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小説「2023年日本転移」39話

2020年12月31日 | 小説

             39話 杉原・鈴木、秘密会合

2026年12月22日。
年末の挨拶を理由に鈴木は杉原の小さな山荘を訪問していた。
山荘と言っても昔は6個の集落であり高齢化で廃墟となった山奥の行き止まり。
安定して得られる水を利用し杉原は水田を4枚維持してる。
一つを除き家の多くは潰れた廃屋であり草が生い茂り土に還るのも数年・・・
山荘は土蔵を利用しわずかに住居を追加した廃屋の見た目だ。
江戸時代の様な塗り壁で作られた塀の門を通り庭がある。

運転も要員も秘書課の女性だが名を覚えられずに鈴木は運ばれてきた、
要員が門の内側からお辞儀をした、降りてくださいの印・・・
乗ってきたのは昔なら軽のワンボックスと言われた小さな車なので
自分で開けて降り立った。
今が春か夏なら涼しくて空気も澄んで心地よいのだろうが・・・
冬の真っ最中、雪が浅く積もり木々には氷が付いている寒さ。
門から10mほど案内され山荘に入った。

「いやあ~~~ようこそ、ここでなら気楽に話を出来るのでお呼びした」
少人数の場合は杉原の態度は明るく親しみを感じさせると誰もが知るが会談
となれば気楽な話のはずは無い
「静かで良いところですねえ~」
杉原の作り笑いは芸人以上
「冬は静かすぎて凍るのですよ・・・水が氷るのは普通ですがね~」
土蔵内部の応接間、窓は無くどうみても完全防音の空調付き、電磁遮蔽も?
厚さ15センチの扉が閉じた。

作り笑いどころか表情が消えた
「我が国・・・我が国の現状は・・・絶望するほど・・・悪い・・・」
伝わる真剣さに茶を手にする事も出来ない緊張が走る
「確かに悪いが・・・食料や産業の目途はついて来たのでは?」
泣き出しそうな目をしてる杉原は初めてだ

「まず地形だが、外輪山北方は5万mを超える氷河の山脈で超えるのは不可能、
南方は複雑怪奇な内海水の膨大な流路で不可能。
東方と西方の外輪山にはエネルギー兵器を使用してる種族の存在が高い、
学者たちによれば我が国の総力で戦力を強化しても数時間で我らは消滅と言う。
海岸には黒岩石族と名を付けた個体生物が大繁殖と観察された。
特殊兵器で退ける事は出来てるが・・・破壊は出来てない、何時まで有効化も
判らん。組織が崩れれば普通の巨大凶暴生物が襲ってくる・・・」

聞いて目を閉じて考え、再び開く
「おおよそは会議で知らされてるが・・・」
「時間なのだ・・・黒岩石族の大移動は普通では無い、北方からの大攻撃・・」
驚くべき状況だ
「しかし・・・移動だけなのだろう?」
「移動してる個体を観察したところ・・・8mほどで統一されてる、戦闘集団と
学者と参謀達の意見が一致した・・・」
「北方・・・北海道・・・」
「そうだと判断された。特殊兵器も大群で襲来されたらひとたまりも無い」
「猶予は何日・・・ある?」
「黒岩石族は数を増やしてる・・・動員しながら攻勢開始点に集結中と判断だ。
軍作戦部の予測では300日以内、10月頃、遅れても12月に襲来する」

「それで・・・第二人事総局に要求は何かな?」
「逃げ道・・・逃げ道を開いて欲しい」
「逃げ道・・・作れるのか?」
「可能性は少ないが・・・黒岩石族は動員で北に移動してる。ならば・・・
南方の内海水流路と黒山脈の間を踏破し外海岸に通路を開く。絶望的・・・
成功しても外海岸に逃げ出せるのは500万以下だろう、そこが安全かも判らない」
「すると・・・探検建設隊は6月で踏破するのか・・・」
「多大な困難と犠牲は承知だ、すでに探険建設軍の総指揮官は任命してる」
「ふーむ・・・我らの探険建設隊を早急に組織する事か・・・」
「それを要望する、研究所と技術要員の選択も進んでる」

泣き出しそうなのも判る・・・
地球での困難、転移後の困難を乗り越えられたのに、来たのは絶望。
500万と言うが時間的に100万人の脱出さえ大困難が有る・・・
だが・・・外に出なければ、ここの地球生物は絶滅、人間含めて・・・
早く死んでも良い者達を選び出すしか方法は無い。
「8000人・・・8000人を派遣します」
「鈴木さん・・・外に・・・外に何人かでも逃げ出せると良いですなあ・・・」
「外は・・・外はきっと天国のような楽園ですよ」
「楽園・・・何人かは楽園で生きていけると思いましょう」
「それには国民に未来は明るいと伝えなければ・・・探険建設隊は秘密で」
「得意ですよ、食料や産業、通信や交通も発展中だから宣伝は容易い」

国民が知るのは映像で見る凶暴な大型海生生物の狩猟であり食料確保。

探険建設隊は台湾にも秘密で急速に組織された。

 

 

 

 

 

 

 


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