特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

2つの導電性誘電体が挟まれている平行平板コンデンサ

2019-07-08 20:46:03 | 電気一般

1.まえがき

 2つの導電性誘電体が挟まれている平行平板コンデンサの電磁界を求める問題があった。いま
 まで考えたことも無い問題だが面白いので、下記の書籍を参考にした。

2.導電体と誘電体が一体になったときの条件

 以下では、面電荷密度σと記号を区別するため、導電率はκを使う
 定常電流の時、
   div D=div(εE)=ρ → grad ε・E+εdiv E
   div i=div(κE)=0 → grad κ・E+ κdiv E=0
 これらの式から、div Eを消して
   ρ=E・(grad ε-(ε/κ)grad κ)=i・((1/κ)grad ε-(ε/κ²)grad κ)=i・grad(ε/κ)
 書き直すと
   i・grad(ε/κ)=ρ     ・・・・・・・・・・・・・(2.1)
 また、境界面の単位法線ベクトルn、単位接線ベクトルt を使って、よく知られた境界条件
   (D₁-D₂)・n=σ → (ε₁E₁-ε₂E₂)・n=σ ・・・・・・・(2.2)
   (E₁-E₂)・t=0             ・・・・・・・(2.3)
 か成り立つ。(2.2)(2.3)式は、オームの法則 i₁=κ₁E₁, i₂=κ₂E₂ を入れて
   {(ε₁/κ₁)i₁-(ε₂/κ₂)i₂}・n=σ     ・・・・・・・(2.4)
   (i₁/κ₁-i₂/κ₂)・t=0          ・・・・・・・(2.5)
 を得る。

 また、積分形の電荷保存則から
   (i₁-i₂)・n=-dσ/dt

 が成り立つ。定常電流の時は、この右辺は0なので
   (i₁-i₂)・n=0          ・・・・・・・・・・(2.6)
 となる。したがって、定常電流の時は、これと(2.4)式から in=i₁・n=i₂・n として
   (ε₁/κ₁-ε₂/κ₂)in=σ    ・・・・・・・・・・・・(2.7)

 を得る。これらの式の意味は電流が流れる空間の座標により誘電率や導電率が変化している
 と、空間に電荷が分布するので、ガウスの法則の使用は注意が必要となる


3.2つの導電性誘電体が挟まれている平板コンデンサ

 図のようにコンデンサに挟まれる物質1、2の導電率、誘電率および厚さをそれぞれ、κ₁,ε₁,d₁,
 κ₂,ε₂,d₂とする。面積はSである。印可される電圧をV、流れる電流をIとする。また、物質1,2
 の界面の面電荷密度をσとする。

 まず、物質1、2の抵抗R₁,R₂と全体の抵抗Rは
    R₁=d₁/(κ₁S) , R₂=d₂/(κ₂S) , R=R₁+R₂=(d₁/κ₁+d₂/κ₂)/S
 となる。すると
    I=V/R
 である。すると、物質1,2に加わる電圧は V₁=R₁I, V₂=R₂I (つまり、媒質中の電位を決定す
 るものは静電容量ではなく抵抗)であり
    E₁=V₁/d₁=R₁I/d₁=(R₁/R)V/d₁ , E₂=V₂/d₂=R₂I/d₂=(R₂/R)V/d₂
 となり、
    D₁=ε₁E₁=ε₁(R₁/R)V/d₁ , D₂=ε₂E₂=ε₂(R₂/R)V/d₂
 となる。(2.2)から i=I/S=V/(RS) として、物質1,2の界面の面電荷は
    σ=(ε₁/κ₁-ε₂/κ₂)(-i)=(ε₂/κ₂-ε₁/κ₁)V/(RS)
 となる。ここで、境界面の1側の法線nは電流iの方向と反対のため負となる。電極1,2の面電荷
 はそれぞれ
    σ₁=D₁=ε₁(R₁/R)V/d₁=(V/RS)ε₁/κ₁ , σ₂=-D₂=-(V/RS)ε₂/κ₂
 となる。これは、上の境界面の面電荷と
    σ=-σ₁+(-σ₂)=-(σ₁+σ₂) (σ₁>0, σ₂<0)
 となる関係がある。つまり、物質1、2の界面に電極があり、それぞれの電極のマイナス電荷が
 誘起されたものの和の電荷となっている。

4.コンデンサと抵抗の等価回路

 この場合、各媒質の静電容量は
    C₁=ε₁S/d₁ , C₂=ε₂S/d₂
 となり、等価回路は図のようになる。そして、以下の関係がある。漏洩電流は
    I=V/(R₁+R₂)
 となり、各コンデンサの電圧、電荷は
    V₁=IR₁=VR₁/(R₁+R₂) , V₂=IR₂=VR₂/(R₁+R₂)
    Q₁=C₁V₁=VC₁R₁/(R₁+R₂) , Q₂=C₂V₂=VC₂R₂/(R₁+R₂)
 となり、C₁、C₂の電極間の電荷は
    -Q₁+Q₂=(-C₁R₁+C₂R₂)V/(R₁+R₂)
 となる。



5. あとがき

 誘電率、導電率が ε,κ の媒質に、定常電流が流れている場合、導体表面の全電荷をQ、導体間の
 電圧、抵抗をV、R、流れる全電流をIとすると、導体表面で積分すると
   Q=∲D・dS=∲εE・dS=∲(ε/κ)i・dS=(ε/κ)I=(ε/κ)V/R
 となる。Q=CVという関係があるから、上式は
   CR=ε/κ
 という関係がある。

[参考文献]
  詳解 電磁気学演習、後藤憲一、他、共立出版、1970

以上

[2019/7/22] 電流の境界条件の訂正と追加。
[2019/9/27] 合成容量の記述を削除。あとがきを追加。
[2020/10/6] (2.1)式の前の式をκとσの混乱などを訂正。



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