ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

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ワールドカップ 決勝トーナメント スペイン対フランス(ハノーヴァー)3-1

2006-06-29 23:55:32 | サッカー
晴れ。

ジダンは終わったと思っていた。いやフランスは終わったと思っていた。
ジダンやマケレレを使わざるを得ないフランスはグループリーグで苦戦し辛くも勝ち上がった。
その苦闘ぶりにやはり、という気がしていた。
しかもジダンの出場停止によりアンリとトレセゲのツートップに変更して臨んだトーゴ戦のほうがむしろチームとしては機能していたのだ。
アンリのスピードをジダンは活かせないのではないか。
ジダンが復帰するこの試合ではスイスや韓国と引き分けたような苦しい展開になるのではないか。そういう危惧があったのだ。
ましてや相手は好調のスペインである。フェルナンド・トレスが好調。
期するものがあるラウル、中盤のシャビ・アロンソやジャビ、ルイス・ガルシアらが波のように襲い掛かってくる攻撃は圧巻で、グループリーグ8得点を叩き出している。
「今回こそは」という国民の期待もあり、今のフランスにとって簡単にいくような相手ではないと思っていた。
勢いがあるのはスペインでフランスが分の悪い戦いを強いられるのではないかと思っていたのだが・・・。
結果は3-1でフランスが勝利。スコアを見て驚いた。フランスに何があったのか。
録画していたビデオを慌てて見る。

フランスはとにかく守備をしっかりと固めた。
スペインはボールポゼッションでは圧倒的にフランスを上回り、バイタルエリアの手前までは難なくボールを持ち込むが、そこから先はフランスのプレッシングに苦しむ。
フランスはどこでプレスをかけ始めるかという意識が統一されていた。
その上でボールを奪ったらジダンを経由してなるべくシンプルに縦にボールを通すことを徹底した。
ワントップのアンリを徹底的に生かすために。
アンリはぎりぎりのタイミングでスペインDFの裏のスペースを徹底して突いてきた。
再三オフサイドに引っかかったのはそのためである。
そしてそのワントップのアンリにDFがつり出されると、ヴィエラやリベリが2列目から飛び出してくる。
1点ビハインドから追いついたのはアンリが囮になってリベリが走りこんできた狙いどおりの展開だった。
フランスは相手にボールを持たせた。その上でしっかりとしたカウンターの意識を全員が共有してゲームをコントロールした。
前半のポゼッションで60対40と圧倒的にスペインにボールを持たれながら、フランスのペースに見えたのだ。

スペインは自慢のサイドアタックが機能しない。決定的なところで押し返された。PKで得た1点のみ。結局前半は1対1のドロー。
後半早々スペインはビジャ、ラウルをホアキンとルイス・ガルシアに代えて積極的に攻撃を仕掛けてくる。
しかし、ベテランの多いフランスの老獪さに若さが翻弄されてしまったかのようで、最終ラインを打ち破ることができない。

試合は拮抗したスリリングな展開だった。
このまま延長も覚悟かなと思った38分、フランスはジダンのFKの跳ね返りをビエラが頭で押し込んでついに均衡が破れた。

終わりと思われたジダンは終わってはいなかった。引退を表明している彼には、こんなところで終わってたまるかという強い思いがあったのだ。
共存しないといわれていたアンリもジダンが自ら動いて積極的にボールに関与することで活かした。
後半ロスタイム、全盛期を思わせるような反応を見せて走りこんだ彼は相手DFを鋭くかわしシュートを放った。フランスがスペインに引導を渡した瞬間だった。

今大会のスペインには期待していた。
世界の目がブラジルや開催国のドイツに向かう中で、地味ながらも充実した戦力を備えていたスペインには今度こそいけるのではないかという思いがあった。
ベテランと若手がうまく噛み合えば一気に行ってしまうのではないかと思わせるものがあった。
しかし、思いのほかあっさりと彼らは敗れてしまった。
今大会でもスペインはスペインらしさを出し切る前に舞台から去ってしまったような気がしてならない。
あっけない幕切れだった。
それがスペインらしさといわれればそれまでだが、ひまわりのようなスペインがいなくなったのはやはり寂しい。