Manaboo 電子政府・電子申請コラム 

電子政府コンサルタントの牟田学が、電子政府・電子申請、その他もろもろ、気まぐれにコメントしてます。

電子自治体の未来は地方分権次第、行政サービスを効率・効果的に実施できる仕組みを

2010年02月23日 | 電子政府
最近、いくつかの自治体に訪問して、お話を聞く機会がありました。現場の声を聴くことは、電子政府・電子自治体においても、とても大切なことです。

電子自治体に関しては、限られた人やお金の中で、様々な工夫や努力が見られるので、あまり心配していなかったのですが、その思いを再確認できたのが今回の訪問でした。

気になるのは、国の施策に翻弄されていることでしょうか。電子申請にしろ、住基カードにしろ、国の方針に従って積極的に事業展開したことが、かえって裏目になり負の遺産を抱えてしまっているケースがあるように思います。

また、国からの助成に頼ることで費用対効果の意識が薄れ、身の丈に合わないシステムを抱えてしまい、事業やサービスの継続が難しくなるケースもあるでしょう。


●非効率的な行政サービスを、いつまで続けていけるのか

日本では、合併が進んだ現在でも、1700以上の市町村があります。

人口、面積、経済規模も様々で、行政サービスを効率良く実施するように区分されているわけでもありません。

人口減少や高齢化社会を迎え、経済成長も停滞している日本では、これからも非効率な行政サービスを続けていく余裕などないことは、多くの国民が理解してると思います。

だからこそ、まだ多少の余裕があるうちに、デンマークのように「地方自治の効率化とサービス向上」を目的とした自治体改革が必要と思います。

つまり、地方・地域が経済的に自立でき、かつ地域の事情にあった公共サービスを効率・効果的に展開できる仕組みを作っておかないと、ますます地方の疲弊が進み、国全体の元気も無くなっていくだろうと。


●「住民データベースの統合」が鍵を握る

情報システムの面でも問題があります。

それは、住民のデータベース(住民基本台帳)を、1700以上の市町村が各自で作成し保持していることです。

それに加えて、中途半端な機能と情報しか持たない住基ネット(各自治体から情報をもらっており、マスターデータではない)を、毎年何百億円もの税金を使って維持しているわけですから、なんとも無駄な話です。しかも、その管理をよくわからない外郭団体に任せています。

電子政府でよく出てくる「ワンストップサービス」を実現したいのであれば、膨大な数のデータベースを連携させて複雑化するようなことをせずに、まずは住民データベースを国で一括管理し、各自治体が必要な住民データを入手して利用するようにするのが良いでしょう。

現在のように住民のデータ管理がバラバラに行われている中で、「引越しワンストップサービス」などを考えること自体に無理があるのですね。

日本と同じような規模や自治体事情を抱え、ナチスの歴史から政府による管理社会に人一倍敏感で国民IDの導入を嫌うドイツでさえ、住民登録のデータベースを統合しています。

日本でも、住民データベースを統合し、外郭団体任せではなく、政府の機関が責任を持って管理・運営するべきでしょう。もちろん、その運営については第三者機関や国民が監視し、技術的にも不正がしにくく発見されやすい仕組みを作っておきます。

この住民データベースに、個人情報等を何でもかんでも入れるわけではありません。あくまでも、基本的な行政サービスを提供したり、国民として権利を実行する上で必要な住民データを保有し管理するのです。

この住民データベースを核として、年金情報のデータベースや税のデータベースがあり、各データベースが連携するようにしておけば、わざわざ役所に行って手続をする必要さえ無くなることでしょう。これは夢物語ではなく、実現している国があるということです。

これまでは、電子政府と電子自治体が一体感のないまま進められ、国としての全体像を描くことなく、バラバラに各施策が実施されてきました。

今後の電子政府・電子自治体では、より大きな視点で国全体の情報システムを考え、地方分権や霞ヶ関改革と一体で進めていくことが必要なのです。


最新の画像もっと見る