江戸幕府公認の遊郭「吉原」。浅草の北に位置し、行政区としての吉原の地名はもはや無いものの、今でも夜の街として広く知られる場所です。多くの小説、映画、ドラマ等で取り上げられており、改めて詳しい説明をするまでも無いでしょう。
吉原が江戸の頃には郊外とも言える現在の地に建設されたのは、明暦の大火(1657年)で元々の遊郭が消失し、江戸幕府に移転を命じられたためです。そのため、かつては新たに建設された方の遊郭を「新吉原」、火事で消失した方の遊郭を「元吉原」と呼びました。単に「吉原」という場合には、普通は新吉原の方を指します。
それでは、「元吉原」はどこに在ったかというと、これが案外と知られていないのですが、答を明かすと、現在の日本橋人形町に在りました。下町情緒あふれ、近年では阿部寛さん主演のドラマ「新参者」でも一躍有名になったこの街に、かつて遊郭が在ったことを意外に思う人も多いのではないでしょうか。
元吉原が在った大よその区域は、地下鉄日比谷線人形町駅の東側で、観光客で賑わう人形町甘酒横丁より北側の辺りと言われています。今では350年以上前の遊郭の名残は無いに等しく、かろうじて見付けることが出来るのは、遊郭の東端の境となっていた浜町掘跡と、かつて遊郭の中央を貫いていた通りに「大門通り」の名が残ることくらいです。
新吉原と比較すると、時代が古いこともあって元吉原が登場する時代小説は極めて少ないのですが、闇の黒猫-北町奉行所朽木組(野口卓著、新潮社)には、「かつてこの地に吉原があったころの名残りで、町の東側は大門通りと呼ばれている。」と元吉原に触れる場面が登場しています。
元吉原(大門通り標識) 東京都中央区日本橋人形町2-7-8
東京メトロ日比谷線・都営地下鉄浅草線人形町駅A3、A4出口からすぐ。
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