バカとテストと召喚獣9 (ファミ通文庫) 価格:¥ 588(税込) 発売日:2011-01-29 |
読了。
今回はめちゃくちゃ面白かったです。いや、ホント久しぶりに『バカテス』を楽しめた感じ。
というのも、まず単純に物語を楽しめたというのが一つ。
この作品ってラブコメと「試召戦争」が二本の柱になっていますけど、最近ラブコメがマンネリになってきているせいで、それ単体で物語を引っ張るのがキツくなってしまってる感がありましてね。だから自然と「話作りにおいて試召戦争が請け負う割合」ってのが大きくなっていて、一冊丸々使って描かれた試召戦争そのものが面白かったってのが、9巻を楽しめた一番の理由でした。
で、1巻からこっち、長々ともったいぶっていた本格的な試召戦争がようやく始まったわけですが、相手役の奮闘もあってやたらと盛り上がる展開だったなと。これまでは雄二の策が単発で決まることが多くて、どちらかというと味方側(Fクラス)の起こすイレギュラーへの対応に追われる形になっていましたけど、今回はCクラスがこれまでの経験を活かして裏をかこうとしていたのが好印象です。越える壁は高ければ高いほど勝利のカタルシスは大きくなるってもので。
や、ホント状況が二転三転するのは面白かったし、そのたびに「次はどういう対応策を打つんだろう」ってのはワクワクしたし、別行動をしていた明久と雄二の思惑が最後にカッチリとハマるのは燃える展開でした。あとがきで作者の井上さんも書かれてましたが、二人がハイタッチする挿絵は出色の出来。ラノベには珍しく男キャラオンリーの絵なのに、9巻ベストの一枚と言ってもいいかもしれない。ちゅうか、毎回ラノベの表紙&挿絵としては最高レベルの仕事をこなしてる葉賀ユイさんはスゴイ。井上さんとは良いコンビだよなあ。
そして今回はギャグもめっちゃ面白かったというのが二つ目。
正直読みながら三回ほど吹き出しました。明久の書いた遅刻の理由「青春」で一度。翔子の書いたラブレターで一度。ボイスレコーダーを使った<内臓><が><飛び出して><います>→<だから><ユカ><が><汚い><です>のコンボで一度。このへんのネタは「絶対にここで笑いを取りにくる」ってわかってるのに笑っちゃったんだよなあ。キレのいいギャグが戻ってきたみたいで何よりです。
最後の三つ目は、ヒロインたちの暴力描写がなかったということ。
まあ暴力をふるおうにも明久が別行動だったので、瑞希や美波との絡み自体がなかったというだけなんですけど。この「別行動」というのが何気に大きくて、副次的な効果があったというか、明久&瑞希&美波と雄二&翔子の組み合わせが作中で描かれないってのがめっちゃ新鮮でした。こう言っちゃなんだけど、好きな相手と絡まないとマトモなんだよな、『バカテス』のヒロインって。瑞希や美波はクラスの勝利のために恋愛脳を封印しているのが好印象だったし、翔子は明久に率先して協力してくれるのが好印象。読みながら思わず「こういうのが読みたかったんだよ!」と膝を叩いてしまったわー。
特に明久と一緒に行動していたAクラスの面々は、翔子に限らず良い味を出していて、良い意味でのキャラの掘り下げが進んだ感じ。「ホモ!」というキャラ立てしか記憶になかった久保君も普通にいい人でしたし、「エロ!」というキャラ立てしか記憶になかった工藤さんもウブ可愛かったですし、「ふじょし!」というキャラ立てしか記憶になかった優子も明久フラグ立ててましたし、あまりにいい人たちすぎて妙な負けフラグが立ってるように見えて不安だったほど。
ホラ、スポーツものでよくあるじゃないですか。序盤で因縁のあった主人公のライバルチームが「決勝で会おうぜ!」とか言いつつ、もっと強い相手の噛ませ犬になる展開。あんな感じで、「実は口出ししていた上級生の狙いは、AクラスがBクラスに敗れることだった」みたいなまさかのオチが待っていると思ったんですけど、さすがにそこまで怒濤の展開にはならなかったですね。
とまあ、そんな風に楽しめた中、唯一引っかかったのはBクラスの存在。ぶっちゃけ、明久たちが立てていたアレコレの対策って、Bクラスではなく根本君という個人を対象にしているならわかるんですけど、さすがに個人の色恋沙汰にクラスメイト全員を引き込めるとは思わないんだけどなあ。もっと言ってしまうと、根本君にそんな人望があるとも思えない(しかも彼は以前同じような形でクラスを巻き込んで失敗してる)んですけど、このへんって前の巻に説明ありましたっけ。学校全体にFクラスがマークされていて、Fクラスを倒すためだったら共闘も辞さないみたいな形になってるってことなんじゃろか。
なにはともあれ、今回は面白かったですということで一つ。