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小説「2023年日本転移」38話

2020年12月31日 | 小説

            38話 橘少佐

2027年1月4日
黒山脈と黒岩石族に対し政府秘密会議で合意が形成された。
黒岩石族は生物集団であり台地上の黒岩と海岸及び海洋生物を
捕食し岩石質及び有機物の構成で頑強凶暴で集団生活を営む。
生活形態は狩猟で有り農業形態は観察されてない。
個体どうしの通信方法は不明。可能通信距離も不明。
現在の所は観察探険隊を避けた事例が在る。

航空偵察によれば黒岩と黒山脈は同質と考えられる。
上空で電磁気的物理的攻撃を電子装置に受けた事は明白であり
自然現象と敵対意識の要因が考えられる。
注目すべきは敵対意思の本体はどこか?あるいは誰か?
地球の歴史を参考にすれば狩猟民が上空に至る複雑強力な攻撃力
を持つのは疑義が在る。黒岩石族以上の種族が存在する可能性は
高いと考えられる。そのような種族の領域に安易な侵入は危険。

政府として外輪陸地に進出は慎重の上に慎重を要する。
よって友人上空偵察は無期限中止とし無人偵察は最小限とする。
外輪陸地にエネルギー兵器を運用する種族が存在と考えられる、
軍および研究所の検討によれば戦闘になった場合は日本壊滅で
ありエネルギー効果は地下30mまでの生物消滅と推測。
これは植物を含む全生物の消滅であり破滅である。

無策で過ごせる余裕は日本に無い。
世界を知る目的で外輪陸地に調査隊を送り物理的生物的調査を
必要とする。不明種族の注視を集めない為に電子機器は不採用、
調査機器と武器類も同様の配慮を要する。

エネルギー兵器攻撃に備え避難路として内海水流下地域周辺を
調査する拠点を内海岸に設け外海岸まで調査を進め通路を確保。
軍事的状況は絶望的であり避難路建設を実現しても軍作戦課の
試算によれば外海岸への避難人数は500万以下・・・


第二人事総局本部。
外は信州にしては暖かく空には白い雲・・・鳥の声も・・・
うーん・・・緑茶は良いなあ、縁側で猫がいれば・・・
ピコンの音で現実逃避は御終いだ。
「出頭のみなさまが第一会議室にそろいました」
「うん、今いく」
とは言ったが半分の茶を残すつもりは無い、貧乏くさいと言う
目つきで秘書たちが見るが価値ある物は大切なのだ。
時間が何だ・・・椅子を立ったのは1分後、長官室を出た
「さて、会議室は?」
「こちらです、先導します」
拡大に次ぐ拡大で部屋の場所さえ老人には記憶できん。
頭は以前よりはっきりしてるがやる事が多すぎる。

第一会議室の配置はいつもと同じだ。
V字型の上の位置に議長の机、参加者はV字型に着席する
議長席歩むと全員が立つ。
一礼すると全員が礼
いつも通り全員が歳よりで70歳ぐらいか?
「知り合いの方々もおられるでしょうが特技でお呼びしました」
「特技と言われても自分は剣術だが?」
「自分も剣術だが西洋古代剣術だ・・・」
「柔術だ・・・です」
「私は我流の動物柔術なんだが・・・」
「私は・・・昔古代兵器と戦術を・・・」

8名全員が呼び出された訳を知りたいようだが当然だな
「それが特技ですよ、調査隊を出すのですが隊員に伝授して
欲しいのですよ」
「基礎訓練か?自衛隊・・・日本軍で教えてるのになぜ?」
「えー軍に剣術や古代戦術の教程は無いのですよ」
「小銃と機関銃の時代に?」
「いやいや、戦車と戦闘機の時代だぞ」
「75ミリ核砲弾が作られたと10年前に聞いたぞ」
疑問の答えも無く声が途絶えた
「えー戦争では無く・・・調査隊なので護身術とお考えを」
「うむ・・・護身術なら多少役立つか・・・」
「なるほど、知らない場所に行くなら格闘術は心強いな」
「動物柔術も使う事も・・・」
納得したようだ
「沼田に調査隊訓練所が在りますのでお連れします」
全員に断る選択肢は無いようだ、格闘術は下火だったからな。
わずか30分の会議で8人が出発した。

橘技術少佐はわからぬまま作戦部36具足課の部屋に歩いた。
噂に出てくる無用の尉官、左官のゴミ捨て場・・・
まだ30だし大失敗や事故も無いのになあ。
扉の前で10秒間直立不動、ノックなどしない、開けた
「橘少佐、出頭しました」
妙な部屋だな?
制服や軍靴や軍帽は判るが・・・麦わら帽子や脚絆は?
軍足と軍手は判るが今時の軍で使うか?
あれはこん棒?昔の海軍バット・・・根性棒か・・・
正面の机に一人、右に一人、正面が課長の中佐だ
「入れ」
中佐の前に立つ
「休め」
両手を後ろに足を開いて顎を引いて中佐の言葉を待つ
「只今より橘少佐は36課に移動する、良いな」
うわ・・・何てことだ・・・
「はい!」
「よろしい、少佐の優秀さは36課にも届いてるよ、結構結構」
何が結構なんだか目がくらみそうだ・・・努力が無駄に・・・
中佐が笑った
「納得して無いな、私も36課で落ち込んだものだよ・・・」
「尋ねてもよろしいでしょうか?」
「許可する」
「他の課員はどちらに?」
「外だよ、あーーー出張と言うかだな、ここには居ない」
ため息も出ない・・・怒りが出てきて中佐を睨んだ
「自分の任務はどこでしょうか?」
馬耳東風に腹が立つ
「まあ、そう怒るな。会議ボックスに入りたまえ」
左奥に秘密会話用の会議ボックスは在るのだが必要あるのか?
座ると中佐が机から細いケーブルを引いてきて座り遮蔽を降ろす
在るのは中型モニターだけ。
真赤な色で最高国家機密の表示、専用キーボードが有効になる。
「橘少佐、作戦行動に必要な情報を記憶したまえ、話は後だ」
橘少佐は一人残された
「・・・」

少佐が出たのは6時間後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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