今回、再帰代名詞です。以下、見ましょう。
(1)Tom saw himself in the mirror (トムは、鏡で自分を見た。)
(2)Mary saw herself in the mirror (メアリーは、鏡で自分を見た。)
(1)の‘himeself’や、(2)の‘herself’のように、‘-self’のカタチをもったものを、一種の代名詞と見なして、「再帰代名詞」と呼んでいます。今回、その基本的な特徴を、見てみたいと思います。
(3)Himself went there. (×) (彼自身、そこへ行った。)
(4)He went there. (〇) (彼は、そこへ行った。)
いきなり、(3)はアウトですが、一方、(4)はOKです。(3)は、‘himself’が主語になっているんですが、一方、(4)は、‘he’が主語です。どちらも、同じ代名詞なのに、この差は何なんでしょうか。もうちょっと、他の例も、見てみましょう。
(5)Tom believes [ that himself is popular ]. (×)
(トムは [ 自分が人気者だと ] 信じている。)
(6)Tom believes [ that he is popular ]. (〇) (訳同上)
(5)はアウトで、一方、(6)がOKです。この場合も、やはり、(5)と(6)の違いは、‘that’節内の、‘himself’と‘he’でしかありません。ここでのポイントは、(5)は、(3)とは違って、同じ文中に、‘himself’の潜在的な相手として、‘Tom’があるのに、それでも、やはりアウトになる、ということなんです。じゃ、以下は、どうでしょうか。
(7)Tom believes himself to be popular. (〇) (訳同(5))
(7)のように、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」の構文でなら、‘Tom’=‘himself’の解釈が成り立ち、OKにできる、ということなんですね。ここで、注意すべきは、(7)は、「目的語+‘to’不定詞」の間に、解釈上、「主語・述語」の関係が成立していて、意味的には、(5)と、ほぼ同じである、ということです。 (「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」の構文については、EG93、EG94、参照)
ほぼ同じ意味でも、カタチが違えば、文法性に差が出る。つまり、再帰代名詞の可否の問題は、単純に、意味の問題、というわけにはいかず、構文的な (つまり、カタチ的な) 問題が潜んでいる、ということになります。そこで、もう、気づいているヒトもいるかと思いますが、EG91と、EG92で扱った、‘each other’「お互い」、に関するルールを思い出して下さい。
(8)‘each other’は、独立して使うことができず、同一文中に、
相手となるべき (イコール (=) 解釈となるような) 名詞表現を
必要とする。
(9)‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じてはならない、
②・最も近い主語 (解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、
2つの条件を、同時に満たしていなければならない。
ルール(8)と(9)にある、‘each other’を、それぞれ、「再帰代名詞」に置きかえて、考えてみましょう。まず、(3)は、同一文中に、‘himself’の相手となる、名詞表現がありません。そして、かつ、主格を与えられる位置に生じているので、ルール(8)、または、ルール(9)の①、どちらによってでも、正しくアウトにすることが可能です。
次に、(5)ですが、同一文中に、‘himself’の相手となるべき名詞表現‘Tom’をもっていますので、ルール(8)はクリアするものの、その一方で、‘himself’が、主格が与えられる位置に生じているので、ルール(9)の①が、クリアできず、やはり、正しくアウトになります。
今度は、OKになる(1)と(2)ですが、(1)の‘himself’は、同一文中に、‘Tom’があるし、一方、(2)の‘herself’も、同一文中に、‘Mary’があるので、共に、ルール(8)をクリアします。そして、‘himself’も、‘herself’も、共に、目的格を与えられる位置に生じていて、ルール(8)の①もクリアします。さらに、最も近い主語は、‘himself’に対して、‘Tom’であり、一方、‘herself’に対して、‘Mary’なので、ルール(8)の②もクリアし、めでたく、‘Tom’=‘himself’、そして、‘Mary’=‘herself’が、共に、正しく決定されます。
(7)に関しても、‘himself’は、同一文中に、‘Tom’があり、かつ、目的格を与えられる位置に生じ、かつ、最も近い主語は、‘Tom’なので、ルール(8)、ルール(9)の①と②、全てを満たして、‘Tom’=‘himself’が、正しく決定されます。ついでに、他の例も、検証しましょう。
(10)a. Mary believes [ that Tom hates himself ]. (〇)
(メアリーは [ トムが彼自身を嫌いだ ] と信じている。)
b. Mary believes Tom to hate himeself. (〇) (訳同上)
(11)a. Mary believes [ that Tom hates herself ]. (×)
(メアリーは [ トムが彼女を嫌いだ ] と信じている。)
b. Mary believes Tom to hate herself. (×) (訳同上)
(10a-b)は、共に、正しく、‘Tom’=‘himself’と解釈され、OKです。一方、(11a-b)は、共に、‘Mary’=‘herself’と解釈しようとしても、アウトです。 (ついでですが、(11a-b)は、‘Tom’=‘herself’ (トムという名前の女性) という解釈なら、OKになります。)
そこで、(10a-b)ですが、‘himself’は、同一文中に、相手となる名詞表現があり、かつ、目的格を与えられる位置に生じています。ここまでで、ルール(8)と、ルール(9)の①を、クリアします。そして、最も近い主語は、‘Mary’ではなく、‘Tom’ ((10b)では、解釈上の主語) なので、ルール(9)の②もクリアして、‘Tom’=‘himself’が、正しく決定されますね。
しかし、一方で、(11a-b)ですが、もちろん、‘herself’は、同一文中に、相手となる名詞表現があり、かつ、目的格を与えられる位置に生じていて、ルール(8)と、ルール(9)の①を、クリアしてはいます。しかし、最も近い主語は、‘Mary’ではなく、‘Tom’ ((11b)では、解釈上の主語) なので、無理に、‘Tom’=‘herself’の解釈でなら、OKにできるのですが、‘Mary’=‘herself’の解釈では、ルール(9)の②をクリアできず、アウトになります。
(12)Tom likes pictures of himself. (〇) (トムは、自分の写真を気に入っている。)
(13)Mary was surprised at Tom's respect for himself. (〇)
(メアリーは、トムの自尊心には、驚いた。)
あと、(12)でも、‘Tom’=‘himself’の解釈が成り立ち、OKです。そして、(13)でも、‘Tom’=‘himself’の解釈が成り立ち、OKです。(13)の場合、所有格‘Tom's ~’「トムの ~」が、解釈上の主語として、はたらいているため、‘Mary’は、「最も近い主語」にはなれず、himself’のかわりに、‘herself’を置くことは、できません。では、以下、注意点です。
(14)Tom likes himself's pictures. (×) (訳同(12))
(15)Tom thinks [ that himself's pictures will be popular ]. (×)
(トムは [ 自分の写真は人気が出ると ] 思っている。)
(16)Tom thinks [ that pictures of himself will be popular ]. (〇) (訳同上)
(14)と(15)は、アウトですが、これは、‘Tom’=‘himself’が成り立たない、というわけではなく、むしろ、再帰代名詞自体が、どんな場合でも、所有格のカタチになれないからで、(14)は、(12)のように、目的格を与えられる位置に、‘himself’を置けば、OKになりますし、一方、(15)の‘himself's pictures’も、同様に、(16)の、‘pictures of himself’なら 、OKになります。では、これまでの再帰代名詞に関する文法性を、‘each other’のルールと合併して、まとめてみます。
(17)再帰代名詞と、‘each other’は、独立して使うことができず、
同一文中に、相手となるべき (イコール (=) 解釈となるような)
名詞表現を必要とする。
(18)再帰代名詞と、‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じては
ならない (再帰代名詞のみ、所有格も、不可)、②・最も近い主語
(解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、2つの条件を、
同時に満たしていなければならない。
今回のポイントは、意外にも、再帰代名詞と、‘each other’は、その大部分において、ほとんど同じ文法性をもつ、ということです。再帰代名詞は、「~ 自身」という意味が付加されるだけで、あとは、通常の代名詞‘he’や‘she’などと、似たようなものだろう、という印象があるんですが、じつは、代名詞とは、決定的に違った点がある、ということです。
再帰代名詞は‘each other’のルールとあわせて、ここまでが基本的な理解、ということになります。とは言え、実用性という観点からは、今回のルール(17)と(18)で、十分に役立つレベルに達していると思われますので、再帰代名詞や‘each other’の表現の際には、ルール(17)と(18)を、意識して使ってみて下さい。
●関連: EG91、EG92、EG93、EG94
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(1)Tom saw himself in the mirror (トムは、鏡で自分を見た。)
(2)Mary saw herself in the mirror (メアリーは、鏡で自分を見た。)
(1)の‘himeself’や、(2)の‘herself’のように、‘-self’のカタチをもったものを、一種の代名詞と見なして、「再帰代名詞」と呼んでいます。今回、その基本的な特徴を、見てみたいと思います。
(3)Himself went there. (×) (彼自身、そこへ行った。)
(4)He went there. (〇) (彼は、そこへ行った。)
いきなり、(3)はアウトですが、一方、(4)はOKです。(3)は、‘himself’が主語になっているんですが、一方、(4)は、‘he’が主語です。どちらも、同じ代名詞なのに、この差は何なんでしょうか。もうちょっと、他の例も、見てみましょう。
(5)Tom believes [ that himself is popular ]. (×)
(トムは [ 自分が人気者だと ] 信じている。)
(6)Tom believes [ that he is popular ]. (〇) (訳同上)
(5)はアウトで、一方、(6)がOKです。この場合も、やはり、(5)と(6)の違いは、‘that’節内の、‘himself’と‘he’でしかありません。ここでのポイントは、(5)は、(3)とは違って、同じ文中に、‘himself’の潜在的な相手として、‘Tom’があるのに、それでも、やはりアウトになる、ということなんです。じゃ、以下は、どうでしょうか。
(7)Tom believes himself to be popular. (〇) (訳同(5))
(7)のように、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」の構文でなら、‘Tom’=‘himself’の解釈が成り立ち、OKにできる、ということなんですね。ここで、注意すべきは、(7)は、「目的語+‘to’不定詞」の間に、解釈上、「主語・述語」の関係が成立していて、意味的には、(5)と、ほぼ同じである、ということです。 (「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」の構文については、EG93、EG94、参照)
ほぼ同じ意味でも、カタチが違えば、文法性に差が出る。つまり、再帰代名詞の可否の問題は、単純に、意味の問題、というわけにはいかず、構文的な (つまり、カタチ的な) 問題が潜んでいる、ということになります。そこで、もう、気づいているヒトもいるかと思いますが、EG91と、EG92で扱った、‘each other’「お互い」、に関するルールを思い出して下さい。
(8)‘each other’は、独立して使うことができず、同一文中に、
相手となるべき (イコール (=) 解釈となるような) 名詞表現を
必要とする。
(9)‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じてはならない、
②・最も近い主語 (解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、
2つの条件を、同時に満たしていなければならない。
ルール(8)と(9)にある、‘each other’を、それぞれ、「再帰代名詞」に置きかえて、考えてみましょう。まず、(3)は、同一文中に、‘himself’の相手となる、名詞表現がありません。そして、かつ、主格を与えられる位置に生じているので、ルール(8)、または、ルール(9)の①、どちらによってでも、正しくアウトにすることが可能です。
次に、(5)ですが、同一文中に、‘himself’の相手となるべき名詞表現‘Tom’をもっていますので、ルール(8)はクリアするものの、その一方で、‘himself’が、主格が与えられる位置に生じているので、ルール(9)の①が、クリアできず、やはり、正しくアウトになります。
今度は、OKになる(1)と(2)ですが、(1)の‘himself’は、同一文中に、‘Tom’があるし、一方、(2)の‘herself’も、同一文中に、‘Mary’があるので、共に、ルール(8)をクリアします。そして、‘himself’も、‘herself’も、共に、目的格を与えられる位置に生じていて、ルール(8)の①もクリアします。さらに、最も近い主語は、‘himself’に対して、‘Tom’であり、一方、‘herself’に対して、‘Mary’なので、ルール(8)の②もクリアし、めでたく、‘Tom’=‘himself’、そして、‘Mary’=‘herself’が、共に、正しく決定されます。
(7)に関しても、‘himself’は、同一文中に、‘Tom’があり、かつ、目的格を与えられる位置に生じ、かつ、最も近い主語は、‘Tom’なので、ルール(8)、ルール(9)の①と②、全てを満たして、‘Tom’=‘himself’が、正しく決定されます。ついでに、他の例も、検証しましょう。
(10)a. Mary believes [ that Tom hates himself ]. (〇)
(メアリーは [ トムが彼自身を嫌いだ ] と信じている。)
b. Mary believes Tom to hate himeself. (〇) (訳同上)
(11)a. Mary believes [ that Tom hates herself ]. (×)
(メアリーは [ トムが彼女を嫌いだ ] と信じている。)
b. Mary believes Tom to hate herself. (×) (訳同上)
(10a-b)は、共に、正しく、‘Tom’=‘himself’と解釈され、OKです。一方、(11a-b)は、共に、‘Mary’=‘herself’と解釈しようとしても、アウトです。 (ついでですが、(11a-b)は、‘Tom’=‘herself’ (トムという名前の女性) という解釈なら、OKになります。)
そこで、(10a-b)ですが、‘himself’は、同一文中に、相手となる名詞表現があり、かつ、目的格を与えられる位置に生じています。ここまでで、ルール(8)と、ルール(9)の①を、クリアします。そして、最も近い主語は、‘Mary’ではなく、‘Tom’ ((10b)では、解釈上の主語) なので、ルール(9)の②もクリアして、‘Tom’=‘himself’が、正しく決定されますね。
しかし、一方で、(11a-b)ですが、もちろん、‘herself’は、同一文中に、相手となる名詞表現があり、かつ、目的格を与えられる位置に生じていて、ルール(8)と、ルール(9)の①を、クリアしてはいます。しかし、最も近い主語は、‘Mary’ではなく、‘Tom’ ((11b)では、解釈上の主語) なので、無理に、‘Tom’=‘herself’の解釈でなら、OKにできるのですが、‘Mary’=‘herself’の解釈では、ルール(9)の②をクリアできず、アウトになります。
(12)Tom likes pictures of himself. (〇) (トムは、自分の写真を気に入っている。)
(13)Mary was surprised at Tom's respect for himself. (〇)
(メアリーは、トムの自尊心には、驚いた。)
あと、(12)でも、‘Tom’=‘himself’の解釈が成り立ち、OKです。そして、(13)でも、‘Tom’=‘himself’の解釈が成り立ち、OKです。(13)の場合、所有格‘Tom's ~’「トムの ~」が、解釈上の主語として、はたらいているため、‘Mary’は、「最も近い主語」にはなれず、himself’のかわりに、‘herself’を置くことは、できません。では、以下、注意点です。
(14)Tom likes himself's pictures. (×) (訳同(12))
(15)Tom thinks [ that himself's pictures will be popular ]. (×)
(トムは [ 自分の写真は人気が出ると ] 思っている。)
(16)Tom thinks [ that pictures of himself will be popular ]. (〇) (訳同上)
(14)と(15)は、アウトですが、これは、‘Tom’=‘himself’が成り立たない、というわけではなく、むしろ、再帰代名詞自体が、どんな場合でも、所有格のカタチになれないからで、(14)は、(12)のように、目的格を与えられる位置に、‘himself’を置けば、OKになりますし、一方、(15)の‘himself's pictures’も、同様に、(16)の、‘pictures of himself’なら 、OKになります。では、これまでの再帰代名詞に関する文法性を、‘each other’のルールと合併して、まとめてみます。
(17)再帰代名詞と、‘each other’は、独立して使うことができず、
同一文中に、相手となるべき (イコール (=) 解釈となるような)
名詞表現を必要とする。
(18)再帰代名詞と、‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じては
ならない (再帰代名詞のみ、所有格も、不可)、②・最も近い主語
(解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、2つの条件を、
同時に満たしていなければならない。
今回のポイントは、意外にも、再帰代名詞と、‘each other’は、その大部分において、ほとんど同じ文法性をもつ、ということです。再帰代名詞は、「~ 自身」という意味が付加されるだけで、あとは、通常の代名詞‘he’や‘she’などと、似たようなものだろう、という印象があるんですが、じつは、代名詞とは、決定的に違った点がある、ということです。
再帰代名詞は‘each other’のルールとあわせて、ここまでが基本的な理解、ということになります。とは言え、実用性という観点からは、今回のルール(17)と(18)で、十分に役立つレベルに達していると思われますので、再帰代名詞や‘each other’の表現の際には、ルール(17)と(18)を、意識して使ってみて下さい。
●関連: EG91、EG92、EG93、EG94
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