町工場 職人の声

職人と現場人間の想いを誰かに伝えたい!

小説「2023年日本転移」50話

2020年12月31日 | 小説

     50話 進行する決戦体制

戦略偵察航空団各基地に新型機の配備が急速に進んでる。
木竹製の機体に全機械式計器と操縦機能で電気装置は無い。
エンジンは航空用レシプロV型12気筒1400馬力復水器付き。
燃料は軽油やジェット燃料、液体なら種類を問わない。
エンジンさえ木竹製、竹繊維樹脂の射出成型で生産。
エンジン補器用蒸気エンジン20馬力。

高度6000で時速750キロ、実用高度22000、滞空時間5時間。
乗員2名。偵察機材は機械式カメラ3台、対地双眼測距義。
機械式電磁気記録装置、外気記録装置、不時着時染料、
信号銃、生産は自動編上げ装置と既存手段で大量量産。
エンジン構造も原理が単純で工作は容易。
航空灯さえガス灯を採用した。

現在600機を配備し一次計画の1000機に残るは400機。
二次計画で2000機を配備。
減耗を考慮すると外周陸地の偵察には足りないと判断。
軍及び研究所では減耗60%と推測されてる。
山脈深くの詳細は現在、偵察不能なので推測自体が不正確。

日本脱出用船舶の設計と建造施設の構築も進行中。
追撃を減少させる目的でレシプロ多気筒蒸気エンジン。
船体は木竹、プラスチックにコンクリ、セラミック。
排水トン数で1000tから2000t。
電気、電子装置は搭載してるが稼働には厳重な制限命令。
偵察機と船舶運用の要員訓練を厳しく急いで実行中。

探険建設軍の装備として小型偵察機の生産が決定。
蒸気エンジン採用で離陸60m着陸25m乗員2名。
30日後100機を第一拠点に輸送の予定。
同時輸送で非老人男女2万人を輸送、拠点1ヵ所に10万人計画。
現地輸送の資材は調査不充分で未定。

杉原総理の表情はさえない・・・
「資料の通り偵察計画と脱出路計画は予定通り進展してる・・・」
一息おいて大臣達が顔を眺め合った
「それにしては、浮かない顔だが・・・」
「予定通りでも安心には遠い・・・みなも承知の事だが・・・
偵察を増やしても岩石族の大規模攻撃を防ぐ事は不可能だ・・・」
全員がゆっくり頷く
「だが、攻撃を30日前に知る事が出来れば避難を・・・・」
総軍と運輸交通大臣が叫んだ
「避難と言うがどこに逃げるんだ」

誰も話せず声さえ出せずに10分が過ぎた
「九州で良い・・・間に合えば台湾に・・・逃がそう」
「しかし・・・生活いや生存が破たんするぞ・・・」
「総理として言えるのは岩石族侵入に抵抗してる間に逃がす
としか言えない。その為に老人300万人を・・・北海道に・・・」
全員が沈痛・・・
老人をさらに200万を北海道に輸送中、総軍大臣が口を開いた
「船を増やしてる、可能な限り大勢を南に逃がそう」
総理を含め全員が苦しい賛意を示した。

総理が第二総局長に目を向けた
「総局としての・・・意見を・・・欲しい・・・」
何時ものように日本茶を飲みゆっくり置いた
「意見は無い、老人集団にどうせ未来は無いのだし、ここまで
生きて幸せと言うのが大多数の想いだよ、岩石怪物と心中も良い」
「無駄にはしない。脱出路建設を必ず実現する」

第一拠点で建設が急速に進む。
飛行場に偵察航空団が移動し持続偵察の準備が整う。
隊員宿舎が建設され設備も整う。
広範囲を整地しコンテナ倉庫が広がる。
155ミリ榴弾砲部隊が展開し支援砲撃準備完了1門弾数600発。
東方に戦車と自走砲部隊。装甲車部隊は飛行場と宿舎周辺に配置。

探険分隊30が偵察行動中。
最大生物は6mの陸ガメ?手足のほかに触手を数本備え地下に伸ばし
動きを止めて数日と言う性質で攻撃性は低い。25ミリで無害化可能。
生物相は多種多様で研究所の本格調査を待つ。
装備資材の揚陸はまだ残る。
気に成るのは上空の巨大鳥?で攻撃性の有無は不明。

次の行動は岸壁の建設。
2万t級接岸を20ヵ所を計画、建設後5000トン級を40ヵ所予定。
行動は順調、しかし総司令の心の不安は消えない
(あの岩石族が1匹でも侵入すれば全滅・・・)同じ想いの繰り返し。
熱い紅茶が置かれた
「少尉は気が利くね・・・ほっとするよ」
「判りませんが、私に出来る事ですから」
「そうだ・・・出来る事を実行だな・・・」

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」49話

2020年12月31日 | 小説

     49話 第一拠点司令部上陸

探険部隊が外周部の調査を進め上陸点の面積を拡大して
行く、南方は植物ドームが徐々に増え数千と推測される
大群落を作り上げてる。数は数万かも知れない・・・
今の所、無害であり生息している動物も見ない、出入口
さえ無い、穴さえ一つも無いので内部は暗闇。

ドーム外部は緑と白と灰色の縞で植物に隠れる。
先導分隊が調査したのは小さな方であり南方に進むにつれ
大きくなり高さ7m径15mで大きさはそろってる。
壁は頑丈であり硬さも大きい、調査用の5センチ穴を空ける
のに1時間を要した、厚さが10センチなのに・・・

北方は高台であり上陸点から3k離れ10mの段差で地形が
変わる。東方は高さ8mの森林が1k、草原?が2k続き、
森林と草原の繰り返しが遠方の山脈まで続く。
海岸から8kに湖が在る、1k80kの淡水湖であり山から
流れてくる川の水量は豊富、地下から海に流れるのか地表
に海への川は無い。

北東遠方は岩石地帯であり植物は少ない。
地形は変化が激しく高低差は大きい地割れや陥没なのか
大穴が無数に散在し徒歩でも車両でも移動に危険を伴う。
そんな場所に航空偵察で10mぐらいの陸ガメ?を発見。
生息してるのか荒野を移動してるのかさえ判らない。

東南は多数の湖と巨岩、200mの大木が無数に空を覆う。
航空偵察でも地上を移動する困難を想像さえ出来ない。
探険部隊が地上を進んでるのは南方3k北方3k東方2k
であり現状で充分だが拠点にする島の面積は広い・・・
直径は10kも有るのだから。

海岸の揚陸道路は段差の上まで完成、コンテナ移動用の
ウインチも設置。路面ロールを広げた道路は22ヵ所。
コンテナに追加フロートを左右に取り付け小型艇で海岸へ
運びウインチで段差の上に引き上げる。
移動用の軌道は幅2800ミリ線路の様に架設し転車台も有る。

北側に倉庫群コンテナ、南に装備群コンテナ、東は部隊用。
コンテナ1個揚陸に1、5時間、一日に100個揚陸コンテナ数
は2000個以上であり揚陸だけで1か月の難作業。
揚陸と並行し警備艦は北と南に向かい10m動物に76ミリ砲
で調査砲撃、侵入爆発をカメラで確認、記録を持ち帰った。

別の警備艦2隻が南の川から左回りで島を周回し調査。
流れは強いが動力船の運用に問題なしを確認。
周囲80kの航空地図完成。
最初の上陸から14日後、
探険建設軍は司令部を陸上に移動した。

予定外の現地状況に対応の命令がだされた
「2番艦、9番10番は本土に航行、補給後帰還せよ」
「少尉、命令書を渡せ」
「はい、詳細命令書です」艦長3名に手渡し。
「命令、受領しました」
指令官が緊張を解き穏やかな言葉を発した
「早くでは無く、確実な航海を・・・」

作戦の変更点は拠点電力だ、基本は最低規模なのだが
豊富な水力で発電が出来る。水力発電所建設の価値は大。
むろん未確認文明の危険は想像も出来ないが電力無しで
拠点活動持続は技術的、時間的に不可能である・・・
橘総司令官は拠点壊滅の恐怖を飲み込んだ
(壊滅しようとも・・・発電所建設を実行する・・・)

先導分隊は東に森を前進し草原に到達、死者3名、重傷6名。
森の奥には事前に発見できない素早い動物が潜んでいた。
報告は伝令、司令部に届いたのは2日後だった・・・
無害と思えた島も・・・恐怖生物が生息する異世界。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」48話

2020年12月31日 | 小説

     48話 海岸平地

分隊で言えば4個規模に相当する先道隊52名は間隔5mで
左右240mに散開し前進を開始。驚異となる相手は生物
なので間隔はわずか5m、銃撃戦に備えた散開とは異なる。
地面は驚くほど平坦、長年の植物堆積だろうか弾力がある。
植物は多様、地球と違う特徴は緑色だが60%は白が混じる、
見える範囲の全てに白が混じり複雑な模様が種類で変わる。

段差から200m前進を確認した車両4台が段差を登り50m
進み20m間隔で並ぶ、内側2台は35ミリ、外が12.7ミリ。
支援射程3000m。
運転室の上部に追加された見張り台が2m上昇、点滅灯光器
の機能確認を終了し前進して行く分隊との光点滅通信を確立。
全隊員は無線機装備だが非常事態以外での通信は禁止と厳命。

見張り台の観察双眼鏡が妙な形を見つけた
車両相互は優先電話で連絡を保っている。4両で形を確認した。
正面からわずかに右前方800mに径6mのドーム状構造物が多数。
車両の隊員は全員が驚愕した
(まさか、まさか原住民が居るのか・・・)

分隊は前進するが見かけより植物の強度が高い、たとえるなら
ばね鋼で作られた模型植物の強さ。
高さは肩に達し分けて進むたびに体力を減らす・・・
草なのに果実をつけてる種類も多い
(うまそうだ・・・)
動物は周囲に見えない逃げて行く音は聞こえるので存在は確実。
録音はしてるから後で解析に回せば良いだけだ。

白い森林は遠い・・・距離で無く、歩行前進の困難で遠い。
純白の木々、緑の枝葉、種類は多様で光に煌めく。
森の手前は鳥?が多数飛び交う。
前方にわずかな低地を見つけた隊員が注意の合図、うごめくのは
海岸段差で出てきた1mゴキブリ?が数十。
(うわあーーーこいつは嫌だーーー)

「注目、情報が来た、右前方に集落構造。右15度に進路変更」
隊員たちは喜んで右に進む。
(集落構造?現地人・・・まさかな)
先道隊の全員に緊張が走った
(対人戦闘・・・不安だ・・・)
色とりどりの花が咲いてる背髙植物の草原で現地人と戦闘は不利。
音を消しドームに接近、音は聞こえず広場は無く生活環は無い。

合図で3名が近くのドームに張り付き偵察鏡の棒を挿入。
一人が戻って少尉に報告
「人工物では有りません、植物により出来た構造で動物は居ません」
「良し、全員で確認 」
「20個観察、全て同じです」
「良し、伍長、全員に伝達、散開し森に前進」
「はい!」
車両隊員に自然物と信号送信。

森の手前50mに到達、状況報告に伝令を1名送り出した。
車両から船艇に伝達。
24隻の隊員が上陸を開始、上陸終了まで6時間。
総司令官は小口径銃器が現地生物を破壊した事に絶望が消えた。
(良かった・・・黒岩石が居なくて本当に良かった・・・)

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」47話

2020年12月31日 | 小説

     47話 先道隊上陸

全長20mの船艇24隻に第一上陸隊が乗り組み海岸から
1500mで停止。8隻が横に並び前方100mから海岸まで
16連対潜迫撃砲を海面に打ち込み危険生物を排除。
地球なら一撃で危害半径300mの性能。
異世界での効果は不明だが予備砲撃は上陸兵の気休め。

2隻が海岸に前進、1隻に26名が乗っている。
最大火力は35ミリ自走機関砲、文字通り自走であって
装甲車両では無い、それは小型で軽トラの運転台を前後
逆向きにし荷台に35ミリ機関砲を搭載、乗員4名、1台。
同様な車両、12.7ミリ機関銃を搭載、乗員4名、1台。
40ミリグレネード装備隊員6名、小銃隊員12名。
チェーンソー6個。ウインチ4個、その他装備・・・

26名の指揮を取る階級は少尉。
湾の奥だと言うのに海岸は砂で無く5センチぐらいの黒石。
海から砂浜の様に100mは続く。
黒石に生物は見られない、居るのかいないのか・・・
しかし100m前方の陸地には植物が茂り動物の姿が見える、
さらに遠くに森さえ見える。
形は違うが地球の様に多種多様の生物相。

「上陸!」少尉の命令が静かな海岸に響く。
前扉を倒し車両2台が海岸に乗り出し50m前進して止まる。
上陸先道隊、総員52名が上陸し車両位置で散開。
黒石の途切れる所、2mの段差に接近・・・
車両は海岸50mで援護体制。
草むらから何かが黒石に落ちて来た、隊員達は悲鳴を堪えた
(うわーーー1mのゴキブリーーー)

少尉でさえ息を飲んだが指揮官であることを思い出す
「鈴木伍長、2名で銃撃!」
近くで震えそうな2名の肩を叩いた
「聞こえたな、直ちに銃撃」
訓練は偉大だ・・・
素早く構え点射で発砲、わずか15m・・・全弾命中。
生物は5分もがいて息絶えた、確かに死んだが小銃弾なのに
貫通せずに体内で停止、侵入深度は10センチ・・・
これを確認した隊員は喉を抑え何かを堪えてる。
「小銃で殺せましたね・・・」伍長は呑気と少尉は想った
(あの黒岩石族・・・知ら無いのが羨ましい・・・)

森の手前の空中はおびただしい鳥?が飛んでいる。
先道隊は段差を登り、森までの前進を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」46話

2020年12月31日 | 小説

     46話 若い妻達

ユウマ家の統領と副統領タダシは家族の為と長期の
猟を重ねていた。
命がけの慌ただしい作業の連続に体力と精神は痛む。
規模は拡大し二人に休む暇は無い・・・
二人は想う
(帰れば幸せが待ってる・・・それまでは・・・)

家では妻たちが二人で会話していた。
「ねえ、元気ないよねミチ」
「うん・・・だって・・・寂しいから」
「わかる、わかる、夜なんか泣いてるもん・・・」
「ナツでも泣くの?」
「さびし過ぎるから・・・かくれて泣くのよね・・・」
「会いたい・・・」
「あいたいよねえ・・・」

帰宅は予定通りでも数か月は先だった。

寝たきり老人12名は苦しいうめき声を出さなくなった。
胸の記念品に手を触れ幸せそうに横たわる。
身動きできない寝たきりから、ひじから先を動かせる様に。
介護の女性たちは感じた
(回復に向かうなら、最後を幸福に想うわね・・・)
多少腕を動かせても・・・歳には勝てないのだから。
介護は長い、情が移って看取るのが・・・つらい。


小説「2023年日本転移」45話

2020年12月31日 | 小説

     45話 拠点

7番艦、8番艦は低速航行で東に航行し周囲の海と空を
観察し情報を蓄積。海底は海面下300mが続いてる、
変化は海と空に出てきた。
左舷の海は穏やかに見える、右舷の海は水平線でさえ
飛び跳ねる大波。
遠くの海は渦を巻き流された流木が海中に消える。
爆雷のような水柱がいたるところで海面を飛び出し、
高い物は150m以上に届き、砕けて滝のように落下する。
その轟音は800tの艦体を揺らす・・・

右舷上空も雲が渦巻く、水平線上の雲は虹色の様に変化、
暴風の影響は艦に届く。雲の中、水平雷が多数輝く。
艦長以下、全乗員が恐怖する、船も飛行機も墜落し沈む。
進路は自然に北に変位していた。

島をいくつか過ぎて深度は80mに変化、大陸棚なのか?
艦長が命令
「艦隊に報告、島と深度、簡略に南方の大波と暴風を」
通信室は使用禁止の音響通信機を作動、副長の声を待つ、
「島を視認、深度80、右舷遠方航行不能、飛行不能」
地球なら3000キロ届く音響通信機、艦隊の距離なら確実。
通信は180秒で終了。

陸地を視認。
距離10000を保ち北上・・・大河を発見。
艦長が予定通り接近を決断
「距離7000に前進」
通常方法、エンジン出力を上げ河口に近ずく・・・
艦体が左右に揺れ流される、前方に流される異常事態。
艦長も驚愕したが「後進全速!」
「後進全速」
「距離増大1100m」

予想を超える強い海流を離脱した事で冷静になった
「時速25、距離10000保持、針路を北に取れ」
2時間過ぎる前に陸地が中洲であることを推測。
二つの大河と見えたのは確かに河だが海から流れ出る河。
水流は地球と逆と確認するのに1時間を要した。
2隻は大河の中間、陸地から距離8000で観察を続けた。

本体が距離12000で遊弋、全艦が合流。

1番艦に艦長と各部隊長が集合し航空偵察動画を共有。
端的に言えるのは中洲は2m以下の生物と飛行生物の天国。
北も南も河を超えた陸地は凶暴な巨大生物の支配地。
中洲に上陸不能なら作戦の失敗を意味する。

司令官が命令した
「7番艦、8番艦に命令、76ミリ砲、35ミリ砲、25ミリ砲、
12.7ミリ砲の効果を実弾射撃で確認。
偵察隊に命令。
500キロ爆弾、250キロ、125キロ、50キロ爆弾投下、確認。
戦車中隊に命令。
搭載艇で戦車1を揚陸、120ミリ砲、効果確認。
155ミリ砲1門を揚陸、効果を確認せよ。
探険中隊に命令。
1個分隊を揚陸、分隊戦闘力を確認」

司令官の合図で休めの号令。
「命令の目的を正直に言う、兵器が効力を持つか不明なのだ。
沿岸生物は地球人の常識を遥かに凌駕しており航空爆撃も・・・
目標現地の生物は最大の大きさと凶暴をしめしている。
小型生物と言え砲弾で致命傷と成らないかも知れないのだ。
この命令は、全滅を予測した強硬偵察である。
たとえ全艦体が全滅しようとも現地情報は必要である。
詳細を言えないが日本民族の生存・・・必死の覚悟で行動を」

「司令官に敬礼」
全員が立ち上がり敬礼、
司令官が部屋を出ても数分は誰にも身動きさえ無かった。

25mの搭載艇が降ろされ上陸装備のコンテナを吊りあげて搭載。
9番艦と10番艦に戦場観測の命令が下された。
強硬上陸は明朝・・・
物理量の変動する夜空・・・きらめきと無数の星は空を埋めていた。

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」44話

2020年12月31日 | 小説

     44話 情報評価

東に3時間ほど航行した頃、大気の擾乱は穏やかになった。
集合室、多目的の会合にも用いられる50人容量の大部屋、
今は航空偵察中隊の大村大尉と木原大尉が壇上に立つ。
40名が席に着く静かな室内に大村の声が響く
「航空偵察を実施する! 目標は東方海岸地域、特に地形
に注目。目視及びカメラによる低空偵察、帰還を最優先。
無線及び航空電子装備は禁止、非常事態でのみ許可する。
位置認識は自立航法、離陸したのちは着艦まで報告禁止」

木原大尉が続ける
「作戦は第一中隊と第二中隊の合同偵察であり各1機の2機
を使用。発艦はカタパルト、着艦は失速短距離方式。
現時点で機体はカタパルトに2機とも準備完了、発艦のみ」
ゆっくり全員を見回した
「飛行は単純だ、東海岸に達したら北上50キロ、後帰還だ」

大村大尉が代わる
「第一中隊より桜木少尉101番。第二中隊より草木少尉102番。
偵察員共に両名は搭乗し発艦準備開始。見送りを許可する」

「以上、解散 」

桜木少尉は偵察員の原田と、草木少尉は田村と乗機に急いだ。
5分待って隊員が飛行甲板に向かう。
機内で声を出す乗員は居ない、無言で発進操作は進む。

橘司令官と艦長は艦橋から偵察機を見ていた、思いは同じ
(あの小さな偵察機・・・2機と4名に日本人の運命が・・・)
報告が届いた
「発艦可能です」
艦橋より旗信号
「偵察機、発艦」

風貌が閉じられ、偵察機のエンジンが稼働・・・8分後全出力。
カタパルトの火薬燃焼音で甲板を飛び出し加速。1kで上昇。
高度300mで艦隊を旋回後、高度3000mで東に消えていく。
レーダーは完全停止、対空双眼鏡による方位と高度の測定。
司令官からため息がこぼれた
(いかんな、嘆いてる場合では無い・・・)
「命令、7番艦、8番艦は直ちに東方に航行、陸地5000mで遊弋」
艦橋の外で旗信号と光明滅信号で命令を伝達、受領信号視認。


桜木が声を出した
「原田、航法を確実にな・・・」
「はい、少尉。それにしても全機械式ジャイロと計器とは」
「偵察員の装置には驚いた、初めて見たときは怒りさえ湧いた」
「訳でも有るんでしょうかね?大災害で電子装置が不足とか?」
「装置の不足は無いだろう、予備装置や補給品は多いと聞いた」
「噂ですが・・・初期の墜落は電子機器が原因とか・・・」
「噂にすぎん、電子爆弾の攻撃を受けたとも思えない」
「数時間、航法は楽なもんです、目視ですから偵察の方が難しい」
陸地を視認した。
多種多様の飛行生物は偵察機をドームの様に囲み続ける。
少尉と偵察員は息を飲んだ、1羽でも衝突すれば墜落は確実。
恐怖は有るが任務は重要、作戦の困難は乗船時に自覚したはず。

海岸を北上、時速200キロ、15分で50キロを飛行する。
海岸に中洲を視認、目視で10キロの円形。
「旋回開始、下部カメラ作動」
「作動開始、撮影開始します」
中洲の外周を旋回しつつ高度500mで偵察、旋回7周で広範囲撮影。
「カメラ停止」
「停止しました、撮影正常」
「良し、北へ向かう、これからは目視と写真だな」
「上部カメラで撮影してますが、飛行生物は予想外に多いですね」
「これだけ飛んでるのに衝突どころか接近も無いのが不思議だ」
「墜落かと・・・」
「高度1000、10分後母艦に向かう」
「帰還したら一杯と行きたいですね」
「ああ、祝杯だ」
(着艦方式に・・・不安が在るんだよ、ロボアニメかよ・・・)

司令官は桜木少尉の何倍も着艦失敗を考えていた。
2機の無事着艦を見て心中で大喜び。
偵察報告を受け艦隊は東に向かう。
写真だけでも現像を終えれば今後を検討できる。
偵察員による視認情報。
中洲の発見は大きな希望、巨大生物を排除すれば拠点に最適。

詳細は現像後、偵察任務、7番、8番艦の海上偵察結果で判る。
探険軍にとって航空偵察の成功は大きな意味を持っていた。

 

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」43話

2020年12月31日 | 小説

     43話 探険建設軍の戦力構成

艦隊。
  1万t揚陸艦   1隻
  1万t輸送艦   1隻
  5千t輸送艦   4
  800t警備艦    6

上陸作戦時戦力。  
  上陸将兵数   2700名    
  航空偵察中隊   2個
  探険中隊     4個
  戦車中隊     2個  
  対空中隊     2個
  建設中隊     4個
  本部隊     1000名 
  台湾軍     1200名 

拠点常駐部隊。
  航空偵察中隊   2個
  探険中隊     2個
  戦車中隊     2個
  対空中隊     6個 35ミリ機関砲砲、75ミリ砲
  拠点砲兵  中隊 6個 150ミリ榴弾砲36門
  建設中隊     2個
  拠点本部隊   6000名
  台湾軍     600名    


作戦計画では50キロごとに拠点を建設し将来に渡り維持。
陸上路の予想距離は600~1200キロと予想された。
拠点を12~24必要とする、1拠点に約10000名の兵数は必要。
なので常駐兵力総数だけで12~24万人以上。
陸上路建設部隊は別に投入され増え続ける。
第一拠点よりの兵站任務部隊も増え続ける・・・

問題は現住生物の有害性と数、それに撃破に要する戦力規模。

戦略航空偵察団と第101航空団第一爆撃隊から抽出した
偵察機2機が東の水平線の彼方に消えた・・・
少佐の心中(たのむぞ・・・黒岩石族に機銃や大砲は無効)

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」42話

2020年12月31日 | 小説

     42話 落下海流

内海の海水が外海へ流れる地域を落下海流と呼んだ。
航空偵察もこの地域だけは特別困難であり測定誤差を
数十倍超える差により詳細は不明、海流の確認に留まる。
電磁気擾乱は強力で休むことなく続き、大氣は海面から
上空30000mまで暴風が渦巻く。
艦隊はある程度判明した海域を超え南に航行、島々を
視認した頃の海は激しい流れは渦を巻き操船は困難を増す。

異常なのは物理量や海だけだは無かった、
事前予想と異なり多種多様の生物相が大繁栄してる。
海には80mの巨大生物、そして空には30mの鳥?さえ飛ぶ。
特別なのは生物が艦隊を2000m程離れて遠くに逃げない。
橘司令さえ声が出た
「予想外だ・・・これ以上の南下は・・・」

艦隊は東へ針路を変え特別偵察機の発艦準備を進めた。
機械式カタパルト、偵察機組立、ヘリにより周囲偵察・・・
艦隊から地上装備に至るまで電子機器を極力減らした軍。
非常事態に備える最低減の機器はもちろん装備してる。
準備の進展を気にしつつ橘司令官は偵察機の基本仕様を見た。

   乗員:2名
    全長:8.0m
    全幅:10.1m
    全高:2.9m
    翼面積:16.6
    空虚重量:1130kg
    最大離陸重量:1,400kg
    エンジン:水平対向1基
    出力:260hp
    最大速度:330km
    航続距離:1,300km
    実用上昇限度:6,500m
    上昇率:375m/分

この機で激しい気流を飛ぶ事は出来ない・・・
東の上陸候補地の気流だけは安定良好を望むばかり。
それにしても小規模の艦隊、だが日本の全国力の艦隊・・・
「偵察機・・・降着装置強化で着艦距離40mワイヤ未使用」
これは良いと性能を知る者達は全員が思った。
緊急なら操縦者が優秀であれば着艦距離は20m以内可能。
偵察装備は機械式カメラと望遠鏡・・・

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」41話

2020年12月31日 | 小説

     41話 探険建設軍航行中

富山湾出港は3日前、穏やかな海を慎重に航行し沖縄
と小笠原の中間海域を航行中、指揮官と幕僚に編成艦隊
の詳細を橘総司令官が艦体幕僚に説明を指示した。
艦隊幕僚の木本大尉が椅子を立つ

「1番艦、2番艦は1万tコンテナ船の改造、1番艦は旗艦
で本艦です。3、4、5、6番艦は5千tコンテナ船の改造。
本主力艦隊であり6隻での編成です。
第二艦隊は駿河湾を出港し予定の現在地は台湾に入港、
沿岸警備艦6隻で編成され台湾軍1200名乗艦後合流予定。
合流時間は現在より20時間、以上が艦隊編成と状況です」

「2番艦より尋ねたい」
木本大尉が頷く
「お聞きします」
「改造されたのは判るが特徴の説明を希望する」
「準備してありますので資料を渡します」
7枚の綴じ書類を人数分配り終えた
「一枚に1隻の要目が在りますが本職からも説明します」

「1番艦、旗艦。自力20fコンテナ揚陸搭載能力を持つ。
全長140m幅28mの簡易飛行甲板、ヘリ6機。76ミリ砲4門。
搭載コンテナ数400。25ミリ機関砲20門。搭載艇4.

2番艦、資材艦。全長134m幅21、20fコンテナ搭載数450。
コンテナ揚陸搭載能力。76ミリ砲4門、25ミリ機関砲20。
搭載艇4。

3番、4番、5番、6番艦。全長100m幅17m、
コンテナ300個。コンテナ揚陸搭載能力を持ちません」

全員を見回し発言を続ける
「第二艦隊は沿岸警備艦6隻なので説明を省略します」

橘総司令官が発言
「作戦目標を伝達する。合流後12隻と移送部隊を用い
恒久拠点建設が目的である。よって目視、機械偵察に
より候補地を選択、探険部隊上陸で情報収集、
戦闘部隊を揚陸、建設部隊上陸達成の予定である。
事前情報は地勢、生物情報とも皆無である。
準備なしの作戦遂行は無謀であるが諸君の行動を信じる」

「疑問は有りますが戦争では無い、命令実行ですよ」
「そういう事だな、敵前上陸より良い状況だ」
「疑問どうこうより偵察と探険を先に・・・」
「航行距離を考慮すると候補地選択は3日後・・・」

「上陸後について兵站幕僚より説明せよ」
立ち上がる
「兵站の清水大尉です、現時点で言えるのは1点。
状況によりヘリによるコンテナ揚陸は可能ですが
能力は1機のみ。緊急用とお考えください」

「おおー1機でも揚陸能力のヘリは心強い」
「同意だ、クレーン故障には対処出来んからな」
「それにだ、輸送距離もな・・・」
「この作戦が8年前なら10倍の規模で・・・」
「同感だが今では不可能だよ・・・」
「すまん・・・声が出てしまったよ・・・」

探険建設軍司令部付女性中尉が緑茶を用意した。
コーヒーや紅茶は損耗の可能性が大きい艦隊には
補給されなかった。
「全員、緑茶で景気付けと行こうじゃないか」
「「「良いですねえーーー」」」

橘総司令官の不安は大きい・・・
陸上の先住生物の実態は岩石の怪物。
上陸後に襲撃されれば文字通り、一人残らず全滅だ。
秘密情報が真実なら、通信の暇さえ無いだろう・・・
今は海岸拠点。
襲撃に際し半数でも1隻でも逃げられるような拠点を。