昭和56年 私は22歳の時、付き合っていた彼女がいながら他に好きな人ができてしまいました。ここまでは・・どこにでもよくある話です。以前にもブログに書きましたが彼女は決して容姿は良くありません・・でも本当に穏やかで明るく女性らしい柔和さもあって、その性格に惚れていました・・でも・・男って美人に弱いのです。消費者金融のア○ムに転職した後、奈良支店から異動で来た、その鈴本さんは本当に美人で小柄・・一緒に歩いていると何度・・すれ違う男が振り返るか・・私は、その気分良さもあったかも知れません。すると・・ある日の仕事帰りに鈴本さん(仮名)と食事をしてると『私・・今、つきあってる人おるねん・・でも・・もうアカン・・』おもむろにいい出す鈴本さん・・『Yさんにも彼女いるんでしょ?どんな彼女??』お互い・・浮気をしていたのです。鈴本さんは時折、会社に電話が入る私の彼女の電話を受けていて電話の雰囲気から”付き合っている”と思ったとのことでした。それとなく自然にお互いの彼・彼女の話になったのです。『ふ~ん・・ご両親に大反対?銀行一家やねんね。相手がサラ金に努めてるとなれば反対もするかもね』鈴本さんは酔っぱらったせいもあって思ったことをズバズバ言い始めたのです。『そんな彼女と別れて私とどうです?私も彼とは別れるし・・』驚きました。鈴本さんの方からの言葉に一瞬、絶句したのは私です。『ねぇ・・どうなんですゥ??』正直、鈴本さんの美貌に惹かれ彼女にすれば・・男として満足度はアップ・・社内でも評判の美人で何人かの男性も狙ってると噂も聞いていました。私も銀行一家の彼女には正直、つり合いもとれてない・・劣等感もあったのです。『ホンマに思ってるんか?俺と付き合うの?』そう返した私に対して『本気ですよ!じゃ・・今から、ここ出て・・』ここは京橋の、とある居酒屋でした。私達は京橋の商店街を歩き国道一号線を渡って路地に入りました・・・ネオンの綺麗な建物に吸い込まれるように・・もう私は鈴本さんの虜になっていたのです。ベッドの上で『あなたの彼女に会わせて!』私は、また驚きました。『え?』・・・鈴本さんは自分の目の前で別れる宣言をしてほしいというのです・・さすがに、それは私には出来ない・・そう思ったのですが『本当に私、一人を愛して!』後になってわかったのですが、このとき、とっても複雑な女の心理があったようです。私も鈴本さんの彼から奪うには・・彼女と鈴本さんを会わせるしかない・・そう判断してしまったのです。この時の決断は生涯の後悔となって55歳の現在になっても昨日のように記憶が呼び戻され彼女の心を大きく傷つけたことで今でも私は思い出すたびに心の中で詫びるのですが・・人の心を傷つけることは自分に、どう跳ね返ってくるのか身をもって知ること、そして30年以上、自分自身の心にも深い傷を残し痛み続けることがわかりました・・そして、私は彼女にデートを誘うかのように彼女の勤める銀行へ電話をしたのです。電話の向こうで嬉しそうに答える彼女。『じゃ、今度の日曜○時にね』待ち合わせ場所は彼女の自宅近所のバスの停留所でした。そして日曜日、鈴本さんを助手席に乗せて目的地へ。JR高槻駅から山側へと車を走らせると南平台の住宅街が見え始め・・そこから少し傾斜がきつくなった終点。助手席の鈴本さんは沈黙のままでした。周辺は静かな住宅地ですし近くは摂津峡があり6月には蛍を見ることが出来ます。(よく蛍も見にいったなぁ)車が待ち合わせ場所の停留所に到着。まだ彼女は来ていません。停留所の脇に車を止めて彼女を待っていました。鈴本さんは一言も話さず、ただ窓の外を見ていると・・『あ・・あの人?』今まで沈黙していた、鈴本さんが声を出し、その視線の先に目を向けた私は彼女の姿を見たのです。その瞬間・・胸の鼓動が激しくなり手が汗ばんでくるのがわかりました。『じゃ・・行ってくる』私は一言告げると車の外へ出たのです。何も知らない彼女は笑顔で・・手を振りながらやってきました。