縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

クロマグロ、マルハの二つの挑戦

2007-04-19 00:21:09 | 環境を考える
 今朝の新聞で『マルハがクロマグロの完全養殖に再挑戦』との記事を見た。「完全養殖」とは、人工孵化から育てた成魚が産卵、それを人工孵化させ、成長した魚がまた卵を産む、というサイクルの養殖方法である。養殖といえば、すべてこのサイクルだと思われがちだが、実はマグロやウナギは違う。天然の稚魚を捕まえ、それを生簀で育てる形で養殖が行われているのである。

 クロマグロは大変デリケートな魚で光や音にも敏感。稚魚は共食いをすることもあり、成魚に育てるのが大変難しい魚だ。マルハは1987年にクロマグロの完全養殖に挑戦したものの、最終的な生育の成功率が0.01%と極めて低く、とても採算に合わないと撤退したそうだ。
 世界で唯一クロマグロの完全養殖に成功しているのが、近畿大学のベンチャー企業アーマリン近大である。しかし、そのマグロは大阪などのデパートで販売されているだけで、流通量は極僅かである。

 では、なぜ、今、マルハがクロマグロの完全養殖に再び挑戦したのだろうか。
 一番の理由(表の理由?)は資源問題への対応。乱獲に加え、漁獲量の管理が徹底されていないことから、マグロ、特にクロマグロは絶滅の危機に瀕している。クロマグロもクジラの二の舞となる恐れがあるのだ。
 クロマグロは日本向けに高く売れるため、各国の乱獲がひどい。わが国のマグロ漁は延縄(はえなわ)漁業で行われている。簡単に言えば、大掛かりな1本釣りである。これに対し海外では大型船による巻き網漁業が行われている。それこそ一つの群れを一網打尽にする、容赦の無い漁法である。漁獲効率は雲泥の差だ。当然、輸入マグロの価格は安い。おかげで、需要が伸びているにも拘わらず、日本のマグロ漁業は崩壊の危機にある。

 資源保護といえば養殖。では養殖はどうだろう。
 日本の養殖はヨコワといわれる体長20、30cm(重さ数百グラム)の幼魚を捕り、生簀で2、3年掛けて成長させ出荷している。一方、最近増えている海外の養殖は、もっと大きい10キロ程度の幼魚を捕獲しては、6ヶ月など短期間で40、50キロまで急成長させ出荷している。これは業界では「畜養」と言われ、最近とみに伸びている。オーストラリア、地中海の国々、メキシコなどが多い。もっとも、この畜養マグロ、スーパーでは単に「養殖マグロ」と呼ばれており、その養殖方法までは区別が付かない。悲しいかな、畜養マグロは、沢山食べさせられるものの狭い生簀で運動不足のため、かえって脂が乗って旨い、全身トロだ、という説もある。
 しかし、こうした養殖にも問題がある。一つは幼魚の乱獲を招いていること。どれだけ幼魚を捕っているか把握できないし、更にはどの国がどれだけ捕っているかの把握も難しい。例えば、イタリア船が捕ったマグロをクロアチアの生簀に入れたとすれば、どこの国の漁獲量にカウントすれば良いのだろう。こうした問題から一応各国の漁獲割当が定められているものの、まったく守られていないのが実態だ。

 そして、こうした乱獲や畜養を陰で支えている、いや支配しているのが、日本の総合商社である。三菱商事、双日、丸紅がビック3。しかし、利に聡い商社ばかりを責めるのもお門違いかもしれない。そもそも日本人が異常なまでにクロマグロを、トロを好むのがいけないのである。マグロ資源云々と問題にする前に、まずは自らの食生活を反省すべきであろう。

 ところで、先程、マルハが完全養殖に再挑戦する表の(?)理由は資源問題と書いたが、裏の理由は総合商社への挑戦なのではないだろうか。傘下の漁船団縮小を余儀なくされるは、乱獲や畜養による安値輸入で市場を乱すは、商社はとんでもない、と。
 理由はともあれ、マルハの挑戦を応援したい。

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