縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
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南沙問題は日本に関係ない?

2015-11-08 00:31:11 | 最近思うこと
 自民党の野田前総務会長が、南沙諸島の問題は日本に関係ないと発言したそうだ。僕はそのテレビ番組を見ていないので、前後の脈絡や彼女の意図するところはよくわからない。ようやく関係改善の兆しが見えてきた中国のことを慮ったものか、あるいは、自衛隊の南沙諸島派遣が取り沙汰され安保法案を巡る騒ぎが再燃するのは避けたいとの思いか等、その真意は定かではない。
 しかし、たとえ相手が中国であろうと法に反することは悪いときっちり言うべきだと僕は思う。政治家として筋を通す必要がある。
 また、わが国の経済や私たちの生活、さらにはわが国の安全保障を考えたとき、本当に南沙問題は日本に無関係と言えるのだろうか。残念ながらマスコミの報道でこの観点からの指摘を見ることは少ない。マスコミでは、南沙問題は元々中国とフィリピン、ベトナムとの領有権の問題、そこに中国による軍事利用を嫌うアメリカが加わってきたと捉えられている気がする。そう、外国の問題、外国にも尖閣と同じ問題があるといった感じ。国民の関心もあまり高くはない。こうした状況が野田前総務会長の発言の背景にあると思う。

 南沙諸島は南シナ海南部にあり、20あまりの島、岩礁、砂州からなる。元々人が住んでいなかったため、その領有権は曖昧。ベトナムを植民地としたフランスが実効支配を始め、太平洋戦争中は日本が支配した。戦後、中華民国(台湾)、ベトナム、フィリピンが自国に近い島を実効支配し、各々領有権を主張した。そして、最後に出てきたのが中国。1953年、南シナ海の地図上に勝手に「九段線」なる九つの破線を引き、しまいにはその内側にある海域はすべて中国の領域だと主張し始めた。
 遅れてきた中国は、軍事力により南シナ海での勢力を拡大する。1974年、中国は当時の南ベトナムと戦い西沙諸島を手中に収め、1988年のスプラトリー諸島海戦でベトナムを破り、いくつかの岩礁を実効支配した。今埋め立てや滑走路建設で話題になっているのは、いずれもこの海戦で手に入れた岩礁である。

 さて、冒頭で「法に反する」と言ったのは、一つは中国が主張する「九段線」に何ら法的根拠がないことであり、もう一つは、国連海洋法条約で領海も排他的経済水域も有さないとされる、満潮時に沈む岩礁や常に沈んでいる岩礁までも、中国が埋め立てにより人工島とし領海等を主張していることである。
 南沙問題のわが国への影響であるが、南シナ海はわが国のエネルギー資源輸送の大動脈である。日本は原油輸入の8割を中東に依存しており、その9割がマラッカ海峡から南シナ海を経て運ばれている。南シナ海の航行の自由、安全が脅かされたとき、日本経済や私たちの生活への影響は大きい。もっとも、これはタンカーがロンボク海峡(あのバリ島の横)からフィリピンの東側を通り、南シナ海を迂回できた場合の話。それができなかった場合の影響は計り知れない。
 中国は「九段線」から台湾、尖閣、沖縄、九州までを「第一列島線」とし、その海域の制海権を握ることを目標に掲げている。次の段階として、中国は、パプアニューギニア、グアム・サイパン、小笠原、伊豆諸島にかけてを「第二列島線」とし、海軍を展開する計画である。中国がこの段階に入っていたとすれば、最悪、タンカーは南シナ海を迂回するため遥かオーストラリアの南を通り太平洋を北上せざるを得ないかもしれない。このとき、運送費や保険料の大幅なアップは勿論、タンカーそのものの確保が課題になる。輸送日数が大幅に増えるからである。しかしタンカーの造船や大型化は一朝一夕にはできない。恐ろしい話であるが、日本に必要な量の原油を運べないことも十分考えられるのである。

 これでも南沙問題は日本に関係ないと言い切れるのだろうか。


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