1. まえがき
a[n]=(1+1/n)ⁿ は単調増加数列、b[n]=(1+1/n)ⁿ⁺¹ は単調減少数列であることを示す。
a[n]の性質は、a[n] の収束の証明とと e の定義に使われている。
2. 計算
a[n]={(n+1)/n}ⁿ だから
a[n+1]/a[n]={(n+2)/(n+1)}ⁿ⁺¹{n/(n+1)}ⁿ={n(n+2)/(n+1)²}ⁿ⁺¹ (n+1)/n
={1-1/(n+1)²}ⁿ⁺¹ (n+1)/n>{1-1/(n+1)}(n+1)/n=1
したがって、a[n+1]>a[n] だから、単調増加数列となる。ここで、後で述べるベルヌーイの
の不等式を使った。
b[n]={(n+1)/n}ⁿ⁺¹ だから
b[n]/b[n+1]={(n+1)/n}ⁿ⁺¹{(n+1)/(n+2)}ⁿ⁺²={(n+1)²/n(n+2)}ⁿ⁺² n/(n+1)
={1+1/n(n+2)}ⁿ⁺² n/(n+1)>{1+1/n}n/(n+1)=1
したがって、b[n]>b[n+1] だから、単調減少数列となる。ここで、後で述べるベルヌーイの
の不等式を使った。
3. 別の証明
a[n]の方は別の証明が知られている。
(1) a[n]の証明(2項定理から)
a[n]=Σ[k=0,n] nCk (1/n)^k=Σ[k=0,n] n(n-1)・・・(n-k+1)(1/n)^k/k!
=Σ[k=0,n] (1)(1-1/n)・・・(1-(k-1)/n)/k!
>Σ[k=0,n-1] (1-1/n)・・・(1-(k-1)/n)/k!
ここで、1-1/n>1-1/(n-1) だから
a[n]>Σ[k=0,n-1] {1-1/(n-1)}・・・{1-(k-1)/(n-1)}/k!=a[n-1]
なお。この方法は、b[n]の単調減少を証明には使えなかった。
(2) a[n]の証明(AM-GM不等式から)
(a[n+1])¹/⁽ⁿ⁺¹⁾=(n+2)/(n+1)=[{(n+1)/n}n+1]/(n+1)
ここで n個の (n+1)/n と1個の1に、AM-GM不等式を使うと
≧[{(n+1)/n}ⁿ・1]¹/⁽ⁿ⁺¹⁾=[{1+1/n}ⁿ]¹/⁽ⁿ⁺¹⁾=a[n]¹/⁽ⁿ⁺¹⁾
両辺を (n+1)乗すれば a[n+1]≧a[n] を得る。
(3) b[n]の証明(AM-GM不等式から)
b[n]={(n+1)/n}ⁿ⁺¹ を 1/b[n]={n/(n+1)}ⁿ⁺¹ として、議論する。
(n+1)/(n+2)=[ {n/(n+1)}(n+1)+1 ] / (n+2) > [{n/(n+1)}ⁿ⁺¹・1]¹/ⁿ⁺²
2番目の式は、(n+1)個の{n/(n+1)}と1個の1の(n+2)平均である。等号は、
n/(n+1)=1 の時なので成立しない。両辺を(n+2)乗して
1/b[n+1]={(n+1)/(n+2)}ⁿ⁺² > {n/(n+1)}ⁿ⁺¹=1/b[n] → a[n]>a[n+1]
4. ベルヌーイの不等式
x>0、nを自然数とすると
xⁿ≧n(x-1)+1・・・・・①
が成立する。xⁿ-1=(x-1)(xⁿ⁻¹+xⁿ⁻²+・・・+x+1) だから
x≧1のとき、 (x-1)≧0 で (xⁿ⁻¹+xⁿ⁻²+・・・+x+1)≧1+1+・・・+1=n
0<x<1のとき、(x-1)<0 で、(xⁿ⁻¹+xⁿ⁻²+・・・+x+1)<1+1+・・・+1=n
したがって、
xⁿ-1=(x-1)(xⁿ⁻¹+xⁿ⁻²+・・・+x+1)≧n(x-1)
ゆえに、①が証明された。等号が成り立つのは x=1のとき。
なお、0<x<1 のときは、①において x → 1-x (>0) として
(1-x)ⁿ>1-nx (0<x<1)・・・・②
を得る。また、二項定理からも
(1+x)ⁿ>1+nx (0<x)・・・・・③
が明らか。
以上