ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

手術を希望される方はこちらをご覧ください。

医療相談、ご質問にはお答えしませんのでご了承ください。

おすすめの本はこちら?ブックス・ラパロスコピスト

子宮内膜症患者が腹腔鏡下手術を受ける価値があるのか?その11

2006-12-22 | 子宮内膜症
★痛みのわりに所見に乏しいケース
月経痛、骨盤痛の患者さんを診ていると、月経痛や骨盤痛の症状が強いわりに子宮内膜症の所見が軽い(もしくはほとんどない)ことがある。ダグラス窩の癒着はまったくないかわずか、また、子宮内膜症病変もわずかに存在するのみだったりする。

こういう場合、通常は仙骨子宮靭帯切断(LUNA)が行われることが多い。しかし、LUNAは長期的な予後はそれほどいいとは言えない。LUNAは効かないという医師も少なくない。(Charles H. Koh曰く”LUNA doesn’t help.”)

では最近このような状態に対してどのような手術がされているのか述べてみる。
仙骨子宮靭帯~骨盤腹膜の切除:慢性骨盤痛の患者に対して、正常に見える仙骨子宮靭帯や骨盤腹膜を切除する。正常に見える仙骨子宮靭帯でも子宮内膜症病変がみとめられたり、炎症が存在していたりするらしい。
(Histopathologic findings on uterosacral ligaments in women with chronic pelvic pain and visually normal pelvis at laparoscopy. J Minim Invasive Gynecol. 2006 May-Jun;13(3):201-4.)

しかしながら、ほぼ正常に見える仙骨子宮靭帯を切除した場合の予後については、あまりよくわかっていない。とはいうものの、多くの骨盤痛は改善しているようだ。

前仙骨神経叢切除術:仙骨の前面、大動脈~総腸骨動脈の分岐部の前面に上下腹神経叢が走行しており、その中に子宮へ入る神経がある。仙骨前面の神経叢を菱形に切除するのが前仙骨神経叢切除術である。central pain、すなわち骨盤痛のなかでも身体の中心部の痛みに有効であると言われている。
(Effectiveness of presacral neurectomy in women with severe dysmenorrhea caused by endometriosis who were treated with laparoscopic conservative surgery: a 1-year prospective randomized double-blind controlled trial. Am J Obstet Gynecol. 2003 Jul;189(1):5-10.
Presacral neurectomy for surgical management of pelvic pain associated with endometriosis: a descriptive review. J Minim Invasive Gynecol. 2006 Sep-Oct;13(5):377-85.)

本邦ではあまり行われていないが、本術式の特徴はLUNAに比べて、より効果的であり長期予後も良好であると言われている。私は原因のはっきりしない重症骨盤痛例に対して十数例施行したが、90%程度の奏功率であった。子宮内膜症切除や仙骨子宮靭帯切除などと組み合わせて行うことにより骨盤痛治療の効果を上げることができると思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする