40話 中間地帯上陸作戦
橘少佐が総局長に総局本部特別会議室で作戦案の説明
を終了し椅子に座った。
軍組織幹部では無いが巨大組織を作り上げ日本復興に
貢献してる人物との対面は自然に緊張して来る・・・
局長は緑茶を欠かさず飲むと聞いてるが、さて本当か。
「ふむ・・・」
立ち上がり左の小さなテーブルに用意されてるポット
から湯呑に茶を注ぎ盆を対談テーブルの中央に置いた。
「良い説明だった、茶しか無いが飲んでくれ」
茶好きは噂通りだな
「はっ、いただきます」
両手で湯呑を持ち飲む姿はまさしく老人の姿
「説明を受けた第一作戦の戦略目標は流下地域と黒山脈
の中間地帯に内海から上陸し永久根拠地建設で良いか?」
「はい」
「作戦詳細によると上陸地調査と探険建設軍輸送を同時
進行となるが・・・達成期間と輸送力の小さい点かな?」
「海上輸送力は慢性的に不足しており使用できるのは
1万t積載2隻、5000t積載4隻で貨物船6隻、これで
富山拠点、台湾、上陸予定地の3500キロの兵站路です。
少数の小型戦闘艦を作戦に使用しますが輸送量は期待薄。
よって武装探険軍少数を上陸させ海岸部の脅威を調査、
小型戦闘艦1隻を遊弋させ支援を持続し脅威を特定。
輸送船で重武装探険軍を送り上陸点を拡大し拠点化完遂。
ついで建設部隊を投入し岸壁を建設、拠点施設を建設。
海岸拠点建設は探険建設軍と陸軍の共同作戦です。
総局人員の探険建設軍参加は海岸拠点一部建設後で、
およそ作戦開始180日後。14日間の現地説明をもって
外海通路建設開始で推定建設距離は800キロ地勢は不明」
橘少佐は作戦達成を自信をもって説明したが・・・
信じるはずは無いほど現地情報に困難の要素は少ない。
これも杉原の策謀か・・・
「うむ。現時点で最適な作戦と総局も認める、当然だが
これは最重要の作戦で有り秘密管理は最高位である」
「はい、民族の・・・生存が・・・全力を尽くします」
懐から小さな封筒をテーブルに出した
「中を見たまえ・・・」
少佐はこれが何か判らない
「これは?」
「総局と探険建設軍の重要連絡は伝令による。その時に
使用する証明となる、言うならば生きているアイコンと
呼べる時間で変化を続ける動画と付帯情報の塊だ・・・
私は原理さえ判らないが偽造や盗聴はまず不可能だ」
「はっ、受領いたします」
「少佐、総局が送り出すのは若者と年寄だ、お願いする」
「はい、お引き受けいたします」
黒岩石族は長距離移動に苦しんでいた。
命風の暴風で、あんなに簡単に出来た飛行移動を出来ない。
まさかの水生物と同じ地上の地面を滑りながらの移動・・
文明生物に道路など有るはずが無い。
命風を利用しての長距離飛行は文明以前の能力なのだから。
それなのに
山や谷や断崖を地上移動・・・
むろん暴風でも一時的に飛行はできるが高度はわずか数m。
短時間で消耗し地面に着地。
数千mを上り、そして下るの繰り返しに戦士は疲労・・・
北に2100キロ・・・西南に1100キロ・・・そこが悪魔の大地。
無言の合言葉
「恐れるな、悪魔を倒せ」「進もう、進もう、山を越え」
「悪魔を倒し、子を救え」
何時もの山荘。
「杉原さん、岩石族移動から2月は立つが今は何処に居る?」
苦しげだ・・・
「判らんのだが、あの大軍勢だ・・・偵察はまずい」
「うむ・・・偵察で直接こちらに来られたら・・・」
「最悪だ、なにも出来ずに中央領域の壊滅は確実・・・」
「では、内海上空の低空偵察・・・見つけても・・・」
「そうだ、無意味だ・・・偵察を命じてるがね」
茶を飲むと落ち着く
「侵攻は千島からとした防衛体制しか出来ないな・・・」
「今から数百万を本州に動かしても戦力にはならん・・・」
「すでに600万を北海道に投入してる、無理だ・・・」
「岩石族の繁栄を見ると海を渡るのに困難は無いようだ」
「理由は?」
「幾つかの島で岩石族の死体が見つかってる、自然死だな」
「浮かぶはず無いな・・・飛行できるのか?」
「そう・・・飛行できると軍と研究所が・・・」
「飛べるなら、なぜ直接来ない?」
「判らん・・・判らんが北で迎え撃つしか手が無い・・・」
ユウマ家の総領であるユウマは仲間を率いて猟を続けていた。
5か月経てば家に帰れる、ミチに会える。
子が出来るんだ、家族の幸せ、やるぞおー
「うおうーーーー」
仕事を忘れて大声で叫んだ。
タダシも子が出来て同じ気持で叫んだ
「おうーーーー」
竹沢は仕事を抜けるので怠け者の半人前で有名。
長くても理由を付けて1か月ほどで帰港を繰り返す・・・
そんなだから集まるのは怠け者やゴロツキ。
評判は地に落ちて出世の見込みは無い。
余生老人村。
寝たきり老人12人、割れた黒石を胸に食う寝るの繰り返し。
なぜか肌に色つやが・・・
寿命最後の輝きか・・・