今回、英語の基本構文の1つです。以下、見ましょう。
(1)John believes Mary. (ジョンは、メアリーを信じている。)
(2)John believes Mary to be rich. (ジョンは、メアリーを金持ちだと信じている。)
(1)は、‘believe’「~ を信じている」、という動詞が、目的語‘Mary’「メアリー」を取っています。そこで、(1)を、もっと具体的に言いたい場合、つまり、メアリーに関して、どんなことを信じているのか、を表現しようとすることもできます。それが、(2)です。
(2)は、見た目、‘to’不定詞‘to be rich’「金持ちだ」を、‘Mary’の後に続けているだけですから、簡単ですね。ですので、「‘believe’+A+‘to’不定詞」のカタチで、「A を ~ だと信じている」と覚えてしまっても構いません。ところで、(2)は、類似表現として、以下のようなものがありますね。
(3)John believes [ that Mary is rich ]. (訳同(2))
(3)は、‘believe’の目的語として、‘that’節を置いたカタチです。解釈としては、(2)も(3)も、似たようなものですから、学校の英文法では、よく、(2)と(3)の書きかえを習ったりします。 (‘that’節が目的語であることについては、EG41、参照。)
ここで、(2)の‘Mary to be rich’の部分は、(3)の‘that Mary is rich’と、ほぼ同じ意味で対応しているのがわかります。ですので、(2)の、‘Mary to be rich’の部分は、「主語・述語」の関係が成立している、ということになります。しかし、学校の英文法で、よく習うように、文法的に考えるならば、(2)は、‘Mary’のみが、目的語であり、一方、(3)は、‘that Mary is rich’全体が、1つの目的語と考えられています。
(4)John believes her to be rich. (ジョンは、彼女を金持ちだと信じている。)
(4)は、(2)の‘Mary’を、代名詞に置きかえてみましたが、そのカタチは、「目的格」‘her’となって現れます。このことから、目的語となるのは、「‘believe’+A+‘to’不定詞」の、A の部分だけであり、‘to’不定詞の部分は、目的語の一部とは見なされません。
これは、(3)の‘that’節全体が、目的語と見なされるのとは、大きな違いです。ですので、(2)の‘to’不定詞の部分は、文法的に、かなり特殊なステイタスをもっているのではないか、と思われます。ちなみに、以下のような文との比較では、明らかに、その違いがわかります。
(5)John deceived Mary to be rich. (ジョンは、金持ちになるために、メアリーをだました。)
(2)も(5)も、カタチは、「動詞+目的語+‘to’不定詞」と、違いがありません。しかし、両者の大きな違いは、(2)では成立していた、「目的語+‘to’不定詞」の、「主語・述語」の関係が、(5)では成立せず、むしろ、‘to be rich’の主語として解釈されるのは、‘Mary’ではなく、‘John’の方である、ということです。
つまり、(2)の‘to’不定詞は、目的語 (の一部) とはならないからと言って、即座に、(5)の‘to’不定詞ような、いわゆる、「副詞的用法」の不定詞と同じである、とは言い切れない部分がある、ということですね。 (不定詞の副詞的用法については、EG42、参照) さらに、以下を見ましょう。
(6)John believes Mary to be rich and Tom does so、too. (〇)
(ジョンは、メアリーを金持ちだと信じているし、トムだって、そう信じている。)
(7)John deceived Mary to be rich and Tom did so、too. (〇)
(ジョンは、金持ちになるために、メアリーをだまし、トムも、そうした。)
(6)と(7)は、どちらも、OKの文ですが、それぞれ、後半の文を、‘do so’「そうする」によって、代用させたものです。(6)では、‘does so’が、‘believes Mary to be rich’の置きかえとして、使われています。一方、(7)では、‘did so’が、‘deceived Mary to be rich’の置きかえとして、使われています。
(8)John believes Mary to be rich but Tom does so to be poor. (×)
(ジョンは、メアリーを金持ちだと信じているが、トムは、貧乏だと信じている。)
(9)John deceived Mary to be rich but Tom did so to be president. (〇)
(ジョンは、金持ちになるために、メアリーをだましたが、トムは、社長になるためにそうした。)
今度は、(8)と(9)ですが、注目すべきコントラストが表れています。(8)はアウトで、一方、(9)がOKです。(8)では、‘does so’が、‘believes Mary’のみの置きかえとして使われています。一方、(9)では、‘did so’が、‘deceived Mary’のみの置きかえとして使われています。
ここで、思い出してほしいのは、‘do so’が、かなり明確に、「前提」の概念にしたがう、特殊な代用表現である、ということです。(6)と(8)から明らかなことは、‘do so’は、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」のカタチ全体を、スッポリと、カバーしていなくてはならない、ということですから、‘believe’は、「目的語+‘to’不定詞」を、セットとして前提にしていることになります。 (‘do so’のもつ、特殊な性質については、EG81、EG82、参照)
つまり、‘believe’のような動詞は、(1)のように、目的語のみを、前提としている用法もあるし、一方、(2)のように、「目的語+‘to’不定詞」を、前提としている用法もある、ということですね。そういったことを認めるならば、確かに、‘believe’の後に続く、「目的語+‘to’不定詞」のカタチは、意味としては、(3)の‘that’節と、ほぼ同じ意味をもっているわけですから、動詞の要求する意味的な補完材料として、必須のものと言えるでしょう。
今回のポイントは、動詞が意味的に要求する (前提とする) 表現が、「目的語+‘to’不定詞」のカタチとなって表れ、かつ、そのカタチが、そのまま、「主語・述語」の関係を保っている場合がある、ということです。目的語になれない、ということが、動詞が意味的に要求していない (前提としていない) ということを、意味するわけではなく、そういった問題は、それぞれ、別個の問題である、ということが、また明らかになったと思います。
初歩的な手段としては、とりあえず、こういったカタチを要求する動詞があるんだな、と思って、そのまま覚えてしまうのが、手っ取り早いし、実用的ではあるのですが、実は、この種のカタチをもつ構文は、何かと、物議をかもし出す側面があり、また、それが興味深い発見につながっていく、という意味で、じっくりと見ていく価値はあると思いますので、また、次回にでも、続きをやりたいと思います。
■注 :今回、扱かった、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」、のカタチは、学校で習う英文法では、基本文型、‘S+V+O+C’、として扱われます。このタイプの文型は、‘O’と‘C’の間に、「主語・述語」の関係、または、イコール (=) の関係がある、という特徴があります。この場合、カタチとして、‘to’不定詞も、‘C’の部分に、1パーツとして、流用される、と知っておけばよいだけです。こういった特徴から、考えてみても、‘to’不定詞の、3つの用法、つまり、名詞的用法、副詞的用法、形容詞的用法のうち、どれに該当するかは、あまり考えても、意味はありません。
●関連 :EG41、EG42、EG81、EG82、
★みんなの英会話奮闘記★ ★元祖ブログランキング★ ★英語・人気blogランキング★
(1)John believes Mary. (ジョンは、メアリーを信じている。)
(2)John believes Mary to be rich. (ジョンは、メアリーを金持ちだと信じている。)
(1)は、‘believe’「~ を信じている」、という動詞が、目的語‘Mary’「メアリー」を取っています。そこで、(1)を、もっと具体的に言いたい場合、つまり、メアリーに関して、どんなことを信じているのか、を表現しようとすることもできます。それが、(2)です。
(2)は、見た目、‘to’不定詞‘to be rich’「金持ちだ」を、‘Mary’の後に続けているだけですから、簡単ですね。ですので、「‘believe’+A+‘to’不定詞」のカタチで、「A を ~ だと信じている」と覚えてしまっても構いません。ところで、(2)は、類似表現として、以下のようなものがありますね。
(3)John believes [ that Mary is rich ]. (訳同(2))
(3)は、‘believe’の目的語として、‘that’節を置いたカタチです。解釈としては、(2)も(3)も、似たようなものですから、学校の英文法では、よく、(2)と(3)の書きかえを習ったりします。 (‘that’節が目的語であることについては、EG41、参照。)
ここで、(2)の‘Mary to be rich’の部分は、(3)の‘that Mary is rich’と、ほぼ同じ意味で対応しているのがわかります。ですので、(2)の、‘Mary to be rich’の部分は、「主語・述語」の関係が成立している、ということになります。しかし、学校の英文法で、よく習うように、文法的に考えるならば、(2)は、‘Mary’のみが、目的語であり、一方、(3)は、‘that Mary is rich’全体が、1つの目的語と考えられています。
(4)John believes her to be rich. (ジョンは、彼女を金持ちだと信じている。)
(4)は、(2)の‘Mary’を、代名詞に置きかえてみましたが、そのカタチは、「目的格」‘her’となって現れます。このことから、目的語となるのは、「‘believe’+A+‘to’不定詞」の、A の部分だけであり、‘to’不定詞の部分は、目的語の一部とは見なされません。
これは、(3)の‘that’節全体が、目的語と見なされるのとは、大きな違いです。ですので、(2)の‘to’不定詞の部分は、文法的に、かなり特殊なステイタスをもっているのではないか、と思われます。ちなみに、以下のような文との比較では、明らかに、その違いがわかります。
(5)John deceived Mary to be rich. (ジョンは、金持ちになるために、メアリーをだました。)
(2)も(5)も、カタチは、「動詞+目的語+‘to’不定詞」と、違いがありません。しかし、両者の大きな違いは、(2)では成立していた、「目的語+‘to’不定詞」の、「主語・述語」の関係が、(5)では成立せず、むしろ、‘to be rich’の主語として解釈されるのは、‘Mary’ではなく、‘John’の方である、ということです。
つまり、(2)の‘to’不定詞は、目的語 (の一部) とはならないからと言って、即座に、(5)の‘to’不定詞ような、いわゆる、「副詞的用法」の不定詞と同じである、とは言い切れない部分がある、ということですね。 (不定詞の副詞的用法については、EG42、参照) さらに、以下を見ましょう。
(6)John believes Mary to be rich and Tom does so、too. (〇)
(ジョンは、メアリーを金持ちだと信じているし、トムだって、そう信じている。)
(7)John deceived Mary to be rich and Tom did so、too. (〇)
(ジョンは、金持ちになるために、メアリーをだまし、トムも、そうした。)
(6)と(7)は、どちらも、OKの文ですが、それぞれ、後半の文を、‘do so’「そうする」によって、代用させたものです。(6)では、‘does so’が、‘believes Mary to be rich’の置きかえとして、使われています。一方、(7)では、‘did so’が、‘deceived Mary to be rich’の置きかえとして、使われています。
(8)John believes Mary to be rich but Tom does so to be poor. (×)
(ジョンは、メアリーを金持ちだと信じているが、トムは、貧乏だと信じている。)
(9)John deceived Mary to be rich but Tom did so to be president. (〇)
(ジョンは、金持ちになるために、メアリーをだましたが、トムは、社長になるためにそうした。)
今度は、(8)と(9)ですが、注目すべきコントラストが表れています。(8)はアウトで、一方、(9)がOKです。(8)では、‘does so’が、‘believes Mary’のみの置きかえとして使われています。一方、(9)では、‘did so’が、‘deceived Mary’のみの置きかえとして使われています。
ここで、思い出してほしいのは、‘do so’が、かなり明確に、「前提」の概念にしたがう、特殊な代用表現である、ということです。(6)と(8)から明らかなことは、‘do so’は、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」のカタチ全体を、スッポリと、カバーしていなくてはならない、ということですから、‘believe’は、「目的語+‘to’不定詞」を、セットとして前提にしていることになります。 (‘do so’のもつ、特殊な性質については、EG81、EG82、参照)
つまり、‘believe’のような動詞は、(1)のように、目的語のみを、前提としている用法もあるし、一方、(2)のように、「目的語+‘to’不定詞」を、前提としている用法もある、ということですね。そういったことを認めるならば、確かに、‘believe’の後に続く、「目的語+‘to’不定詞」のカタチは、意味としては、(3)の‘that’節と、ほぼ同じ意味をもっているわけですから、動詞の要求する意味的な補完材料として、必須のものと言えるでしょう。
今回のポイントは、動詞が意味的に要求する (前提とする) 表現が、「目的語+‘to’不定詞」のカタチとなって表れ、かつ、そのカタチが、そのまま、「主語・述語」の関係を保っている場合がある、ということです。目的語になれない、ということが、動詞が意味的に要求していない (前提としていない) ということを、意味するわけではなく、そういった問題は、それぞれ、別個の問題である、ということが、また明らかになったと思います。
初歩的な手段としては、とりあえず、こういったカタチを要求する動詞があるんだな、と思って、そのまま覚えてしまうのが、手っ取り早いし、実用的ではあるのですが、実は、この種のカタチをもつ構文は、何かと、物議をかもし出す側面があり、また、それが興味深い発見につながっていく、という意味で、じっくりと見ていく価値はあると思いますので、また、次回にでも、続きをやりたいと思います。
■注 :今回、扱かった、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」、のカタチは、学校で習う英文法では、基本文型、‘S+V+O+C’、として扱われます。このタイプの文型は、‘O’と‘C’の間に、「主語・述語」の関係、または、イコール (=) の関係がある、という特徴があります。この場合、カタチとして、‘to’不定詞も、‘C’の部分に、1パーツとして、流用される、と知っておけばよいだけです。こういった特徴から、考えてみても、‘to’不定詞の、3つの用法、つまり、名詞的用法、副詞的用法、形容詞的用法のうち、どれに該当するかは、あまり考えても、意味はありません。
●関連 :EG41、EG42、EG81、EG82、
★みんなの英会話奮闘記★ ★元祖ブログランキング★ ★英語・人気blogランキング★