縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

しゃぶしゃぶのルーツをご存知ですか? ~ 鳥取『たくみ割烹店』

2017-05-09 00:36:04 | もう一度行きたい
 しゃぶしゃぶの元は「シュワンヤンロウ」という北京の羊鍋。羊ということは、そう、さらに遡れば、ジンギスカンと同じモンゴルの料理だ。
 この「シュワンヤンロウ」を日本に伝えたのが、『たくみ割烹店』の創業者、吉田璋也(よしだ しょうや)。戦後間もなく、京都・祇園の『十二段家』が始めた「牛肉の水炊き」がしゃぶしゃぶの元祖と言われる。すき焼きは明治の初めに誕生しており、しゃぶしゃぶも同じ頃かと思いきや、思いのほか新しい。そして『十二段家』に「シュワンヤンロウ」を教えたのが吉田なのである。
 吉田は昭和37年に『たくみ割烹店』を開き、自らも特製だれを使ったしゃぶしゃぶ、「鳥取和牛すすぎ鍋」を始めた。こうした経緯から『たくみ割烹店』はしゃぶしゃぶの元祖(あるいは本家?)に連なる店だと考えられる。

 因みに、“しゃぶしゃぶ”という名前は大阪『永楽町スエヒロ本店』が考えたものである。商標登録もされている。ただ登録は“肉のしゃぶしゃぶ”や“スエヒロのしゃぶしゃぶ”といった形であり、よって“しゃぶしゃぶ”は誰でも自由に使うことができる。“しゃぶしゃぶ”の普及を願った、粋な計らいと言えるだろう。

 さて、先日初めて『たくみ割烹店』に行って来た。勿論食べるは「鳥取和牛すすぎ鍋」。某飲食店情報サイトによれば、すすぎ鍋のコースは肉の種類で普通と特選があるとのこと。滅多に食べられるものではないので、若干お高いが特選に決めていた。
 が、お店でメニューを開いてびっくり、コースは3つあった。なんと特選の上に極上があった。値段もさらにお高い。特選がリブロースで極上がサーロインと書いてある。ステーキならいざしらず、しゃぶしゃぶならリブロースで十分と思い、初志貫徹、特選をお願いした。
 まず前菜や野菜、そして特製のつけだれが出された。ごまだれと言いつつ、やや黄色い。ラー油が入っているからだという。ポン酢だれはなく、ネギやもみじおろしもない。あとは肉を待つのみ。
 ついに肉が運ばれてきた。美しい。明るく鮮やかな紅色。サシもきれいだ。肝心の味はどうだろう。肉をしゃぶしゃぶ、もとい熱い出汁でさっとすすぎ、口の中へ。あっ、肉がとろける。口いっぱいに肉汁が広がる。甘い香りが残る。う~ん、こんなに美味しいしゃぶしゃぶは食べたことがない。このコースの名前は“悦”というが、その名の通り、僕は心底悦に入った。

 ところで、和牛には三つの系統がある。兵庫県の但馬系、島根県の糸桜系、そして鳥取県の気高系である。今ある全国のブランド牛のほぼすべてが、この三つの系統の掛け合わせによって生まれている。つまり、鳥取県は和牛のルーツの一つなのである。
 気高系というのは、昭和41年の第1回全国和牛能力共進会(5年に1度開催される和牛日本一を決める大会)で1等賞に輝いた雄牛・気高号の血統をいう。鳥取和牛は総じてオリーブオイルの主成分であるオレイン酸が高く、口溶けが良いとされる。その中で、脂肪中にオレイン酸を55%以上含有し、かつ気高号の血統を引き継ぐ牛の肉だけが「鳥取和牛オレイン55」と命名され、ブランド化されている。僕が食べたのはこの「オレイン55」のリブロースだったのである。どうりで旨いわけだ。

 よ~し、お腹も結構一杯になってきたが、折角なのでもう少し肉を食べよう。もう繊細な違いは分からないだろうから肉は普通の肉にしておこう。僕は“悦”の下の“福”コースの肉を追加でお願いした。

 肉が来た。言葉を失う僕。見るからに全然違う。色は暗い紅色というか紫に近い。サシもきれいに入っていない。味も押して知るべし・・・。
 お店の人に聞けば、“悦”は鳥取和牛の最高峰・オレイン55であるが、“福”は鳥取県産の牛のロース肉とのこと。えらい違いだ。注文する前に肉の違いを確認すべきだった。『たくみ割烹店』にいらした際は、是非“悦”以上の肉を召し上がって頂きたい。僕に最後に福は来なかったが、皆さんは“福”を頼まず、最高の福が訪れますように。


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