町工場 職人の声

職人と現場人間の想いを誰かに伝えたい!

小説「2023年日本転移」30話

2020年12月30日 | 小説

      30話 避難洞窟

黒の山脈には遥かな太古より知られる洞窟が多数有り、
それらのいくつかは種族の非常時に逃げ込む避難所と決められていた。
伝承者の持つ1000万年の種族文明以前より続く記憶にも避難した事は無かった。
少し前に驚天動地の大変化が起きた。
ふもとで平和に暮らす多くの部族を見境なく襲った種族の危機。
山脈から吹き降ろす静かで心地よい春風のような強さが、突然暴風に変わった。
まさに暴風、体表を温めるどころか表皮を削り取る・・・
各部族の部族頭と呪術師は洞窟避難を命令、6長老会も避難命令を追認、
大集団が統制を崩しながら避難洞窟に殺到し地下800mに逃げ込んだ。
内海東に住んでいた種族は海岸の断崖を恐怖で飛び上がってきた野生動物が
村に侵入し大混乱の中で8家族が赤子を失った・・・

親が狂乱し知人達に抑えられても興奮し大声でわめき続ける、
「赤ちゃん!私の・・・赤ちゃん!!!」
普通の食事を取れるはずのない生まれたばかり、暴風で大人でも食事は無理だ。
それに野生動物は赤ちゃんを断崖の下に連れ去る習性が有るのだ・・・
「行くの!探しに行くんだあーーー」
「ああ大勢で行けば、きっと無事に見つかるとも!」部族頭はうなだれた。
「直ぐよ!今すぐ探してえーーー」「俺が行く!」
「探しに出たいが・・・外は暴風だ。少しは弱くなったが・・・待つんだ!
もう少し待てば強者なら出られる!探すから、見つけるから!」
狂乱は収まり興奮が消え岩の床に区連れ落ち力は消えた
「会いたい、ああ会いたい、お願い・・・生きていて・・・」

友人、知人、親戚含め大勢が涙した
(生きて見つけるのは無理だろう・・・せめて遺骸の欠片でも・・・)
避難洞窟は食料に満ちている。
そとの暴風は続いた・・・

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」29話

2020年12月30日 | 小説

             29話 日本社会再び

2025年12月1日。 
漁士、海洋大型動物を狩る者達を称え大勢がそう呼んだ。
漁士が使う道具は35ミリ対空対地機関砲、自己誘導迫撃銛(80度で打ち出され
高度600m直上から獲物に突き刺さる物理衝撃弾であり役目は大きな釣り針)
120ミリ短距離低速榴弾砲(有効距離700m)

キャッチャーボート。
船首に35ミリ機関砲、自己誘導迫撃銛2、舷側に120ミリ短距離低速榴弾砲6門、
舷側に捕獲砲8門、迫撃銛衝撃緩和装置、ハンティングブリッジに怪物ソナー、
航跡自画装置(等距離表示)、レーダー、通信、位置など航海用機器。
偵察用ドローン12機、救命ボート8。
全長80m全幅10m、推進は高圧蒸気レシプロエンジン46ノット。総員54名。

北方海域。
北方海域猟士隊本部、要員300名。
第1猟士隊、隊長安岡、支援含む100名。
第2猟士隊、隊長木村、同上
第3猟士隊、隊長宮下、同上
第4猟士隊、隊長根本、同上

南方海域。
南方海域猟士隊本部、要員300名。
第1猟士隊、隊長岡本、支援含む100名。 
第2猟士隊、隊長大木、同上
第3猟士隊、隊長山本、同上
第4猟士隊、隊長黒田、同上

猟1号。安岡は艦橋の艦長席に体をベルトで固定し前に在る3段6列のモニター
を注視しつつ前方の海原を厳しい表情で睨みつけている。
年寄の痩せた体躯と顔の筋肉質は高い緊張感を周囲に与えた。
モニター上段6枚はドローン映像であり通常40キロ最大80キロを映す。
中段は航海用でありレーダーや通信、位置、緯度経度航路表示。
下段は狩猟用で海中カメラ、狩猟ソナー、ハンティングブリッジカメラ、
狩猟航路表示、弾薬量、燃料量、狩猟獲得物等の表示。
航海は航海士席、狩猟はハンティングブリッジ、狩猟装備等は狩猟長、
船舶管理は主計長が行うので通常は艦長の指示や介入は不要。

目を閉じて振り返る・・・
死を覚悟した陸地偵察、個体生物確認の驚愕、理解を超えた天変地異。
同胞75%が死亡という悲しみと絶望・・・まだ2年ほど、よくぞここまで。
回収し修理した多種の船で狩猟してきたが、この艦は新造船。
「艦長!30分後目標位置!」副長の声にゆっくりと目を開けた
「良し!速度巡航、ドローン偵察高密度!」
「はい、巡航、偵察高!」
「報告、高度200光学探査」
「報告、30・270・距離38000生物音響多数」
「ふむ、大群か・・・」

高度400mの映像に映るのは・・・
クジラの様な80mの体躯に15mの首を持つ狩猟対象の獲物。
今までは攻撃力不足と船の小ささで狩れなかったが、今回からは!
20mの亀?40mの魚?長さ300mの芋虫?形態や大きさ、色も多種多様・・・
海面下にさらなる大物も・・・
狙いは、首クジラと乗員が呼ぶ1種類。80mの大物だ!
「命令!目標は80m首クジラ3頭!」
「砲撃室より、目標選択1番から6番!」
「艦橋受領!」
「目標1番、全速前進!」
「ドローン1番に展開」
「迫撃用意!」
「1番2番用意完了!」
「進路、目標左舷800m!」
「左舷800!」
「目標、距離1600」
「レーザーロック!熱マーカー発射!」
「着弾!」
「ドローン、熱マーカー確認!」
「艦長だ!距離900で砲撃!」
「砲撃室、受領!」

ポンという音だけで迫撃銛がわずかな蒸気を出しながら80度で急上昇。
8秒で600mに到達、見てると遅く感じる速度だがワイヤを引いてるので低速は
設計による物。落下は自己誘導で熱マーカーをめざし無音で一直線。
強固な体表を貫いて深く食い込みはずれはしない。
暴れる獲物に舷側を向け120ミリ榴弾で打撃を加え抵抗を奪う。
「120ミリ砲撃!」
「受領、砲撃開始!」
3門の榴弾砲が火を噴いたが音響は低い、低音燃焼火薬採用の効果だ。
6発入り弾倉により連続砲撃が出来る。18発の着弾に獲物が動きを止めた。
ワイヤにブイを付け、次の獲物に向かう。

3番に逃げられ4番でようやく3体を狩れた。
回収し曳航で帰還航路を進む・・・
小型の獲物を舷側捕獲砲で狙い撃ち!戦車装備の応用で航行砲撃で命中率90%。
艦長以下、全員の想い。わずかでも食料を持ち帰る!

調査隊の全員が猟士隊に参加し凶暴残虐な個体怪物の生息する陸に近づく
危険を犯し海洋大型動物を狩猟し被災国民の食料を獲得した。
日本の漁労は海洋大型動物の狩猟により復活していくと大勢が希望を持った。

 


北海道、2025年12月8日。
ユウマ達は北見に安住の地を得ていた。
ユウマ家に家地10000平方m(3300坪)領地10万平方m(33000坪)
タダシ家の家地10000平方m(3300坪)領地10万平方m(33000坪)
ユウマと妻ミチ。タダシと妻ナツであり熱烈な命を賭した大恋愛で結ばれた。
仲間はユウマ家とタダシ家に参加し活動を同じくした。
ユウマ家は領地の農作と車両整備と射撃場。
タダシ家は農作と銃器弾薬製造であり35ミリ機関砲も製造している。
両家とも不足人員は送られてくるのだが老人が60%に顔をしかめた・・・
燃料は当初、回収油を補給されたが最近は大型動物を処理して得られる動物油
を工業的に変質させて燃料にしてる、これを領地で営んでるのが桜木家。
車両を優先的に配分され輸送を営むのが田川家。
フクハラ家・・・
18ぐらいが6人と女が9人。領地に射撃場と広い練兵場?多数の銃で武装してる。
北見連絡会議で顔を合わせては居るのだが・・・フクハラの噂は警戒を要す。
略奪と強姦で生き延びた集団であり、言えば強盗団、暴力支配だ。
ユウマ達の想いは一致
(あいつらには近づきたくない!)

第二人事総局にとって北見の家方式も試金石のひとつ。
総局の鈴木は寝たきり老人に思いを馳せた、せめて家の外を見せたい・・・
見舞えば老人達が石を家族を見るようにいつも見つめてる、孤独老人には
悲しいが確かに石も家族と想えるのだろう。
猫や犬が妙に老人を恐れながら、部屋に居るのも不思議だが?
前は喜んで老人に触れていたのに・・・まるで避けるか遠慮するようだ。
石は相変わらず変化無し。
老人達はいくらか元気に成ったとおばさんたちが噂してたが・・・
もう少し、あと少し生きて欲しい!
大災害から立ち上がる日本を見てから天国へ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」28話

2020年12月30日 | 小説

             28話 2025年12月10日

政府から全国大災害報告として国民に広く公開された。
地球全体で発生した地震、噴火、大陸分断、大寒波、大熱波、洪水とは別に
起きた日本全土での大災害で在る。
大災害の地震、噴火は急速に低下し危険は無い。
日本での生存者は4500万人程であり台湾に数百万人の生存者がいる。
千島列島は大被害受けたが健在。
樺太は海没したが再浮上し安定。
尖閣は隆起し南北250キロ東西70キロの島で安定。
台湾は災害前と変わらずに安定。

東京湾入口の海底火山噴火により東京湖となり千葉陥没により太平洋への
川が出来た。以前の東京湾は隆起し海抜30m、関東一円も隆起。
東京湾の南半分は隆起と陥没にガス、蒸気噴出で再建不能。
陸上基幹輸送路構築を主軸に産業復興を進行中。
2026年より学校教育再開の準備完了。
中央領域の生存、軍事、交通、行政、通信、等の緊急組織構築完了。
全土の生存緊急組織構築80%完成。

天空や気象の変化は錯覚では無く現実の変化と考えられる。
太陽と思える輝きは衛星である。他に衛星は6個在る。日本の有る惑星は巨大。
生物相の特徴。
詳細は不明だが海洋生物は植物、動物問わず巨大である、巨大動物は80m。
外輪山内側の島々に恐竜世界的生物圏が在るが詳細は不明。
内側沿岸は広く植物相が見られるが高さ150mに届く。陸側は300m以上と測定。
特徴的なのは黒い鉱物に見える個体生物が繁栄してる点。

外輪山外海は多数の島が存在し海流は複雑で渦を巻く。
内海は海抜1500mであるが理由は不明であり科学的説明は無い。
災害復興は順調であり台湾政府と協力関係である。

現在は危険な事象は無い。


2025年12月12日。 国家指導会議。
「総理として国民に説明しましたが・・・災害事象についての報告を
考えると重大な点が目に入ります。それは日本の大変化が自然災害に
よるのか、あるいは何者かの意思によるのか?」
「その前に軍として尋ねるが、太陽が衛星との報告は受けてない!」
「当然です、私が知らされたのも昨日ですよ・・・」
「衛星が太陽とは・・・核反応出来る質量なのか?」
「質量も光源も不明とのことです」
「軍としても重要情報だ!国土研究所はどう説明するつもりだ!」
「えーーー何と言いましても、研究優先は国土・・・地学分野にありまして
そのーーー天文は天文台1個所で研究は4名で有りますから・・・そのう・・」
「もういい。天文研究をしてないという事だろう!」
「まことに・・・予算と人材、機材・・・不足しておりまして」

総理はいつものように茶を飲んだ
「実は・・・天文以外にも重大な事が在るのだが・・・」
「太陽より重大とは・・・」国民救援隊の隊長が首を振った
「知らない者は多いと思うがアメリカ軍基地の事だ・・・」
「国民含めて完全撤退したのでは無いのか?」
「公式にはそうだが・・・関東地下基地・・・地下350mに要員12000名の
全面核戦争対応基地に5000名が常駐していた。政府と上級官僚は災害時に
逃げて指揮を続けるのが計画だった。機能せずに私が個人的に動いたのだ」
「なぜ命令が来ないのだ?」
「秘密裏にボーリング調査したところ・・・東京湾火山の溶岩が流れ込み
全てを埋めたと考えられる、横田基地の地下にまで伸びたようだ・・・
1200度のガスが横田からさらに秩父方面に地下を移動・・・全員死亡は確実」
「では文字通り、日本政府は日本人の手になったのか?」
「そういう事だ。別惑星に転移したと考えられる現状で意味は低いが・・・」
「支援は無いが介入も無いと言う訳か・・・」
「そう、我々の決定が最終の決定なのだ」
「うーむむ、責任重大だな」

「総理として要望したいのは慎重に国を進めたい。日本国土の活動を主とし
樺太と尖閣は限定した進出で対処、内海周辺の島は開発せずに海洋動物狩猟
で食料確保。外海調査の船舶は分割部材を陸路で降ろし沿岸で造船。
転移が正体不明の意思によるなら危険は最大と考えねばならないだろう」
「うーむむ、軍事的に当然に慎重で無ければ・・・」
「高高度飛行を出来るとしても大規模にした場合は・・・」
「正体不明がどう出てくるか?」
「うむむ・・・飛行自体を慎重にせねば・・・」
「少なくとも1~2年は周囲の観察と測定が必要だ」
「農地造成が急務だ、海洋動物は取り続ければ消滅するぞ」

「では、まとめるが2年間は食料増産を優先し供給を確立する事。
外輪山の外遠方は偵察しない事。
船舶部材輸送路を建設し外海沿岸に造船所を建設する事。
余力で天文観測を進め天体要素を測定する事。」

鈴木の気持ちがかるくなった
(少なくとも2年間は外海での活動は無い・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」27話

2020年12月30日 | 小説

             27話 第二次高高度偵察作戦

2024年7月20日、基地から出撃拠点に進出した偵察飛行隊は同時刻に離陸した。
6月に組織創設された戦略偵察航空団は従来と異なる柔軟な構成を可能とする
為、パイロット階級を工夫した。

専門機種を運用、作戦する航空集団を飛行隊、飛行群、飛行団としパイロット
と指揮官は少尉、中尉、大尉、少佐である。
多機種で運用、作戦する航空集団を航空隊、航空群、航空団とし指揮官は
少佐、中佐、大佐、少将である。
機数が激減してる現状で作戦ごとに最適の編成を柔軟に構成する階級構成であり
飛行隊少尉、中尉・・・航空隊少佐、中佐・・・という様に意味づけた。
戦略偵察航空団、総司令官は村上少将。

人事総局からパイロット12名航空機関士12名が志願し任務に参加、全員67以上。
軍の偵察員は広報の生存者から志願した24歳24名。
偵察機の試験飛行は成功したが評価は不明。10機で偵察するが2機は予備。
7月15日、通信支援機乗員含む作戦要員が集合し顔合わせという宴会。
16日9:00。全員が作戦説明室で第二次世界大戦以降初めてであろう水杯・・・
母機を操縦する木村大尉は想う、長年の同輩だった吉村中尉最後の笑顔
「帰ったら山の向こうで、一緒に異世界チートだぞ!」皆で笑いあった。
戦死を知った日、深夜に息を殺して泣いた・・・
(偵察での戦死がこんなに近いとは・・・誰も予想しなかった・・・
日本は戦争より大きな危険に囲まれているのかも知れない、覚悟しよう。
これが水杯の意味なのだな・・・)
木村大尉が呼びかけた
「生きよう!生きてもう一度会おう!」
「おう、また会おう!」「そうだ!生きて帰るぞ!」
全員で万歳三唱し出撃拠点に飛び立った。

偵察作戦は成功した。
その陰で東方任務の偵察第一飛行隊は偵察成功するも海面に激突し全員戦死。
カメラは回収されたが遺体は海深くに沈んだ・・・

偵察成功により作戦は持続され広大な領域の全体図が大よそ判明。
船舶から運用する電磁防護無人機により内海沿岸の詳細判明が進められた。
有人電磁防護偵察機が開発され山脈の外海沿岸と近海域の詳細が判明。
これらが判明したのは2025年10月であり偵察の努力と戦死は続いた。

7月25日、第二人事総局では鈴木局長が偵察祝賀会に出席。
「偵察成功を喜び、死者を忘れず!」
端的な言葉に参加者は涙し笑顔で乾かした・・・

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」26話

2020年12月30日 | 小説

             26話 戦略偵察航空団

2023年6月15日、常設の国家指導会議が14日創設され第一回会議開始。
参加者は大臣5名各省次官10名、国軍3名、国民救援隊3名、国土研究所2名、
産業技術研究所2名、輸送総局6名、第二人事総局6名・・・37名。
杉原総理による個人的指導力が活動規模拡大により各所で齟齬を生み出し放置
すれば混乱増大により各計画とん挫の危険が在り指導組織確立で官民合意した。
室内には30歳ぐらいの緊張した女性10名の会議補助官が定位置についている。
ノートの様に綴じられたA4、何枚かはA2をたたんである資料を補助官が全員の
前に配り終えた。

第一回会議の議題は戦略偵察航空団の創設。
総理が発言
「議題の前に説明します、なぜ書類という古い方法を採用したかの理由です。
認識の確認ですが第一回大規模高高度偵察は偵察機全滅、全員死亡・・・
精査と研究は電磁気的破壊力が理由と判断、つまり水平の雷撃、カミナリです。
高高度特有の現象かは不明、万一を考え重要情報の書類化を指示しました。
モニターは当然使えるので自由に利用できます」
「議長は私、杉原が努めます。まず国軍の説明をお聞きください」

「国防省空軍次官鹿島です。偵察隊全滅という状況により偵察能力は大きく低下
しましたが偵察の必要も大きくなりました。航空機、装備、施設、要員、基地
の全てが充足に遠い現状において偵察強化を図る為、組織再編成の提案です。
空軍の優先任務が偵察に在るのが現状。
従来の航空識別圏を超えた広域詳細偵察を任務とする部隊、創設の提案です。
戦略偵察航空団総司令部は飯山基地、
中央領域偵察航空群司令部を沼田基地。
南方領域偵察航空群司令部を那覇基地。
北方領域偵察航空群司令部を北見基地。

各航空群は飛行隊8、装備中隊8、補給中隊2、主計隊1、警備中隊8、司令部本隊1
で構成されますが飛行隊は数を増やすのが希望です。
現状で充足はしませんが航空機と装備の回収修理は進んでおります。
最大の困難は要員確保ですが、軍の航空整備要員3分の2をパイロットに促成、
民間航空は壊滅しており国際線は不可能、そこで
民間パイロットを招集、老齢パイロットの協力も得る事で短期の充足は可能。
将来は千葉方面から非難に成功した航空学生の学業、訓練により員数を確保。
沼田、北見。那覇に各航空隊1個を配属し特殊偵察機使用による高高度偵察
の任務達成を予測しております」

「特殊偵察機とはどのような?」
「電磁気対策を現状で出来る限り採用しました。ただ1機、不時着水した機の
三重対電磁気シールドに防護された電子機器以外は全て破壊されていました。
機体の回収は間に合いませんでしたが通信分析により判明、他機も同様です。
端的に説明しますと偵察機器やエンジンも電気電子機器は有りません。
通信機もビーコンさえ不採用。偵察カメラも機械フィルム式です。
エンジンは高度33000を想定し人力による機械制御で測定計器も化学機械方式。
操縦も機械式、目視飛行。乗員間通信は伝声管で他機とは手信号です。
従いましてパイロット、機関士、偵察員2名となり乗員は4名。
この偵察機を輸送機の背中に乗せて高度26000mから自力飛行し34000mで偵察
しパラシュート着水、艦艇で回収し再度任務を達成します」

「うーむ・・・他には?」
「支援機作戦高度を15000mに想定しております関係上、通信中継機を多数必要
な点と回収艦隊との合流が出来るか?が不確実として残ります・・・
偵察機に電子機器無しで予定海面に降下する難しさがありますから」

「それで良いとして・・・乗員は志願者かね?」
「はい!全員が志願者です、2倍の志願者から選抜しました!」
「そうか、志願者なら反対する理由は無いようだな・・・」
「うむ、無いな。良し!賛成に回ろう」
「うむうむ、言うのはなんだが・・・今回失敗しても特殊偵察機だけ・・・」
「おい!何を言う!乗員が居るのだぞ」
「判ってる、私は・・・損害と人数をだな・・・」
「馬鹿め!人数の足し算も出来んのか!40名を超えるぞ!」
総理がゆっくりと間延びした声をだした
「あー損害はだなあ、あー今回は考え無い・・・という事で・・・」
「考えないとは、どういう?」
「あーつまりだ・・・早期広域偵察は必要なのだ」
「とはいうが・・・人命が・・・」
「判る、しかし対処を間違えれば大勢の国民が死亡する、今現在も救援が
届かずに死んで行く国民が居るのだ、有効な対処なら我らも死のうでは無いか」
「・・・」
「申し訳無いが・・・軍は死を覚悟した任務達成を願いたい・・・」
「国軍は全ての任務で死を恐れない!戦争では無くただの偵察だ」
国防大臣の高笑いに会議参加者は一人もつられる事は無かった
(志願者か・・・確かにそうだが、杉原は事前に・・総局に・・私に・・)

その後に会議は高高度偵察作戦日を決定。
2024年7月1日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」25話

2020年12月30日 | 小説

             25話 2024年7月8日

1000トンのフェリー4隻は修理完了し名古屋と大阪で備蓄少量を満載し台湾に
向けて航行中、帰路は新潟にて建設参加者を下船させ狩猟食料を搭載し台湾へ。
修理開始してるのは1000トンのフェリー6隻、回収準備中が3000トン3隻。
船舶が多数擱座してるのを確認はしてるが距離と大型船で回収に困難がある。
政府は下関ー沖縄ー台湾の航路維持を優先する考え。
青函トンネルの回復は計画さえ出来ていない・・・
他の優先航路として、新潟ー室蘭ー稚内。ひたちなかー仙台ー八戸ー釧路。
(それにしても、政府は最初から無理を要求していたものだ)
杉原総理と最初に会い帰る間際に言われた事
「鈴木さん、60歳以上の国民、被災民を頼みます!」
ただの外交辞令と受け止めていたが・・・
(まさか現実に数百万どころか1000万もの活動を調整する役目とは・・・)
鈴木は大変だが政府はそれ以上に大変な責任を負っていた
食料、回収、治安、エネルギー、輸送、資源、教育、医療、技術維持、
戦力維持、状況調査、台湾支援・・・

第二人事総局陸上課、回収室と農作室は合同で関東農作計画を策定し実行中。
大枠は回収と農作地整備を同調させ関東一円を大農作地域とする事。
高崎ー宇都宮ーひたちなかー銚子ー千葉ーさいたまー所沢ー飯能ー東松山・・・
新潟平野計画。
流出した農作地全域を海抜20mにかさ上げし将来の流出を防ぐ事を期す。
現実には新居が平野の全域をかさ上げすることになるのだが・・・
土石は佐久と松本の間の山を除去し平坦地を作り出す工事の残土を使う。
複複線はこれらの工事を考慮している。
だが現状は手つかずに近い、関東農作計画を推進するだけで能力は限界。

産業回収と回復、車両回収と整備、農作地計画、周辺領域調査計画、船舶修理。
人員と運用・・・
3000万人の主作物を米と仮定すれば1000万トンを必要とする。
輸入途絶の今、食糧作物は米、ジャガイモ、サツマイモ、粟、稗、蕎麦・・・
気候によるがトウモロコシ、ピーナッツ・・・
米の問題が大きい。
日本全国の平野部農地は大災害で壊滅している、土は流され農業施設は破壊され
使用不可能、そして肥料生産にも大被害が出た。化学合成の出発原料は石油由来
であり海岸プラント壊滅により入手不可能。
中央領域で全行程肥料工場を建設中だが生産量は極わずか・・・

鈴木は夕暮れの空を見上げてため息を吐いた
(海洋課の狩猟が日本国民の命を繋いでいるのだ・・・戦後のクジラの様に)

ため息で仕事は終わらない。翌日・・・
総理の元気で明るい表情
「局長!新型偵察機が出来た!高高度偵察が出来るぞ!」
(・・・空元気だろうな、偵察人員の全滅は厳しいはず・・・)
「総局も乗員を・・・」
「うんまあ、そういう事なんだが。乗員がな・・・そろわんのだよ」
「・・・人数は?」
「うむ・・・12名は・・」
鈴木の頭に友を死地に向かわせる自分の姿が見えた
「日数の猶予は?」
「うむ、6日は有るだろう」
「人選を・・・進めて置きます」
「お願いする・・・」

船舶回収室から局長に報告が来た。
・・・船舶回収工事で事故発生、死亡16名負傷8名・・・
・・・修理作業で事故発生、死亡4名負傷3名・・・

関東農作計画室より報告。
・・・現在までの集計、事故死亡146名負傷357名行方不明24名・・・

建設室より報告。
・・・現在までの集計、事故死亡897名負傷1340名行方不明254名・・・

膨大な活動をすれば犠牲者は出てしまう・・・急ぐ必要が有るからなおさら。
実際は集計外の犠牲者ははるかに大勢居るのだろう。
鈴木は夕日に両手を合わせ目を閉じた。

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」24話

2020年12月30日 | 小説

      24話 沖縄台湾航路

杉原総理に呼ばれた人事総局の鈴木はもう臨時はいらないと思える臨時執務室
の前で立ち止まった。会議以外の毎日、扉が閉ざさることは無く開放に固定。
(何度も来ると・・・慣れてしまったな・・・)
中ほどで声をかける
「鈴木です、お呼びとの事で参上いたしました」
顔を上げ机を回り込んで近づき握手を求めてきた
「いやいや、よく来てくれましたな、総局の活動に皆で感心しておりますよ」
「それはそれは、お役に立てているなら何よりです」
無理しなければ笑顔は出てこない・・・年寄が演技とは役者ではないのだが
(また無理難題を言い渡されるか?)
「さあさあ、どうぞどうぞ」着席を進めてくる総理
「ありがたい・・・年寄は足腰や記憶が・・・どうも衰えて・・・」
(この程度で引き下がるはずも無いな・・・杉原はしたたかだ)
「何を言われるか、初めてお会いした頃よりお元気そうですぞ!」
(確かに、体も傷まず記憶も確実、思考力もなぜか上がってる気がする)

「元気と言われると、年寄は嬉しく感じますねえ~しかし体力は年々・・・」
「まあ、そう警戒しないでください、悪い話では有りませんから」
テーブルの茶をゆっくり飲み、耳を傾けた
「南部縦貫幹線は御協力により順調に建設が進んでおります、真に有り難い。
これから北部縦貫幹線の建設に進みたいのですがご存知の通り、人材に困難が
在る訳です。東北地方は・・・あーーー住民が少ないという・・・
そこで台湾救援計画の一部として60万人を海路移送し建設と救援の両立を実現
するのが方策として適切と考えますが・・・いかがでしょう?」
(うーむ。直接的に人事総局と関係は無いはずだが・・・)
「気にかかる点が・・・船は在るのでしょうか?」
コーヒーを飲みほして声に力を込めた
「そこですよ!船は無い。早い話が・・・総局に船を用意していただきたい!」
お茶の味が消えた
(なんという無理難題・・・海岸壊滅の現在、船をどこでどうしろと・・・)
「なるほど。数隻は人員輸送に使える船が在るのですね」
杉原総理は両手で否定した
「いやいや、外洋で移送できる船は1隻も・・・無いのですよ」
「すると・・・車両と同じく早急に回収し修理の上で海路輸送実現すると?」

「いやあ理解が早くて助かりますなあ~端的に、その通りですな!」
(いや、その通りと言われても・・・やはり難題だったか・・・)
「そこで、ご意見を直ぐに聞かせていただきたい」真顔の総理が鈴木を見る
(意見など在るはずが無いが・・・船か・・・)
「5000トン以下のフェリーが多数陸地に取り残されてます、むろん殆ど大きく
損傷してるので大修理を要します。船台まで複複線を建設しガントリクレーン
で輸送し大修理、輸送困難なら擱座現場で幾つかに切断し輸送する。
複複線を建設する間にクレーンを組み立て船体を正常な姿勢に維持する。
擱座フェリーの発見と地域状況の空中偵察を政府に求めたいと考えます」
総理はしきりに頷いた
「うむうむ、真っ先に相談して良かった、良かった。偵察は軍に指示しますので
実務の準備を進めていただきたい!実は・・・台湾の方が限界に・・・
政府も協力する意思が有ります、内閣の決定を急ぐので船の修理を願いたい」
(うーむ・・・また仕事が増えるなあ・・・だが台湾600万、見捨てれば全滅)
「何隻と約束はできませんが、準備し修理に努めましょう!」
総理が頭を下げた
「日本国民と台湾国民に代わり、感謝します」

第二人事総局陸上課に臨時組織として船舶係りが作られた。
中央から下関まで偵察隊が船台を探索し残存設備を確認、有力地点に臨時拠点
を設け修理設備を集積。船体やエンジン知識ある老人隊が擱座フェリーを検証。
1000トンクラス4隻を優先する事に決定、軍の偵察報告を踏まえ修理計画策定。
損傷の少ない点と修理の容易さで就役は40日後の予定。
計画では5000トン以下に対象船舶を選択、修理と運用の迅速を期した。

政府は修理就役を待たず海軍の小型艦艇6隻による食料、人員輸送を開始。
台湾の稼働艦艇1隻が参加し7隻による航路が動き出した。
日本側の入港地は新潟が選ばれ鉄道と車両で建設工区に移送された。
今後に備え大規模な一時収容所が新潟に建設されて行く。
原発は5万キロワットで運転開始、新潟周辺に電力供給を確立した。

第二人事総局の局長室で鈴木は夕暮れを迎え想いにふけった
(1年と少し・・・忙しく頭と体力を擦り減らす仕事だったが・・・
老後をただ漫然と過ごし死んで行くだけと思っていたが、最後に期待され
いくばくかを応えられたと思えるのは幸せであり満足でも有る・・・
自分も後5年だろうな、貧乏と希望のない70年だったが、何かを見れるかも?
大災害で大勢が死んだ幼児も老人も壮年も若者も、外国にも安全は無かった)
(船舶修理計画書・・・実現すれば600万に希望が生まれる、過酷な作業を
老人がやり抜いている。文字通り死ぬ気で昼夜作業を引き受けてる・・・)

その夜、今夜で寿命が尽きるのかも?と静かに想いながら眠りについた。

 

翌朝。なぜか若々しく見える鈴木の顔を朝日が照らした。


眩しさに身を転げ元気に跳ね起きた。
昨夜は寿命が尽きたと思ったが、まるで50代の感じだ・・・朝立ちとは?
ろうそくの最後の輝き、なのかな?
まるで判らないが気力と体力は充分だ!さて今日も書類を処理しよう!

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」23話

2020年12月30日 | 小説

             23話 縦貫幹線計画

政府の輸送体制確立命令を受けた第二人事総局陸上課が進めている縦貫幹線計画
は困難に対処しつつ順調に建設は進む。
初期から建設中の中央領域幹線、長野ー上越。長野ー新潟。長野ー松本ー甲府ー
富士。長野ー上田ー前橋ー宇都宮ーひたちなか。松本ー富山。
これらの複線を回復、複複線に拡大中であり高圧電力線暗渠も並走させている。
将来建設予定である燃料輸送用暗渠の用地も準備。道路も当然並走の計画。
主体は建設省建設課だが国軍と国民救援隊から40万、陸上課も20万を投入中。
目的は4本のレールを用いての大型列車による大量あるいは重量物の輸送。
船舶輸送壊滅に対する苦肉の対応。
船を建造し荷役施設を建設し道路まで作るのは15年ぐらいを必要とするだろう。

縦貫幹線計画(複複線、道路、電力線、通信、水道、油送パイプ等の幹線含む)

北部縦貫幹線。
宇都宮ー郡山ー福島ー仙台ー一関ー花巻ー守岡ー八幡平ー弘前ー青森。

南部縦貫幹線。
松本ー中津川ー岐阜ー長浜ー京都ー福知山ー津山ー新見ー三次ー広島ー山口ー
下関。

国民救援の要から南部縦貫幹線は30工区で同時建設が進行中。
国民救援隊に組み入れた被災民の大部分を全工区に投入。
陸上課は車両、建設機械、輸送、資材供給、住居、労務、建設管理と多くに
関与し多数の困難と問題を乗り越えている。
建設は電力幹線を先行させ複線を建設し全線開通を待って複複線を建設する。
原油は在るが精製能力不足により燃料は貴重であり建設の電気動力化が進む。

杉原総理は2通の縦貫幹線計画報告書を読み終えた。
建設省と第二人事総局からの報告
「うむ、ほぼ同じと判断して良いだろう・・・」
わずかな時間を利用しコーヒーを楽しむのが唯一の安らぎ
(災害前の世間は無能老人とか老害と罵詈雑言を浴びせていたが・・・
第二人事総局、予想以上に役に立つ。これが無ければ治安は崩壊し日本は絶滅
した・・・怪物対処、組織された老人が居なければ政府も絶望だった。
官僚組織はとっくに壊滅していたからな・・・外国に逃げた官僚が多すぎた)
(南部縦貫幹線の建設が順調に推移したら北部縦貫幹線の建設を開始・・・
問題は建設要員の確保だな・・・東北に壮年は少ない、老人ばかりでは・・・)
コーヒーを飲み置くと目を閉じて腕を組んだ
(子供の投入で解決は無理だな・・・どこかから・・・そうだ!台湾・・・
生存者はおよそ600万人と伝えられてる、食料を提供すれば・・・船だな。
貨物船を修理し沖縄との航路を維持すれば充分人員輸送は可能。
台湾の西方は壊滅と聞いた・・・食料生産全滅につながる・・・すでに限界?)
(通信が問題だ・・・無線が届かんとはな。航空機による伝令が最速とは・・)
「いずれ海底ケーブルで解決だ、空軍の主任務が伝令とは転移前なら笑い話だ」
思わず声に出ていたのに気付いて気を引き締めた。
総理の皮肉を聞かれるのは、よろしく無い。

第二人事総局の鈴木は久しぶりに仲間の特別高齢者を訪れた。
(身動きできず話せずとも生きていてくれれば良いが・・・そろそろ迎えが)
「みなさん、久しぶりです、お加減は?」
返事はむろん反応さえ皆無を予想したが、首が動いて目が鈴木を見つめた
「私を判りますか?鈴木です!」疑問より嬉しさが心を満たした
「うーーううーーー」目に涙が・・・
「良かった、良かったですね!」大声を出すが涙も滲んできた・・・
(ああ・・・生きていた、自分にもまだ将来が・・・5年、10年が在るのだ)
どの部屋も同じく意識は回復している。
4人の真ん中に在るのは模様のある灰色の石・・・どこかで見たような?
(そうだ・・・探検隊が持ち帰った標本。黒石と違い動いた動画は無いが
規則違反。だがあれから数か月岩のままか・・・無害なら騒ぐことも無いな)
みなの顔色も良いと感じながら満足し仕事に戻った。

2024年5月15日。
家を選択した多くの集団が海峡を船で渡り北海道に上陸、予定農場に分散した。
ユウマ家は北見に向かって未だ移動中、現地含め家は60個と聞かされていた。
(なんで俺たちを北見に・・・銃と銃弾を持ってるから?現地に撃つ相手が?)
この道中でも意外と過ごしやすい気候にユウマは首を傾げた。

政府と人事総局による作付は進んでいる、海洋動物捕獲も順調。
不安は気象だったが偵察による地形条件を考えると激変は無いと判断された。
収穫を終えて収量が確定すれば1年計画に移れるだろう。
怪物に対する防衛計画を考えられるのだがと内閣の全員が想う。
無人偵察機による地形掌握は進んだ。
難点は内海に出口は無い、海水は流れ出ていくが艦艇で降りるのは不可能。
南方出口付近は真っ黒の岩が無数に林立し船の侵入を阻む。
物凄い海流の強さ、近づけば最大出力でも脱出不能・・・
その先は激流が続く落差1500mの流れ。
政府でさえ島の外周500キロを偵察するだけで限界。島外は無数の岩島と激流。

長距離通信を失い、飛行も高度3200以下に制限、艦艇は外に出る海路無し。
食料生産は余裕なし、近代工業は壊滅し肥料生産も草創期の方法に戻った。
日本と台湾は巨大な島に閉じ込められた。島に人影は見えない・・・

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」22話

2020年12月30日 | 小説

      22話 偵察機爆散

国防軍作戦部で第一作戦課(空)第二作戦課(海)第三作戦課(陸)
の課長会議が開かれた。議題は政府による周辺領域の詳細偵察命令の作戦検討。
各作戦課副官2名参加で人数9名。
「陸として今回の偵察は山脈と海で在るから発言は後にしたい」
「良いでしょう、海としても事情は陸と同じ、むろん協力はする」
「では空としての作戦提案を・・・概略ですが説明します。
判明している事の再確認です。地形と測定誤差は全員が認識と判断する。
海抜については内海面を海抜ゼロと臨時に用いたい。気圧が2.5倍に変化した。
外輪山の一部は偵察はほんの一部であり全体の偵察が必要と考えられる。
効率的偵察に有利な高度35000~40000mを採用したい。
偵察機は12、通信中継36、救難飛行艇6、先行無人偵察機12以上が作戦参加機
であり乗員要員はここでは省略。予想着水地点に海から救援艦配置を願いたい。
陸には樺太及び北海道、千島にて救援配置を願いたい」

「空が想定する着水点の数はいかほどか?」
「最低12、希望は24か所となります」
「うーむ・・・24は・・・何とか出来るでしょう」
「万一の場合の救助ですが、配置を歓迎します」
「陸は容易には配置できないな・・・樺太は補給面から海岸近くに数か所、
北海道は14か所で了解してほしい」
「陸は念のためなので配慮に感謝します」
「海は配置まで12日としたい」
「陸は・・・配置まで24日は欲しい」
「空も準備は不足してるので40日おいて2024年5月2日配置完了で合意したい」
「海は同意する」
「陸も同意だ」
「それでは第一作戦課が詳細をまとめて部長会議に提出いたします」
陸課長と海課長が同時に軽くうなずいた。

杉原総理や鈴木第二人事総局長が日々の忙しさに日々を過ごし・・・
2024年5月3日、外域偵察作戦発動、転移後日本の総力に近い大作戦だった。
総理と大臣、鈴木は状況の詳細が判明すると期待した。

5月4日、拡大閣議に鈴木が参加し偵察報告を待っていた。
鈴木は期待を表情に出さないようにコーヒーや茶を眺めて心を整えた。
10:00、国防軍司令部より連絡将校が入室し報告書を国防大臣に渡して退出。
笑顔の国防大臣が報告書を読み終えた。
どういう訳か笑顔が消え緊張と苦しさが表情に出ている
総理が察した「報告に問題が出たのか?」
「真に・・・真に言いづらいが・・・偵察に失敗した・・・全滅・・・」
副官が報告書を杉原の前に置いた。
「読んだ後、大臣に回し全員が読み終えた」

偵察は順調に進行していた、無人機による10000m偵察は問題なく外海を偵察。
次いで偵察機は上昇、高度34000mに到達し詳細偵察に入り山頂付近を抜けよう
とした時に爆散し墜落。樺太方面の1機がかろうじて救難予想地点に着水、
機長だけが生存、直ちに救助されるが1時間後死亡。機体に激しい電撃を確認。
偵察機12乗員96名が死亡し高高度偵察は失敗。

閣議は鎮痛と無言に包まれた。
「・・・ ・・・」
「・・・ ・・・」
「総理として尋ねるのだが・・・どうすべきか?」
「偵察は必要と合意してます・・・軍はどう考える?」
「軍は・・・任務を果たします!」
「それは・・・無人機は墜落しなかった・・・」
「軍も慎重に進めて・・・なのに・・・」
責任問題はまずい、杉原が鈴木を見つめた
「違いが在るとすれば、無人機は10000m偵察機は34000m・・・」
「高度の違いで大型偵察機が雷撃で爆散の例は無い」
「確かに無いでしょうが、この世界は・・・」
総理は椅子に身を落とした
「高度34000mに・・・何かが在るのか?偵察機を爆散させる程の・・・」
「在ると仮定し被害を避けるのが大切と・・・」
「では高度32000に飛行制限で良いとの考えか?」
「いえ、それだけでなく・・・詳細の偵察は肝要と」
「うむ・・・偵察方法はどう考える」
「損傷は電撃、偵察機を非金属とセラミックで作れば良いと考えます」
「飛行制限と新型偵察機開発・・・意見は?」
総理が大臣たちを見回した
「賛成・・・以外に無いな」

偵察失敗は公表されず研究所は新型偵察機開発優先を指示された。

 

 

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」21話

2020年12月30日 | 小説

             21話 測定誤差

杉原総理召集の6大臣は総理共々判断に窮していた・・・
なんで呼ばれたか判らない第二人事総局長鈴木は考えることを止めていた。
総理が5人と鈴木を見やって話しだした
「資料は正確だ、問題は・・・偵察結果に測定値のばらつきが在る点だ」
「ばらつきと言うには違いすぎる、500~600キロも違うのは・・・」
「レーダーとレーザーによる測定と報告されてるが・・・」
「ばらつきも問題だが・・・この島は・・・オカシイ」
「2000キロ、7500キロ長円形の海に日本と樺太や台湾は良いとしても
外周が4000キロ9000キロの島・・・日本周囲の海が、外の海より1500mも高い」
「高さもそうだが、南から流れ落ちてる海水の量は膨大だ・・・なのになぜ
海水面が低下しないで安定してるのか?」
「外から海水が入ってくるにしても1500mの落差を上れないだろう・・・」
杉原が左手を上げ大臣に静粛を求めた
「さて、ここは人生の先達から意見を伺おうと思う、人事総局長の意見は?」
何も考えず意見の数々をぼーと聞きながら飲んでいた茶をゆっくり置いた
「そのままを受け入れる・・・測定誤差550キロ、外海と内海の落差1500m
流出してる大量の海水が外海から内海に流れ込んでる・・・」

「そんなのは考えられんぞ・・・」と国防大臣
「年寄だが・・・現在の状況が従来と違う事は判る、かなり違う世界だろう」
「自然法則は・・・」
「知らない点が多いのだろう、島も怪物も・・・この世界では普通かも知れん」
「総理として判断を下さねば・・・偵察測量は月に1回、海水面問題は不問で。
次は国民救援隊による活動地域拡大に伴う問題だが・・・総局長、報告を」
「扱いは個人と家に分けています、この家とは企業と生活を一体とした物です」
「なぜ家という単位を?」
「1年以上生き延びるには・・・かなりの状況を・・・過ごしたはずで、
強い集団化が完成してるから個人に分けても良い風に成らないでしょう。
管理も複雑に成るばかり・・・家とすれば管理はし易い」
「うーむ・・・家として北海道と樺太に送り込むと・・・」
「老人ばかりを送るのも・・・」
「良いだろう!救援は個人と家の二本で進めよう」

全員が思う、それにしてもここが惑星なら相当巨大な星だ・・・
まだ外は問題にならない、国民救援と台湾支援さえ不十分、住居と食料・・・
寝たきり老人達の支えは、プレゼントされた縞入りの石・・・傍に在るだけで。