光文社文庫 初版:2002年3月
(初出は1984年有楽出版社刊)
遠い町の古本屋で店主にいぶかしがられながら購入。
新古書店で官能系の文庫をたまに見かけるが、
状態の良いものはぽちぽち買っていた(汚いのはきもちわるい…)。
ただ「密通」で懲りたので読むまでにはいたらない。
今回は道中電車待ちの時間が長かったのでしかたなしにページを開いてみた。
すると…あら、大胆なタイトルの割には青春小説のおもむき。
コバルトシリーズのおとな版か?
裏表紙には
「自分の気持ちと裏腹に猛り狂う欲望を、冷静に見つめつづけた著者の珠玉集」
とアオリがあるが、行為についてのハードな描写はそれほどありません。
というわけで電車の中でこそこそ読んでおりました。
20歳前後の男女が主人公の16の短編集で、
ストーリーは…
・童貞の大学生を手ほどきしようとする人妻
・いとなみを見学したい、または「半分体験したい」処女の女子高生
・プレイボーイに自ら抱かれに行く女の子
・乱交および夫婦交換
などなど。
…
ありえへん。
いつもノートを片手に、思ったことを書きながら読書しているのだが、
ノートには「ありえへん」の文字がいくつも…。
一編読み終わるたびにため息…。
都合のいい女の子。
快楽をおぼえ、フリーセックスに興じる女の子。
それを(もちろん)喜んで受け入れる男ども。
あのコバルト系の清純なカップルはどこにいってしまったのか。
ターゲットが男性にしぼられてるから、こうなるのだろうか。
これが男のロマンなのだろうか。
…わからん。
私の青春がまちがっていたのですか。
これはまさに娯楽作品だ。
コバルト系はヴィジュアルではなく文章を味わいたいものだけど、
これは、まんがでもいいかな…という感じ(趣味で描くか)。
そして、精神より肉体的な「好奇心」に重点が置かれているのも大きな違いだと思う。
そりゃあ、いつまでも清くはいられない。
そう、もういいかげん我慢しなくたっていいじゃないか!
そう、我慢しなくていいんだ!やっちまえ!
そこで発動するのが好奇心だ。
作品の女の子は、考え方によっては「純粋に」好奇心をあらわにしている、という言い方もできるだろう。
しかし、好奇心は実体験によって一気に消滅する。
期待は当たりか、はずれか、どっちかだ。
キスまでが恋愛の醍醐味とはよくいわれることだが、
その次のプロセスに対するドキドキ感は、多少あったとしても、
初めての「その時」にはおよばない。
それは、それがすなわち「完結」だったからかもしれない。
…
さて、「ありえへん」と何度も書いてきたが、最後に収録された「女の意地」は、
作者の学生時代「当時」の実話らしい(で、誰の?)。
いずれにせよ、私とは違う世界のお話だ。
富島ワールドからつまはじきされたような感じにさびしさを覚えつつ…。
まあ、こんな感想じたいが蛇足なのだ。
つみあがった「女人追憶」…まだ読んでないけど、
感想「ありえへん」だけかもな。
蛇足続けるのか?
いいじゃんか、「私的実験室」なんだからさ。
(ちなみに表題作はショートサスペンス?でした。)
2010年3月23日読了
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