縁側でちょっと一杯 in 別府

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ファンタジーとしての『半沢直樹』 ~ 目的は手段を正当化する?

2013-09-22 01:19:39 | 最近思うこと
 僕は元銀行員である。某メガバンクに勤めていた。そのため、よく『半沢直樹』は現実にある話なのかと聞かれる。話すと長いので、いつもは「あそこまでひどくはないけど、結構ある話だよ。」と答えている。
 が、『半沢直樹』も明日で最終回。今日は少し真面目に答えを考えてみたい。

 昔の仲間の『半沢直樹』に対する反応は二つある。一つは、おもしろい、毎回見ているというファンで、もう一つは、設定がおかしい、銀行実務が滅茶苦茶だ、見るに堪えないというアンチ半沢である。僕は東京編からしか見ていないが、確かに東京編だけでも設定に疑問を感じることが多い。

 まず、“東京中央銀行”が“伊勢志摩ホテル”に一行単独で、かつ無担保で200億円もの金額を融資した点。
 普通の銀行員の感覚として、ホテルのビジネスモデルを考えれば、そんなことは絶対あり得ない。ホテルの建設には多額の資金が必要であり、その多くは借入で賄われる。ホテルは、利益と減価償却を原資に返済を行うが、返済には極めて長い時間がかかる。ホテルは、その華やかなイメージとは裏腹、あまり儲かる事業ではなく、返済までの長い間に何が起こるかはわからない。一つの銀行だけで一つのホテルに多額の融資を行い、果敢に長い期間のリスクを取ることなどは考え難い。しかも、これは資金使途がホテル建設資金で、そのホテルが担保となる場合の話であり、それ以外の資金使途(運用資金?)で無担保とあっては全くもって信じられない。

 次に、伊勢志摩が実質破綻先とされた場合、東京中央が1,500億円もの引当金を積む必要があるという点。
 引当金は、融資残高から担保処分等で見込まれる回収額を差し引いた額を積むことになるため、東京中央だけで伊勢志摩に1,500億円以上の融資を行っていることになる。バブル期の不動産会社相手ならいざ知らず、2013年における一ホテルへの融資額としてはあまりに大きい額だ。因みに、伊勢志摩と同じ老舗ホテルの借入金(含む社債)はというと、帝国ホテルは無借金、ホテルオークラは243億円、そして最近皇居前の旗艦ホテルを建て替えたパレスホテルでさえ877億円である。
 いったい伊勢志摩ホテルとはどんな会社なのだろう。

 細かい点を挙げればまだまだあるが、最後に、一番大きな問題といえる半沢直樹の検査妨害、検査忌避の件について。
 半沢が「疎開資料」と称して伊勢志摩に関する資料の一部を隠しており、それが密告により金融庁に知れることとなったが、上手く隠していたため事無きを得たというくだりがあった。しかし、これは完全にアウトである。
 2004年、旧UFJ銀行が、金融庁検査に際し、問題先に関する資料を隠した、改ざんしたとされ、検査忌避の罪で刑事告発されたことを覚えている方も多いと思う。旧UFJ銀行が三菱銀行に吸収されるきっかけとなった事件である。
 そう、半沢の行動は立派な(?)犯罪なのである。他にも半沢の危ない行動が散見されるが、目的のために手段は正当化されるということなのだろうか。
(余談であるが、金融庁検査、巨額の引当金計上による赤字、経営責任、派閥抗争による内部告発等々、原作はこの旧UFJ銀行の事件を参考にしていると思われる。)

 ここまで読んで、「そうか、こいつもアンチ半沢なんだ。」と思われた方、それは違う。僕はファンタジーとして、あるいは時代劇感覚で『半沢直樹』を楽しんでいる。
 『半沢』を見て、これはノンフィクションだとか、日本の銀行や銀行員の実態を現しているとか(確かに一部は正しいが)思われては困る。が、『ハリーポッター』や『水戸黄門』と同じだと思えば何も気にならないし、皆さんにもそう思って見て欲しい。
 ほら、“半沢黄門”に助さん・格さんもいれば、悪だくみをする家老や越後屋、人は良いけど管理のなってない殿様もいる。前回、半沢が印籠のように携帯電話をかざすシーンがあって、つい笑ってしまった。由美かおるの入浴シーンの代わりに、最終回くらいサービスで上戸彩の入浴シーンがあってもいいかもしれない。
 う~ん、明日(書いているうちに今日になってしまった)の最終回が楽しみだ。


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