縁側でちょっと一杯 in 別府

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映画『エール!』にエールを!

2015-11-10 20:00:11 | 芸術をひとかけら
 「フランス映画っぽくないな。田舎を舞台にしたアメリカの青春映画のようだ。」というのが、この映画を観た僕の印象である。

 フランス映画というと、小難しい、ストーリーがない、結末がよくわからない、屈折した男女の愛を表現、そしてお洒落、というのが僕のイメージ。ネガティブなものが多いが、これは学生時代にヌーヴェルヴァーグの映画をよく観たせいだ。「なんかわけがわからないな。」と思いつつも、いっぱしの映画通を気取っていた僕は、義務感に駆られ、ゴダール、トリフォー、アラン・レネなどヌーヴェルヴァーグの作品を何本も観た。

 が、久々に観たフランス映画、『エール!』は、そんな僕のイメージとはまったく違う。わかりやすく、歌が素晴らしい(特に最後の「青春の翼」)、素直に楽しめる良い映画だった。歌っているのは主人公ポーラを演じるルアンヌ・エメラ。彼女はフランスの人気オーディション番組『The Voice: la plus belle voix』で歌声を絶賛され、2013年に歌手としてデビューした。翌2014年、この映画で役者デビュー。まだあどけなさの残る18歳である。
 強いて僕のフランス映画のイメージとの共通点を挙げれば、伏線を張ったかにみえる出来事が実は何の伏線でもなかったというのがいくつかあり(例えば、父親の村長選出馬とか)、それがフランス映画の伝統(?)“ストーリーのなさ”を継承しているといった程度だろうか。

 さて、映画のあらすじであるが、舞台はフランスの片田舎で酪農を営むベリエ一家。夫婦に子供2人の4人家族。いつも笑いの絶えない、明るく、仲の良い家族である。ただ、この一家、高校生の長女ポーラ以外は皆耳が聴こえない。ポーラは家族みんなの耳になり、口になり、村の中での家族のコミュニケーションを支えている。
 そんな一家に青天の霹靂が。ポーラの歌の才能に気付いた音楽教師が、彼女にパリの音楽学校のオーディションを受けるよう勧めたのである。ポーラは喜んだが、彼女の歌声を聴けず、その才能がわからない家族は反対する。勿論、家族にはポーラを失って生活できるかとの不安もある。それが痛いほどわかるポーラは夢を諦めようとするが・・・。
 あとは観てのお楽しみというか、『エール!』の場合は、聴いてのお楽しみも。

 この映画のテーマは、家族の絆であり、子供の自立・巣立ちである。『エール!』という題名の通り(注:もっとも原題は『ベリエ一家』であるが)、家族のことを想うポーラの夢を、家族が応援する、エールを送る。そして、それを観ている僕らも頑張らなきゃと励まされた気がする、そんな映画である。
 僕がこの映画を観に行ったのは11月1日。たまたま“映画の日”で入場料が 1,100円だった。700円の割引は大きい。ランチ1食分。映画館からエールを送られた気分だ。


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