特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

R-L直列回路に整流正弦波 |sin(wt)| を加えたときの電流

2019-03-04 20:07:43 | 電気一般
1.はじめに

 R-L直列回路に整流正弦波を加えたときの電流がどうなるかという問題があった。解析不能と思い
 フーリエ変換の近似で解いたが、波形の概要、平均値やP-Pなどは大体よかったが、瞬時値が異な
 る。ところが、解析的に解けることが分かったので述べる。

2.計算

 回路方程式は
   Ldi/dt+Ri=V₀|sin(wt)| 
 である。ここで、x=wt, Q=wL/R とおき、y=iR/V₀ を代入すると

   (wL/R)dv/dx+v=V₀|sin x| ⇒ Qdy/dx+y=|sin x|・・・①
 となり、規格化された式となる。

 これは、dy/dx ⇒ y ' とすると
   Qy '+y=(-1)ⁿ sin x (nπ≦x≦(n+1)π、n=0,1,2,...)・・・②
 である。

 この特殊解を y=Acos x+Bsin x として解くと
   A=-(-1)ⁿQ/(Q²+1) , B=(-1)ⁿ/(Q²+1)
 となる。なるから、②の一般解は

   y=C[n]exp(-x/Q)+{(-1)ⁿ/(Q²+1)}(-Qcos x+sin x)
           (nπ≦x≦(n+1)π、n=0,1,2,...)・・・・③

 となる。i(t=0)=0 だから、y(x=0)=0 となり、n=0 のとき、
   C[0]=Q/(Q²+1) ・・・・④
 となり
   y(x)=1/(Q²+1)}(Qexp(-x/Q)-Qcos x+sin x) (0≦x≦π)・・・⑤
 となる。

 n→(n-1)のときの、x=nπの最終電圧は
   y(nπ)=C[n-1]exp(-nπ/Q)+{(-1)ⁿ⁻¹/(Q²+1)}(-Q(-1)ⁿ) = C[n-1]exp(-nπ/Q)+Q/(Q²+1)

 また、n→nの時の、x=nπの初期電圧は
   y(nπ)=C[n]exp(-nπ/Q)+{(-1)ⁿ/(Q²+1)}(-Q(-1)ⁿ) = C[n]exp(-nπ/Q)-Q/(Q²+1)

 となる。y(x)は連続だから、この両者は等しく、漸化式
   C[n]-C[n-1]={2Q/(Q²+1)}exp(nπ/Q)

 が得られる。ここで
   r=exp(π/Q) (>1)・・・・・・・・・⑥
 と置いて、これを解くと④から

   C[n]={2Q/(Q²+1)}{rⁿ+rⁿ⁻¹+・・・+r+1/2) = {2Q/(Q²+1)}{r(1-rⁿ)/(1-r)+1/2)
     ={2Q/(Q²+1)}{rⁿ(1-r⁻ⁿ)/(1-r⁻¹)+1/2} = {2Q/(Q²+1)}rⁿ {(1-r⁻ⁿ)/(1-r⁻¹)+r⁻ⁿ/2}

 これを③に入れれば、次のような求める解となる。なお C[n]の rⁿ=exp(nπ/Q)は
 {exp(-x/Q)}rⁿ=exp{-(x-nπ)/Q} (nπ≦x≦(n+1)π、n=0,1,2,...) とできて、発散し
 ないことに注意。

  y={1/(Q²+1)}・{ Q{2(1-r⁻ⁿ)/(1-r⁻¹)+r⁻ⁿ} exp(-(x-nπ)/Q)+(-1)ⁿ(-Qcos x+sin x) }
       (nπ≦x≦(n+1)π、n=0,1,2,...) ・・・・・⑦

 そして、r⁻ⁿ→0 だから、C[n]→{2Q/(Q²+1)}rⁿ/{1-r⁻¹)}
 であり、nが大きくなった定常解は

  y={1/(Q²+1)}・{ [2Q/{1-exp(-π/Q)}] exp(-(x-nπ)/Q)+(-1)ⁿ(-Qcos x+sin x) }
         (nπ≦x≦(n+1)π、n=0,1,2,...)・・・・・⑧

 となるが、x'=x-nπとすると cos x'=(-1)ⁿcos x, sin x'=(-1)ⁿ sin x
 となり
   y={1/(Q²+1)}・{ [2Q/{1-exp(-π/Q)}] exp(-x'/Q)+(-Qcos x'+sin x') }
          (0≦x'≦π、n=0,1,2,...)・・・・・・・⑨

 となって、nに依存しない周期関数となる。
 この関数の表示は少し面倒なので、解析解を接続したものと Maximaで
 ルング・ケッタ法で解いた図を載せる。

3.検討

 定常解⑨の平均値
  Ya=(1/π)∫[0→π]ydx'=(1/π){1/(Q²+1)}(2Q²+2)=2/π=0.637

 となる。しかし、p-p値、つまりリップルの計算がうまくできない。
 そこで、|sin x|≒(2/π)(1-(2/3)cos(2x)) とフーリエ変換の近似値で倍周波数のp-pを求
 めてみる。つまり、直流分を除き

    Qdy/dx+y=-(4/3π)cos(2x)
 の特殊解(定常解)を求める。すると簡単に
   y=-(4/3π)/(1+(2Q)²){cos(2x)+2Qsin(2x)}

 と求まる。したがって、yの振幅は
   {(4/3π)/(1+(2Q)²)}√(1+(2Q)²)=(4/3π)/√(1+(2Q)²)

 となる。p-pはその2倍
   ypp=(8/3π)/√(1+(2Q)²)
 となる。これと⑨の定常解を図示して読んだ値と比較すると

   Q=0.1 → 0.93(⑨の図から) , ypp=0.83(近似計算)
   Q=1  → 0.38(⑨の図から) , ypp=0.38(近似計算)
   Q=10 → 0.042(⑨の図から) , ypp=0.042(近似計算)

 となり、大体一致している。

以上





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