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小説「2023年日本転移」35話

2020年12月31日 | 小説

          35話 2026年12月20日

杉原は拡大会議で一安心していた。

偵察を重ねた事で内海の状況が判明してきた。
東西200キロ南北7500キロの大体楕円形で海面は外海より1500m
高い。南西と南東の広い範囲から大量の海水が流れ落ちてる。
そこ以外は外海より高度9000~14000mに山脈が続く。
内海周囲は多数の島が存在し空を除いて100m超える動物が多種
存在してる。陸地は大型動物は少ない。
植物は島の方が繁栄してるように見える。陸観察は不十分だ。
海洋大型動物の繁殖力は大きくて地球常識を大きく超えてる。
狩猟続けても資源枯渇は無いと考えられる。
島に黒い岩石動物は居ない。
黒岩石族は海岸から山脈の間が生活圏と観察された。

誰一人知らない事だが水生物は日本転移以前は6mが最大級だった
が転移後に急速な巨大化により10~30倍の大きさを得た。
体内に存在した毛細血管の様な命風通路が巨大化を防いだから。
生物としての強度は小さい時の方が数十倍強かった。
黒岩石族から見れば水生物の強度は変わらず問題外に弱い。

偵察機損傷は高度で無く不規則に起きる事が判明した。
統計的に内海高度3000以上で数は増えると観察された。
原因は電磁気だけでなく物理的外力も時により作用と判明。
山脈や谷の偵察は細心の注意と高度な戦略判断を要すと結論。
外輪山の外周偵察は完全に停止。
偵察部隊に対して内海上空と南方海水流路の偵察優先を指令。
南東の流路と山脈の間に低木から大森林の連続を確認。

「総理として、いつもの現状確認から始める、偵察はどうか?」
「軍として偵察に変更は無い、手元資料の通りだ」
「ふむ、ようやく安定した観察を得たな、任務に感謝する」
軍代表の数人の顔が明るくなった。
「黒岩石族の研究はいかがか?」
持参資料を手に持つが震えてる
「・・・えー何と言いますか・・・調べて判明したのは岩石と
有機物の集合体と言いますか・・・」

空軍が噛みついた
「集合体?明確に説明願いたい!」
ビクンとした拍子に資料を落とし慌てて拾う
「えー集合体と言いましたが85%は岩石でして残りが多種多様の
タンパク系有機物・・・で・・・有りまして・・・」
海軍が睨んだ
「判りやすく願いたい!構造は判明したのか?」
「えーーー単純な見かけの構造は判りましたが機能は不明で」
陸軍が口を開きかけたが総理が制した
「単純で良いので説明を聞きたい」
「黒岩石族ですが、個体部が岩石で可動部が有機物で出来ており
まして触手に関しては内部が有機物で外側が岩石の鱗・・・
まあ、蛇の皮みたいな構造であります・・・」

研究所代表以外の全員が首を傾げた。
総理が疑問を尋ねる
「岩石と言うが内臓はどうなってるのか?」
「単純に言いますと口の様な開閉できる穴がありまして・・・
内部は単純な空間で周りから先端に岩石の付いた多数の触手に
よりすり潰し完全吸収すると考えます、完全能力の胃腸であり
出口は不要という事です・・・」

陸軍が発言した
「尋ねるが、脳とか筋肉とか感覚器官は判明したのか?」
発言意図は全員が理解した、弱点が判れば!
「えーーー研究に力を尽くしておりますが・・・不明です。
神経系統も脳の有無もエネルギー系統も不明です・・・
しかし生物構造で有る事は研究員全員が一致しております」
空軍が怒鳴った
「なにが生物構造だ!動き回って爆弾が通用しないのは始めから
判ってるんだ!弱点だ、弱点はどこなんだ!」

「総理としての考えだが、黒岩石族を無視して良いのでは?」
「空軍として無視と言うのは・・・納得が・・・」
「むろん多大の犠牲と労力の意味を忘れたりはしないが・・・
現状で黒岩石族の活動は低調で状況に変化は無い」
食料大臣が珍しく発言
「海洋狩猟で食料確保しておりますが農業生産確立は遠い・・
将来の脅威は重大ではありますが現在は農産に注力願いたい」
軍代表達は不満げだが発言を止めた。

杉原は考えを述べても良い時期と想いを決めた。
「第一の優先は農産確保としたい。第二が海洋狩猟。
黒岩石族の脅威は重大であり日本民族滅亡も充分有り得る!
本土防衛は・・・全戦力投入しても実現は絶望だ・・・
逃げられなくても逃げ道を用意する努力は政府の責務だ。

そこで・・・
南方流路と山脈の間に在る地帯を偵察しながら外海岸まで通路
を開く。航空偵察によれば低木で地形変化も他よりは少ない。
戦闘を出来る柔軟な指揮を経験した小部隊の地上偵察隊。
第三として内外通路建設を提案したい。」
軍代表の機嫌が良くなった
「脅威に対応する案として賛成する!」
全員が賛成した。研究所まで賛成したのは外海に対する興味か?


黒岩石族は史上空前の大動員と移動準備を進めていた。
大呪術師によれば命風暴風もようやく北方でわずかに弱まった。
拡大大族長会議で進撃は北の悪魔大地からと決定された。
東黒岩石族6万が北への移動準備を整えた。

谷岩石族800万が命風暴風を防ぎつつ北山脈の谷に集結を始めた。
先行研究部隊が秘密裏に水生物を捉え海上輸送の実験を進めた。
悪魔の谷を岩石族800万の死と引き換えにわずかな活路を開く!
黒岩石戦士と家族や親せきは100%の別れに体表がひび割れた。

東黒岩石族の残り6万は悪魔の谷弱体化の一瞬に東から突撃し
悪魔の谷から赤ちゃん3人を助け出す決意で燃えた。
たとえ黒岩石族全滅でも赤ちゃん3人を助け出し故郷に帰る。
赤ちゃんに将来は無くても黒岩石族の暮らしを与えるのだ。
1000万年の黒岩石族文明が滅びるのは100%・・・
生存者が居たとしても幼くて文明を維持できず海岸の野生動物
の様に成るだろう・・・悪魔の谷から水生物が来れば動物も
植物も全滅して荒野となるのだ・・・絶望は巨大で深い。


ユウマとタダシは互いに子が生まれる喜びを持って海洋狩猟に
赴いていた。もうずいぶん慣れて不安は無い熟練の狩猟師。
獲物は豊富、港に帰れば大漁に感謝され喜ばれた。
順風満帆とはこういう事だ。

少し気になるのは集団略奪で生き延びた連中の竹沢家・・・
生存者からの略奪を繰り返し強姦も平気、なのに生き延びた。
収容所に入ったのは16人ぐらいでユウマ家と同じ規模。
竹沢良雄の暴力で維持されてる集団。
竹沢にまで銃器や物資を支給してる政府・・・
北見の集まりでも気が合わない悪人たち。
要領も良い・・・商売は酒場と海洋狩猟で形は出来てる。

 

特別高齢者の12人。
看護婦が叫んだ
「まあ、大変!おじいちゃん達の黒石が割れてる・・・」
「ほんとだ・・・どうしよう?」
「3個とも割れてるよ」
「ねえ・・・4個に割れてるよね」
「うん、そうね」
「ということはさあ・・・12個なんだからあ・・・」
「あっそうかあ・・・爺ちゃん達と同じだよねえ」
「ねえねえ、袋を編んでさあ、お守りに上げようよ」
「それ良いわね、爺ちゃん達この黒石大好きだもんね」
黒石首飾りは爺ちゃん達の胸に置かれた
「うーーーうーーー」それは喜びの声。

 

 

 

 

 

 

 


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