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英語学習法(82)

2005年05月04日 | 前提の概念
EG22と、EG81の続きです。「前提」の概念と、‘do so’「そうする」、の関わり合いです。以下、見ましょう。

(1)Tom told me the story and John did so、too. (〇)
  (トムはボクにその話を語り、ジョンもそうした。)

(2)Tom told me the story and John did so another story. (×)
  (トムはボクにその話を語り、ジョンは別の話をそうした。)

(1)はOKですが、‘told me the story’「ボクにその話を語った」、の部分が、後半の文では、‘did so’で置き換えられています。しかし、一方、(2)はアウトです。この場合、‘told me’「ボクに語った」、の部分のみを、‘did so’がカバーしていると思われるのですが、どうやら、‘do so’は、‘tell A B’「AにBを語る」全体を、カバーしなくてはならないようです。

ですので、‘tell’「語る」、という動詞は、「語る相手」と、「語るテーマ (または、内容)」という、後に続く2つの目的語を前提とした表現であることがわかります。ところで、こういった、2つの目的語をとる構文は、その、「語るテーマ (または、内容)」を表す目的語が、「(that) 主語+動詞 ~」を組み込んだ、いわゆる、「節」であることもあります。 (EG22参照)

(3)Tom told me [ that the earth is round ] and John did so、too. (〇)
  (トムはボクに [ 地球は丸いと ] 言い、ジョンもそう言った。)

(4)Tom told me [ that the earth is round ] and John did so [ that Mars is round ]. (×)
  (トムはボクに [ 地球は丸いと ] 言い、ジョンは [ 火星は丸いと ] と言った。)

(1)がOKであることから、当然のことながら、(1)の‘the story’「その話」を、(3)のように、‘that the earth is round’「地球は丸い (ということ)」、という、‘that’節に換えても、やはり、‘did so’がカバーしていれば、何ら問題なく、OKになります。しかし、一方、(2)がアウトであることからもわかる通り、‘that’節を除いた、‘told me’のみを、‘did so’がカバーしている(4)はアウトですね。ところで、以下を見ましょう。

(5)Tom told me [ that the earth is round ] <yesterday>. (×) 
  (トムは、<昨日>ボクに [ 地球は丸いと ] 語りました。)

(6)Tom told me <yesterday> [ that the earth is round ]. (〇) (訳同(5))
 
ここで、EG22のお話を思い出して欲しいのですが、EG22では、(5)と(6)のような文法性の差があるのを確認しました。‘yesterday’「昨日」、という副詞が追加されて、「~ であると、昨日言った」、という意味になる場合、‘yesterday’の位置は、‘that’節の後ではなく、‘that’節の前でなければ、OKにできなくなる、という文法現象があるわけですね。では、これを、‘do so’の観点から見ると、どうなるんでしょうか。

(7)Tom told me <yesterday> [ that the earth is round ] and John did so、too. (〇)
  (トムは、<昨日>ボクに [ 地球は丸いと ] 言い、ジョンもそう言った。)

(8)Tom told me <yesterday> [ that the earth is round ] and John did so <today>. (〇)
  (トムは、<昨日>ボクに [ 地球は丸いと ] 言い、ジョンは、今日そう言った。)

(7)は、前半の‘told me yeaterday that the earth is round’を、後半の‘did so’が、カバーしていて、OKになっていますが、ここで、注目すべきは、(8)もOKである、ということです。EG81では、‘do so’は、少なくとも、動詞が、意味的に、「前提」としているものは、全てカバーしなければならない、ということを考察したわけですが、この点、OKである(8)の後半にあるように、‘~ did so today’が成り立つということは、‘tell’の前提とする、2つの目的語がカバーされているから、問題なし、ということになります。しかし、アウトである(5)のような例と比較すると、一見、不可解な点もあります。

つまり、‘yesterday’が、‘me’と‘that the earth is round’の間に挟まれている位置関係では、‘do so’が、1つのカタマリとして、‘told me yeaterday that the earth is round’全体を、カバーする義務が発生する、と考えるのが自然ではないか、と思われるのですが、この予想に反して、‘yesterday’が、どのような位置にあろうとも、‘do so’は、徹底的に、「前提」の概念にのみ従って、‘yeterday’を、必ずカバーする義務は負わない、ということなのです。(だから、後半で、‘told me today that the earth is round’の解釈となる、‘did so today’が許される。)

ここから、‘do so’は、「前提」の概念に、かなり強い関わり合いがある表現である、という証拠が、また1つ上がったことになります。そして、もう1つ重要なのは、この‘do so’を用いた検証結果から、ほぼ明らかであろうと思われることとして、「前提」の概念とは、また違った、他に独立した文法上の制約が存在するのではないか、ということです。

つまり、‘yesterday’と‘that’節の語順が入れかわる、「変形」です。「前提」の概念からすれば、動詞が前提とする要素は、語順的に (つまり、カタチ的に)、1つにまとまっていてくれれば、意味的なカタマリが、そのままカタチの上でのカタマリ、ということになり、それが私たちの理解としては、最も都合が良い、ということになるわけです。

そこで、‘tell A B’「AにBを語る」、という表現は目的語である、Aも、Bも、‘tell’が、意味的に前提としている要素であり、語順の上で、これらの要素が、途中で‘yesterday’のような、不純物を介入させることなく、一直線につながっていれば、意味のカタマリは、カタチのカタマリでもある、ということになるんですね。

しかし、(5)と(6)の文法性の差を見る限り、実際、そうはいかないので、「前提」の概念は、‘do so’の用法から見る限り、あくまで、意味に従う制約でしかなく、文のカタチを、100パーセントは制御するはたらきをもたない、ということになるのです。

(9)John ran after Mary. 
(10)a. ジョンはメアリーを追いかけた。 (〇)
   b. ジョンはメアリーの背後で駆け足をした。 (〇)

(11)After Mary John ran.
(12)a. ジョンはメアリーを追いかけた。 (×)
   b. ジョンはメアリーの背後で駆け足をした。 (〇)

しかし、EG46でも説明したように、(10a)と(10b)の2通りの解釈を許す(9)のような文で、ある要素を文の先頭に移動させた場合、つまり、(11)のように、‘after Mary’を文の先頭に移動させた場合、(12a)のように、‘run after ~’「~ を追いかける」、の意味がなくなり、ただ単に、「~ の後で駆け足をする」、という解釈しか得られないという事実は、「前提」の概念が、意味的なカタマリを、文のカタチに有効に反映させている、と言えますので、やはり、「前提」の概念を認めた上で、それとは違った概念を独立に求める、という方法が有効であると思われます。

今回のポイントは、EG81に引き続いて、‘do so’の用法が、「前提」の概念によって支えられている、ということを支持する新たな証拠を上げた、ということと、そういったことを検証していくプロセスで、(6)のような文をOKにする、新たな概念が存在する可能性があることが示唆された、ということです。果たして、その概念って、何なんでしょうね。また、別の機会に。

■注1 :Tom told me <before dark> [ that Mary had finished her job ].「[ メアリーは仕事を片付けたって ]、トムが、<暗くなる前に>、言ったんだ。」は、OKですが、一方、Tom told me [ that Mary had finished her job <before dark>].「[ メアリーは <暗くなる前に> 仕事を片付けたって ]、トムが言ったんだ。」も、OKになります。後者の文の場合、<before dark>は、その位置からして、‘that’節の内部でのみ、はたらいており、「メアリーが仕事を終えたのは、暗くなる前だ」、という意味に解釈されるからですね。

■注2 :‘Mary was run after by John’「メアリーはジョンに追いかけられた。」、という受身文では、「メアリーは、背後でジョンに駆け足された。」、という解釈はありません。これは、(11)の解釈が、(12a)では、アウトで、一方、(12b)では、OKになることとは、真逆であり、そこから、‘run’と‘after’の結束性の強さが、‘run after ~’「~ を追いかける」、という表現の解釈に貢献していることは明らかです。つまり、‘run after ~’が、「~ を追いかける」の意味になるときは、一種のイディオムである、と言えそうです。


●関連: EG22EG46EG81

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