Box of Days

~日々の雑念をつらつらと綴るもの也~ by MIYAI

2006年09月06日 | diary
 帰宅して冷蔵庫を開けたら、身に覚えのない卵とハムが入っていた。しばし考えをめぐらし、前日の夜に近所のフジスーパーで買ったのを思い出した。最近、なにかとこの調子だったりする。昨日だって、ほんの数分前に話してたことを思い出せなくなり、「あれれ?なんの話をしてたんだっけ?」と頭を抱えこんだりした。一度脱線すると元の場所になかなか戻れない。これって…

 老いですかね?いや、いくらなんでもねぇ。

 幸い、昨日はどうにか思い出すことができた(僕が思い出したわけじゃないけど)。僕らが話していたのは、小島信夫という老作家のことだった。もう90歳くらいになるらしいのだけど、最近なんと新作を出したというのだ。「へぇー、たいしたもんだぁねぇ」と僕が言うと、「うん。タイトルはね、『残光』っていうんだけどさ」と教えてくれた。ふむ…、それくらいの年齢になると、こうした言葉にも重みが出てくるんだね。

 僕はそんなにたくさんの作家さんを知ってるわけじゃないのだけど、この人のことは知っていた。もうだいぶ前のことだけど、友人が『馬』という短編小説を貸してくれて、読んだことがあるのだ。で、これは実に奇妙な小説だった。読む前から友人に奇妙だと教えられていたにも関わらず、想像を超えたあまりの奇妙さ加減に、読んでいる間中、僕はずっとへんてこりんな気分だった。でも、文体は非常に自然だったりするもんで、物語は破綻なくすすんでいってしまう。

 そんなこんなで読みすすめていくうちに、僕は、小島信夫という作家に静かな好感を持つようになった。この人は、地味で奇妙ではあるけれど、この人だけの世界をもっていて、それを気負うことなく、自然に表現できるのだなと思った。そして、ここが一番大切なんだけど、結局のところ、『馬』はとても面白い本だったのだ。きっとまだ若い頃の作品だと思うので、そんな人が90歳になってどんな本を書いたのか、確かに興味はあるね。

 鎌倉にストーンズしかからないバーがあると、一昨日教えてもらった。ま、店の名前も場所もわからないので、教えてもらったと言えるのかどうかわからないけど。冷蔵庫の卵とハムを見たら、そんなことも思い出したりしたので、昨日はストーンズの『Sticky Fingers』を引っ張り出して聴いた。“Moonlight Miles”が美しかった。

 ストーンズを聴いて、風呂に入って、ジョージの『Cloud Nine』をかけながら寝た。“Set on You”の手前で記憶がなくなってるから、横になって40分くらいで眠りに落ちたのだろう。

 さて、ゆっくり眠れましたか?