコメリの名前を見かけるようになったと思ったら、あれが前振りだったとはなあ。サッカー人気が再燃しはじめているので、アジア戦略などに使えそうだと判断したんでしょーか。

 こりゃACL出るしかないな! 
 「今年こそ降格するんじゃ?」とかビビってる場合じゃねーな!(フラグ)

 なにはともあれ、大きな親会社が母体ではなく、常にお金がなくて戦力維持すらままならないチームにとって、大きすぎるサポートだというのは間違いないでしょう。本当にありがたい話です。

 あー、早く開幕しないかな!


【SS】チョコが贈られてくる前に

2011-02-12 | 二次創作・『アマガミ』SS

 一度でも贅沢を覚えてしまった身体を、再び厳しい環境に追い込むのは容易なことではない。
 僕は常々そう思っている。
 具体的には。
 学校から帰ってこたつの中でぬくぬくしていたら母親に買い物を申しつけられ、妙にじゃんけんの強い妹が出した『ぱー』に『ぐー』で対抗した挙げ句、冷え冷えとした風の吹きすさぶ街にコート一枚を羽織って出かける羽目になるとか。
 そんな感じで。
「うう……なんで僕がこんな目に……」
 なんでもなにも、じゃんけんで負けたからなんだけど。
 それにしたって、味噌と自分の子供を天秤にかけて味噌を取るなんて、人の親とは思えない所業だと思う。たしかに晩の食卓に味噌汁が並ばないのは嫌だけどさ……。
 暖かい我が家を後にして早十数分。
 ようやく商店街に辿り着いた僕は、そろそろ寒いと口にすることさえ億劫になってきていた。
 というか、口を開いたら、そのぶんだけ体温が外に逃げていきそうな気すらする。
 こたつの温もりを知る前には耐えられた冬の空気が、今はあまりにも冷たく、厳しい。
 文明の利器に飼い慣らされた僕の身体は、著しく環境への適応力が低下しているのだ。
「……ん?」
 ふと足を止める。
 商店街の店先に、何やら人だかりができていた。
 きらびやかなイルミネーションが施されているからか、真冬の空の下だというのに、その一角はまるで縁日のような賑わいを見せている。男女比は1:9で女子が多い。高々と掲げられた立て看板には「Happy Valentine」と書かれていた。
「…………」
 バレンタインか……。
 なんというか……こう……上手く言葉にできない焦燥感があるよな……。
 最低限、去年と同じ数だけ貰えると仮定して美也と薫から一つずつ……。
 ちなみにチロルチョコ一個だろうが、ポッキー一本だろうが、等しく「チョコ一つ」と数えるのは言うまでもない。そして、たとえ一ヶ月後に高利貸し顔負けの負債を支払うことになるとしても、バレンタインの成果がゼロになるよりはマシだというのも言うまでもない。
 それにしても、女子の一団に混ざって、おそらく彼女と一緒にチョコを物色しているであろう男の姿は、本当に忌々しいな。……決して嫉妬ではないぞ!
 そもそもプレゼントは何が貰えるか分からないからワクワクするのであって、渡す側と渡される側で事前に談合するなんてナンセンスだよ。……絶対に嫉妬ではないけど!
 勝ちが決まっている勝負がつまらないのと同じで、貰えることがわかっているチョコレートなんて邪道中の邪道だ。……これが嫉妬なわけがないじゃないか!
「――先輩?」
「うわあっ!?」「きゃっ!?」
 いきなり背中から声をかけられて、飛び上がってしまった。
 僕が驚いた声で相手も驚いたのか、可愛い悲鳴も聞こえた。
 慌てて振り向いた先には、見知った後輩の顔。
 ダウンのコートを羽織った七咲が、年季の入ったエコバッグを片手に目を瞬かせていた。


チョコが贈られてくる前に


 先にお見合いから抜け出したのは七咲だった。
「お、驚かさないでください、先輩」
「それはこっちの台詞だよ……」
「う……すみません。そんなに驚くとは思わなかったので」
 自分の呼びかけが原因だと気づいたのか、七咲はちょこんと頭を下げる。
 ……よく考えると。
 後輩の女の子に声をかけられて飛び上がったうえ、相手にそのことを謝らせるって、男としてかなり情けない気がする。
「い、いや、べつに構わないよ」というわけで強引に話題を変える。「それより七咲はどうしてこんなところに?」
「私は買い物です。夕食の」
 まさか僕の気持ちが伝わったわけではないだろうが、七咲は空気を読んで話についてきてくれた。この切り替えの潔さは、さすが体育会系って感じだ。偏見かもしれないけど。
「そっか。実は僕も――」
「――先輩は、こんなところでも妄想していたみたいですね」
「えっ?」
「聞こえてましたよ。バレンタインがどうとか言ってましたよね」
 !
 しまった……ひょっとして声に出ていたのか……!
「い、いや、僕には何のことやら――」
「まあ、たしかにあんな光景を見たらあてられてしまうのもわかりますけど」
 僕の言い訳を遮って、七咲は横目で「Happy Valentine」に群がる一団を見やる。言外に「言い繕おうとしても無駄ですよ」という意思が込められた見事なタイミングだった。これでは言い逃れできそうにない。
 ど、どこから聞かれてたんだろう。
 というか、僕はどれくらい声に出していたんだろう。
 まさか七咲に訊ねるわけにはいかないし……参ったな。
「……ところで」しかし意外にも、七咲はまったくべつの話題を振ってきた。「先輩にはアテはあるんですか?」
「……あて?」
「もう、ちゃんと話についてきてください。アテっていうのは、あれです。その……先輩はバレンタインにチョコを貰えそうかどうかって聞いてるんです」
「ああ、そういう……って、ええっ!?」
「どうしてそんなに驚くんですか?」
「え……あ……どうしてだろう……」
 とりあえず驚いてはみたものの、冷静に聞き返されると自分でもよくわからなかった。
「うーん、七咲がバレンタインの話をするのが意外だったから……かな?」
「……なるほど」
 おや?
 なんだか七咲の周囲の気温が心なし下がったような……。
「つまり先輩は、私にはバレンタインみたいな女の子らしいイベントが似合わないって言いたいんですね。ええ、そうですね。チョコをあげるといっても? 父と弟くらいですし? そんな私にいきなりバレンタインの話題を振られたら先輩も困っちゃいますよね」
「い、いや、七咲! ちょっと落ち着いて!」
「はい? 私のどこが落ち着いてないんです?」
 全部だよ、とはもちろん言えなかった。
 ダムが決壊したような勢いでありながら、いつもの調子で淡々とまくしたてる七咲の迫力を見て、なお突っ込もうなどという蛮勇を僕は持ち得ていない。
 見れば七咲は、さらさらした黒髪のかかる頬をぷうっと膨らませ、上目遣いで僕を睨みつけている。
 どうやら僕は地雷を踏んでしまったらしい。
 おそらくバレンタインの話をするのが意外だった、という部分だ。そんな意図はなかったのだが、どうも七咲は「女の子らしいイベントが自分に似合わない」という意味で受け取ったらしい。
「あ、あのさ、七咲?」
「なんですか?」
 マシンボイスのような硬い声音に怯みそうになるが、下腹に力を入れて立ち向かう。
「七咲は十分女の子っぽいと思うよ? 今だって、ほら、夕食の買い物にきてるわけだし、家の手伝いをするなんて、いかにもよくできた娘さんじゃないか!」
「……先輩は何をしに商店街にきたんですか?」
「え……? いや、僕は母親に頼まれて味噌を買いに……」
「それって先輩も夕食の買い物をしてるってことですよね。男の子なのに」
「う、うん」
「じゃあ、夕食の買い物をするのと女の子っぽいかどうかは関係ないってことですよね」
「うっ」
 あっさり論破されてしまった!
 困ったな……今の気分は、さしづめ証言台に立つ被告といったところだろうか。
 腕利き女検事である七咲の前で僕は丸裸にされてしまうのか……。
 女検事の七咲の前で丸裸……。
 悪くないかも……。
「先輩。顔が変態になってます」
「ご、ごめん」
 ジト目で射抜かれて我に返る。
 ついついスーツ姿の七咲を妄想してぼーっとしてしまった。
 クールな七咲には、ああいう格好が似合うよな。
「と、とにかくさ、僕はべつに七咲が女の子っぽくないって言いたかったわけじゃなくて、七咲みたいな大人びた子がああやってチョコを買おうとしている姿が、なかなか想像できないって思っただけで……」
「大人びてる……ですか。それって褒めてます?」
「も、もちろんだよ! 美也のやつにも少しは見習って欲しいくらいさ!」
「でも私、この前美也ちゃんたちと一緒に、あそこのお店に行きましたよ」
「え、ええっ!?」
 まさか僕は再び論破されてしまうのか!?
「いちいち驚かないでください」七咲は怒っているというより、少し拗ねた表情でため息をこぼす。「そういうのが似合ってないのは自分でもわかってるんですから」
「……いや、なんだか話の本筋がよくわからなくなってきたけど、七咲は誤解してるよ。さっき驚いたのに他意はないというか……七咲だって、いきなり『バレンタインにチョコをあげる相手がいるのか』なんて聞かれたら驚くだろ?」
「――っ」七咲が軽く身をすくませ、視線を泳がせる。「た、たしかにそうですね……」
「それに……」力強く言い放った。「僕は七咲のことを女の子っぽくないなんて思ったことは一度もないぞ!」
 そうだ!
 これだけはしっかり言っておかないと!
「そもそも僕は七咲の――」
「せ、先輩! わ、わかりましたから、その、周りの人が見てます……!」
 ハッとして周囲の様子を窺うと、たしかに僕たちは通行人の注目を集めていた。
 買い物客のピークは過ぎていたが、そろそろ仕事帰りの会社員が増え始める時間帯だ。寄り道をしている同年代の学生も多いし、元々人通りが絶えない商店街なので、こんなふうに騒ぎ立てたら悪目立ちするのは当たり前だった。
 これから熱弁をふるおうと振り上げていた拳をおろし、じろじろとこちらを眺めている人たちに「何も問題ありませんよ」と愛想笑いを振りまき、大袈裟に咳払いをして仕切り直す。
 ふう……危ないところだった。
「七咲が止めてくれなかったら、僕は七咲の競泳水着姿と体操服姿とジャージ姿の素晴らしさを大声で叫ぶところだったよ……」
「本当に止めてよかったです」
 心の底から安心しきった声で七咲が言う。一連の流れで毒気が抜けたのか、七咲の表情には柔らかさが戻っていた。それを見て、僕もひと安心。
「すみませんでした。なんだか変に突っかかってしまって」
「いや、僕のほうこそおかしなこと言っちゃって、ごめん」
 お互いに顔を見合わせて、どちらからともなく笑い出す。
 ひとしきり笑うと、七咲はほっそりとした人差し指で目元をぬぐってから、
「それで結局、先輩はアテがあるんですか?」
「そ、そうだな……」
 最初に話が戻ってしまった。
 ついにと言うべきか、ようやくと言うべきか、どちらなのか僕にはわからないけど。
 余計なことを考えると、また面倒なことになりそうなので、正直に答えるか……。隠すようなことでもないしな。
「去年は美也と薫がくれたから、たぶん……きっと……おそらく……今年も二つは貰えるんじゃないかなあ……」
 というか、貰えるといいなあ……。
 こんなことを考え始めたら、またさっきと同じやるせない気持ちがぶり返してしまった。
 やっぱりバレンタインには独特の焦燥感がある。これは絶対、間違いない。
「……美也ちゃんはともかく、棚町先輩ですか」
 気分の落ち込んだ僕を尻目に、七咲はなにやら腕組みをして考え込んでいた。肘の少し手前にエコバッグをぶら下げた格好が様になっている。前にかなり家事をこなしているという話を聞いたことがあるし、買い物なんて手慣れたものなのだろう。
「で、七咲はどうなんだ?」
「はい?」
 とぼけた様子で首を傾げる七咲だったが、これだけは聞いておかねばなるまい。
「だ、だからさ、七咲はバレンタインどうするのかなって」
「どうするかっていいますと?」
「だ、だから、誰かに……」
「誰かに?」
「その……チョコを渡したり……とか」
「チョコを?」
「…………」
 って。
 さっき十分に笑っただろうに、七咲は僕から目を逸らして笑いを堪えていた。
 よく考えれば、七咲がこんなに察しが悪いわけないじゃないか!
「わ、わかってるのにはぐらかしてるだろ!?」
「いいえ、わかりません」
 明らかに僕をからかっているくせに、まったく悪びれず、とても楽しげに七咲は笑う。
「お、おい、七咲……」
 食い下がろうとすると、七咲は空いたほうの手を差し出し、
「先輩の想像どおり、私はバレンタインとは縁遠い人生を送ってきましたからね」
 ちょこんと突き出した人差し指で、僕の唇のあたりを押さえて、
「でも知ってました?」
「な、なにを?」
 私ってあまのじゃくなところもあるんですよ、と。
 その日一番の笑顔で言われてしまい、僕は何も言い返せなかった。


 ……という話を、帰ってからこたつで丸くなっていた美也に話したら「砂を吐くどころかチョコレートでも吐きそう」などと、似つかわしくない凝った言い回しで撃退されてしまったというのが事の顛末。
「みゃーは思うんだけど、人間ってさ、一度でも贅沢を覚えちゃうと、それが忘れられなくなっちゃうからダメだよね。にぃにも気をつけてよね」
 妙なところで、兄妹だなあ、なんて実感したりもして。


おしまい